田辺聖子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「欲しがりません 勝つまでは」
このスローガンのもとに国や軍部から何もかも我慢させられた戦時下の銃後の女性や子供達。
13才の夢見がちな文学少女が、なぜ軍国少女になっていったのか。
田辺聖子さんが13~17才、女学校時代の戦争体験を綴った自伝小説。
戦争の話だけど明るいタッチで描かれ、戦局が悪くなるまでは戦時中でも女学校の友達と小説や回覧雑誌を書いたりと青春を楽しむ姿がリアルに描かれています。
その時々の読んだ本や作家に感化されて12作の小説を書いているのと、そのジャンルも冒険ものやスパイ、海賊、海外を舞台にしたものなど多岐にわたりスケールの大きさとクオリティの高さには驚かされた。
本書でも -
Posted by ブクログ
ネタバレ田辺聖子の恋愛小説、読んでると胸がキュンキュン、温かい方向と悲しい方向でするから、感情がジェットコースターなんだって…!わかるうううってなって大体ハア…ってなって、こちらもちびちびとしか読み進められませんでした笑。
どれも好きだった(し悲しくなった)けど、やっぱり選ぶなら「ひなげしの家」かなあ。中年に入って、妻帯者のまま、別の女性(主人公の叔母)と暮らし始め、その二人に社会規範を押し付けず、ただ自分が受け取るままに「いいなあ」と思い、恋愛相手に阿ったりしている主人公ちゃんが等身大で好きだった。そうして最後、「心配しないで。あたしもあとからすぐいくわよ。二人一しょよ。怖がらないで」と言った叔母 -
Posted by ブクログ
ラブロマンスになりきれない男と女の短編集。
田辺さん作品ならではの、さらりと読みやすい大阪弁の文章が心地よい。以前読んだ乃里子三部作にも出てきた、妙ちくりんだけどやさしくて憎めない男たちが今作も盛りだくさん。寄りかかるのは良いけれど依存するのはまっぴらごめん、と地に足つけてどこへでも行ける女たちの生き様が、自分の価値観にぴたっとはまって清々しい気分になる。特に、表題作の『ジョゼと虎と魚たち』と『荷造りはもうすませて』が好きで、後者の「不機嫌というのはひとつきりしかない椅子で、片方が先に座ったらもう片方は立っておかなきゃいけない椅子とり遊びなのよ」という考えは、常に心に留めていたいと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ田辺聖子さんの作品を読むのはめちゃくちゃ久しぶり。
高校生の時、古典対策(飽くまで試験用)に源氏物語の現代語訳を読んで以来。
そして今回のこの作品、初出は1979年だそう。でも古さを感じさせない!というか舞台が古いしね。
なお田辺聖子さんは2019年に91歳で逝去されました。
・・・
本作、一言で言うと、裏表紙側の帯にある通り、『和製シンデレラ・ストーリー』。
天皇の血筋なのに、母親に早くに死なれ、父親の連れ子として継母にきつく当たられる「おちくぼ姫」。唯一の味方は乳きょうだい(乳母の子ども)で、その子も身分は高くないため継母のおちくぼ姫への攻撃をかばいきれない。
その中で、ふとした -
Posted by ブクログ
ネタバレもう、自分勝手な振る舞いをする男どもの、自分勝手な言い分を読んでは怒髪天。
例えば女三の宮に対する源氏の冷淡な態度も、彼に言わせれば、幼稚で面白みのない女だから興ざめだ、と。
「そこをなんとか、教え導いてやってくれ」と朱雀院に頼まれたのに、ほったらかし。
だけど女三の宮が離れていこうとすると、引きとめる。
柏木の女三の宮に対する態度はもっとひどい。
無理やり押し入って思いを遂げたくせに、「わたしをそうさせたあなたが悪いのです」と人のせいにする。
結局二人の自己中に振り回された彼女は、若い身空で出家をせざるを得なくなる。
脳内で、大和和紀の描いた美しい顔で、ゲスなことをやってのける。
でも -
Posted by ブクログ
ネタバレしみじみと、平安の世に生まれなくてよかったと思う。
ルッキズムの最たる時代なので、どんなに性格が良くて才能があっても、花散里のような女性を最後まで大事にするのは源氏くらいだ、と言われるし、美貌に恵まれ後ろ盾が盤石であろうとも、玉鬘のように自分の意志に反した人生を強要される。
それがまた、男どもは「あなたのため」を連発するんだからな。
「あなたのため」というのは呪いの言葉だと私は思っている。
今は意に反していても「あなたのため」を思っている私が選んだ未来に間違いはないのだから、「言うことを聞け」と。
しかし「あなたのため」は、言っている本人の「自分のため」のことばなのだ。
そして何かというと -
Posted by ブクログ
乃里子三部作がすごく好きだったんだけど、それ以降何を読んだらいいかわからなかった田辺聖子作品、島本理生セレクトなんて絶対面白いじゃん!と読んでみた。
軽快でご機嫌な関西弁がどの作品も心地いい。
あと登場人物がいい意味でふてぶてしく、六十過ぎてからこそ人間はまともになるとうそぶいて、「精神力」で若々しさを維持し、さっぱりした恋をしていたりして、頼もしい。わたしなんてまだまだ!と背筋を伸ばす気になる。
エッセイで「このニッポンにあるのは、男と女のオトナの世界ではなく、お袋と息子の親子の世界がすべての心情を支配している。」「男と女が対立し、いがみ合い、仲直りし、理解し合うという、オトナの基盤がない -
Posted by ブクログ
確固として存在する現実の生活の中に、柔らかく生々しく自分の内に秘める欲望や哲学が、様々な表情を伴って顔をのぞかせる小説。
現実と欲望を対置することによって、読者は物語世界に引き込まれる。主人公の欲望の正体を見たいと思ってしまう。恐れよりも好奇心が勝って暴きたいと思ってしまう。
曖昧さやぎこちなさや気まずさといったものがたち現れても、最後にやはり「自分」が残る。
それぞれのお話でもちろん「自分」の残り方は違う。逢瀬を経たり、別れの準備をしたり、身体を重ねたり、言葉を交わしたりする中で、「自分」は変わったり変わりそうで変わらなかったりする。
越境や交差。そのぎりぎり、スレスレのところで「自 -
Posted by ブクログ
ずっと読みたいと思っていた作品、ようやく。
田辺聖子の描く、静かに何かを悟っている大人の女性像が本当に素敵。
男は女が何を悟っているのかに気付けない。
秘すれば花。
この小説に登場するのは男が中心の生活を送る女性では無く、生活や仕事に向き合って手慰みのように男と遊ぶような女性ばかり、その余裕っぷりたるや。
別にあんたが居なくても生きていけるのよ、と男たちに感じさせるような女性たちにやられた。
行間が広くて、文章からも登場人物たちの余裕みたいなのが感じられる、素敵。
解説が山田詠美なのも個人的にめちゃくちゃ嬉しかった。
田辺聖子もっと読んでいきたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレバブル期の関西の金持ちの暮らしが随所に書かれて、旅行とは違った気分にさせてくれた。
六甲の別荘で山の空気と静けさを堪能しながらの食事。デパートの外商との買い物。関西の古い邸宅の様子などなど。。
物語についてだが、剛の家の人間はいけすかない人間で、彼らと心からの交流ができず、距離をとることで心を落ち着かせる乃里子。
剛とのイチャイチャが唯一心を解放する場所だったが、物語が進むにつれ段々疲れ、最終的に剛から家のこともやれと言われることで、それもできなくなった。
その後、自分の気持ちに正直な乃里子が印象的
私的生活を犠牲にして剛の家に合わせることもできたのに、離婚したことので。
剛も自分の気 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「言い寄る」に続く2作目
今回も田辺聖子さんの書き方が惚れ惚れしながら読み終えた!
2作とも物語の終わらせ方が好き。
全てを明るみにして、「こうなりました!」と終わるんじゃなくて、「おそらくこうなるだろうな」の印象だけ与えて、あとは読者の考えにおまかせする感じ。
だから、それまでの思い出や出来事が綺麗なまま終えれるような気がした。
剛も乃里子も素敵な所は多いけど、恋愛難し。
お金持ちって大変ねとおもった。
ただ剛も乃里子もやっぱり根は浮ついてるもの同士なんだろと思った。
乃里子は前作で、顔をベコベコに殴られたのに関わらず、いつもふわふわしてて面白いまである。
だけど、乃里子が男女問わずそれぞ -
Posted by ブクログ
ネタバレ友人に勧められて。面白かったー…というか身をつまされる部分が多すぎて怖いくらいだった…
五郎に対して
きっと、爪を噛みながら五郎を見ている私の目の中には、野卑で精悍な、情欲が跳梁していたと思う (P.72)
私は大笑いした。笑いながら。こんな話をする男に、どうやって言い寄るムードをつくるべきか、いそがしく考えていた。私と剛みたいに、うまく同時にもの好きで、同程度にめずらしもの好きで、同じ割合にSUKEBEであるばあいは、何もコトバはいらなくて、ただピンポン球を打ち返すような応酬のうちに、ムードがもり上るのであるが、五郎はそんなわけにはいかなそうだった。…私の希望は、五郎が私に惚れ、私に言い寄 -
Posted by ブクログ
初めて田辺聖子さんの本を読んだ。
彼女の言葉の使い方がすごく好きになった。
虜になった!
感情の喜怒哀楽を軽快にコミカルに表現しているところにすごく惹かれた。読みやすかった。
乃里子の気持ちとてもわかる。
私も本当に好きになった人には、言い寄ることができません。
女性に対しても、男性に対しても。
この頃心から友達になりたい女性の人がいるのだけど、いつもなら誰彼構わず仲良くできるのが私の魅力なのに、彼女の前ではそれが全く使い物にならなくなる。
そんな中でこの本を読んでいたので、共感の嵐が鳴り止まなかった。。
それにしても、乃里子の考え方が好きだと感じる言動が多かった。
中でも一番心にキタのは -
Posted by ブクログ
上下巻通しての感想となる。よくもまあ1000年以上も経つのに全く色あせないストーリーだなと感心する。改めて紫式部の偉大さ・天才ぶりが怖くなる。薫、匂宮、大君、中の君、浮舟が主要人物となる。最初から薫と大君がくっついていれば幸せな日々が続いたことと思うのだが、そこは式部の「いけず」だ。なんだかんだと薫に試練を与え、読者をイライラ・ヤキモキさせる。現代風にアレンジすればドロドロした昼ドラにもなりそうだ。最後は式部なりのハッピーエンドかなと推測する。この時代の姫は身分のある殿に世話されるのが一般的だと思うので、自分の意思を通すことは難しいであろう。式部はそんな姫たちの心の深部をすくい取ってこのエンデ