清水義範のレビュー一覧

  • 早わかり世界の文学 ――パスティーシュ読書術
    文学に限らず、あらゆる芸術、思想、技術、人間の活動全てが模倣の歴史であり、それが文化であると言っていいだろう。その意味で、模倣を軸にした文学史は入門としてとっつきやすい。

    ロビンソン・クルーソーとガリバー旅行記の関係が一番おもしろかった。
  • はじめてわかる国語
    学校の読解問題が主要なテーマかと思ったら、拍子抜けだった。「日本語」についての短編集も出して、国語の教員免許を持つ著者が気になる日本語のあれこれについて考えている。谷崎潤一郎『文章読本』について触れられた部分が特に興味深かった。改めて『文章読本』の影響の強さに感心した。
  • 心を操る文章術
    前半は著者得意の「笑わせる」ための文章で、かなり「面白い」文章が続いていたのだが、後半は息切れしている感が否めないのが「面白い」。
  • やっとかめ探偵団とゴミ袋の死体
    アリバイを覆すべく推理と実地調査、ネットで調べものをするおばあちゃんがいい。名古屋弁でまくしたてるのは爽快だ。活字にすると細かい母音が表記するのが無理があるが。抜群の推理力、実行力に乾杯だ。ゴミがキーワードである。
  • 心を操る文章術
    文章術の本だが、作家のテクニックとして楽しく読んだ。
    特に面白かったのが「怒らせる」章。
    共産主義の宣伝のために書かれたプロレタリア文学を「ゲテモノ」と喝破し、
    新聞の社説に「利口ぶるな」と吐き捨てる。
    パスティーシュ作家で知られ、のほほんとしたイメージの清水さんだったが、
    「人を怒らせる文章なんか...続きを読む
  • 迷宮
    文章力はすごい。読みやすく、変に引っ掛かるところがない。
    ただ、中身の猟奇殺人は気持悪いし、ラストも落ち着かず。結局、人の心を自分の物差しで判断しようとすること自体が無理だということに、最後まで気づかないことへの嘲笑だったのか?
  • 迷宮
    「人間のすることに理由などない。」という井口の思考に凄く共感した。直後で「理由がないというのはこの上なく甘い逃げだ」という中澤の反論にも深く考えさせられた。
    しかし井口と中澤は、其々に一つの事件を「自分の都合の良い形」に捻じ曲げて事実化しようとする、またその周りでも各々の視点による解釈が繰り広げられ...続きを読む
  • ザ・対決
    対決の内容はしょーもなくどうでもよいのだが、手を変え品を変えといった書き方で飽きなかった。桃太郎vs金太郎、ラーメンvsカレーライス、楊貴妃vsクレオパトラ辺りが面白かったかな。
  • ビビンパ
    どこにでもある何の変哲もないビビンバ。ストーリーはまことに平坦。焼き肉店での家族団欒。焼き肉店での登場人物はいたって普通。どこの家族にも見られる光景をそのまま描出しているだけ。なぜかこれが無性におかしい。いたって普通に振る舞っている登場人物。これらが清水義範の手にかかると一大スペクタルへと変貌を遂げ...続きを読む
  • アキレスと亀
    外交、動物園、マラソン中継、商店街…
    様々なシチュエーションや立場に属する
    人々のやりとりをシニカルに描いた短編集。

    シチュエーションの目の付け所が秀逸で、
    話に入り込むまでが楽しい。
    コントの台本を読んでいるよう。

    ただ、各話のオチがひねりを感じられず、イマイチ。

    「花里商店街月例会議」のや...続きを読む
  • 「大人」がいない……
    共感並びに納得できる点は多い。
    現実の分析は正しい様な気がするが、それでどうするかまで踏み込めていない。
    かねがね気になっていたことなので、少し期待しすぎたのかも知れないが、トータル的には満足できる。

    学校の先生が一番面倒だと思っていることは、生徒の父母と関係を持つことだそうだ。
    これは、...続きを読む
  • 信長の女
    「日常のほとんどは要点だけを短く言えば用が足りる。人々は付け加えても全く意味が深まらない無用の言をだらだらと口にして、かえって本意を濁らせる。書物の中のほとんどの文章は無用の飾り。意味あるものはむこうから目に飛び込んでくるもの。」うつけと言われた信長幼少期の言である。人質時代の徳川家康にかけた言葉も...続きを読む
  • ことばの国
    言葉の面白い話を思いつくままに書いたら一冊の本になりました。あとがきはそんな言葉で始まっていた。え、これのどこが面白い話なの?と驚くままに発行年を調べたら1990年。これを見ると、時代とともに我々の感性が変化していることが顕著だ。言葉のおもしろさとはこんな揚げ足取りの屁理屈の中にはない。もっと言葉特...続きを読む
  • その後のシンデレラ
    実情も分かっていない外野の門外漢が闇雲に新機軸を喧伝し現場を混乱に陥れる。司馬遼太郎から仕入れた歴史上の天才を自分になぞらえる。時に竜馬となり、海舟になる。恥ずかしき迷妄が縷々綴られる。笑いながらも、笑うたびに皮肉の矢は自らに深く突き刺ささった。
  • 愛と日本語の惑乱
    時代の空気を的確に読み、時に先行し日本語を変えてゆくコピーライター。変化があるから言葉は新しい力を持てる。言葉は時代の中で生きている。使われず陳腐化した言葉は次第にその勢いを失い、ついには死んでいく。正しい言葉を守ろうという意識がある一方で言葉というものは必ず正しくない方向に向いていくもの。百年前の...続きを読む
  • 心を操る文章術
    笑わせる、泣かせる、怖がらせる、怒らせる、和ませる。5つの章立てで書くということの心得を説く。なかでも笑わせる文章は著者の真骨頂。褒辞絶賛の声多く最も評価の高い分野である。例示として挙げられている文章もなかなか面白い。思わず声をあげて笑ってしまった。加えて清水氏の心の優しさ、人を思う労りの気持ちとい...続きを読む
  • 学校では教えてくれない日本文学史
    清水義範さんの、別の本(名前がいっぱいというやつ)が欲しくて本屋に行ったけど、どこに行ってもなくって、仕方なくというと変だけどこれを買いました。

    特に驚くようなことはなかったけれど、エッセイは 「負け惜しみの自慢」という解釈がすごく納得がいきました。
  • 12皿の特別料理
    おにぎり、ぶり大根、ドーナツ、鱈のプロバンス風、きんぴら、鯛素麺、チキンの魔女風、カレー、パエリヤ、そば、八宝菜、ぬか漬け。

    家庭のキッチンから始まる、料理小噺。

    チキンの魔女風は聞いたことない料理だったが、妙に美味しそう。鱈のプロバンス風作りたいな。
  • 迷宮
    ある猟奇殺人事件のあらましを、
    (犯罪記録)(週刊誌報道)(手記)(取材記録)(手紙)(供述調書)
    といったさまざまな表現で読者に「読ませる」。
    というのも前提が、あるひとりの記憶喪失の男が治療として「読まされる」からである。
    文体を駆使しているのはわかるのだけれど、
    どうしても章ごとに同じ意味合い...続きを読む
  • 間違いだらけのビール選び
    全11話、いずれもほんの些細な日常をうまく小説に仕立てている。小説を書き始めるのなら、まずこんな場面を取り上げてごらんなさいと教えていただいているやな一冊である。