菊澤研宗のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
1.戦略の不条理とは?
ポパー(科学哲学者)によれば、我々の世界は多次元的世界であり、次の三つから成っている。
①知性的世界・・・知識・観念
②心理的世界・・・感情・欲望
③物理的世界・・・物体・肉体
人間の行動が、三つの世界の内一つか二つの世界で合理的であっても、
他の世界で不合理であったために敗者となってしまう現象。
これが「戦略の不条理」というものらしい。
勝者となるためには、三つの世界を考慮した「立体的大戦略」を組み立てる必要がある、ということだ。
※戦略の不条理、立体的大戦略(Cubic Grand Strategy)は、著書独自の用語らしい。
※戦略:筆者によれば、生き残るための知恵
2.立体的大戦略とは?
三つの世界、各々の損得勘定の合計がプラスとなるような戦略である。
ただし、戦略は状況に応じて柔軟に変化させる必要がある。
戦略の展開は、知性的世界→心理的世界→物理的世界、の順で行う。
何故なら、多次元的世界は、最上位に知性的世界、その下に心理的世界、土台が物理的世界、
という形で成り立っているからである。
低次の世界の戦略は、より高次の世界の戦略と整合性を取る必要がある、ということだろうか。
※戦略の展開方法は、下記のように違っているが「整合性」という考えでまとめてみた。
・軍事戦略→知性的世界と心理的世界の戦略だけで勝利するのがベスト
・経営戦略→より低次の世界へのアプローチを成功させておくことは必須
※「孫子の兵法」は、立体的大戦略に基づいている。
3.物理的世界の戦略とは?
(1)軍事面
クラウゼヴィッツ(軍人)の戦略論[強者の戦略]を例に説明している。
敵より上回る戦力を集中させて勝つという事だ。
攻撃対象は【戦力】だろうか。
(2)経営面
新古典派経済学を例に説明している。
資源を集中して、より安くより高品質な製品を製造・販売するという事らしい。
競争対象は【製品】だろうか。
4.心理的世界の戦略とは?
(1)軍事面
リデル・ハート(軍人・歴史家)の戦略論[弱者の戦略]を中心に説明している。
できるだけ戦闘を回避し、心理状態を利用した手段で、兵力の均衡に持ち込むという事らしい。
攻撃対象は【戦意】だろうか。
※体系だっていなかったが、興味深かったのでメモをしておく。
○敵の物理的側面への攻撃だけではなく心理的側面への攻撃を併用すれば、敵のバランスは崩れる。
○攪乱行動
・敵の配備を混乱させる
・敵の兵力を分断する
・敵の補給を危機に陥れる
・敵の足場固めの為の路線を驚異に晒す
○重要なアプローチ
・最小予期線への攻撃・・・敵が心理的に最も予期していない攻撃を展開する
・最小抵抗線への攻撃・・・物理的に敵の抵抗が最も弱い箇所を攻撃する
(2)経営面
行動経済学の「プロスペクト理論」を例に説明している。
プロスペクト理論によれば、人間の心理が満足状態にあれば行動を起こし辛く(リスク回避的)、
不満足状態にあれば行動を起こし易く(リスク選好的)なる。
だから、消費者の心理を不満足状態にして購買意欲を高めるという事らしい。
競争対象は【満足】だろうか。
5.知性的世界の戦略とは?
(1)軍事面
ロンメル(軍人)の戦略を中心に説明している。
イメージ・固定観念などの概念を確立し、始めから優位に立つという事らしい。
例えば、ロンメルがドイツ軍は強いという固定観念を作ろうとしていた事がそうだ。
攻撃対象は【観念】だろうか。
(2)経営面
新制度派経済学の「取引コスト理論」を例に説明している。
取引コストとは、物を買ったり買い換えたりする時に発生する様々な労力(調査・交渉・監視等)
のことで、これが大きければ現状で我慢しようとする。
だから、情報技術を使用して取引コストを小さくするという事らしい。
競争対象は【情報】だろうか。
※知識、技術も知性的世界に含まれる。
6.まとめ
最初に結論を述べ、次に概略に入り、それを詳細に展開しているため流れはわかりやすい。
ただし、以前の内容を引き継いで説明しているため、主旨をまとめるのが難しい。
特に、知性的世界はわかりづらい。この中に含まれる知識・技術の戦略とは、どのようなものだろうか。
正しく理解したかどうかも不明である。
クラウゼヴィッツやリデル・ハートの戦略の位置付けは、大変参考になる。
戦略に興味があるなら、これだけでも読む価値があろう。
※本書の内容は、経営よりも軍事的色彩が強い。 -
Posted by ブクログ
なんかそういう時期なので読み直してみた。
大東亜戦争における日本軍について新制度派経済学と呼ばれるツールで分析し、最終的には「命令違反」をマネジメントすることが今後の組織には求められているのだと提言している。全体的に日本軍は合理的に失敗してしまったのだというスタンスをとっており、よく引き合いに出される「失敗の本質」よりもだいぶ挑戦的な内容である。
栗田中将の原状回復賠償責任原理に基づく悪しき命令違反は、気をつけないと自分も将来やってしまうかもしれないと思いリアルに参考になった。
はじめに読んだ時はケース部分が長いように感じたが、「失敗の本質」と比べると大したことないと思う。
798円。 -
Posted by ブクログ
リーダーシップの本質は、フロネシス(賢慮)ないし実践知と定義している。
"フロネシスの中身を一言で言えば、個別具体の物事や背後にある複雑な関係性を見極めながら、社会の共通善の実現のために、適切な判断を素早く下しつつ、自らも的確な行動を取れる「実践知」のことを言う。そうした知を備えたリーダーがフロネスティック・リーダー"
フロネスティック・リーダーの能力
①善い目的を作る能力
②場をタイムリーにつくる能力
③ありのまま現実を直観する能力
④直観の本質を概念化する能力
⑤概念を実現する政治力
⑥実践知を組織化する能力
典型はチャーチル、目的が共有できなければミッドウェイのように陥る
本書は、それを備えるリーダーについての書。
現場とコンセプトをたえず行き来するフィードバック・ループを機能させるには、現場を身体的に理解しているリーダーの存在は不可欠。
それにはサイロの破壊と、タスクフォースの創設を通じた機動的な知の総動員がカギ。
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Posted by ブクログ
ダイナミックケイパビリティ論の紹介と、それを成功した日本企業に適用しての分析。この理論自体初めて知ったので勉強になった。
企業にはオーディナリーケイパビリティとダイナミックケイパビリティの2つがあり、後者は環境の変化を感知してオーディナリーケイパビリティを再構築、再配置、再編成する能力のことである。
合理的な失敗「不条理」は個別合理的全体非合理、効率的不正、短期合理的長期合理があり、日本の組織が実際に陥ったものとして日本軍の白兵突撃パラダイムに代表されるパラダイムの不条理があり、回避する方法として取引コストの節約とダイナミックケイパビリティによる付加価値の向上がある。
ダイナミックケイパビリティの日本の成功事例として、既存技術を転用した富士フイルム、独自のビジネスエコシステムを構築したソニーなどがある。
バブル崩壊後にアメリカの株主至上主義がもたらされたが、日本企業はダイナミックケイパビリティ理論に基づいた経営が適していると提言する。