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Posted by ブクログ
本書は文学研究者で京都大学名誉教授の著者が、「インタレスト」という観点から、優れた文学とはどういうものなのか、文学はなぜ必要なのか、という点について論じたものです。
インタレストとは「興味」「関心」「利害感」。行動そのものではありませんが、必然的に行動をはらんでいるものだとされています。
人生に対する激しい意欲に満ち、行動的情動を孕んだ作者が一定の情熱と質量をもってして作品を生み出したのであれば、読者もそれにより行動の直前と言うべき状態に置かれるのだと言います。
限りある現実体験の中で、そういった心的態度と知識を獲得できるのが他ならぬ文学の効用であり単なる娯楽とは異なるものなのであり、こういう感動を呼び起こすものが優れた文学であるとされています。
かつて石原慎太郎が、近年の小説には心身性が欠けていると評したことがありましたが、前述のような動的態度と心的態度を伴うような作品、彼もまたこういったものが良い作品であると言っていたのではないかと感じます。
Posted by ブクログ
安心安定の岩波新書。
私は常に「何故ライトノベルは低俗な小説」として扱われているのかを考えていた。それにあたり、文学とは?についての本を読んできたが、この新書が一番納得できる考えだった。
新たな道徳は大抵多くの人に嫌悪され、既存の枠組みに満足であることは、多くの若い人の理解を容易にさせる。
速い話が、同じ道徳の下で同じ枠組みを使い、読者の心を大きく変革させることは難しいことが挙げられるのだろう。
ただ、近代小説は評価が固まっていないことも評価されない理由であるともいい、近代小説は読むべきではないという内容ではない。
筆者は、過去にしか興味を持たず近代および現実に目を向けない人を「世捨て人」と定義する。
再読こそ必要な本だが、読みやすくかつ非常に面白い新書だった。
Posted by ブクログ
本棚を探っていると、
桑原武夫『文学入門』(岩波新書)が出てきます。
本に書きこまれたメモによると、高校生のときに1回、
予備校生のときに1回、大学に入って1回、読んでいます。
パラパラめくってみたら、
「ああ、この事柄は、この本で学んだのか」
ということが多いのに、改めて驚きます。
桑原先生の書いたことは、いつの間にか
わたくしの頭脳の中で、勝手に「わたくしの物」化していたのです。
巻末に、「世界近代小説五十選」が載っています。
イタリアのボッカチオ『デカメロン』から
中国の魯迅の『阿Q正伝』に至るまでの
名作50作品の“必読書リスト”です。
50作品の中で、実際に読んだ作品数を数えてみたら、
『アンナ・カレーニナ』や『ボヴァリー夫人』など
18作品に過ぎません。
自分では、「結構、読んでるつもり」でしたが、
実際は、まだ半分の25作品にも達していない。
まだまだ、これから、ですね。
*
いえ、まだまだ、楽しみは残っている、と解釈します。
ただし、『チボー家の人々』など、絶対に読まないであろうという本も入っているので、
すべて制覇することはできそうもありません。
新しいリストが必要ですね。
Posted by ブクログ
文学の面白さは、慰みもののそれとは異なり、人生的な面白さである。
作者の誠実ないとなみによって生まれた作品中の人生を、読者がひとごとならず思うこと、つまりこれにインタレストをもって能動的に協力することである。
作品とは完了された経験なのである。それでは読者は、その経験を再経験して、インタレストをもつことによって、何を得るか? それはすぐさま行動に爆発するようなものではないが、行動をはらんだ心的態度であり、それはわれわれの行動を規制する力をもっている。
読者が文学によって、人間についての知識を獲得することは、いうまでもないが、その知識は実感に即した、実質のある知識である。そして、そうした知識の裏づけがなければ、理論的知識は空理におわるおそれがある。
人生を充実した、よりよきものとするためには、理性と知識のみでは足りず、さらに人生に感動しうる心が不可欠である。ところで文学こそ、そうしたものを養成するのに最も力のあるものである。
すぐれた文学とは、われわれを感動させ、その感動を経験したあとでは、われわれが自分を何か変革されたものとして感ぜすにはおられないような文学作品だ、といってよい。
そうした作品の経験を再経験することによって、われわれは心の中においてではあるが、豊かで深い人生を新たに経験したことになる。それは一つの冒険といってよい。
つまりわれわれを変革するもの、それがすぐれた文学なのである。
Posted by ブクログ
ここまで徹頭徹尾正しいことが書かれていると感じる本も珍しい。だがそれは、一度知ったら誰にでもわかるような普遍的なこと、「地球には酸素があって我々はそれを吸いながら生きている」というレベルのことを、書いているからにすぎない。ここに書かれているのはそれくらい当たり前のことなのだが、自分の知らない分野のことになるとそれくらいのこともわからないものなのだから、入門書というのはそういうことを丁寧に書いてあるようなものであらなければならない。この本は本当に丁寧に「文学」を説明する親切さにおいて、良書である。文学を書く人も積極的に読む人もここがスタート地点となって、さまざまな場所へ行ってゆく。型を破ろうとここに書かれている「当たり前」を否定しようが革新しようが、まずその当たり前を知らなければ、単なる型なしでしかない。我々はこのスタート地点から文学について考え、そして書かなければならない。
Posted by ブクログ
13年4月7日日経朝刊の「リーダーの本棚」のコーナーで、SMBC日興証券副会長の渡辺英二さんの座右の著として紹介されており読んでみた。
本自体はだいぶ昔の本なのだが、とても面白く読むことができた。
文学を読むということは、それを通して新しい経験をすることであり、本当の文学はハイキングではなく初登頂のようなもの、というような表現があったが、きっとその通りだと思う。ただ、それが書かれた時代では初登頂であっても、そこから歴史を経るとどうなるのか、文学はそれでも生き残ったものなのだろうが、その辺り疑問が残る。
日本には文学が育ちづらいというが、では海外文学を鑑賞するのに翻訳でいいのか、といった点にも触れられていて、好感が持てた。
私自身、文学というものはあまり読んだことがないが、これを読んで、『アンナ・カレーニナ』を読んでみたくなった。巻末の必読書リストも読んでいきたくなる。
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(目次)
第一章 なぜ文学は人生に必要か
第二章 すぐれた文学とはどういうものか
第三章 大衆文学について
第四章 文学は何を、どう読めばいいか
第五章 『アンナ・カレーニナ』読書会
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