柴田哲孝のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「いい話・・・だったのか?」というのが読み終わった際の感想。
300ページ以降の後半部分は物語がスピーディに上手く流れ、面白く読めたが、前半部分はイライラさせられる展開が続き、300ページ手前くらいで「もうこのあたりでクライマックスに向かってよいのではないか。500ページは長すぎる」と少し辟易する気分があった。
評価としては前半は☆2、後半は☆3。総合では☆2.5というところだと思う。
前半部分で「こんな作品だったかな?」と思ったことは、これまでのシリーズで登場人物がこんなに頭が悪く描かれていただろうかという点だ。
息子の雄輝はサラサに無意味に付きまとったあげく、家まで行き、扉越しに会話もできるのに何も伝えず事態をややこしくする。その後の行動も悪い意味で少年のようだ。職を持ち、学もある二十代後半になる人間のすることとしては随分幼稚な感じがした。
息子の恋人の夏花も簡単に学内を徘徊する不審者有賀を雄輝の父親と信じたり、サルサ誘拐事件のファイルは全く不審に思わずその写真だけを見てショックを受けるなど、これは純粋というより白痴に近い。ここまで頭も要領も悪くする必要があっただろうか?と疑問に思った。
十代の子ならこの描写もおかしくもないが、どちらも研究員ということで、いくらなんでも年齢と中身が乖離しすぎている。もう少しまともな対応をとらせるか、彼らをもっと若く設定しても良かったのではないか。
警察官も無能すぎないだろうか。
最初のトラック運転手の事件は野犬が犯人だとしても噛み殺すまでするのは異常だし、野犬による死亡事故なんてよっぽどの田舎でもそうそう起こることではない。病院での絞殺も窒息させるのではなく、首の角度が変わるほどの折り方は異常な様子になる。死人も出ているのだし「よくある殺人事件ですね」のような態度では終わらないだろう。
志摩子の家の空巣への対応も解せない。冷蔵庫の中身を素手で喰らい、部屋で牛刀を振り回して放尿する変質者がその牛刀を持ったまま逃走している。緊急手配とはいかずとも周囲の学校は休校か登下校時に非常体勢をとるレベルの事件だと思う。少なくともやる気のない対応で済むような案件ではない。
後半ではいらだちはしないが、ご都合主義が過ぎる部分が目に付く。
前半では無慈悲で獰猛な様子を見せたダンサーが、後半ではなぜか急激におとなしくなる。前半の容赦のなさを考えれば、後半の幼い少女(と母親)や老夫婦が惨殺されていておかしくない。動物は飢えやケガで追い込まれている方が攻撃性は高まるし、特に老夫婦の場合は作中でも言及されている"夜間"という殺しの条件にも一致している。「青柳元彦の遺伝子が入ってなければ賢いよい子だった」というお涙ちょうだいの感じを急に出してきたことは興ざめだった。こんなことなら無駄に長い前半からところどころで両面性を匂わせておけば伏線となったのにと残念に思う。
また、雄輝のことを誰も責めず、本人もまったく気にしていない様子であるのも気に入らない。
雄輝がもっと早い段階で情報と懸念を志摩子に伝えていれば、その時点では彼女が本気にしなかったとしても空き巣事件で心変わりして警戒しただろうと思う。志摩子が大切な者も物も失わずに済んだ可能性はある。
この点の落ち度はかなり大きいと思うので、ソコに触れずにみんなが仲良くなるのはなんともご都合主義だなぁという気がする。
私の中ですっかりこの息子の印象が悪くなってしまった。
本シリーズの続編として『Wolf』があるが、ジャックは死んでしまったし、息子の雄輝も出るようなので読まなくても良いなと思っている。
相棒であるジャックが去り、主人公有賀の未来に明るい光が差しているタイミングでシリーズを終わりにする。 -
Posted by ブクログ
元々タイトルだけで読んでみようかと思い、ベトナム戦争をテーマにしたものかどうかは全然知らずに読んだのだけど、ストーリー展開は、まあ小説だから出来過ぎなんだけど、面白かった。ヘロインはともかく、戦争で起きる現地の民間人の虐殺の問題は、自分でも周りでも経験した人はいないし、実際にそういう場面に遭遇したら自分はどうなるのか、わかったモンではない。でも、今回の参院選で、世の中は、そういう立場に自分が置かれるかもしれない未来を選んだ訳で、この小説の最後にあるように、この日本に住んでいても、ロクな未来が待っていないなら、どこか違う国に移住するのもアリだななんて、それも実現性のかなり低いことに思いを馳せてしまった。
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Posted by ブクログ
六篇の短編集。
怖い女。この物語に出てくる女達は、普通は、一般的には怖いと思われる存在であろう。狂気じみたキチガイと言っても差し支えない。
が、しかし、この「普通は」「一般的には」ってのが癖もんで。
道を歩けば、電信柱がそこらじゅうに散見されるように、この類のメンヘラはありふれてる。
法の弾劾場に立たぬ限り、一見狂気じみたここで物語れる女性達は日常に溢れている。
メンヘラって言葉が流布されるようになってから、相当イカれてても、ある種の許容というか麻痺が生まれてるな。
いや、これらを普通だと感じてしまう自分が感覚ズレを起こしてるのか...
短編の中での一番ごとに緩急をつける手腕は、さすが柴田氏。ではあるが、タイトル程の恐怖は覚えず。
やはり、個人的には柴田氏は長編の方が好みだな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ戦後の動乱冷めやらぬ時期、「松川事件」「三鷹事件」と共に国鉄の3大事件と呼ばれる謎多き事件。いつかは読みたいと思い続けていた「下山事件」のノンフィクション。
昭和24年7月、GHQの占領下にあった日本で、国鉄総裁だった下山定則が轢死体で発見された「下山事件」。自殺説、GHQ、CIAの陰謀説、大量馘首に端を発した労働組合による殺人、ソ連による暗殺説など様々な説が取りざたされながら、今も真相は闇の中に沈み、関係者もほとんどが鬼籍に入っている。
筆者は、事件にかかわったかもしれない男の孫として、貴重な親族の証言を得ながら、これまでのジャーナリストとは違った切り口で事件を検証していく。
一人の男が殺されたというだけに留まらない、重く、深く、暗い事情が目の前に示されるとき、自分の暮らす国のこれほどの闇を知ることへの躊躇に何度か挫折しかかった。
好奇心だけでは言い表せない何かに突き動かされ最後まで読んでみたけれど、やはり真相はいまだ霧の中。ん~はっきりしない。当時、関わった数々の人物が、不審死を遂げた事実を思うと、すべてを明らかにするのは筆者とて危険なのかしら?
国を動かしているのは誰だろう?という素朴な疑問が消えない。同じ思いをグリコ森永事件のノンフィクションを読んだ時にも感じたのを思い出した。
警察の捜査はもちろん、政治家をも操る右翼やフィクサーと呼ばれる存在。GHQによる占領が終わると、経済によるある意味軍隊なき占領があり、では現在は?
関東軍、満鉄、国鉄に群がる利権、国鉄民営化構想・・・下山という一人の男の死を突き詰めていくと、戦前にまで行き着くという闇の深さに愕然とする。
そして、それは今に至るも大きくは変わっていないのかもしれない。国を動かしている力を本当には知らないんだな~と思い、知らない方が幸せなのかもしれないとしみじみ感じた読後でした。