田辺聖子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
田辺聖子さん初体験
何で今まで読んで無かったんかなぁっと後悔。でもきっと今やから色々共感できるんやろうな、と自分でうんうんと納得したりもする。
ご飯をちゃんと作って食べる、と言う事は丁寧に暮らすという事に繋がる気がする。
朝ご飯に和食を好む律とそれを苦にせず作る野百合さんがとても微笑ましかった。
早く起きて、朝ゆっくりするというのは生活を豊かにしてくれる気がする。
難しい話が面倒くさい男。
自分が蔑ろにされている気がして、細かなこと(実際細かいことではなく、大事なことも多い)が気になる女。
其々の特性が上手く描かれていて、自然と野百合さんを応援してしまう。
女は男のちょっとした一言で決めてしまうところがある。そこに留まるか、去るか。
まさに女心と秋の空。 -
Posted by ブクログ
田辺聖子の戦中日記が見つかったと発表されたのは、2021年6月のこと。遺族が田辺の家の片づけをしているときに発見された。日記は田辺が17歳になったばかりの1945年4月1日から始まり、樟蔭女子専門学校を卒業する47年3月10日までの日々を綴る。日記の一部は、その年、文藝春秋の7月号で公開された。日記中に記載された未発表短編・中編小説とともに、日記全文を書籍化したのが本書である。
樟蔭は美しい学校だったという。だが、田辺が意気揚々と入学したその校舎で勉強できたのは1年足らず。1年生の正月明けには学徒動員が始まり、郡是(現グンゼ)の工場で飛行機の部品を作る作業に従事することになる。やがて大阪は大規模な空襲にたびたび見舞われ、6月、写真館であった田辺の家も焼かれる。そして8月の終戦。ハイカラで鷹揚だった父は、戦時中のストレスもあったのか、病に倒れ、その年の暮れに亡くなる。住まいを転々とし、食べる物も満足にない中、一家は必死に暮らしをつなぎ、田辺はなんとか卒業まで漕ぎつける。その後は、文学への夢を抱きつつ、ひとまず、家のため、事務員として就職するのだ。
そんな日々である。
非常に大変だっただろうとは思うのだが、日記は全体としては闊達で若さを感じさせる。
学校でのちょっとした出来事、父や母への思春期らしい反発や不満、親戚や近所の人への冷静な観察眼、そして若者らしいまっすぐな希望とその裏返しの不安。
当時、田辺が通った国文科というのは花形で、優等生が行く学科だったらしい。国文学を学ぶことへの強い自負心が滲む。田辺は相当に努力家かつ優秀であり、クラスの首席になったことも綴られる。そのうれしさを記すと同時に、それを喜ぶ自分を外から冷ややかに見ているもう1人も自分もいて、後に作家となる「目」はもう宿っていたのだなと思わせる。
この箇所だけではなく、全体に観察眼の鋭さをうかがわせる記述は多く、疎開させた荷物や食料を勝手に使ったり消費したりしてしまう親戚への辛辣さはなかなかのものだ。思春期の潔癖さに留まらない洞察を感じさせる。
屈託もあり、懊悩もある。少女は、自分は小説家になれるだろうかとまだ見ぬ未来を憂う。
しかし、彼女は決めるのだ。勉強を続けて小説を書こうと。
あらゆる真実と誠意と純情をこめて、私は果てしれぬあこがれへ、心を飛揚させる。何かしら漠々とした、とりとめのない楽しさが待っていそうな翌、二十歳の年・・・・・・。
若さが持つ、この輝かしさ!
日々の細々とした出来事も興味深いが、とりわけ印象的なのは、家が焼けたその日、終戦の日、父が亡くなった日である。
空襲の日、田辺は学校にいた。普段は鉄道で通っていたが、空襲のためにあちこち不通となっている。仕方なく途中からは歩いて帰る。
第百生命は全滅だ。きれに中が抜けている。閉じたガラス窓からプゥーと黒煙がふき出している。
電柱が燃えきれず、さながら花火のごとく火花を散らしている。
熱気のため、かげろうのようなものがゆらゆらと焼けあとにこめている
焼けたところばかりではなく、まったく安全で空襲を受けた様子もない地区もある。不安と安堵を行ったり来たりしながら、歩を進める。だが田辺の家は燃えていた。迎えた父と母の様子。自分の受け答え。周囲の有様。
自身、大きなショックを受けながらも、観察眼は曇ることはなかったのだ。
終戦の日の記述はいささか仰々しい。
他の箇所とは文体も異なり、漢語が多用され、悲憤慷慨いかばかりといった風である。敗戦を嘆く短歌が十数首並ぶ。
軍国少女だったというその片鱗が窺える。しかし、その心情に嘘はなかったのだろうが、それが生来の気質なのかというと、少々違うような印象を受ける。いや、生まれつきの軍国少女ってどんなのだよ、と聞かれるとよくわからないのだが、やはり元から神国日本等と思っていたというより、周囲の空気に流されているように見えるのだ。まっすぐで純な若さを絡めとってしまう「空気」って何なのだろうなと考えさせられる。
日記に含まれていた小説の中では、無題の中編(未完)が抜群におもしろい。学園物の群像劇で、田辺の級友たち(自身を含む)がモデルとなっているのだろうが、人物が描き分けられ、それぞれ生き生きと作中を跳ね回っている。実体験を再構成したようなエピソードも起伏に富んでおもしろい。
日記の中では、国文学をもっと研究したいというような記述もあるのだが、やはりこの人は生活者の視点からの小説を書く天性の才があったのではないか。
全体に丁寧な編集。適宜、文中に編集者による注が入り、時代背景への理解を深める。梯久美子の解説付き。年譜もおもしろく読んだが、古典に関する著作への言及がもう少しあってもよいのではないかと思った。 -
購入済み
久しぶり
田辺さんの作品を久しぶりに読みました。20代にマイブームだったのですが、何だか若い頃のいろいろを思いだし、可笑しく、切なくもなりました。面白かったです。