桑原武夫のレビュー一覧

  • 文学入門

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    本書は文学研究者で京都大学名誉教授の著者が、「インタレスト」という観点から、優れた文学とはどういうものなのか、文学はなぜ必要なのか、という点について論じたものです。

    インタレストとは「興味」「関心」「利害感」。行動そのものではありませんが、必然的に行動をはらんでいるものだとされています。

    人生に対する激しい意欲に満ち、行動的情動を孕んだ作者が一定の情熱と質量をもってして作品を生み出したのであれば、読者もそれにより行動の直前と言うべき状態に置かれるのだと言います。

    限りある現実体験の中で、そういった心的態度と知識を獲得できるのが他ならぬ文学の効用であり単なる娯楽とは異なるものなのであり、こ

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    2025年11月19日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    南海先生のもとを訪れた洋学紳士は非武装、民主主義制を主張し、豪傑君は植民地主義を主張する。南海先生はどちらの論も極端なものであり、現実的ではないと諭す。中江兆民が1887年に書いた本だが、現在でもしばしば洋学紳士と豪傑君の対立を見かける。この本の持つ問題意識は現在でも通用するのだろう。

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    2025年01月05日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    268P

    さんすいじんけいりんもんどう

    中江兆民は民主主義の基礎を築いた人

    歴史で〜をやった人+名前だけ覚えるみたいなクソみたいな勉強してたなと思う。中江兆民の書いた本読んでなかったらこんな魅力的で素敵な人だって知らなかったもん。〜をやった+名前を知ってても知ってるとは限らないというのはこの事だね。

    中江兆民(なかえ ちょうみん)
    (1847年12月8日 - 1901年12月13日)は、日本の思想家であり、「東洋のルソー」と呼ばれた人物です。明治時代に活躍し、近代日本における民主主義思想の先駆者として知られています。彼は西洋哲学、特にジャン=ジャック・ルソーの思想を日本に紹介し、それを

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    2024年11月26日
  • 文学入門

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    安心安定の岩波新書。
    私は常に「何故ライトノベルは低俗な小説」として扱われているのかを考えていた。それにあたり、文学とは?についての本を読んできたが、この新書が一番納得できる考えだった。
    新たな道徳は大抵多くの人に嫌悪され、既存の枠組みに満足であることは、多くの若い人の理解を容易にさせる。
    速い話が、同じ道徳の下で同じ枠組みを使い、読者の心を大きく変革させることは難しいことが挙げられるのだろう。
    ただ、近代小説は評価が固まっていないことも評価されない理由であるともいい、近代小説は読むべきではないという内容ではない。
    筆者は、過去にしか興味を持たず近代および現実に目を向けない人を「世捨て人」と定

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    2021年07月09日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    これほど多面的な解釈をできたということは、計り知れない能力を備えた人物であったことを意味している。未来を見据えた内容である。

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    2017年12月14日
  • 文学入門

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    ネタバレ

    要約

    第1章
    文学は、はたして人生に必要なものであろうか?
    単純に、文学が面白いからこそ必要だと著者は考える。ここで言う面白さとは、amusing ではなく interesting 。両者の違いは能動性にある。つまり、作者の誠実ないとなみによって生まれた文学作品を能動的に堪能することが、文学の醍醐味と言える。

    第2章
    すぐれた文学とはどういうものか。
    我々を感動させるもの。その感動を経験したあとでは自分が何か変革されたと感じられるものである。
    このような文学の条件は、明快さ=再経験しうるもの、誠実さ=作者自身が切実なインタレストをもっていること、新しさ=新しい経験 だと著者は考える。

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    2017年02月25日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    中江兆民、歴史の教科書で学びますが、実際にその著書を読んだことはありませんでした。この本は、現代語訳と、ルビを付した原文が併載されています。この時代から、立憲制、民主制、恒久平和、死刑制度廃止が議論されていることに感銘を受けます。

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    2016年10月16日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    明治日本が経綸する上での、様々な意見が述べられる。
    あくまでも著された明治20年の時点では、紳士君が述べる事柄と
    豪傑君の述べる事柄のどちらも等しく極端であると退けられている。

    この後紆余曲折を経ながら60年かけて豪傑君の意見が国内の
    指導層の間で大勢を占めるすことを思うと、まさに隔世を感じる。

    果たして南海先生と紳士君と豪傑君の3者のうち、どの意見が
    中江兆民の真意に近いか分からない。
    ただ解説であった通り、どれも兆民の意見であるというのは正しい
    のだと思う。
    なにしろこうも客観的かつ冷静に三者の意見を著述するのである。
    三者の意見はその全てが経綸のための手段にすぎず、
    手段の全てがその

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    2014年01月23日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    時の政策を批判する時に、批判ばかりしていたのでは良くない。対案は持つべきではある。しかし専門家ではない市民の身、原発政策や経済面の複雑な論議に入っていくと埋没してしまって抜け出せなくなる。よって、一番根幹の論議とは何かを考える。根幹を押さえて置くと、結論は直ぐに出るだろう。すると、結局はアメリカとの関係をどうするのか、というところに行き着くのである。それは即ち日本の外交政策をどうするのか、というところに行くだろう。だから憲法9条をどうするのかということは、世の中ことを論ずる時には必要不可欠だし、中国脅威論云々というのは、基本的には決して無駄な論議ではない。

    しかし繰り返すが、専門家ではない市

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    2012年07月02日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    中江兆民の思想が盛り込まれた傑作。現代語訳されているためとても読みやすく、また日本の経済・政治の論点が見える。この時代も今も根本的な論点は変わらないのだと思うと先人たちは偉大だと感じると同時になんだか少し残念に思えるが仕方ないことなのであろう。それが政治なのかもしれない。

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    2012年03月02日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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     中江兆民がこの著作を執筆してから百二十余年。

     未だに豪傑君、あるいは紳士君の一方の主張に拘泥する論調の、何と多いことであろうか。

     「軍備なき平和」と「力による平和」の問題について南海先生はこうまとめた。

     「外交上の良策とは、世界のどの国とも平和友好関係をふかめ、万やむを得ない場合になっても、あくまで防衛戦略を採る」こと。

     何だか当たり前のようなこと、ともいえる。
     しかしこの著作から得られることを高坂正堯は次のように記している。

     「たいせつなことは、『軍備なき平和』と『力による平和』のあいだには超えがたいジレンマが存在するということなのである。このジレンマゆえ

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    2010年09月12日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    洋学紳士・豪傑君・南海先生の3人が酒をかわしつつ天下の趨勢について論じたもの。
    思想について論じたものだが、文学的な表現なども満載でこの本の3人が論ずるという形式もあってか非常に読みやすく、読んでいて痛快である。
    民主制とは何であるかと考えさせられる一書。
    この本が書かれた当時の時代背景などを念頭に置きながら読むと、より一層楽しめると思う。

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    2010年06月16日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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     ゼミの教授に強く薦められ、手にした一冊。

     原本が出版されたのは百数十年以上昔の明治時代。「経綸」とあるように、近代化へとひた走る日本における「あるべき国の姿」を、三者の議論の形を採って模索している。

     当時の日本は、内の民権運動という波に加え、外の欧米列強という波にも揺さぶられており、故にこの本は政治制度と同時に国際政治にも論及している。国際政治学の古典とも名高く、教授はその意味でこの本を薦めて下さった。原文は難解だが、現代語訳されており、数時間で読める。

     この本の優れて知的な点は、狙いとしてその「模索の過程」に重きを置いている事にある。国権主義、理想主義、現実主義を並べ置き、それ

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    2009年10月04日
  • 文学入門

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     本棚を探っていると、
     桑原武夫『文学入門』(岩波新書)が出てきます。
     
     本に書きこまれたメモによると、高校生のときに1回、
     予備校生のときに1回、大学に入って1回、読んでいます。

     パラパラめくってみたら、
     「ああ、この事柄は、この本で学んだのか」
     ということが多いのに、改めて驚きます。

     桑原先生の書いたことは、いつの間にか
     わたくしの頭脳の中で、勝手に「わたくしの物」化していたのです。

     巻末に、「世界近代小説五十選」が載っています。
     イタリアのボッカチオ『デカメロン』から
     中国の魯迅の『阿Q正伝』に至るまでの
     名作50作品の“必読書リ

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    2009年10月07日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    周囲でいろいろな人が絶賛しているので手に取った。

    120年前に書かれたとは思えない代物。国際政治の基礎をかじった者としては兆民の識見に敬服せざるをえません。

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    2009年10月04日
  • 中江兆民 三酔人経綸問答

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    判ろうが判るまいが、最初に文語体の原文を読むべし。今の政治状況は百年前とちっとも変わって無い。最近はむしろ退歩している。

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    2009年10月07日
  • 最終講義 挑戦の果て

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    戦前から戦後、現代に至るまで各分野の知の巨人らが述べた良書である。
    多様な著者の文学研究以外の物理学や法学、社会学など様々な研究で得られた知見と知のバトンを次世代に受け継ぐ本である。
    興味があれば、中学生からでも読み始めている人は多いだろう。研究者とは「研究しない自由はない」と本著で述べている通り、全ての学問に対する研究に責任があると説く。第一線で活躍していた研究者の言葉を聞き、現代の価値観や様式、世界規模での情勢をその時の生きた時代の研究者へバトンは渡され、人類は発見と修正を繰り返しながら前に進んでいく。世界は広い、本著でも紹介されきれない研究者は山ほどいるだろう。そして、今生きる現代の次世

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    2025年07月19日
  • フランス革命史(上)

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    お、おもしれぇ〜…!150年以上前の作品だからもっとお堅いのかなと思って面白さはあんまり求めてなかったけど、なにせミシュレ自身がバスティーユのたった9年後に生まれて周りに革命経験者がゴロゴロ居る時代に育ってるもんだから臨場感がすごい
    でも最初のミシュレの説明にも何回も書いてあったけど、まあ俯瞰した本であるかというとそうではない
    フランスのこと愛しすぎて、全世界からフランスが愛されてるというのを何回も言っちゃうの可愛い

    ただ、生きた描写であるが故、土地の名前や人の名前が「お馴染みの」みたいな感じで特に説明もなくポンポン出てくるので、WikipediaとGoogleマップを見ながら読んでたの結構

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    2024年09月15日
  • 文学入門

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    こういう本が読みたかった!
    今まで文学がどういう物か分かっていなかった自分に最適でした。
    文学がどうして書かれるか、文学がどんな効果をもたらすか、文学は何について書かれるか、という自分の疑問に答えてくれる本でした。もちろんどんな読み方をしようと個人の自由ではありますが、真に楽しむにはこういう事を知っておかなければならないなと実感しました。
    巻末には読むべき本のリストがあるのでそれもおすすめです。まずはアンナカレーニナ読んできます。

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    2024年08月05日
  • 最終講義 挑戦の果て

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    本書に掲載された最終講義について一言ずつ。

    桑原武夫…仏文学者以上に隲蔵さんの子息、というイメージが強い。垣根を越えた研究という事では共同研究も論語の著作も同じなのかも知れない。

    貝塚茂樹…大学者一族の一角、湯川秀樹は弟。東洋史学者の模範的な最終講義だと思う。

    清水幾太郎…60年安保前後で言論が大きく変わった、という印象の人だが、コントに興味を持つ面白い講義だった。

    遠山啓…存じ上げない方だったが、数学論がほんのちょっと分かった気がした。

    芦原義信…ゲシュタルト心理学から都市空間を観るのは面白い。

    家永三郎…教科書検定裁判の人、として子供の頃から名前は知っていた。大人になってから読

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    2024年07月17日