朽木祥のレビュー一覧
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繁内理恵さんの『戦争と児童文学』でくわしく紹介されていて、まだ読んだことがなかったので。
さまざまなバージョンがあるようなのだけど、単行本に2編足したこちらの電子版を読みました。
その日に起きることはだれもが知っているけれど、そこにはひとりひとりの事情があり、状況があり、けれどもそれがすべて「○十万人」という数字で述べられるだけの圧倒的な暴力の前になぎ倒されていく。すさまじいことだ。
生きのこった者がまるで加害者のように自分を責め続ける「水の緘黙」がいちばん胸に迫ってきて何度も涙がこみあげた。
「あなたでも私でもよかった。焼かれて死んだのも、鼻をもがれたのも、石に焼きつけられたのも。あなたでも、私でもあった。死ぬのは誰でもかまわなかった」
「だからこそ、あの日を記憶しておかなければと思うのです。あの日を知らない人たちが、私達の記憶を自分のものとして分かち持てるように」
「サバイバーズ・ギルト」は、『アリとダンテ~』にも描かれていた。あちらはベトナム戦争。悲惨しかうまない。 -
Posted by ブクログ
以前からお友だちに勧められ、いつか読もうよもうと思いながら、ようやく読む機会が到来しました。
こんな素敵な作品を、スルーしなくて良かった!!!!!
ひとりぼっちの河童八寸と、お母さんをなくしたさみしさを、父の手前うまく表現できずにいる女の子麻。
麻はお母さんからもらった愛でできている、とっても素敵な女の子。何が大切なのかたぶん誰よりも知っているけど、そのことを麻自身はまだきづいていないね。
八寸は、家族がある日消えてしまい、その帰りを信じて待っている、たった8歳のこども河童。沼で生き残っていくために、猫の姿になって人間の世界に修行に出された。
この2人の出会いの前に、情けない顔のラブラドール犬、チェスタトンがいる。盲導犬訓練を失格した犬だ。麻のお母さんが引き取って家族にした。
この3にん?はみんな傷ついたことがある。だからこそ、人にやさしく、この子たちのものがたりは心が輝いて見える。
素敵なシチュエーションが沢山ありますね、
まずは、長老から貰った球の魔法の力を蓄えるため、夜、一人月光を浴びる小さな猫の姿の八寸。
お母さんとのノート。
お母さんの好きな言葉たち。
とくにすきなのが、ロミオとジュリエットからのこのセリフ
「名前っていったい何なのでしょう?みんなが薔薇と呼ぶあの花がたとえほかの名前で呼ばれてもその香しさに変わりはないはず。」
ノートに綴られたキーツの詩も素敵。
お話も可愛らしいくて面白いのですが、小さなエピソードがどれもきらきらとしていて、愛おしい。
〔すきとおったほんとうのたべもの〕を頂いている気分でした。賢治の世界観そのものです☺️ -
Posted by ブクログ
5年教科書掲載本
恥ずかしながら、「被爆」と「被曝」の違いを知りませんでした。
ヒロシマ、そして原爆のことだけでなく、戦争そのものについても書かれていたので、一人でも多くの人に読んでほしい本。
息子を特攻で失くした母親から、息子が好きだった女性の娘さんへの手紙ー
「どうか、あなたたちの世代が生きる世界が平和でありますように。自由な心を縛る愚かな思想が、二度と再びこの世界に紛れこみませんように。健やかに成長され、生を全うされますように。」
そして、ホロコーストの研究者たちが訴え続けているという言葉ー
「加害者になるな。犠牲者になるな。そしてなによりも傍観者になるな」
自分にも周りにも言い続けたい。 -
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ネタバレ鎌倉を舞台にした歴史がらみのファンタジー。
鎌倉ならあり得るかもと思わせてくれる。
代々伝わる古い屋敷での親元を離れた夏休み、と大枠は非常に古典的。というか、あちらの世界との行き来や導き手である謎の白猫も含めて、舞台設定は全体的に古典的かもしれない。でも、何か心をつかまれて、最後のほうは一気に読んだ。
謎に迫っていく過程もかなりぐるぐるしていて、けっして鮮やかとはいえないし、大おじさんがいろいろ知ってそうなら、もっと早くきいてみればいいのに、なんて言いたくもなったけれど、夢か幻のようなことを正面切って訊くには、それなりの人間関係ができなくてはならない。バカにしないで話を聴いてくれる人だという信頼感がなくては、踏みこんだ話なんかできないのだ。そこらへんの機微が、大おじさんのちょっとした言動をあちこちにちりばめてちゃんと描かれているのがいい。
あと、静音のママ、夏子さん。大人である夏子さんがすんなり冒険の仲間に加わったのは、子どものころ冒険が途中で途切れてしまったからなんだろう。だから歳を重ね、一児の母になってはいても、夏子さんの心のなかには、子どものままストップしているところがある。それがタイムスリップで喪の儀式を経たことで少しだけ解凍されたのかもしれない。大人のかかえる問題をきっちり描いた児童書って実は好き。大人視点の読み方なのかもしれないけど。
夏子さんの冒険が途中で終わってしまったのは、当時仲よしで、あこがれの人でもあった27代兵吾(兄弟の伯父にあたる人)が、謎を解きあかす直前に海で命を落としてしまったから。そこらへん、何も書かれてはいないけど、ファンタジーの世界に足を突っこむことの危険性を暗示しているような気もする。大おじさんの奧さんも早く亡くなっているし、土蔵も焼け落ちているし、じつはこの家、いろいろと不幸に襲われている。その昔、古井戸に落ちた十代ぐらい前の主税だって、見つけてもらわなければどうなったかわからないのだし。だから、この兄弟が無事に謎を解くことができたのは、ほんとうによかった。
さいごに瑠璃(ラピスラズリの画像を検索してしまった)を井戸に投げこんだときの、華々しいフィナーレ感と、そのあとの寂しさ。瑠璃が手元に残らないからよけいに寂しいのだけど、お兄ちゃんの兵吾が何もかも書きとめてくれたからよかったね。亡くなった兵吾も記録者だったし、この兄弟はそういう役割分担なのだなあと。書きとめることで、冒険が、子ども時代のただのまぼろしではなく、この家の歴史として、また彼らの人生の1ページとして記録される。
そんなこんなを積み重ねたあとのエピローグが美しくて、涙が出た。いい物語でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ亡くなった方を「悼む」とはその人のことをいつまでも忘れずに、ずっと心に想い、伝えていくということ。
この本は、中学生の主人公の希未(のぞみ)とともに、あの日ヒロシマで無残に命を奪われた無辜の民(天災を受けた罪のない人々)に想いを馳せる物語です。
美術部員として、あの日の記憶を作品に込め語り継いでいこうとする希未は、あまりの悲惨さに口をつぐみ、心を閉ざした周囲の被爆者の声にふれることになります。
献辞文の「世界中の小山ひとみさん」とは、ある日突然、大切な我が子を失くしてしまった世界中のお母さん達のこと。そのやり場のない悲しみと一生癒されることのない悲しみを想うと涙が止まらなくなります。