前川裕のレビュー一覧
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ネタバレなんと暖かく、そして淋しく、でもうれしい純愛物語でしょう。
二人の気持ちが手に取るように分かり、もどかしさで潰されそうになりながら読み進めました。
前半の兄の強烈に害悪な存在に読むのが嫌になりましたが、後半は切なく温かい気持ちでいっぱいでした。
最後の1ページで最高に幸せにさせてくれて満足です。
タイトルとなった昭和の歌姫と、モチーフにされた有名な未解決事件はこの作品においては話の核にはなっておらず人によっては期待外れと感じるかもしれません。
かくいう私もそうです。
でも結果的にそれでよかった。無駄に事件に軸をおくといい話にならなかったと思います。
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Posted by ブクログ
二〇二〇年、六月。〈私〉は花園神社の遊歩道前を通り過ぎようとしていた。七十三歳の小説家である〈私〉はかつて芸能プロダクションを経営していて、芸能界という華やかであざとい世界に身を置いていた。衝撃的な死とともにその生涯を終えた歌手のKのマネージャーをしていたこともある〈私〉にとって、コロナ禍の事情もあり、開かれるかも分からないKの追悼集会は気になるものだった。そして回想されていく当時の出来事。大学を離れ、Kのマネージャーになった〈私〉、居酒屋で出会ったキエとの恋、彼女の兄とのトラブル、そして唐突な別れと世間を揺るがす大事件――。
ということで、『クリーピー』や『アパリション』、『死屍累々の夜』など、心底怖いサイコスリラーを立て続けに発表している著者の最新刊は、帯にも〈新境地〉と書かれているように、私が勝手にいままで抱いていた著者へのイメージを一新する切々と胸にしみるラストが印象的な恋愛ミステリ、恋愛サスペンスでした。ひとつの〈とある事件〉が深い影を落とす、ふたりの恋はどう決着が付くのか。当時の時代背景に想いを馳せながら、読み心地の良い文章に浸るのが楽しい一冊でした。 -
購入済み
現実にありそうもないような事でも、身近に起こっているような感覚でグイグイ引き込まれ一気読みしてしまいました。隣人の猟奇的な気持ち悪さに戦慄しましたが、一応はハッピーエンドで収まった感じです。
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【2024年129冊目】
幼少期に事件に遭い、トラウマを抱えたまま生きる百合は、声優を目指しながら男装バーで働いている。同居人である真優と累も夜の世界に身をやつし、互いに深く干渉し合うことはない日々。ある日、訪ねてきた警察官に「あの男」が仮釈放されると告げられる百合。悪夢のような五年間の要因。そして手紙と共にテディベアが届けられて――。
ミステリーと分類するかホラーと分類するか難しいお話。登場人物全員怪しく思える、思想が怖い、誰が味方で敵なのかも判断できないままに進んでいく物語。
途中に挟まれるモノローグの異常性も怖いし、真相が明らかになった時の驚愕もすごいし、ずーっとぞわぞわしながら読みました。
けど、やっぱり動機だけが納得いかなかった、そういう読者さん多いんじゃないでしょうか。理解できない人間はいるといってしまえばそれまでかもしれませんが、ちょっと放り出されたような感じで。
途中までは★5か〜?!と思ってましたが、上記の理由でギリギリ★4にしました。正確には★3.8くらいかな。
でも怖かった〜。 -
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東京の弁天代警察署で生活安全課係長を務める無紋大介。46歳の警部補である。
東大卒だがノンキャリアの道を選び、昇進試験や本庁捜査一課への栄転を断り続けているという変わり種だ。
彼には「こだわり無紋」というあだ名がある。疑問を感じれば些細なことでも徹底的に調べ上げずにはいられないというところからついた異名らしい。
そして、そのこだわりから判明した事実をもとに組み立てた無紋の推理で解決に結びついた事件も少なくなく、無紋は自然と一目置かれる存在となっている。
そんな東京下町の名物捜査官、無紋大介の活躍を描くサスペンスミステリー。
◇
ある日、弁天代署に本庁公安部から女性キャリアが管理官として出向してきた。
桐谷杏華という28歳の警視で、その非の打ち所のない美しい容姿に署内は騒然となる。
けれど前例のないこの急な人事には裏があった。
その少し前、国会議員秘書の男性がホテルの部屋で刺殺体で見つかるという事件が起きた。重要参考人として指名手配されたのが殺害された男性のパパ活相手の女子大生だが、間もなく彼女も首を吊って死んでいる状態で発見された。
その女子大生が事前に大学の指導教官に死をほのめかすメールを送っていたことから自殺との見方が強かったが、疑問を持った刑事課の徳松は無紋に協力を求めてきた。
生活安全課の無紋にとり殺人事件は担当外だったが、徳松から提供された情報に腑に落ちないものを感じた無紋は、もうじっとしていられない。徳松の狙い通り、「こだわり無紋」が腰を上げ非公式の捜査に乗り出した。
すると、偶然を装い無紋に接触を図ってきた人物がいる。管理官の桐谷杏華だった。 ( 第1章「出向者」) ※全5章とプロローグおよびエピローグからなる。
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本作の大きな柱は2つあります。
その1つは、無紋大介という捜査官の公正無私な佇まいです。
上昇志向や虚栄心を持たない無紋にあるのは、真実を明らかにしたいという欲求です。そんな無紋の捜査からは凡事徹底ということの大切さが見て取れます。
ほんの小さなものであっても、疑問に感じたことに無紋は蓋をしません。「これぐらいいいか」とか「大したことなかろう」と思ってうっちゃっておくことを、無紋は決してしないのです。
真相解明が捜査の目的です。曖昧さを残したままでは目的を果たすことはできない。なのに曖昧な点を黙殺してしまう捜査官が存在するから、冤罪が少なくないのでしょう。
真摯な捜査姿勢と正確な情報分析、そこから導き出す無理のない結論。
そんな捜査官としての無紋の佇まいからくる魅力は、公安のスパイだった杏華を寝返らせるに十分でした。
2つ目は、公安部のスタンスです。
犯罪そのものではなく国家体制にどう影響を与えるかで事件への対応を決める。
公安警察官の全員がそうだとは思いませんが、浜岡哲也公安総務課長のような信念を持った人間はいるだろうと思ってしまいます。
(『新宿鮫』で鮫島のライバルとして登場する香田もそんな人物でした。)
そして、この浜岡も職責に対して、公正ではなくとも「無私」であるのは間違いありませんでした。
そんな、まるでコインの表裏のような2人の対決はとてもおもしろかったし、残虐な殺害シーンなどのバイオレンス描写もなくて、ビビリの自分には読みやすかったのもよかった。
無紋の能力が神憑りすぎていてリアリティに欠けると感じる向きもあるかも知れませんが、無紋は別に、室内にいながらにして事件の謎を解き明かすわけではありません。こだわりの徹底捜査をしながら真相に近づいているだけなのです。
無紋は湯川ではなくコロンボに近い。個人的には無紋大介もののシリーズ化を期待しています。 -
Posted by ブクログ
前川裕『逸脱刑事』講談社文庫。
東大文学部歴史文化学科出身の地元採用のノンキャリア警察官という変わり種の無紋大介を主人公にした警察ミステリー。珍しくホラー色は無く、ストレートな警察小説に仕上がっている。
無紋大介は46歳の警部補で所轄署である弁天代署の生活安全課で係長を務めていた。ある日、弁天代署に本庁から東大出身の女性キャリアが出向してくる。桐谷杏華という名の女性キャリアはスタイル抜群の美形で、警察官らしからぬ派手目なファッションで署内をざわつかせる。
そんな中、管内で数年振りに殺人事件が発生する。衆議院議員の秘書がホテルで刺殺され、一緒にチェックインした若い女性が姿を消したのだ。捜査により姿を消した女性が女子大生の谷島依織であることが判明する。しかし、数日後、依織は奥多摩の山林で首にロープを掛けて縊死している状態で発見される。
無紋は依織が通っていた大学のゼミの担当教授から普段の彼女の様子などを聴取する。すると、そこに無紋の大学の同級生の寺原が姿を見せる。無紋が寺原と会うのは26年振りのことで、法学を学んだ寺原は何故か中小の出版社で勤務していた。
やがて、刺殺された衆議院議員秘書と谷島依織の担当教授、寺原とが一本の糸でつながっていく。そして、それは密命を抱いて本庁から異動してきた桐谷杏華とも大いに関連していた。
事件の全貌を朧げながら把握した無紋は、桐谷杏華と共に掟破りの『逸脱捜査』に打って出るが……
ホラーより恐ろしい公安警察の闇。
定価803円
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Posted by ブクログ
ネタバレ私のある小説のコメントに対して「いいね」してくれたフォロワーさんが高評価していたので手にした作品です。この方の作品は初めて読むと思っていましたが、もしかしたら、クリーピーは話題になっていたので、当時読んだかもと今は思っていますが、ハッキリとは覚えてません。
さて、そういう感じで読み始めましたが、非常に面白い。警察が判断を誤ってしまった殺人事件を追うジャーナリストの目線という珍しい目線で描かれています。
警察ではないし、そもそも、ほぼ自分一人で追っている訳で捜査の力はかなり限定される。ただ、警察ではない分、遠慮なく突っ込んでいける部分もあったり、それが逆に警察の逆鱗に触れたり。また、周りからも妨害されるし、やっかみも言われるし。中には好意的な人もいるけど、裏切られることもあるし。
そんな中でたどり着いたほぼゴール。ただ、結局、全容解明とはいかないという意味の「ほぼ」ゴール。個人的には終わり方にもう少し何かが欲しかったという思いがあります。全容解明はしなくてもいいのですが、大きな障害だった弁護士、裏切られた編集担当との決着もモヤっとしているのが、もう少し何かスパイスがあると良かったという思いです。
でも、この方の作品をもう一冊、まずは読んでみようかと思いました。