高橋豊のレビュー一覧
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ネタバレ【再読】
ポアロの秘書ミス・レモンの姉ハバード夫人が寮母を務めるロンドンの学生寮で、盗難事件が相次ぐ。依頼を受けて調査を始めたポアロだったが、女子学生の一人が犯行を認めたため事件はあっさりと解決。だがその後、その学生シーリアが死亡した。当初は自殺と見做されていたものの、それは他殺であったことが発覚する。ポアロは近頃紛失した物品と殺人事件に関連があるものとみて捜査をすすめる。
さらなる犠牲を出した後、ようやくポアロは真相に辿り着く。犯人はナイジェルだった。ナイジェルはリュックの底を加工して薬物の売買を行なっていたが、ある時たまたま警察が寮を訪れた際、発覚を防ぐためリュックを切り裂いた。その現場をシーリアに見られたため彼女を殺した。さらにナイジェルの密輸には、服飾品バイヤーのヴァレリ・ホッブハウスもかんでいた。
シリーズの中では知名度もさほど高くなく地味な作品だが、ミス・レモンに国際色豊かな学生たちにと、登場人物の個性はシリーズ随一。学生寮が舞台ということもあり、気取った登場人物が多いのも特徴。
また、すり替えられた遺書や毒薬などミステリ要素も申し分なし。
●見どころ
・みんな大好きミス・レモン
・『葬儀の後に』に引き続き、目的を隠して潜入したのにバレてしまうポアロ
・唐突な長崎生まれ
・愛すべきアキボンボ -
Posted by ブクログ
ネタバレ【再読】
女医のサラと医学博士のジェラールが旅先のイスラエルで遭遇したのは、風変わりなアメリカ人の一家だった。母親のボイントン夫人は子どもたちが他人と交流するのを許さず、精神的に支配していた。サラは彼らを解放するために策を講じるがことごとく失敗に終わる。
そんな中でボイントン夫人が死亡する。元々心臓が悪かったこともあり単なる病死と判断されたが、ジェラールの私物から注射器が紛失し、さらにはボイントン夫人には注射の痕があった。イスラエルを訪れていたポアロはこの事件に興味を抱き、捜査を始める。ポアロ自身、夫人の息子レイモンドが発した不穏な言葉を聞いていたからだ。
関係者から話を聞いたポアロはそれぞれの供述に潜む矛盾に気がつく。しかしそれらは、自分以外の誰かを守るためについた嘘だった。ポアロはこの事件の犯人を一家以外の者によるものだと考え、ウエストホルム卿夫人を指摘する。彼女は元犯罪者で、以前看守を務めていたボイントン夫人にその秘密を知られていたのだった。
幕開けはポアロが耳にした不穏な言葉。事件までがじっくり描かれているからこそ心理的な分析や推理が光る。精神的に支配される家族というのは現代にも通ずるリアルなテーマだと思う。誰にも望まれなくても真相を追わずにはいられないポアロの矜持を感じる作品。
●見どころ
・たった一日で真相を解明するポアロ
・いい人過ぎるコープ -
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ネタバレ前半はミステリーというより問題のある家族とそこから若者たちをどうにか救い上げようとするサラの物語としてそれなりにのめり込んだ。
ただそこからペトラのキャンプに舞台が移ると、自分の経験と想像力と知識の無さのせいでいまいちそこの情景が浮かんでこなく、画を浮かべながら読書する自分にとってはちょっと辛かった。
それでもこの話好きだなーと感じたのはポアロによる尋問と謎解きが始まってから。
アクロイド殺しのように全ての容疑者が嘘をついているけど、そのほとんどが家族の誰かを疑いながらも庇うために嘘をついていたというのがストーリーとして美しいし、はまらなかったパズルが埋まっていくような爽快感もあり素晴らしい。
真犯人のトリックや動機は地味だけど、まさかの謎解きで部屋に集められた人「じゃない人」が犯人という、アクロイド殺しやオリエント急行ほどじゃないけどちょっとしたセオリー崩しを使っていて、クリスティの捻くれた遊び心というかサービス精神というかをここでも感じた。
最後に前向きな人生を歩み始めた家族を描写してくれてほっこりした。 -
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ネタバレポアロシリーズ⑯
「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」
その言葉は夜の静寂へと流れでて、ややしばらくその辺りを漂い、やがて闇の中を死海の方へ消えていった。
冒頭から不穏な空気が満ちる。
そして、その場に居合わせてしまうポアロ。
家族を抑圧し支配下に置くボイントン夫人。歪んだ家族の形に、ボイントン家の誰もが陰気で無気力でどこか張り詰めていた。
そして、ヨルダンでの家族旅行の際、ボイントン夫人が死んだ。その手首には注射の跡があった。
ボイントン家の誰もが疑わしい。しかもポアロの聞いたセリフが疑念を後押しする。
しかし、ポアロは現場の事実を整理し、関係者の証言を聞くことで、矛盾を見つけ、それぞれの嘘を見つけ出す。
そして提示された真犯人。全く考えもしなかった人物で驚かされた。
事件が解決した後、どこまでも嫌な母親だったボイントン夫人について、次女のジネヴラの言葉が印象的だった。
「お母さんは変だったわ。みんなが幸福になった今思うと、なんだか可哀想に思えてくるわ。お母さんの人生の望みは叶えられなかったのね。それはお母さんにとっても難しかったのでしょうね」 -
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ポアロシリーズ。
名探偵の悲しい宿命とばかりに、旅先でも事件に遭遇しちゃうポアロ。エルサレムを訪れたら、そこで殺人事件の捜査依頼を受けることに。
冒頭はなんとも不穏な台詞で幕を開ける。
その台詞は夜のしじまに流れ出て、あたりを漂い、やがて闇の中を死海の方へ消えていった、という表現…なんて痺れる詩的な導入なんだろう。。
母親がサディスティックで家族を支配的に束縛しているボイントン家の関係性と、この家族と複雑に絡み合う外部の人たちとの利害関係が面白い。その後に発生する殺人事件が単調にならず、それを鮮やかに紐解く様子がとっても痛快だった。
同じ中東の旅情モノ『ナイルに死す』と雰囲気が似ていてなかなか事件が起きないが、本作は序盤でポアロがほとんど登場しないし、家族それぞれの背景がしんどくて前半は読むのがつらかった。中盤で事件が起きたあとは、ようやくポアロが活躍してくれるのでグイグイ読めた。いやぁ、やっぱ凄いな。鋭い分析力がハンパない。
それにしても解決編では、緊張感高まる推理の連続と予想外の展開でホント驚いた!
えっ?えっ、そこ?まじかー!?って一人で盛り上がってたww
エピローグのシーンが、晴れやかな気持ちにさせてくれる満足な作品でした。 -
Posted by ブクログ
『アガサクリスティ完全攻略』で本書が★5になっていたので読みましたが、そこまでではなかった。というか、本書の前に読んだ『葬儀を終えて』があまりにもよ過ぎたのかも知れません。
「いいかい、彼女を殺してしまわなければいけないんだよ」という会話をポワロがホテルで耳にしてから物語が始まります。エルサレムへの旅行中のこと。
その話をしていたのは、ボイントン一家の次男と長女。ボイントン一家の母親(長男・次男・長女にとっては継母)は子ども達が幼き頃からマインドコントロールして支配し、反抗できないようにしてきた。それなりに年を重ねているのだから、もう少し抗ったらいいのにと思うけれど、母親の言いなり。そこにもどかしさを感じるけれども、それがマインドコントロールの怖さなのだろう。
その母親が殺された。読者は当然子ども達の誰かだろうと予想するだろう。しかし、アリバイや最後に生きている母親を見た時間からすると、嘘をついているのは〇〇ではないかと思う。
また一方で、ある人物の証言を聞いていたら、非常に違和感があったのだけども、その人の社会的地位や言動からすると、その違和感は考えすぎなのかもしれないとも感じる。
読者の思い込みや先入観を、本作も巧みに覆している。しかし、やはり『葬儀を終えて』のほうがより楽しめた。