【感想・ネタバレ】「命令違反」が組織を伸ばすのレビュー

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Posted by ブクログ

限定合理性の下での判断は試行錯誤を免れない。
間違った方向に進むのをやめさせる解決策の一つは著者の言う「命令違反」だ。
が、最終章に書かれているカント的組織であれば、命令の正しさについて忌憚のない議論が可能なはずであり、「命令違反」をせずとも軌道修正は可能だろう。

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2022年11月20日

Posted by ブクログ

人間は、完全合理的でない。したがって人間が完全合理的という前提での歴史解釈では理解できないもしくは、誤解することが避けられない。本書では、それを克服するために、行動経済学などの手法を使い、限定合理的な人間の行動原理を基にして、第2次世界大戦のミスオペレーションや、その逆の命令違反だが正しかったオペレーションの解説を行う。これにより、「良い命令違反」を定義し、それを行える組織となるように主張する。まさに慧眼といえよう。自分のミスオペレーションに目をつぶり、ひたすら上からの命令にYESを繰り返すマネージャー連中に、この本をささげたい。

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2018年10月23日

Posted by ブクログ

なんかそういう時期なので読み直してみた。

大東亜戦争における日本軍について新制度派経済学と呼ばれるツールで分析し、最終的には「命令違反」をマネジメントすることが今後の組織には求められているのだと提言している。全体的に日本軍は合理的に失敗してしまったのだというスタンスをとっており、よく引き合いに出される「失敗の本質」よりもだいぶ挑戦的な内容である。
栗田中将の原状回復賠償責任原理に基づく悪しき命令違反は、気をつけないと自分も将来やってしまうかもしれないと思いリアルに参考になった。

はじめに読んだ時はケース部分が長いように感じたが、「失敗の本質」と比べると大したことないと思う。


798円。

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2009年10月04日

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著者の論理展開は説得力あり、特に人間の合理性を前提とした考察はよく分かる。そもそも人間は、限定的にすら合理的に見えない場合もあるが、少なくとも組織における行動原理には合理性が伴うものとして読解が可能。非合理が許されるのは、オフの日における特権かも知れない。

理論の立脚点は「効率性と正当性の不一致が生み出す不条理」「私的利益と社会的利益の不一致が生み出す不条理」が組織には内在するが、この不条理を打開する場合に、命令に従わぬ事が却って機能する事もある、という事だ。

その論拠の一つとなるプロスペクト理論による限定合理性とは。レファレンス・ポイント、参照点により、人間が物事を認識し、評価する時に参考にする主観的な基準が働く事。その基準に対する損得を心理的価値とし、相対的利益・損失として評価。牟田口廉也のインパール作戦を挙げる。

単に命令が無能であり、それを受けた側が更に広範囲かつ深い合理性、つまり有能な判断ができれば、違反が有効であるという話。そう言ってしまえば詰まらぬかも知れぬが、その無能と有能を事例でもって解き明かす。至近の多様性ブームにおける、労働者確保とは別の側面を垣間見る。合理性の範囲を広げる事が肝要。

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2023年04月26日

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「組織の不条理」と類似したテーマだが、インパール&ガダルカナルだけでなく、ペリリュー、ノモハン、ミッドウェー、レイテへとケースが増えている。

また、プロスペクト理論を用いている点が新しく、インパールでプロスペクト理論を適用している点が新しかった。

今回のケースを自分なりに分類すると、以下のとおり
 良いペリリュー中川→現場が本部より「現実を理解」していたことが勝因
 悪いノモハン辻→既存の「組織文化を追求」したことが敗因
 良いミッドウェー山口→現場が上司より「専門性」を有していたことが勝因
 悪いレイテ栗田→「判断ミス・勘違い」が敗因

したがって、命令違反が許容されるケースというのは、「状況や環境が変化し、既存の戦略、既存のケイパビリティ、既存の組織風土に基づく判断基準が通用しなくなった」だと言えのではないか。

逆に環境が変化しているのに、旧来の価値観で命令違反を強行した辻のノモハンは状況が悪化したし、判断ミスにより命令違反をしてしまったレイテ栗田も、レイテの戦況を悪化させた。
(本書を読んだ結果そう感じただけで、史実ではどうなのかは分からない)

プロスペクト理論の「リファレンスポイントを移動させる」という点も勉強になった。

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2014年03月02日

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ネタバレ

確かに例が長めだけれど、内容的にも分析の切り口が面白いし、とても納得感のある分析結果だった。確かにおすすめ。軽めなのでさくっと読める。
上海出張でたまたま出会ったIさんから薦められた本で、アジャイル開発におけるチームビルディングの考え方の論拠になる、という形での推薦だったけど、それもさることながら、システムズアプローチのシステム思考の哲学や場作りの論旨などに近いものを感じて、ちょっとしたアハ体験をした。
自分の理解では、全体として題のとおり組織論が論旨にあり、効率と利益の2軸について人間は完全合理性ではなく、限定合理性を持つ不完全なものであるという前提をもって「行動経済学」と「法の経済」の論理を用いて分析する構成になっている。ただ分析の結果、「ではどうやって命令違反をするのか?」の論述が弱いように感じた。なので星4つ。
たとえば、組織として効率的ではない命令に対して効率性のある判断をした部下は、組織倫理的な正当性(つまり命令に従うこと)に従事するのではなく、命令違反をして効率性のある判断に従って行動することが必要という点と、そのためにそのような行動を起こすためのマネジメントや人間関係の構築のあり方は語られている(このあたりの論述にもシステム思考との一致性が見られる)が、どうやって「効率性」のある判断をするか、またそれが組織的に効率的かどうかを判断するのか、といった点はあまり深く触れられていないと感じた。
おそらく、システム思考を引用すればメタ思考によって視点を引き上げることで組織として効率性とはどのようなものかを考え、最適解を模索するということが必要であり、さらにそれが効率的かどうかを判断するためにデザイン思考的にプロトタイピカルなサイクルを実践することが必要だと考えられる。(ざっくり)
本書では批判的議論と暫定的組織の節でプロトなサイクルの必要性には軽く触れられている。

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2012年05月12日

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命令違反という若干タブー的な題材を臆せず用いた本。
良い命令違反、悪い命令違反というものを戦争での事象を用いて説明しており、戦争話も興味があった自分には結構楽しめました。特に「どう考えても非効率的なこと」でも実は人間の心理を元に考えれば客観的にも合理的だと判断できる理由の記述には大変納得。人の行動心理を考えるにあたって巡りあえて良い本でした。

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2011年11月06日

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日本軍はなぜ過ちを繰り返したのか、本当に非合理的であったのかを分析。著者によると実は当人達は合理的に行動しているつもりだったそうです。一つの歴史の見方だなぁと感心しました。

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2011年09月18日

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経済学の理論で日本軍の判断を解説している。
普段接することの無い話ばかりだったので新鮮。
死に方用意ってのは理にかなったことなのかも。

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2009年10月04日

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第二次大戦の日本軍を例に、組織の不条理は命令違反によって回避されうることを論証する。
戦史と最新の経済理論の応用という一粒で二度おいしい感じの本。だが、戦史部分が長すぎる気もする。個人的には面白かったが。
内容としてはプロスペクト理論、取引コスト理論の応用は分かりやすいが、法と経済学アプローチはちょっと分かりづらいと思う。また組織における命令違反のマネジメントについての章の「カント的人間関係」にもちょっと首をひねる。ともあれ、「命令違反も場合によっては良いものである」ということに関しては十分に説得できているように思う。

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2014年02月19日

Posted by ブクログ

マニュアルどおりに動くのはいけないと書かれている組織にかんするハウツー本だと思っていたら、ぜんぜん違った。
主に旧日本軍の実例を挙げて、状況説明などされているが、その主題とは別に、隠れた戦時史の本として面白い。

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2009年10月04日

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