高橋豊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『アガサクリスティ完全攻略』で本書が★5になっていたので読みましたが、そこまでではなかった。というか、本書の前に読んだ『葬儀を終えて』があまりにもよ過ぎたのかも知れません。
「いいかい、彼女を殺してしまわなければいけないんだよ」という会話をポワロがホテルで耳にしてから物語が始まります。エルサレムへの旅行中のこと。
その話をしていたのは、ボイントン一家の次男と長女。ボイントン一家の母親(長男・次男・長女にとっては継母)は子ども達が幼き頃からマインドコントロールして支配し、反抗できないようにしてきた。それなりに年を重ねているのだから、もう少し抗ったらいいのにと思うけれど、母親の言いなり。そこにもどかしさを感じるけれども、それがマインドコントロールの怖さなのだろう。
その母親が殺された。読者は当然子ども達の誰かだろうと予想するだろう。しかし、アリバイや最後に生きている母親を見た時間からすると、嘘をついているのは〇〇ではないかと思う。
また一方で、ある人物の証言を聞いていたら、非常に違和感があったのだけども、その人の社会的地位や言動からすると、その違和感は考えすぎなのかもしれないとも感じる。
読者の思い込みや先入観を、本作も巧みに覆している。しかし、やはり『葬儀を終えて』のほうがより楽しめた。 -
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ミス・マープルシリーズ③
静養のため、妹のジョアナと共にリムストックへとやって来たジェリー・バートンは、誹謗中傷が書かれた差出人不明の手紙を受け取る。バートン兄妹は一笑に付すが、この町では以前から人々を誹謗中傷する手紙が出回っていることを知る。
そんな中、手紙の内容を苦にして、自殺者が出てしまう。
誰が、こんな手紙を書いて町中にばらまいているのか?
なぜ、こんなことをしているのか?
自殺か他殺か?
田舎の個性的な面々は、誰もが無関係なように見えるが、誰もが怪しくも見えてくる。
謎ばかり深まる。
しかし、ラストにマープルが登場し、謎の根本をシンプルに示す。
うわぁ~スッキリ!視界が一気にクリアになった。そして、全てのピースがはまる爽快感!
バートン兄妹のロマンスもまた良かった〜 -
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1938年の作品
エルキュール・ポアロシリーズ長編16作目。
あらすじ
エルサレムを訪れたポアロがたまたま耳にしたのは、「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」という男女の囁きだった。
ヨルダンに旅行に来たツアー客の1人である医師のサラ・キングは妙なアメリカ人の家族と居合わせる。その家族は揃いも揃って家長のボイントン夫人の権力の支配下にあり、自由を奪われていた。サラは、息子のレイモンド・ボイントンと友人になり、彼らを救いたいと考えていた。しかし、かつて刑務所の看守だった夫人は、子供たちにサラとの交流を禁止する。腹を立てたサラはボイントン夫人を非難するが、夫人は「私は、行動も名前も顔も、何も忘れたことはない。」と謎の言葉を残した後、ペトラ旅行で何者かに殺害された。
家族全員が容疑者の中、エルキュール・ポアロは犯人探しを開始する。
中近東シリーズのうちの一つですが、異国情緒や旅の雰囲気が感じられるのは「ナイルに死す」や「メソポタミアの殺人」の方かな?
殺された人物が、死んだ方が皆のためになるどうしようもない悪い奴、というところからして、「オリエント急行の殺人」と同じような展開か?と思わせらます。作品内でも、オリエント急行のときのように見逃してくれ、というようなセリフが出てきます。が、さすがクリスティー。オリエント急行とは全然違う展開になっていきます。
1938年という時代を生きた、さまざまなタイプの女性について想いを馳せることができる深みのある作品。
医師として自立している強い女性、サラ・キング。
元看守として家族の中で権力を誇示するボイントン夫人。女ながらに政治家として活躍しているウエストホルム卿夫人。ウエストホルム卿夫人のような活動的な女性に憧れながらも、自分では何もできないアマベル・ピアス。母親のせいで家族以外とつながりを持ったことがなく、外に出るのを恐れているキャロライン・ボイントン。精神的に不安定で、思い込みの激しいジネブラ・ボイントン。
それに比べてこの作品に出てくる男性たちはなんとも弱々しく自分の意志がない(毒親のせい?)
女性ながらに小説家として女性がまだまだ生きづらい時代に生きた、アガサクリスティならではの視点を感じます。
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Posted by ブクログ
こちら、正直あまり期待せず(未読のマープルものだから……)くらいのテンションで読み始めたのですが、クリスティー作品の中で一二を争うくらい好きかもしれません(”面白い作品”でなく”好きな作品”部門で)。なんだかずっとニコニコしながら読んでいました〜(´ω`*)
そもそもあらすじの「ミス・マープルが若い二人の探偵指南役を務める」からしてうーんという感じなのですが、読み終わってみればマープルさんの出番はほぼナシ!なんなら、途中までノンシリーズだと思い込んでいたくらい。
ですので、マープルものだと意気込んで読むとちょっぴり拍子抜けかもしれませんね。ノンシリーズにマープルさんがゲスト出演、くらいな期待値だと嬉しいサプライズという感じです。
なにが良いって、バートンの語りが良い!
「この物語の書き手」の時点で少し警戒してしまったのですが、まったくの杞憂でした。というか、本書に関しては(こうかな?)と予想したことは何一つ当たりませんでしたが(いつものこと)。
妹のジョアナ共々、具体的なバックボーンはよくわかりませんが裕福な暮らしで育ちがよく、田舎の町に越してきても人々を偏見の目で見ることなく、実におおらかに構えているのでこちらまでなんだかゆったりした気持ちに。
特に、「バートン家の者たちは、ここんところ売れ行きが悪いのね!」と慰め合う様なんて、なんて仲がよく、そして二人とも人がいいんだろうと感心してしまいました。
その他の登場人物たちも、たしかにクセはあるけども基本的に善良な人々で、解説にある通り、こんなに好きになっちゃったのに裏切られたらかなしい……とハラハラする始末。よっぽどセント・メアリ・ミード村の方が毒があるような……笑
肝心の謎解きもスッキリ解決して、こーんなに円満に収まるミステリーも珍しいのではないでしょうか?
ミステリーの中では浮いてしまいがちなロマンス要素も今回はとっても好ましく描かれていて、もうなんの不満もありません。
再読の機会があれば、無駄に疑心暗鬼になったりせず、このハッピーな物語を存分に楽しみたいと思います〜。 -
Posted by ブクログ
「わたしは決して忘れませんよ。よく憶えておいてね。わたしは何一つ忘れていませんよ」
ほんとうのホラーは、人のこころの中にある。
恐るべきマザーにより支配されたポイントン家の人々。
第一部はこの話の主人公たちがこの物語の彩りを掻き回すように着色する。
ここでのポワロはまるで“ひょっこりはん”のように、物語のちょっとした端っこに顔を出す程度。
事件発生後の第二部になり、ポアロは本来の位置に着く……。
アガサ・クリスティーのミステリーは、本当に色々な展開を楽しむことができる。
最終的には謎の解明になるが、その結果がそんなに重要ではない時もある。
このお話はまさにそう、過程での登場人物のあやふやさがいい。
良かったです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かったなあ…
この本を原作とした三谷幸喜のドラマが再放送するのを知って読んでみた。三谷幸喜は「地味だけど面白い」って言ってたけど、たしかにめちゃくちゃ面白かった。
個人的には『ナイルに死す』や『メソポタミヤの殺人』より好き。
作中に登場するエルサレムやペトラの風景がピンとこなかったので、ネットで画像検索しながら読んだら楽しかった。
あと三谷幸喜のドラマのキャストを見て、登場人物のイメージを掴みながら読むのも楽しかった。
ただ、当時のヨーロッパの人の中東地域への価値観や宗教観はやっぱり理解できてないので、そこは仕方ないかな〜という感じ…
「彼女を殺してしまわなければならないんだよ」というセリフを一番最初に置いて、様々な登場人物がボイントン家に関わり合っていく…旅行中の出来事を通して、家族全員の気持ちが犯行へ傾いていく、その過程も面白かった。
そしてそのすべてが伏線で、鮮やかに回収していくのが本当に気持ちいい。
真犯人は最後の最後までわからなかった…