成長期の舞台としての学校生活のさなか、複雑に展開される性差の縺れに戸惑いながらも前進する、悩める思春期の少年少女達を描いた群像劇。
アニメ版全12話を先行して視聴し、作品世界の感触に感銘を受けての原作到達。
原作コミックスとアニメは別物だという風聞も先にあり、そのあたりも注視していたけど、確かに一部挿話の組み替えはなされているものの、世界観や設定は元より、あの独特の語り口(勿論この作家さん固有の作法ではない)はアニメ文法に置き換えられた際にも明確に継承されているように見受けられた。
本作独特の語り口というのは、描写の要所…特に当事者のクリティカルな絵を状況に応じて間引く事で、兎に角行間を読者に読ませる描かき方、と解釈している。
絵として提示されないまま何かが変わり、彼らの悩みも僅かな断片としてコマを過ぎ去っていく。
ここまで複雑な物語なのに、子供達の思いをはっきりとは表出させず、作者はあえて饒舌には語らない。
モラトリアムな思春期の"悩み"を動力源に物語を駆動させる系統の作品なのに、それが孕む重さの匙加減が独特で、重い問題を重く見せず一旦彼らに飲み込ませる、当事者問題として直接描かない、等の意図的迂回をさせてくる。
そこに場面は描かれているのに、受け手への煽りを感じない、それを活用して読者を揺さぶろうとしてこないのだ。
本来訴えかけられる筈のメッセージは、現実的に見渡すことの困難な幼い群像達の内面のように、外部の視点から切断され暈される。
作者はそれを踏まえてこの作品を描いているようにも読めた。
世界観について。
主役達の、自身の性への違和感を性同一性障害と明言し物語を運ばせなかった点には、作劇的意味があったのだと感じた。
それは成長過程に置かれた彼らの"悩み"に根源的なカタチを与えるための、各々の自己にのみ帰結する聖痕のようなものだったのかもしれない。
執拗に言葉/文字で語らない物語だからこそ、代わりに彼らの存在と属性が魅せる。
とにかく素敵な作品との出会いとなりました。