田辺聖子のレビュー一覧
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田辺聖子さんの古典入門書。
古典の紹介も素敵だが、これが1970年代の本?今年出版された本と言われても違和感ないです。
男と女、生死、出会いと別れ、仕事、感情。古典も、1970年代も現代(2026年)も、人はさほどに変わらず、悩み続けて生きているんだな、と思います。
そして、平易な文章で、作者の視線は時に柔らく、時に鋭く。名文ですよね。
解説にもありましたが、作者が、古文や短歌、俳句が好きなことが伝わってきますし、清少納言の幼い子供の描写から、子供がいなかったのでは、と推察するくだりなど、唸りました。
高校レベル(赤点とらないくらい)の古文の素養があると、読みやすいと思います。 -
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戦後間もない鎌倉を舞台に 空襲を逃れて家を守った祖母が、娘や孫たちに『源氏物語』を語り聞かせる。吉屋信子『乙女のための源氏物語』は、昭和26年から29年まで『婦人倶楽部』に連載された『源氏物語―わが祖母の教え給し』をもとにした作品なのです。
作中で祖母は、江戸時代の代表的な注釈書である『湖月抄』を手に取りながら『源氏物語』を語ります。
『源氏物語』の近代語訳といえば、まず思い浮かぶのが与謝野晶子、続いて谷崎潤一郎訳。
晶子訳や谷崎訳にも親しんでいたであろうことは想像に難くないですね。
しかし本作は現代語訳というより、祖母から娘や孫へと古典が語りつぐ、いわば、おばあちゃまによるオーディブル版『源氏物語』。
聴き手として娘や孫、社会人女性たちを配し、それぞれの世代に通じる物語として『源氏物語』が語られていきます。
濃厚な内容を持ちながら端的にまとめ上げられており、現代語訳と意訳の長所を合わせて持っていると思います。
政治的な背景や宮廷社会の細かな駆け引きはやや簡略化されている印象を受けます。しかしその一方で、光源氏を取り巻く女性たちの心情に寄り添っており、その描写は他の源氏物語関連作品以上に丁寧に感じられました。
何か連載上の事情があったのか、あるいは他作品の執筆との兼ね合いだったのか、下巻では二帖をまとめて扱う箇所が増えます。さらに宇治十帖は、おばあちゃまの手を離れ、孫が語り手となる総集編のような形で締めくくられます。
解説を担当しているのは、吉屋信子の熱心な愛読者でもあった田辺聖子さん。「明快さと気品の現代語訳」として本作を高く評価しています。
その田辺さんは吉屋信子を「ロマンを歌い上げたソプラノ作家」と評しています。
この表現に私はとても共感します。実は私も、作家ごとの文章に音階のようなものを感じることがあります。田辺聖子さんや柚木麻子さんの文章は、まさにソプラノ。時には高音が響きすぎて少々圧倒されることもあります。
吉屋信子さんもまた、その系譜に連なる作家なのかもしれません。 -
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本日7月11日は 吉屋信子文学忌、信子忌。
『乙女のための源氏物語』上下巻を読み終えましたので、作品の感想は下巻のレビューに譲り、今回は上巻に寄せて、吉屋信子ゆかりの地を訪ねた栃木文学散歩を ご紹介します。
まずは栃木駅に集合。参加者は皆それぞれの方法で現地入りしましたが、意外にも栃木駅を訪れるのは全員が初めてでした。
最初に向かいましたのは駅前北口広場に建つ山本有三文学碑。「路傍の石」の一節が刻まれています。
続いて湊町ポケットパークの吉屋信子文学碑へ。吉屋信子は父親の転勤に伴い、六歳から十九歳までを栃木で過ごしました。文学碑はかつての住居跡ではなく、巴波川のほとりに設けられた小さな公園にあります。信子が見たであろう川辺の風景を思いながら立ち寄りました。
その後は山本有三ふるさと記念館へ。山本有三生誕の地に建てられた見世蔵を活用した施設で、見学の後には近くのお寺へお墓参りもさせていただきました。
昼食は赤城亭。群馬県前橋市の本店は萩原朔太郎ゆかりの洋食店として知られています。手の込んだコース料理をいただきました♪
午後は栃木市立文学館へ。旧栃木町役場庁舎を活用した趣のある建物で、今回は山本有三、吉屋信子、柴田トヨの三人を取り上げた展示が行われていました。係員の方による解説付きで、地域ゆかりの文学者たちへの理解を深めることができました。
続いて隣接する栃木市立美術館で開催中の中原淳一展を見学。吉屋信子作品の装丁や『少女の友』の表紙など、ご親族が保管していたという貴重な原画が数多く展示されていました。その時代の少女たちに与えた影響の大きさと、中原淳一の仕事の質の高さに改めて驚かされます。
こうして振り返ると盛りだくさんの一日でしたが、参加者は皆それなりの年齢層。無理なく歩ける行程で、実際の移動距離はそれほど長くありませんでした。
観光案内図を見ると、まだ訪ねていない見どころも数多く残されています。駅前は土地区画整理を終えたばかりという印象で、これから観光にも力を入れていこうという雰囲気が感じられました。平坦な土地で川沿いをゆっくり歩くことができ、文学散歩にはとても心地よい街でした。
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本日は 田辺聖子さんの ご命日でもあります。
最近では おせい忌として認知されつつあるようです。
「お茶が熱くてのめません」
人気が出始めた脚本家の女性のところへ、かつての恋人がきちんとアポを取って七年ぶりに訪ねてくる。
再会した彼は、昔と同じように頼りなさはあるものの、女はまだ情が残っていて、必要ならお金くらい貸してもいい、そう思ってしまう程度には、過去を許している。
しかし、男の“本当の用件” 、自分の人生経験を原作として買い取ってほしいという依頼を聞いた瞬間、女の心は遠のく。
あまりに自然で、あまりにリアルな文章。
「うすうす知ってた」
父の死後、母と娘ふたりだけになった家族。
物語は姉の視点で進み、妹との距離や関係の変化が、説明しすぎることなく、ごく自然に語られていく。
家族というのは、互いの秘密も弱さも、言葉にしなくても “うすうす知っていた” のだと気づく
「恋の棺」
叔母と甥の恋。
惹かれあっていたのはわかっていた。
一度だけの関係を棺に収める。
「それだけのこと」
夫とは、気の置けない“相棒”のような関係。
彼の一人遊びだって許せるし、そこに不安もない。
そんな妻が、趣味を仕事にした先で出会った若い男の子に、ふと心をゆるしてしまう。
デートめいた行動もしてみる。
それは決して生活を揺るがすような恋ではない。
ただ、それだけのこと。
「荷造りはもうすませて」
結婚して10年。
夫は、子どもを実家に残している再婚者。
時おり彼は実家へ戻り、用事をこなして、その日のうちに帰ってくる。
夫との生活は楽しい。
が、離婚した元の妻が “実家に戻った” ことで、
自分の居場所がいつの間にか別宅のように感じられてしまう。
十年の月日を積み重ねても、
子ども、という壁の前では揺らいでしまう女。
うまいなあ、聖子さん。
「いけどられて」
若い女に子どもができ、折り合いの良かった妻と別れてその元へ向かう男。
自分が選んだ道なのに、
最後まで元妻に甘えようとするその未練がましさ。どこか不憫でもあるけれど、
正々と不幸になれ。
「ジョゼと虎と魚たち」
この短編集を選んだのは、表題作を読みたかったから。
2003年に実写映画化、2021年にはアニメ映画化もされ、どちらも観ている。
そして、どちらも名作だと思う。
驚いたのは、普通なら映画化で原作をギュッと凝縮しそうなところ
むしろ“世界を広げて”見せていたことだった。
これだけの短編と知って少し意外に思いました。
けれど、短編だからこその余白と余韻はさすが。
「男たちはマフィンが嫌い」
手作りマフィンは食べない男達。
結局は、女の気持ちをわからんのかな。
待つのをやめて、若い男の子と他の世界へ。
「雪の降るまで」
あくまでひとりで生き抜く力のある女性を
それでも女性であることを基調とした生き方で描く総集編的一作だと思います。
先日の柚木麻子さんの講演でも 田辺聖子さんに触れていました。吉屋信子さんの作品が大好きだった田辺聖子さん。このお三方の小説に出てくる女性たちは 元気という言葉では しっくりこないのだけれど 自分が進みたい方向がわかっているというような。女性であることを否定しないで一人で立っていられるような女性を書いているような気がしてます。 -
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ネタバレあー、、なんかこの温度感、、!!!
「こういう男、いるよなあ」とか、「こういう時こういう態度とるんだよなあ」とか。
過去の恋愛が浮かんできたり、こなかったり。
大人の恋愛って、相手との戦いというより、“俯瞰で見ている自分”との戦いなんだなと思う。
本当はどうしたいかより、「こんな女ではいたくない」とか、「これ言ったらダサいよな」とか、そういう余裕のある良い女でいたい自意識との葛藤。
恋愛なんてそもそもフェアじゃないのに、どこかで“フェアでいよう”としてしまう苦しさもある。
頭で考えたら、美々より私の方がいいって思える理由なんていくつもあるのに、理由があればあるほど切なくなるし、
でも結局、本人もそんなおバカな美々を自分も愛してしまって、最後は助けてしまうのが、乃里子は良い女たる所以だと思った。 -
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ネタバレ「人に知られね女盗賊」
「茸刈」「平中の恋」「雨宿りで逢った少女」
「受領と平茸」「くぐつ目代」「生霊の女」
「猿の気ばたらき」「思慮ある武士」「初午の女」
「女とハレモノ」「唐櫃の僧」「さらわれた姫君」
「鉾の女」「百万長者になる法」「大力の女」
「猫怖じの男」「美女の引き出物」「鬼とお后」
「海からの土産物」「ほととぎすの女」
「船をかつぐ女」「瓜と爺さん」「玉とり狐」
「赤子を食う鬼」「捨てられた妻」「すももの宴」
「美女ありき」「蛇髪の妻」
読みやすくて良かった(笑)『平中の恋』など読んだことがあるのも多かったな。 本当はもっとたくさん物語があるんだよね。全部読んでみたい(笑)古語は無理なんで現代語に訳されたヤツで(笑)