桑原武夫のレビュー一覧

  • 文学入門

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    文学の面白さは、慰みもののそれとは異なり、人生的な面白さである。

    作者の誠実ないとなみによって生まれた作品中の人生を、読者がひとごとならず思うこと、つまりこれにインタレストをもって能動的に協力することである。

    作品とは完了された経験なのである。それでは読者は、その経験を再経験して、インタレストをもつことによって、何を得るか? それはすぐさま行動に爆発するようなものではないが、行動をはらんだ心的態度であり、それはわれわれの行動を規制する力をもっている。

    読者が文学によって、人間についての知識を獲得することは、いうまでもないが、そ

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    2024年03月06日
  • 文学入門

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    ここまで徹頭徹尾正しいことが書かれていると感じる本も珍しい。だがそれは、一度知ったら誰にでもわかるような普遍的なこと、「地球には酸素があって我々はそれを吸いながら生きている」というレベルのことを、書いているからにすぎない。ここに書かれているのはそれくらい当たり前のことなのだが、自分の知らない分野のことになるとそれくらいのこともわからないものなのだから、入門書というのはそういうことを丁寧に書いてあるようなものであらなければならない。この本は本当に丁寧に「文学」を説明する親切さにおいて、良書である。文学を書く人も積極的に読む人もここがスタート地点となって、さまざまな場所へ行ってゆく。型を破ろうとこ

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    2023年02月10日
  • 文学入門

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    13年4月7日日経朝刊の「リーダーの本棚」のコーナーで、SMBC日興証券副会長の渡辺英二さんの座右の著として紹介されており読んでみた。

    本自体はだいぶ昔の本なのだが、とても面白く読むことができた。

    文学を読むということは、それを通して新しい経験をすることであり、本当の文学はハイキングではなく初登頂のようなもの、というような表現があったが、きっとその通りだと思う。ただ、それが書かれた時代では初登頂であっても、そこから歴史を経るとどうなるのか、文学はそれでも生き残ったものなのだろうが、その辺り疑問が残る。

    日本には文学が育ちづらいというが、では海外文学を鑑賞するのに翻訳でいいのか、といった点

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    2018年10月12日
  • 文学入門

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    最終章「アンナ・カレーニナの読書会」以外を読み終えた。古い本だけど、中身は今でも通用するし、踏み込んでしっかり意見も言っている。開かれてはいるけど言うべきは言うと言った感じ。文学にわくわくしたものを感じさせてくれるので不運にもいい本に巡り会えない時なんかに読み返すといいかもしれない。そもそも文学とはという感じがあっていいように思う。

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    2017年12月18日
  • 文学入門

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    文学の持つ意味。本物の文学とは。
    近代小説というジャンルのみを取り扱っていますが、現代人が必要とする文学の本質を突いているような気がします。60年以上前に書かれたものとは思えないほど、鋭さを持っています。
    文学入門というタイトルから想起するほど難しく複雑ではないので是非一読してみることをお勧めします。

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    2017年01月30日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    古典を読む楽しみはその時代に生きていた感覚を味わえることだと思う。明治時代、これが書かれた時代にはなるほど世界はこう見えていたのかと思わされる。

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    2016年06月27日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    中江兆民「三酔人経綸問答」青110-1 岩波文庫

    本著はもともと漢文で書かれており、前半は現代語訳文、後半は原文といった構成になっています。

    民主制を訴える洋学紳士、侵略主義を唱える豪傑君。血気盛んな二人の成年は、政治と哲学の師である南海先生のもとを訪れる。盃を交わし、両者の熱い弁論は平行線を辿る。酒も回ってきた頃合いに、南海先生が口を開く…。

    互いに足らぬところ、行き過ぎた部分を指摘し、両者の思想は違えど、実はその根源は同じであると諭す。しかし、あくまで道理を示すまでにとどめ、特定の政治目標へ導くことはしない。
    その南海先生のスタンスこそ、まさに本著の目的でもある。

    南海先生は政治の

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    2015年03月05日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    面白かった。
    と、言えるほど読み砕けてはいない…。

    酔っぱらうと国家を天の視点から語りだす「南海先生」の家に、民主守備の理想を説く「紳士君」と、領地拡大により大国に伍することを語る「豪傑君」が訪れ、日本の行く末を酔っ払い3人、大いに語る。
    前進か、後進か。両極端を語る2人に対し、中道を説く南海先生。明治のこの頃には、巷でこんな議論が繰り広げられてたんだろうか。みんな、国家百年の大計を考えて。
    読み解けてはいないが、また読みたいとは思った。僕にも国家百年を論じたいと思える日は、、来ないと思うが。

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    2014年03月04日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    ネタバレ

    日本にルソーを紹介した民主主義者・中江兆民の著。1887年出版。 現代語訳だけ読んだ。

    進歩的理想主義者「洋学紳士」と保守的軍国主義者「豪傑君」がそれぞれリベラリストとナショナリストの立場から国家論を展開。中道的リアリストの「南海先生」が聞き手に回るという内容。 三人とも酒を呑みながらしゃべる。

    洋学紳士も豪傑君も極論。どちらも理解できる部分があるし、いやそれは違うだろ、という部分もある。最後に二人をいさめつつ議論をまとめ上げるリアリスト・南海先生のくだりのカタルシスが素晴らしい。

    「政治の本質とはなにか。国民の意向にしたがい、国民の知的水準にちょうど見あいつつ、平穏な楽しみを維持させ

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    2014年02月19日
  • フランス革命史(下)

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    『フランス革命史』抄訳の第二分冊。ルイ16世の処刑から、ロベスピエールの処刑(テルミドールのクーデタ)までを扱う。革命の指導者たちが、革命裁判や暗殺によって次々に命を落としていくさまが克明に描かれてゆく。マラーやダントン亡きあと、一時的に全権力をロベスピエールが掌握したが、それも1年と持たない。ミシュレはテロルを対外情勢や国内情勢が要請した不可避のものとして描き出す――これはのちにフュレが「状況の論理」と呼んだものだろう――が、それでもロベスピエールの負の側面を描き出すことを忘れなかった。しかし、ミシュレが「フランス革命」の歴史をテルミドールのクーデタ、したがってロベスピエールの処刑によって閉

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    2014年02月15日
  • フランス革命史(上)

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    著名なフランス革命史の抄訳。上巻では、全国三部会招集からヴァルミーの勝利および共和国宣言までが扱われる。トクヴィルが『旧体制と大革命』で、革命とは距離を取りながら行政システムの連続性を浮彫りにし、革命が革命以前から始まっていたと考えたとすれば、ミシュレが強調するのは革命による「人民」の革命的変化であり、人々が突如情念に突き動かされ、共和国樹立へと邁進していく姿である。その限りで、「共和派」の歴史叙述と言われるに相応しい内容である。ミシュレにおいては、革命当時から国外では非難轟々であった人民の直接行動でさえ、革命の友愛精神の現れであり、ジャコバン派の支配も状況による不可避の選択である。歴史が共和

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    2014年01月31日
  • 文学入門

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    いささか古いが、文学の中核的な意義は存分に語られていると思う。最後に読書会をもってくることも構成的に素晴らしい。その意義がしっかり伝わる。それにしても日本の私小説に対して本当に腹立たしいのだろうな。

    ・理性の増強と知性の増加に、人生へのインタレスト、感動する心、常に新しい経験を作り出す構想力が必要。
    ・現実の人間は哲学者の区分をこえて全的に生きることを具体的に示すのが文学。
    ・文学者の偉大さとは、彼がその胸の中にいかに多くの人間を生かしうるかによって定まる。
    ・すぐれた文学:生産的、変革的、現実的。通俗文学:再生産的、温存的、観念的。
    ・新聞に小説を載せるのは日本だけではないか。
    ・普遍的な

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    2013年07月29日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    ある日洋学紳士君と豪傑君が南海先生のところを訪ね、3人で酒を交わしながら、緊迫する世界情勢の中で日本という東洋の小国がいかに進んでいくべきか、その外交上の指針を鼎談形式で語るという体裁の作品。洋学紳士君は進歩史観に基づき、武力を排除して民主主義・自由・平等を押し広めていくべきという考え、つまり左翼的である一方、豪傑君は"弱い大国(恐らく中国)"を支配して日本を大国化する、つまり右翼的な考えを持つ。南海先生は侵略は防衛する時に限るべきだと、これは中道路線というべきか。
    p100の南海先生の言葉に、「事業はいつも現在において、結果という形で姿をあらわすが、思想はいつも過去において、原因という形をと

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    2013年04月07日
  • フランス革命史(上)

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    ロベスピエールってヒーローじゃないのか。民衆は家の女房のように気分屋だ。こんな激しい革命は日本人には無理だな。

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    2013年01月24日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    机上の空論のような理想論を即座に実現できるかのように主張する非現実的な紳士君、世界情勢からの外交的危機感に過剰に反応し、売られる前の喧嘩を買おうとするかのような豪傑君、空想妄想に寄らず、足元を固めて目の前の現実に向き合うしかないという南海先生、
    100年経った今でも同じような三人の議論が個人、新聞、TVなどで続けられていると思えるが。戦前は豪傑君、戦後は紳士君に偏った時もあったが、しかし基本は南海先生の主義で日本は今に至っているのかな。

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    2012年05月08日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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     政治・経済を論じるのは、所詮酔っ払い談義に過ぎないという突き放したような諦観からくる、冷静な分析には舌を巻く。洋学紳士と豪傑君みられるようなタイプの問答は現代でもはっきりと存続している。

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    2012年04月24日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    ネタバレ

    <紹介>
     本書は自由主義的進歩思想、絶対平和観を有した洋学紳士君、帝国主義的国権論者の豪傑君、現実主義の南海先生、三人が対話によって世界の潮流、日本の政治を語るものである。洋学紳士君、豪傑君はどちらもラディカリストであり、それを南海先生がたしなめる形になっている。南海先生は決して自らの主張を述べるでもなく、喋る機会自体が少ないが、先生の言葉一つ一つは比喩を用いながら、思想や政治の本質について核心的な事を述べており興味深い。

    <感想> 
     解説にあるように、三者のうちどれが中江兆民の思想に一番近いのかははっきりしないが、私は洋学紳士君に対する思い入れが大きいように思える。洋学紳士君は西欧の歴

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    2011年12月24日
  • 文学入門

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    ネタバレ

    [ 内容 ]
    私たちの文化生活のなかで最も重要な地位を占めている文学、これを狭い文壇意識から解放して、正しく社会に結びつけることほど大切な問題はないであろう。
    なぜ文学は人生に必要か。
    すぐれた文学とはどういうものか。
    何をどう読めばいいか。
    清新な文学理論と鋭い社会的洞察力をもって、文学のあるべき姿と味わい方を平明に説く。

    [ 目次 ]
    第一章 なぜ文学は人生に必要か
    第二章 すぐれた文学とはどういうことか
    第三章 大衆文学について
    第四章 文学は何を、どう読めばよいか
    第五章 『アンナ・カレーニナ』読書会

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    2011年04月26日
  • フランス革命史(上)

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    リーダー不在の戦争。ヴェネツィアで機能した合議制・共和制が何故他の国ではうまくいかなかったのかな。革命直後に書かれているので革命の息遣いがきこえて新鮮。

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    2011年03月06日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    明治時代の国際政治状況を踏まえた日本の選択肢を書いた本。
    解説によると中江兆民の思想を書いた本らしいですが。

    架空の人物「南海先生」のもとに紳士君と豪傑君が現れて
    酒を飲みつつ政治談議を交わす設定です。

    紳士君はリベラリストというかもはやロマンチスト。
    民主主義を標榜し「平等」と「自由」を兼ね備えた国になる事で
    他国は敬意を払い攻めてくる事はないだろう、
    もし攻められたら相手を非難して無抵抗で敗戦した方がましである、と。

    対して豪傑君はリアリスト。
    日本は小国であり、文化的経済的に急速な発展をする事は難しい。
    更に、日本が改革を行うためには闘いを好む懐古主義者と進歩主義者がいてはならない

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    2009年10月04日