菊澤研宗のレビュー一覧
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野中教授が主張されている「現場感覚」「大局観」「判断力」を有した「フロネティック・リーダー」を裏付けるための、戦時の事実・将校の行動を通じて各専門家が論じている。
自分は、「石原莞爾」「辻政信」「山口多聞」の考察が大変深く印象に残った。
天才肌故か、組織に目配せする能力が欠落していた石原。
軍の基本ポリシーに忠実すぎるが故に数々の失策に対し誰も苦言を呈すことができず、結果的に独走を許してしまった辻。
組織や上官への抜群の目配せと溢れる程の愛国心故に自らの不利をあえて飲み込み率先して殉職した山口。
ヒューマニズムに偏った感想になってしまい、申し訳ありませんが、私にとっては非常に参考になりました。 -
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1.戦略の不条理とは?
ポパー(科学哲学者)によれば、我々の世界は多次元的世界であり、次の三つから成っている。
①知性的世界・・・知識・観念
②心理的世界・・・感情・欲望
③物理的世界・・・物体・肉体
人間の行動が、三つの世界の内一つか二つの世界で合理的であっても、
他の世界で不合理であったために敗者となってしまう現象。
これが「戦略の不条理」というものらしい。
勝者となるためには、三つの世界を考慮した「立体的大戦略」を組み立てる必要がある、ということだ。
※戦略の不条理、立体的大戦略(Cubic Grand Strategy)は、著書独自の用語らしい。
※戦略:筆者によれば、生き残 -
Posted by ブクログ
なんかそういう時期なので読み直してみた。
大東亜戦争における日本軍について新制度派経済学と呼ばれるツールで分析し、最終的には「命令違反」をマネジメントすることが今後の組織には求められているのだと提言している。全体的に日本軍は合理的に失敗してしまったのだというスタンスをとっており、よく引き合いに出される「失敗の本質」よりもだいぶ挑戦的な内容である。
栗田中将の原状回復賠償責任原理に基づく悪しき命令違反は、気をつけないと自分も将来やってしまうかもしれないと思いリアルに参考になった。
はじめに読んだ時はケース部分が長いように感じたが、「失敗の本質」と比べると大したことないと思う。
798円。 -
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リーダーシップの本質は、フロネシス(賢慮)ないし実践知と定義している。
"フロネシスの中身を一言で言えば、個別具体の物事や背後にある複雑な関係性を見極めながら、社会の共通善の実現のために、適切な判断を素早く下しつつ、自らも的確な行動を取れる「実践知」のことを言う。そうした知を備えたリーダーがフロネスティック・リーダー"
フロネスティック・リーダーの能力
①善い目的を作る能力
②場をタイムリーにつくる能力
③ありのまま現実を直観する能力
④直観の本質を概念化する能力
⑤概念を実現する政治力
⑥実践知を組織化する能力
典型はチャーチル、目的が共有できなければミッドウェイのように -
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必ずしも市場は最善の答えを出すわけではなく、製造コストが安く、技術的に優れた商品が常に市場支配するわけでもない。物理的世界の合理性だけではなく、人間には心理的世界がある。これこそ「戦略の不条理」を引き起こす原因である。
これが本著の主論だ。安くて良いから買うわけでもなく、営業担当の〝感じの良さ“で購入を決める。他にも、人と同じものを持ちたくない。自慢したい。憧れの人と同じものが欲しい。こうした選択には、普遍的な合理性は無く、私的で限定的な合理性や判断基準があるのみだ。そして、その判断基準は体験に基づくもので言語化が難しい割に、無視できない。
人間はレファレンスポイントに基づいて相対的に幸福 -
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著者の論理展開は説得力あり、特に人間の合理性を前提とした考察はよく分かる。そもそも人間は、限定的にすら合理的に見えない場合もあるが、少なくとも組織における行動原理には合理性が伴うものとして読解が可能。非合理が許されるのは、オフの日における特権かも知れない。
理論の立脚点は「効率性と正当性の不一致が生み出す不条理」「私的利益と社会的利益の不一致が生み出す不条理」が組織には内在するが、この不条理を打開する場合に、命令に従わぬ事が却って機能する事もある、という事だ。
その論拠の一つとなるプロスペクト理論による限定合理性とは。レファレンス・ポイント、参照点により、人間が物事を認識し、評価する時に参 -