金井美恵子のレビュー一覧

  • 愛の生活・森のメリュジ-ヌ

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    「愛の生活」「夢の時間」「森のメリュジーヌ」「永遠の恋人」「兎」「母子像」「黄金の街」「空気男のはなし」「アカシア騎士団」「プラトン的恋愛」を収録。
    どの話も、緻密に組まれていながらどこかに獣臭さや血なまぐささの漂うような、まるで丁寧に掃除され壁際にはドライフラワーの吊るされた部屋の真ん中に、生血の滴る獣の肉が手つかずで置いてあるような、あるいは誰かが食べたのであろう獣肉の匂いが残っているような、そんな雰囲気を持つ話たちであった。どれもおもしろかったが、黒猫が出てくる「永遠の恋人」と、柔らかで冷たい、微かに獣くさい匂いのする「森のメリュジーヌ」が特に気に入った。逆に「母子像」「黄金街」は近親相

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    2025年12月03日
  • 軽いめまい

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    最近まで金井美恵子と言う名前は聞いたことが無かった。
    海外で評価が高く、ノーベル賞の候補に名前が有り、気になって初めて読みました。

    大きな出来事などは起きず、主婦の日常を描いている。
    読み進んでいると、だんだん面白くなってきました。

    ただ、正直ノーベル賞候補になっているのは良くわからないですね。

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    2025年11月30日
  • 軽いめまい

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    ずっと家にいて家のことをするというのは、究極は全く何もしないでいることもできるし、しようと思えば際限なくやることは出てきて、その曖昧さや途方もなさ、時間があるようでないような、ないようであるような「目まい」に思わず呆けてしまうあの感覚は実感としてわかる、と思った。

    本当に何気ない日常が淡々と描かれているのだが、読後感はTシャツが汗で肌に張り付くようにべったりとしていて、それが何とも言えず良かった。

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    2025年06月20日
  • タマや 新装版

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    ネタバレ

    猫は人間の言葉を使うことはできないが、どちらとも雄と雌がいなければ子どもを作れない。本作は人間と猫に焦点を当てるが、どちらも父親の所在がわからないが特徴である。

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    2025年03月31日
  • ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ

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    金井美恵子の小説を読むということは体験。 
    この小説も。
    そして、でもそれはよく言われる読書は間接体験だというのとは違う。
    もっと直接的に、読むこと自体が体験そのもの。

    読み進めるうちに、右へ曲がり、左へ曲がり、その回り道での細々としたできごとや回想を取り込みながら登場人物や物語の解像度が徐々に上がってゆく。

    微に入り細にわたり描写されるこの小説は、祖母や伯母、母の語る話にしても、父の話にしても、出て行った恋人の話にしても、つながり、繰り返す。
    たとえばわたしたちの頭の中で過去のできごとはふとした拍子に思い出され、その一つの記憶の細部から別の記憶へ、その細部からまた別の記憶へとつながって、

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    2025年03月22日
  • たのしい暮しの断片

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    「私たち」という主語が不思議な魅力を醸し出していて、それは文字通り姉と妹のことなのだけど、ときどきひとりの人間が分裂して二重にしゃべっているような感覚になって、面白い読書体験だった。今回の挿し絵(作品)は何かなとわくわくしてページをめくり、画面いっぱいに広がる色!に驚くのも毎回楽しみだった。

    おばあちゃんになったらこういう本を無限に読みながら暮らしたい。

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    2025年02月11日
  • シロかクロか、どちらにしてもトラ柄ではない

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    すごーく綺麗な本で、手にとるとシアワセな気持ちになる。ビジュアル本のようなしっかりした紙に、金井久美子さんの絵がたくさんのっている。エッセイと同じページにも挿入されているのが新鮮。いつもはがさつな速読派の私だが、ゆっくりじっくり至福の時間をすごしたのだった。

    あらためて、金井美恵子さんの文章が好きだなあとしみじみ思った。私も本当はこんな風に書きたいんだよなあなどと、恐れ多くも考えてしまう。思考の流れに乗って、ゆらゆらと続く、それでいてシャープな書き方。金井美恵子さん唯一無二の文体だ。この「天然生活」連載のエッセイは、切れ味鋭いところと、そこはかとなくオカシイところが混在していて、そこがとても

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    2023年04月03日
  • 砂の粒/孤独な場所で 金井美恵子自選短篇集

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    読んでいると頭がおかしくなりそうというか、
    時間や物質の関係性があやふやになり、酩酊状態になる。
    目の前文章と思考が矛盾をおこし、さらには「書かれていないこと」を読んでいるような錯覚にまで陥る。
    ほとんど初めての読書体験であった。

    メモ
    ・私には盲従的に自然を写し取ることはできない。自然を解釈し、それを絵の精神に服従させるようにせざるをえないのである。私の色調のあらゆる関係が見出されたとき、そこから生きた色彩の和音、音楽の作曲の場合と同じような調和が生まれてくるに相違ない。

    ・滑らかな色彩の流れ、視覚→嗅覚→触覚→想起という目まぐるしい運動

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    2023年02月19日
  • カストロの尻

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    ・正直この本を自分は理解できていない、と思う。それは読点の無い、余りにも長い一文の中で次々と思考の流れに沿って次々と展開していく流れに全然着いていけてなかった。これ誰の話?となるのも多々だった。
    ・それでもこの文章を読んでいるのは気持ち良かった。快感だった。
    ・いわゆる文章のリズムって物なのだろうか?読みにくい文章にまつわる嫌な気持ちが全然なかった
    ・本自体、物として美しい
    ・最後の方に使用紙銘柄を表記。最高。

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    2023年01月19日
  • 〈3.11〉はどう語られたか

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    『さよなら未来』の中で怪著と紹介され、気になっていた本が新たに出版されたので読みましたが、多くの引用と傍点になかなかのれないように感じつつ、なるほど怪著だ、と読み終えました。
    今、この当時よりも「言葉」の状況はより厳しくなっているように思うのですが、他人がどうかではなく、自身も「思い」の使い方などに気を付けなければ、と思いを新たにしたのでした。

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    2022年08月11日
  • 猫の一年

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    初めの方はとにかくサッカーのことしか書いていなく、ちょっと読むのが辛かった。
    途中からはいつも通り、面白く読めました。
    生活の変化のことは書かれていないんだけど、著者には馴染みのなかった筈の、テレビ的な言説(サッカー以外)が書かれるようになって、ああ、色々あったんだよなあ、と思いを巡らせる。
    しばらくテレビっ子だったから忘れていたけれど、本作のお陰?で少し距離を取れるようになったかなあ。

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    2019年08月18日
  • お勝手太平記

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    老嬢の手紙なのだからエネルギーに溢れている訳ではない筈なのに、なぜか読むとぐったりしてしまう。
    Kさんが著者の小説の中では、「なかなかもののわかっている」風なのに、去勢されていない感じがするのは何故だろう?
    アキコさんと結婚するには去勢されていては(夏之さん、中野勉など)無理だからかな。

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    2019年08月03日
  • たのしい暮しの断片

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    タイトルの「たのしい」は、てっきり金井美恵子一流の皮肉な言い回しだと思って読み出したら、意外や、これがほんとに結構ほのぼのした、生活のあれこれをマイルドに綴ったものだった。今度は何をバッサリ斬ってるかなと期待していたものだから、最初は、チェッつまんないの、なーんて思ってしまったが、さすがに金井美恵子、どんどんひきこまれて読み進めることになった。

    鋭い美意識の持ち主である金井姉妹だが、生活ぶりは意外に庶民的。もちろん、日常の生活用品は、その厳しいお眼鏡にかなったものとなるわけだけど、とにかく高級なものが良いというわけではなく、むしろ、バカ高いものには批判的で、そこがいい。また、雑なやり方は好ま

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    2019年04月05日
  • プラトン的恋愛

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    メタ的な着想を思わせる、日本では少し珍しい作家だと思った。私小説的でありながら、どことなくボルヘスを感じた。

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    2019年03月24日
  • 愛の生活・森のメリュジ-ヌ

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    2008年11月17日~18日。
     女性にしか書けないんじゃないか、といった印象を持った。美しくグロテスクで独りよがりでもあり、人を惹きつける。不在という存在。
    「兎」はそんじょそこらのホラー以上に怖い。

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    2018年01月06日
  • カストロの尻

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    ネタバレ

    小説と思って読み始めたら、金井さんらしい批評的なエッセイで、それもまたよしと思いつつ読み進めるといつの間にか小説になっており、形としてはエッセイに挟まれた短編集というところなのだが、エッセイとつながっている短編もひとつひとつが完全には終わらす、次へと続くという、まことに不思議な作品。金井美恵子は金井美恵子にしか書けない作品を完成させつつあるのかも。
    金井さんの小説を読むと、女たちの間で片手間に続いてきた手芸がたまらなく魅力的で、10才の少女と、妻子ある男と恋愛して別れさせられたということは多分二十歳は越えている女が、刺繍をしながら映画や男の話をするのが、とてもいい。
    また、銀幕の名にふさわしい

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    2017年08月18日
  • お勝手太平記

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    毒舌家というか、皮肉屋というか、ひとこと多い人というか・・・
    イヤミな初老の女性。
    こんな人とは友達付き合いできないなあ、でも、学生時代からのくされ縁みたいになってしまうのだろうと思いながら読んだ。
    辛辣で、批評も鋭いのだけれど。


    母親というのは、娘の相手を見るといつだって、もっと出来の良い青年が(いくらでも、とまではいわないけれど)いたはずだ、と考えてるような気がします。 127ページ

    大した用事でもなんでもないのに、なんか妙にアタフタと小忙しい日々が続くと、なにしろ、もう年が年ですから、そのあと反動で何もしないでぼうーっとしている日が何日か続くことになるわねえ(少し、オーヴァな言い

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    2015年05月26日
  • お勝手太平記

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    「手紙の吸血鬼」と化したアキコさんが日々書き続ける手紙たちで構成された小説。お手伝いさん、お友達、お友達の旦那さんなど相手は違えど内容はほとんど映画や小説、新聞の投書欄について、昔話などの雑談。あまり書くとネタバレになるけれど、結末は、あ、やっぱりそうだったんだっていう感じだった。でもそれをさみしいとかは思わなくて、年を取るってなんだかすごいなあと妙な感想を持ってしまった。タイトルから谷崎の「台所太平記」、著者の「恋愛太平記」を思いつくんだけど、たぶん「台所~」に近い感じ、で、「恋愛~」は四姉妹の長編小説だし「細雪」を彷彿とさせる。
    作中で何回か「瘋癲老人日記」のエピソードが出てきた。読み返し

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    2014年11月13日
  • ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ

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    時には数ページにも及ぶ長い文章だけれど、句読点がメトロノームのようにリズムよくかっちり打ってあるので流れるように楽しく読み進めるられた。しかし「私」がいつのまにか「わたし」「あたし」「僕」となり誰の話だか見事に迷う。思えば小さい頃は身近な人々と自分の境界など無かったなぁなどどふと思い出した。マッチ入れの陶器、貝殻のような耳に飾られる涙型の翡翠、ミモザのワンピース、結婚式に仕立てられたドレス、細部が緻密に執拗に描かれる。子どもの頃物を本当によく見ていた事もまた思い出された。父親不在の家庭だけれどやがて父親は手紙により姿を見せ、私の私生活や、隣りの若い旦那さんのエピソードと対になり重なっていく。同

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    2014年11月08日
  • ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ

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    金井美恵子の世界、というより金井美恵子の品格の見本市で、アア、金井美恵子はずっと変わらず金井美恵子だなァと思う(おもわされる)ところまでワンセットで金井美恵子でした。

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    2013年03月21日