Posted by ブクログ
2016年11月27日
40代初めの売れっ子コピーライター、野田敦。
彼の恋人は、妖艶な女優、新庄百合子。
恋人の愛が冷めていく中で、野田の日本語がおかしくなっていく。
そこらへんの仕掛けが、ああ、清水義範さんだな、と思わされる。
野田はSHK(この後に決して48とかはつかない。「敷島放送協会」の略なんだそうだ)の放送用...続きを読む語委員でもあるという設定で、そこで日本語に関するいろいろな問題が出て来る。
ちょっとお勉強本みたいになるけれど、これはこれで興味深い。
縦書き文書での数字の書き方はどうするべきか。
外国の地名は現在、現地音に近い呼び方をするのに、中国の地名だけは日本語読みしているのは改めるべきなのか。
差別語や、そこまでいかずとも一部の社会集団に不快な思いをさせる可能性がある表現をどこまで自主規制すべきなのか。
これらについて、複数の立場からの見解が開陳されていく。
ダジャレを言いたがるのは、フェルスター症候群という脳の疾患だとか。
そんなことも、本書で初めて知った。
一つだけ、どうも作品に気持ちが乗り切れないのが、主人公の野田の造形。
売れっ子コピーライターで、美人女優を恋人に持つような華やかな、魅力的な人に見えない。
作品後半で「惑乱」していくので、そんなにすかしたイケメンにできないのかもしれないけど。