前川裕のレビュー一覧
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二〇二〇年、六月。〈私〉は花園神社の遊歩道前を通り過ぎようとしていた。七十三歳の小説家である〈私〉はかつて芸能プロダクションを経営していて、芸能界という華やかであざとい世界に身を置いていた。衝撃的な死とともにその生涯を終えた歌手のKのマネージャーをしていたこともある〈私〉にとって、コロナ禍の事情もあり、開かれるかも分からないKの追悼集会は気になるものだった。そして回想されていく当時の出来事。大学を離れ、Kのマネージャーになった〈私〉、居酒屋で出会ったキエとの恋、彼女の兄とのトラブル、そして唐突な別れと世間を揺るがす大事件――。
ということで、『クリーピー』や『アパリション』、『死屍累々の -
購入済み
現実にありそうもないような事でも、身近に起こっているような感覚でグイグイ引き込まれ一気読みしてしまいました。隣人の猟奇的な気持ち悪さに戦慄しましたが、一応はハッピーエンドで収まった感じです。
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【2024年129冊目】
幼少期に事件に遭い、トラウマを抱えたまま生きる百合は、声優を目指しながら男装バーで働いている。同居人である真優と累も夜の世界に身をやつし、互いに深く干渉し合うことはない日々。ある日、訪ねてきた警察官に「あの男」が仮釈放されると告げられる百合。悪夢のような五年間の要因。そして手紙と共にテディベアが届けられて――。
ミステリーと分類するかホラーと分類するか難しいお話。登場人物全員怪しく思える、思想が怖い、誰が味方で敵なのかも判断できないままに進んでいく物語。
途中に挟まれるモノローグの異常性も怖いし、真相が明らかになった時の驚愕もすごいし、ずーっとぞわぞわしながら読み -
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東京の弁天代警察署で生活安全課係長を務める無紋大介。46歳の警部補である。
東大卒だがノンキャリアの道を選び、昇進試験や本庁捜査一課への栄転を断り続けているという変わり種だ。
彼には「こだわり無紋」というあだ名がある。疑問を感じれば些細なことでも徹底的に調べ上げずにはいられないというところからついた異名らしい。
そして、そのこだわりから判明した事実をもとに組み立てた無紋の推理で解決に結びついた事件も少なくなく、無紋は自然と一目置かれる存在となっている。
そんな東京下町の名物捜査官、無紋大介の活躍を描くサスペンスミステリー。
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ある日、弁天代署に本庁公安部か -
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前川裕『逸脱刑事』講談社文庫。
東大文学部歴史文化学科出身の地元採用のノンキャリア警察官という変わり種の無紋大介を主人公にした警察ミステリー。珍しくホラー色は無く、ストレートな警察小説に仕上がっている。
無紋大介は46歳の警部補で所轄署である弁天代署の生活安全課で係長を務めていた。ある日、弁天代署に本庁から東大出身の女性キャリアが出向してくる。桐谷杏華という名の女性キャリアはスタイル抜群の美形で、警察官らしからぬ派手目なファッションで署内をざわつかせる。
そんな中、管内で数年振りに殺人事件が発生する。衆議院議員の秘書がホテルで刺殺され、一緒にチェックインした若い女性が姿を消したのだ。捜 -
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ネタバレ私のある小説のコメントに対して「いいね」してくれたフォロワーさんが高評価していたので手にした作品です。この方の作品は初めて読むと思っていましたが、もしかしたら、クリーピーは話題になっていたので、当時読んだかもと今は思っていますが、ハッキリとは覚えてません。
さて、そういう感じで読み始めましたが、非常に面白い。警察が判断を誤ってしまった殺人事件を追うジャーナリストの目線という珍しい目線で描かれています。
警察ではないし、そもそも、ほぼ自分一人で追っている訳で捜査の力はかなり限定される。ただ、警察ではない分、遠慮なく突っ込んでいける部分もあったり、それが逆に警察の逆鱗に触れたり。また、周りから -
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ネタバレ続きが気になってサクサク読んだけど、犯人の動機が理不尽すぎて謎解きって感じじゃなかった。
ただ最後の方に薄気味悪さの凝縮と、後味悪さを楽しめるって感じ。
(追記・ちょっとネタバレ含むので注意してください!)
読んだ後いろいろ考えるとなんか複雑な気持ちになってきた…
百合のコスプレ趣味の発端はどこだったのかとか、犯罪を一度犯した人間はどうあっても、罪を償って出てきたとしても被害者には決して許されることはないことであったり、世間からも一生罪人のレッテルを貼られること、等々、モヤモヤと考えさせられたなぁ。
作り込みというか、繊細な描写が積み重ねられて物語の世界が出来ていて余韻がすごい。