桑原武夫のレビュー一覧
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国際政治は権力闘争ではあるが、その枠組みと規則が存在するため、暴力の支配する無秩序とはいえない。非武装でもなく、征服のための軍備でもなく、世界中の国と友好関係を深め、常に防衛戦略をとるべき。中江兆民『三酔人経綸問答』1887
社会主義は愛の精神ではない。これは一階級が他の階級に抱く敵愾の精神である。社会主義に由って国と国とは戦はざるに至るべけれども、階級と階級との間の争闘は絶えない。社会主義に由って戦争はその区域を変へるまでである。内村鑑三
※不敬事件。敬礼はしたが、最敬礼をしなかった。再度、敬礼を依頼されて同意したが、病気で行けなかった
横山源之助『日本の下層社会』
軍備と徴兵が国民の -
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「文学とは何か」の一つの視点。
古典・必読書に学び、かつ現代の文学を冒険する楽しみ。
ときに遠慮会釈なく批判する明確な姿勢も爽快。
◯インタレストとは「興味」であると同時に「関心」であり、さらに「利害感」でさえあって、それは行動そのものでは決してないが、何ものかに働きかけようとする心の動きであって、必然的に行動をはらんでいる。そしてインタレストのないところに行動はありえない。
◯つまり作者の私的なインタレストが、客観世界のダイナモを通過することによって、公的なインタレストに変わる。
◯われわれが文学にインタレストを抱くことによって得るものは、まず以上のような心的態度の蓄積だが、それと同時 -
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ネタバレ著者ジュール・ミシュレ、人民史家と称され、フランスを愛し人民による革命を賛美し、革命に関与した人々へのインタビューや各種資料を通じて革命の詳細の研究に没頭したという。
革命がはじまった1789年7月、ルイ16世「なんだって、それじゃ反乱なのか」「陛下、革命でございます。」(163頁)、なるほど国王のずれた認識をよく表現している。
著者は、共和国をつくりあげる精神を次のように語る、「若いこと、魂が若々しいこと、血が燃えたっていること、あの生産的な無分別、これである。まだ心の中にしかないものを、はや現実のうちにみる精神。それをみつつ創造してゆく精神。つまり、信念がなければいけないのだ。」(3 -
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フランス文学研究者の著者が、文学作品のおもしろさについて平易に語った本です。
著者は、「インタレスト」(興味・関心・利害観)を引き起こすところに文学のおもしろさがあると主張しています。文学作品の著者が個人的に抱いた「インタレスト」が、作品として客観化され、読者の「インタレスト」を引き起こすことになります。そしてこの「インタレスト」の広がりと深みが、文学作品に価値と意義を付与することになります。
「文学入門」と銘打たれた本書では、18世紀に起こった近代小説を重視する立場が取られています。その理由として、近代小説は市民階級の文学であり、特別な教養や約束を前提としていないこと、また、自由意志を持 -
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2013年11冊目
本書はフランス革命の歴史を叙述したもので、ロビスピエールの死で幕を閉じる。さて、フランス革命の歴史書としてはどこで始まり、どこで終わるのかは非常に重要である。筆者がどこまでを革命ととらえているかが如実に反映されているからである。本書ではロビスピエールの死、すなわち共和制の崩壊を意味するところで幕を閉じる。本書が共和制史と呼ばれる所以である。
さて、本書は厳密に事実のみを提示した歴史書ではない。そのため、純粋に歴史的事実を理解したものにとっては良書ではないかもしれない。しかし、本書の評価をする前に、歴史書とは何か、を吟味する必要がある。
ミシュレによれば、歴史とは「全体 -
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2013年10冊目
ミシュレ:フランス革命史
フランス革命史とえいばミシュレ、なわけであるが、ミシュレのフランス革命史の根底にあるのは「人民」というキーワードであったように思う。
フランス革命は人民の意思により誕生し、達成された。時には公会の存在を批判しつつ、徹底的に人民の立場に立つ、それが本書の特徴である。
それはミシュレの立場にも関係する。ミシュレは時に政治参加の機会があった。しかしながら、徹底した人民の立場から中立的に、どの派にも属さずに歴史を叙述するという信念から政治参加を拒んだ。彼の立場は執筆の観点からみても人民に依拠していたのである。
そのため、本書の隅々で人民を礼賛する場面が