あらすじ
「小説家の「幸福」」をめぐる考察、デイジーの刺繍をしたブラウス、岡上淑子によるフォト・コラージュ作品、謎めいた宿命の女、胡同(フートン)に咲き乱れるジャスミンの香り、金粉ショーのダンサーとの狂乱の恋、そして「塊」と「魂」。無数の映像や小説、夢や記憶の断片が繊細に絡み合い紡がれ、ここに前代未聞の物語が誕生した!
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Posted by ブクログ
・正直この本を自分は理解できていない、と思う。それは読点の無い、余りにも長い一文の中で次々と思考の流れに沿って次々と展開していく流れに全然着いていけてなかった。これ誰の話?となるのも多々だった。
・それでもこの文章を読んでいるのは気持ち良かった。快感だった。
・いわゆる文章のリズムって物なのだろうか?読みにくい文章にまつわる嫌な気持ちが全然なかった
・本自体、物として美しい
・最後の方に使用紙銘柄を表記。最高。
Posted by ブクログ
小説と思って読み始めたら、金井さんらしい批評的なエッセイで、それもまたよしと思いつつ読み進めるといつの間にか小説になっており、形としてはエッセイに挟まれた短編集というところなのだが、エッセイとつながっている短編もひとつひとつが完全には終わらす、次へと続くという、まことに不思議な作品。金井美恵子は金井美恵子にしか書けない作品を完成させつつあるのかも。
金井さんの小説を読むと、女たちの間で片手間に続いてきた手芸がたまらなく魅力的で、10才の少女と、妻子ある男と恋愛して別れさせられたということは多分二十歳は越えている女が、刺繍をしながら映画や男の話をするのが、とてもいい。
また、銀幕の名にふさわしい、映画の数々、とりわけべティ・デイヴィスの話は、私はこの映画はみていないが、べティ・デイヴィスのあの大きな白目勝ちの目や、小さく薄いへの字形の、くっきりと口紅の引かれた唇が作り出す表情が、目に浮かんで、殆ど映画を見たような気持ちになる。
映画館の入り口に貼られたスチール写真、海辺の近くの家で過ごす単調な毎日、チャイナドレスの妖艶、サーカスのうらぶれた様子。
幼い頃から無意識に、ときには意識的に取り込んだものが、血と肉となり、何十年もかけて、こういう文章ができるので、そこいらのペラペラの情報を適当に継ぎ接ぎしてできたものとは比較にならない。
まさに、読むことでしか得られない喜びがある。
金井美恵子の文章を読みにくいという人もいるが、私は30年くらい読んで、一度も読みにくいと思ったことはない。
まあ、()の中の文章が長い上に魅力的で、つい()の前の文章を忘れてしまい、読み直すということはあるのだが。
幸せな時間が過ごせた。
久美子さんによる装丁もとても美しい。巻末に使った紙の種類と量が記されていて、これ、増刷するのも大変だろうなと思った。
赤は褪せやすいからカバーは外さず、暗いところで保管したい。
Posted by ブクログ
金井美恵子さんの、長い長い文のリズムが好きで、それが気持ちよくて、読んでいる気がする。
特に小説は、中身より文体が好きで、それから内容という順序。そんな作家は私には他にいない。
毒舌ぶり、人間観察の鋭さも好き。
それらはエッセイの方がより直接的なのでエッセイも好き。
その2つが組み合わさったこの作品。
もっと楽しめれば良かったのだが、ちょっと私の集中力が弱まっているのか、あるいはちょっとよくわからないところもどんどん飛ばして読んで行くいつもの元気さがなかったのか、何度読んでもわからないところがあり、いつもの心地よさより、難儀さ、自分のバカさを感じた。