朽木祥のレビュー一覧
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朽木さん、またヒロシマの本を書かれたのだな、と思い手にとる。
前読んだのはその当日のおはなしだったが、
今回はあれから25年。
被爆2世の時代のはなし。
希未は毎年の行事である灯篭流しの夜、1人の老婦人に声をかけられる。
あの日、多くの人が、一瞬で消えた。
誰かを探している人が広島にはたくさんいるから、という言葉。
お墓参りでみかけた美術の先生。
いつものように起きて、ご飯を食べて、学校に行って、家族のいる家に帰る。そんなあたりまえの日常が、ある日突然途切れてしまった人たちが
自分のすぐそばにいるのだと、気がついた希未たち。
平和学習として、知識として知るんじゃなくて、実感としてあの出来事を -
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かわたれ は鎌倉郊外の散在ガ池に住む河童と人間の少女 麻 の物語でしたが、こちらは続編で、4年後の物語です。
かわたれで知ることになったみんなに再会できて、その後を知ることが出来て幸せな気持ちになれるのは、やはり、よく出来た物語であることの証明です。
前作で、河童の男の子に魅力にまいった人たちには、文句なしのお奨めです。といっても、これは蛇足で、そのような人たちはとっくに読まれていることでしょう。
さらに、蛇足ながら、私たちが深い山の中に静かに佇む巨木を見上げて感じるあの独特の感覚、、「神秘的なもの、神々しいもの」を、存分に味わうことが出来ます。 -
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前巻が「絵」なら今回は「音楽」がキーワード。八寸が家族と出会えて、ひとりぼっちの寂しさが埋められて、ほっとしながら読みはじめた。前巻よりも少し大きなテーマで対象年齢も少し上かもしれない。
戦争の話が色濃くて、大空襲の話は胸が苦しくなる。作者が被爆2世だということを知ってしまっていたから、広島の原爆のことも重なって読めて、余計に苦しい気持ちになった。銀色の河童が本当に繊細で美しくて、帰ってこない人を待ち続けるのが切ない。
音楽や絵や物語の持つ力の素晴らしさを謳いあげる本でもあった。本当に辛くて心に何も入りこむ隙間がなくても、いつかふとした時にすべりこむ。終章のその場面を泣きながら読んだ。
私自身 -
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「かはたれ」と「たそかれ」。
似た言葉をタイトルに持つ『かはたれ』と『たそかれ』は、
1冊1冊で完成しているが、
『かはたれ』のストーリーを『たそかれ』が補完する形になっており、
『たそかれ』まで続けて読むと、
『かはたれ』で起こっていた出来事の意味がよりわかる、
という構成になっている。
著者が広島出身の被爆二世であることもあり、
戦争について描いているところが『たそかれ』独自の特徴である。
本書は、学校のプールで
いつまでも誰かを待ち続けている様子の河童・不知の物語。
『かはたれ』に続いて、八寸と麻も登場する。
『かはたれ』から4年の月日が過ぎていた。
八寸が今回与えられた使命 -
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ホロコーストと、広島の原爆と、福島の津波・原発事故とをリンクさせている物語。
現代の子が、親族から聞く形で戦争、核、人権などを考えていき、違和感なく読むことができそうです。
物語の設定がしっかりしていて、違和感なく、この3つの重大な災害を大雑把に捉えられるように思います。
小学校高学年から読めると思いますが、内容が重いので、中学、高校、大人でも読むと気づく事が変わるかもしれません。
厚みのある本で内容もあるので、これが読める児童には勧めていきたいと思いました。
事実を物語に落とし込み執筆する中で、はまる沼が2つあると著者あとがきにあります。
「文献沼」そして。「推敲沼」。
ホロコーストや -
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主人公の光・S・エレオノーラ(エリー)は、広島出身の日本人の父とイタリア人の母を持つ。
エリーは、母の実家である、エレナおばあちゃんがいるイタリアにしばらく滞在し、そこで、おばあちゃんの子供の頃あったこと、とりわけ、おばあちゃんのお兄さんであるパウロの話を聞く。
エリーがそれまでほとんど何も知らなかった、イタリアでの、ナチスによるユダヤ人虐殺、イタリア人同士のファシスト政権と、それに抵抗する一般市民らパルチザンによる攻防戦の話だ。パウロはパルチザンの一員だった。パウロは捕まり、母が差し入れた1つのパンに、自身の血である文字を書いた後、処刑された。そのパンは、カチカチになって緑色のサテ -
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『かはたれ』の八寸にまた会えると思って、はやる気持ちを抑えながら読み始めました。八寸がまた麻やチェスタトンと再会出来ると思ってなかったので、それだけで心はハッピーに。
『かはたれ』と比べて、挿絵のインパクトが少ないのが残念だったけれど、登場人物のその後がわかり、みんなが幸せになっていく様子がわかり大満足です。
とても心に響いた河井くんの言葉…
〈人の心が悲しみや苦しみでいっぱいになってしまうと、音楽や絵や物語の入り込む余地はなくなってしまう。だけど、心がそのまま凍ってしまうわけではない。人の心の深いところには、不思議な力があるからだ。何かの拍子に、悲しみや苦しみのひとつが席をはずすと、た