藤沼貴のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
初めてのトルストイ。
重い内容だったけれど、リアリティな描写、豊かな感情表現で、100年以上前の世界が迫ってくる。においまで伝わってきそう。
今の時代がいかに恵まれてるか。人の尊厳を大切にする社会に近づいている国であればそう。でもこの本のような社会で生きている人たちもたくさんいる。
人間を人間的に扱わなくてもいい立場なんてない。身体的なことだけでなく、精神的なことでは、今の社会でもたくさんの非道がある。
1人ひとりが子どものように純粋に、自分の喜びのために生きるのではなく、神の国と神の義を求めるそんな生き方をすれば、もっと世界はよくなるのか。
自身が復活できる日はくるのだろうか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレトルストイの歴史観が最後や途中に展開されるあたり、司馬遼太郎感ある。最後の解説にあった、丸くなって輪になって平和、というのはなるほどなと思った。アンナカレーニナと違って、ナターシャは女性らしい魅力を失って太った幸せな母になる。プラトン・カラターエフは丸く表現されている。主人公ピエールも肥満。
アンドレイやペーチャは死んで、マリアとナターシャはそれぞれニコライとピエールと結婚して幸せになる。ソーニャがかわいそうすぎる気がするけどそこはあまり描かれない。ギスギスしないんだろうか。ソフィアは賢さを表すから、感情の争いには無縁なんだろうか。
関係ないけど、トルストイという名前は太っているという意味だ -
Posted by ブクログ
いよいよ、ロシアがナポレオンとの戦争に突入する。
作者の歴史感を書き留めておきたい。
・人間の中には2面の生がある、その利害が抽象的であればあるほど自由が多くなる個人的な生と人間が予め定められた法則を必然的に果たしている不可抗力な群衆的な生である。
・人間は意識的には自分のために生きている。しかし、歴史的、全人類な目的の達成のための無意識的な道具の役をしている。
・歴史=人類の無意識的、全体的、群衆的な生
・歴史上の偉人はその事件を示すレッテルに他ならず、レッテルと同じように事件そのものとは最も関係が小さい。
歴史とは抽象化された一面的な解釈である。ある概念を宙吊りにして眺めたとしても真理 -
Posted by ブクログ
ネタバレ私が読んだのは、新しい「藤沼 貴訳」の方です。
どうして、みんな、ナターシャが良いのでしょう。どうも、私は、世間知らずなわがまま娘のような気がして、イヤですね。
マリアやソーニャには、けっこう感情移入して読んでしまいます。マリアは、一生を老いた父と、母のいない甥の世話ために捧げてしまうのでしょうか。ソーニャは、やっぱりニコライとは結婚できないのでしょうか。
それにしても、アナトールとエレンの兄妹は、本当にイヤなやつです。ピエールとエレンとの結婚生活は、今後、どのようになるのでしょう?
そして、時代背景的には、ナポレオンのフランス軍とロシア軍との対決が避けられなくなる状況です。4巻は、き -
Posted by ブクログ
ついにトルストイの最高傑作の一つで大作の『戦争と平和』を読み始めてしまった。最初、新潮文庫と岩波文庫のどちらで読むか迷ったが、登場人物の紹介や家系図、小説の途中で入る「コラム」のある岩波文庫の藤沼貴氏の訳の方を読んでみた。
結論的に言うと藤沼氏の新訳は非常に読みやすい訳で、注釈なども適度に入っており、かなり分かりやすかった。「コラム」が小説の筋を遮ってしまうというようなこともなく、当時のロシアの背景を分かりやすく解説してくれて、ロシア史の専門家以外の人には絶対に役に立つと思う。
さて、物語の方はというと、最初の100ページくらいは登場人物がやたら多く、話の筋をたどるのが非常にやっかいだった(