高橋豊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ジェリー・バートンは飛行機事故により田舎町への療養を勧められ、妹のジョアナと共にリムストックにやってきた。よい空気と静かな生活、何もしないこと。この町はそんな生活にうってつけだろう。
だがジェリーとジョアナはすぐに騒動に巻き込まれてしまった。家を決めてから数日後に匿名の手紙が届き「二人は兄妹ではなくて愛人関係」とほのめかされていたのだ。(もちろんこれは事実無痕、二人は健全な兄妹です!)
どうやらリムストックでは、しばらく前から町の人々にこのような手紙が届いているという。誰と誰が不義の関係にある、◯夫人の子供の父親は夫ではない…、でっち上げでえげつのない内容ばかり。
リムストックの人々はひどいいたずらだと相手にしないのだが、これから起こるかもしれないもっと大きな事件を気にする人もいる。「当てずっぽうだとしても、もしかしたら本当のことを言い当ててしまうかもしれない、その時はもっと大変なことが起きるかもしれない」
その懸念通り、ついに死者が出てしまった。ある人物が中傷の手紙を受け取って自殺したのだ。
ジェリー・バートンは、外部から来た信頼の置ける人物ということで警察の取り調べに同行するようになる。
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ミス・マープル物のはずだけれどなかなか出てこない。これはきっと最後にだけ出てきて事件解決するんだろうなと思っていた。そうなると、いつどうやって出てきてどうやって事件を解くのかを考えながら読む。
ミス・マープルが出てこない分、ジェリーとジョアナの都会人田舎ライフと、それぞれの恋愛模様が繰り広げられます。この兄妹は結構な資産家で教育もあり交流関係も広く都会らしさが板についているので、正直言って恋愛に関しては「この人たちが田舎町の人と結ばれてうまくいくのか?」という気はした。それでも最後に恋愛がまとまるとなんだかうまくいくような気もする、さすがアガサ・クリスティー。
ミス・マープルの田舎町が舞台の物語では、一見穏やかな町で繰り広げられる水面下の人間関係、そして事件を起こさないために住人同士がゴシップ噂話でお互いを監視し合っている様子が書かれます。リムストックでも、いつ、誰が、どこで、何をしたか、がお互い筒抜けなのである意味アリバイは証明しやすい・笑 それでも人々の噂を逃れた秘密もあり、その二面性を持った人物こそが今回の事件の真相になっている。
ミス・マープルは「すべてを見ていて、正しく判断する。人間に甘い期待hせず悪い面を見る」という特徴があり、特に故郷セント・メアリ・ミードでは「ミス・マープルに知らないことはない」で事件の真相を見向きます。
今回はまったく外部のリムストックで、事件も一通りが置きてから呼ばれて登場。今回のミス・マープルは、町の住人ではないためにむしろ町の人々さえも気が付かない人間関係や人が隠していた面が見えたのですね。
殺人などひどい事件ではあるけれど、最後は抑圧されていた人たちが開放されたり、新しいことにチャレンジしたり、最後はスッキリ前向きになっていました。
そしてこの題名『動く指』について。解説の久美沙織によると「MOVING FINGER」は「不気味なこと、犯罪をを引き起こす」ようなニュアンスがあるらしい。そして久美沙織によると「いつも編み物をして指を動かしているミス・マープルとの、動く指対決」とも考えられるようだ。
犯人と、犠牲者はこの中にいる!
●ジェリー・バートン:怪我療養のためリムストックの「リトル・ファーズ邸」を借りた。
●ジョアナ・バートン:ジェリーの妹で兄に同行した。美人で資産のある都会女性らしくおしゃれで物怖じしないが、今でいうと「ダメンズ」でしょっちゅう恋愛・失恋騒動を巻き起こしている。
●エミリー・バートン:リトル・ファーズ邸の持主の老婦人。母親が強烈婆さんだったようで、姉妹たちを完全支配下に置き不道徳を絶対悪と教え込んだので、家族の最後の一人のとなった今でも型にハマったこと以外はできないようだ。
●パトリッジ:リトル・ファーズ邸のお手伝い。エミリー老婦人の女中だったので都会から着たジェリーとジョアナとはちょっとやり合ったりする・笑
●ディック・シミントン、モナ・シミントン夫妻:事務弁護士とその妻
●ミーガン・ハンター:モナと、最初の夫の間の娘。20歳だが若干知能が遅れてる?のか身だしなみに構わずちょっと変わった言動をする。だがそれは実父が非道い男だったという事と、今の家庭でのけ者にされていることが関係しているようで、鋭い感性も見せる。ジェリーとジョアナは彼女を気遣い様子をみたり家に誘ったりしている。
●エルジー・ホーランド:シミントン夫妻の二人の少年(ミーガンの異父弟)の家庭教師。とても美人、だが平凡な女性でもある。
●アグネスとローズ:シミントン家の女中たち
●オーエン・グリフィス:医師で、ジョアナの美貌にドギマギしているが、女性慣れしていない。
●エメ・グリフィス:オーエンの妹で大変精力的な女性。本当は自分が医師になりたかったのに、両親は娘であるエメには教育費用を出してくれなかった。今では兄の手伝いをしたりで、リムストック少女団を率いたり、女性の権利、女性も社会に!女性も仕事を!とフェミニズム活動を行っている。
「女性も社会参加!教育!」というのはまさしくごもっともなんだが、小説内では相手の都合や状況を考えずに自分の考えをゴリ押しするので賛同はしづらい(^_^;)
●ケイレブ・デイン・カルスロップ、カルスロップ夫人:教区牧師夫妻。カルスロップ氏は日常会話にラテン語を混ぜるので町の人達は理解できない(^_^;)。夫人はちょっと変わった目線を持っていてある意味町の人達から畏れられている。
●パイ氏:修道院長で古美術品収集家。リムストックの人たちからちょっと煙たがられている。
●クリート夫人:魔女と畏れられている。本人もなんか自分は知ってるよのねーという雰囲気を出す。最初は匿名の手紙の犯人ではないかと思われていた。
●ナッシュ:郡警察の警視。ジェリーに情報収集などの協力を頼む。 -
Posted by ブクログ
マープルシリーズ第三弾。
負傷した体を癒すために田舎に越してきた、裕福な若い男性の語りで物語がスタート。
だが、読めども読めどもマープル登場せず。
ただマープルの登場を心待ちにはしてたけど、事件で田舎が揺れ動き、人々が疑心暗鬼に陥っていく様子と、その一方で成り行きが気になるロマンスの進行がいい塩梅で描かれていて面白かった!
(『あしながおじさん』のような展開もあって、そこは本当にキラキラしてるのだけど、ずっと女の子のことを犬に喩えて可愛がってるから、途中まで本当にロマンスなのか半信半疑だった。
犬に喩えるたびに「失礼www」と笑ってしまった。)
どの登場人物も怪しく思えてきて、誰が犯人でもあり得そう…と思わせられるのが、クリスティの巧みなところ。
マープルは専門的な手腕で事件を解決するわけではなく、あくまで先入観を排除した視点の鋭さで見抜くだけで、解決への糸口はすべて描かれているから読者にも材料は与えられてるのに見事に翻弄されてしまうんだよなぁ。
だからこそ面白い。
今回はキャラクターのエピソードが多くて、今までに比べて好きなキャラクターがたくさんいて、そういう面でも読むのが面白かった。
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Posted by ブクログ
「いいかい、彼女を殺してしまわなければいけないんだよ」
こんな会話を盗み聞きしてしまうポアロ。休暇のエルサレム旅行中にだっていうのにさすがに名探偵!事件から寄って来ちゃう!
しかし物語の中盤までポアロの出番はない。話はこの会話の主であるレイモンド・ボイントンと、キャロル・ボイントン兄妹へと移る。
兄妹が殺そうと決意したのは、自分たちの継母(父の後妻)であるボイントン老夫人。彼女はボイントン氏の死後、家族の上に君臨し、心理的に抑えつけ、絶対に逆らえないと精神に叩き込んでいた。ボイントン一家はこんな感じ。
・ボイントン老夫人:昔は刑務所の女看守だった。そりゃーコワい。根っからのサディスト、独裁者。ボイントン氏の死後、氏の資産管理人として子供たちを管理している。
・レノックス・ボイントン(20代半ば): ボイントン夫人の長男(血は繋がっていない)。老夫人に精神を支配され逆らうことができなくなっている。
・ネイディーン・ボイントン :レノックスの妻。看護師資格を持っているが実家は貧しい。そのためボイントン老夫人は自分の手駒になると思って結婚させた。だが芯の強い女性で、夫のレノックスに共にボイントン家を出るように説得を試みている。
・レイモンド・ボイントン(20代初め): ボイントン老夫人の次男(血は繋がっていない)後述の「サラ・キング」と淡い恋が芽生え、そのため母からの支配から逃げる決意をした。
・キャロル・ボイントン(20代初め?):ボイントン老夫人の長女(血は繋がっていない)兄と彼女は、まだ母に逆らおうという気力がある。
・ジネヴラ・ボイントン (ジニー。10代後半?):ボイントン老夫人の次女(老夫人の実子)生まれたときから母に支配され完全に精神不安定。「私は本当は王族なの」などと現実逃避をしている。レイモンドとキャロルが「義母を殺そう」と決意したのは、ジニーを助けるため。
そして舞台はヨルダンの首都ペトラに移る。
旅行者一行はこちら。
・サラ・キング:前半は彼女が主人公のようなもの。イギリス人女性の若い女医。旅行で一緒になったレイモンド・ボイントンと淡い恋が始まりかけ、ボイントン老夫人のサディスト支配から一家を引き離そうとする。
・テオドール・ジェラール:著名なフランス人心理学者。
・ジェファーソン・コープ: アメリカ人で、レノックスの妻ネイディーンに愛を捧げて、ボイントン一家とも交流を結んでいる。
・ウエストホルム卿夫人:アメリカ人で、イギリス貴族と結婚して下院議員となった。激烈な性格!
・アマベル・ピアス :いわゆる「悪い人ではないがうざい人(^_^;)」
ここに、ポアロもいます。
そして旅行者はヨルダンの首都ペトラ観光に行く。
さあ!ボイントン家の事情を丁寧に書いた一部の最後で、いよいよボイントン老夫人が毒殺されましたよ!
(…不謹慎な書き方ですが、ミステリーってエンターテイメントですからね。冒頭で「彼女を殺さねば」と言い会話がありながら殺されなかったらむしろ反則(^_^;)
老夫人の死に対しての捜査は、アンマン警察署長のカーバリ大佐が行うことになった。彼は旧友のポアロに捜査協力を依頼する。
被害者は嫌われ者。ポアロ及び我々読者は、ボイントンの子供たちが母を殺したがっていたことも知っている。するとボイントン一家はだれが犯人でもおかしくないし、家族同士で犯人をかばう、つまりみんなの証言が嘘だとも考えられる。
しかし本当にボイントン家の誰かによる殺人なのか?カーバリ大佐も言っていたけど「レイモンドが犯人というのはあまりにも出来過ぎている」し、他の旅行客だって個性ありすぎる人たちだよ。やっぱり推理小説としては、こんな個性的な人たち出して「ただの同行者で事件に関係ありません」ってことはないよね?
さあ、読書として楽しくなってきました!
第一部だけでは、精神的な支配者と被支配者の関係がかなり重苦しかった。推理小説の流れとしてボイントン老夫人は死ぬんだろうけど、死んだからと言って子供たちは社会復帰できるのか?などとも心配しましたよ。
そして主人公のような立場にいるのが部外者で自立しているサラ・キングのため、ボイントン老夫人が客観的には哀れな女だということも見抜かれる。独裁者気質を持ちながら、ただ自分の子供達にだけしか君臨できないのだから。「私に見えている『哀れな女』という姿をボイントン家の人たちにも見えればいいのに」
一部だけならそんな重苦しい人間心理劇場として成り立つし、この時代の女性の社会的立場の様子も読み取れる。
ボイントン家の女性たちが家を飛び出せないのは、何の後ろ盾もない女性が生きていくのは難しいから。
そこへイギリス人女医のサラ、アメリカ人猛女のウエストホルム卿夫人、仕事は持ってるけど物事を見る目は無いピアス夫人が出て、「女性が社会で活躍することが大切」「社会が良くなるなら男女関係ない」なんて話になります。
さらに、アメリカ人で良い人のコープ氏に、フランス人で物事を”セックス”重視で見るジェラール博士など、国際色豊かな登場人物が、国民性による性質の違いを見せてきますね。
でもやっぱり読者としてはミステリーの楽しさも期待しますよね。そこで第二部はポアロの殺人推理が繰り広げられてエンターテイメントとして楽しい。
そして終盤では自分たちを抑えつけていたものから自由になり、それぞれが自立できた人々のその後が書かれます。
私としては「ボイントン家の人たちは、老夫人が死んでも今更性格変えられないし、社会生活できるの?」と懸念していたのですが、それぞれ寄り添う人がいるため本来の快活さを取り戻せたのですね。 -
Posted by ブクログ
【マープル】
1943年マープル3作目。クリスティー53歳。
前回読んだ『カリブ海』よりも20歳近く若い頃の作品。
クリスティー自身が選ぶベスト10に入っている。
事件は地味なんだけどめちゃくちゃ面白い。
キャラクター、ミスリード、人間ドラマ、演出全てが好きで一気読みだった。
驚くことにマープルは最後の一瞬しか出てこない。でもその一瞬で警察を含め全員が必死に考えてもわからなかったことが、マープルはすぐにわかってしまう。マープルが言った言葉で、全てが一気に解決に進む。
始めからマープルが出ていたらこのカッコよさと気持ち良さはないので、クリスティーは演出も本当に上手い。
・馬のような顔で、犬のような性質。
穴のあいた靴下を平気で履くような誰からも愛されてない娘。
・都会ロンドンから療養のために田舎セントメアリミードへ引っ越してきた上流階級の兄妹。
他にも愛すべき個性の強い登場人物がたくさん出てくる。でも誰かは犯人なわけで、私の好きな人物が犯人だったらどうしよう…と解説にも同じことが書いてあったけど、私も謎の心配をしてしまうくらい物語に入り込んでしまった。
現在私のNo.1『ホロー荘の殺人』のように、この作品もこの世界観が好きで読み終わるのが寂しかった。いや、どれも面白くてもう順位を決めるのが難し過ぎる。
でもこの地味な面白さは今だからわかるような気がする。
マープルを初めてAudibleで読んだ時は、マープルと噂好きなセントメアリミードのことが想像できなくて面白さに気付けなかった。
ドラマ版を観て一気にその世界観に入れたので、イギリスの田園風景を全く知らなかった私には小説だけでは想像できなくて映像がものすごいありがたかった。
今となってはクリスティーのどのシリーズよりもミス・マープルシリーズが好きになってる。
マープルは気が進まなくて読んでいなかったのに、今ではマープルを読まずに残していて良かった!と心から思う。
この作品は読後感が良くて面白くて幸せな気持ちになった。読書でこんな幸せ気持ちにさせてくれるクリスティーには本当に感謝しかない。
マープル長編作品はあと残すところ4作品になってしまった。もう好き過ぎて我慢出来ないので、マープルを連続して読んでしまおう。
★10
ここからネタバレすみません。
ラブロマンスは全然好きじゃないんだけど、この作品では映画『プリティーウーマン』みたいな感じがたまらなく好きだった。
馬のような顔で、犬のような性質、穴のあいた靴下を平気で履く、誰からも愛されていなかった娘が、どのように変わっていくかは読んでからのお楽しみ! -
Posted by ブクログ
【ポアロ】
「いいかい、彼女を殺してしまわなければいけないんだよ」すごいセリフからはじまる。
三谷幸喜さんの本で「地味だけど面白い」と紹介されていて、2021年に三谷さん脚本、野村萬斎さん主演でドラマ化されている。三谷さんファンなのに知らなかった(^_^;)
ボイントン一家はみんな何かがおかしい。
母親にマインドコントロールされている家族。
『春にして君を離れ』くらいの毒親かなと思ったら大間違い。自分の家族が苦しむのを見て喜ぶ本物のサディスティックな母親。こんな母親だったら地獄。
犯人は自分の中で2パターン予想していたけど、どっちも大ハズレだった。予想はハズレた方が嬉しい。
予想できない結末で、なおかつ読後感が最高なのは、やっぱりさすがアガサクリスティ。アガサ作品は有名所しか読んでなかったけど、そんなに知られてない作品でもやっぱり面白い。
もっとクリスティー作品を読みたくなって、『葬儀を終えて』読み始めているけど、これもすごく面白い!Audibleの時間が楽しみになった。
三谷さんの『死との約束』は今度FODで観たい。アガサとの違いも楽しみだ。
Audibleにて。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ人といい、事件に関連する(?)物といい、とにかくゴチャゴチャいっぱい出てきて。
そこがすごく面白かった(^^ゞ
クリスティーの晩年の小説らしいけど、その頃になると、いかに目先の変わった話を書くか?みたいに書いたのかもなぁーなんて考えるのも楽しい。
いわゆる本格ファンからはしたらトリック的にも、事件の地味さから言っても、小説的にもイマイチなんだろうけど。
自分は、こういう、一見大したことに思えないんだけど、でも、日常に紛れ込んできた違和感を探っていくと事件が露わになっていく…、みたいな話が大好きだったりする(^^ゞ
ただ、そういうタイプの話だと、即物的な犯罪の犯人より、愛憎がからんだ動機で起きた犯罪みたいにした方がよかったかなぁー。
ていうか、犯人が普段見せている顔と、実際の顔で、ちょっと無理やり感があるような?w
ゆえに、「え、犯人ソイツなの?」と、(逆にw)意外に思った反面、「ちょっとストレートすぎない?」なんて思っちゃったり(^^ゞ
ま、ストレートとはいえ、微妙に複雑に絡み合ってるんだけどさ。
ていうか、犯人が言っていたことで、「それはないんじゃない?」と感じたことが、そのまま伏線(たぶん)になっていて。
「あ、そういうこと!」と笑ってしまった。
ラストは、妙にほのぼのw
そういうお決まりもクリスティーのいいところ。 -
購入済み
久しぶりにクリスティーが読みたくなって購入しました。今の時代のエログロやバイオレンスの無い、上品な、しかし人の思惑や怨念のドロドロと渦巻くクリスティーワールドで大満足です。
犯人はそうくるか!でしたし、最後はみんなが上手くいく大団円で読んでいてスッキリしました。 -
Posted by ブクログ
まさかアイリッシュがこんな悲恋の物語を書こうとは思わなかった。
冒頭、別人になりすました若き淑女の登場から、度重なる齟齬から発覚する、花嫁入替りの事実。その事実が発覚すると同時に主人公の巨万の富を持ち出して逃亡する花嫁。復讐の鬼と化した主人公は1年と1ヶ月と1日を費やし、とうとう彼女を捕まえる。しかし、そこで彼女の巧みな話術によって誑かされ、結局彼女とまた2人の生活を始める。それが彼の正に人生の大きな過ちの始まりだった。
花嫁の捜索を頼んだ探偵を自ら殺めることで闘争の日々が始まり、拠点を転々とし、ついに私財も底を尽く。彼女に唆されて博打ぺてんを仕掛けたものの、呆気なくばれて、ついに一文無しになり、彼女は昔付き合っていた悪党に手紙を送り、とうとう主人公の保険金殺人を図るのだが・・・とまあ、波乱万丈な物語で特に主人公が復讐を成し得なかった辺りから正に先の読めない展開となり、主人公は人生の落伍者へと、花嫁は希代なる悪女へと転進していく。
この花嫁、ボニーの造型が素晴らしい。
時には天使のような、時には状況の犠牲になったか弱い乙女のような、そして時には人生の酸いも甘いも経験し尽くした売女のような女として描かれ、しかもそれが全て違和感なく1人の女性としてイメージが分散しない。特に最後の辺りで主人公に毒殺を図る鬼気迫るやり取りは背筋が凍りつく思いがした。
こういった人物造型含め、心情を暗示させる風景描写、移ろいゆく人々の心情描写がアイリッシュは抜群に上手い。真似をしたい美文・名文の宝庫である。
恋は惚れた方が負けである。それは自分の人生経験でもそうだった。
しかしアイリッシュは最後までその愛を貫くことで人間は変わる、そんな美しくも儚い物語を綴ったのだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公は、元警官だという。
全体を読んでみると、元警官らしいところにあまり気がつかなかった。
元警官らしさが少しないのは、アガサクリスティが警官の経験がないためだろうか。
あるいは、親しい人で警官がいないのだろうか。
少し読み進むうちに、犯人がある女性ではないかと心配になっていった。
あまりにも、犯人は男性だと決めつけていることからだ。
また、アガサクリスティの小説では、思わぬ人が犯人のことがあるので、
この人ではないかと思い、めぼしをつけながら読み進んだ。
殺人は容易だという題目だが、物語が始まってから起こった2件の殺人は、
主人公の知らない間に起こっている。
現場検証にも行っていない。
主人公の目前で起こった殺人は1件だけ。
最後の殺人は食い止めれた。
殺人は容易ではないことが分った。