小松左京のレビュー一覧
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最初に読んだのはほんのガキの頃。なるほど、こういう話であったかと、今更ながらに理解した箇所が多数あり。表紙の絵も当時のカッパ・ノヴェルズのものと同じ。文庫本の奥付を見てみますと、先の大震災からさほど時をおかずして復刊され、その後版を重ねている模様。うーん、なんだか節操がないというか。
今日、阪神大震災という現実を経てこのシミュレーション小説を読み返してみますと、都市が瓦解する情景の数々が細部に至るまで恐ろしくリアルな映像として伝わってきます。三十数年前、地震による破壊のメカニズムの一端を垣間見せた先見性はさすが、正統SF作家の真骨頂ってとこでしょうか。
政治、民族、国家等のいずれの事柄に関 -
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ただのパニックものではなく、多角度にシュミレーションされた天災パニックものです。私が生まれる以前の作品ですが、本当に時代を感じさせない、今なお通用する洗練された内容です。むしろ今読むべき作品かもしれません。
この作品を読んで一層、昨今の災害ニュースに日本国土に住む民としての危機感を感じるようになりました。創作という域を超えて普遍的な警鐘を発してるかのようで…。予言というよりかは、日本という国のひとつの個性がどんな選択をするのか、国民性や在り方を示唆しているかのような、説得力のある文章にハラハラさせられます。個人的には国土を病んだ龍に喩えた表現がとても印象的でした。何年か後にもう一度読み直したい -
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ネタバレえ?これ、最近の話?!何度もそういう場面が出てきた。1973年に書かれた日本沈没。大地震の状況は2011年のドキュメンタリーのよう。人間の心理、地震後の場景、全て何十年も前に書かれたとは思えないほどリアルで、フィクションであることを忘れさせる。
上巻では関東地方に大地震がやってくる。きっとこのようになってしまうのだろう、そう思わずにいられない。だから、読み進めると怖くて鳥肌が立ってきてしまう。
「想定外のできごとは起こらない」という態度について、何度も著者からの赤信号が送られている。3.11を経験した今、著者の言葉が身に沁みる。
3.11で起こったことを、40年も前に予想していた著者。震 -
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突如宇宙に出現した円筒形の「SS」(スーパー・ストラクチャー)目指して、ある科学者の全人格と実存を搭載したAE(人工実存)が旅をする。SSに到着したAEは、そこが全銀河系から知的生命体が集まって一斉探索を行っていることを知る…。
1992年で断筆した左京翁最後の小説を、その死に際して合本として出したもの。追悼刊行で敢えてこの作品というチョイスが何とも渋い。ただ、そのスケール感やダークマターの存在を設定に組み込んだ翁の先見性、そして符丁と科学用語と文芸作品からの引用をごたまぜにした文体や、『神曲』につながる古典文学とのリンケージなど個個の要素を見ていくと、なんとなく左京翁という人の凄さがおぼ -
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軍事や外交、気象変化や難民の問題など、興味深いストーリーが続きます。上巻の、どどどそうするのよこんなにたくさんのピンチ!というハラハラ感が、下巻の3/4くらいまで解決しません。全てを語らないうちに話が終わるのはこの著者の特徴なのかもしれません。あと私自身の読解力不足とでもいいましょうか。だからきっと読書マスターの方なら「スッキリしたー!」と感じられたのかもしれませんが、わたしはちょっとモヤモヤが残ったので、第一部を読み返して補足してみようかと思います。しかし、エンディングだけは、唐突なストーリーのインフレを見たようで、納得できなかったです。