小林エリカのレビュー一覧
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知らないことばかりだった。いろいろ調べながら(と言ってもネットでだが)読み進めていった。
とてもリズムのある文体なのに、止まり止まり読んだ。でも少女たちの声がずっと聞こえてくるような語り口だった。
寺尾紗穂さんとの音楽朗読劇に行こうと思えば行けたのに行かなかったこと後悔する。絶対良かったと思う。
その後悔もあって、明治大学の登戸の資料館の先生のガイド付き見学会に行こう!と思ったが、2ヶ月先までいっぱいだった…
読んで知るだけではなく、実際に体を動かそうと思える、力のある小説だった。
地道に資料を探して読んで、証言者を探して会って、時間と労力が使われた結果の作品が、重苦しい形式、文体ではなく、こ -
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最初はその独特な文体に戸惑った。
「わたしは、小学校に入学する。はやく一年生になりたかった。あるいは、本当はまだ一年生になんてなりたくない。」の様な表現が続くのだが、この「わたし」は、特定の一人ではなく、その当時雙葉や跡見、麹町の女子校(小学校から高等まで)に通った女の子たちの事を並列に描いたものと次第に理解する。
また「わたしは、わたしたちの天皇陛下のために、わたしたちの兵隊のために、わたしたちの国のために、わたしたちのために、わたしの身体を、わたしの心を、鍛える」の様に「わたしたちの」が天皇以下占領地、政治家、軍人、兵隊まで、国のものに対して必ず付いてくる。始め戦況が良かった頃は、自国を誇 -
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この物語の主人公は、「わたしたち」である。
戦争の話として登場する人々は、階級や役職や通称としての名は書かれているが、実名はない。
歴史に名を残すことなく、静かに暮らす人々を淡々と記したお話である。
前半はその表現に拒否反応がおこり、読む速さが落ちてしまったが、後半からはリズムがつかめ「わたしたち」に感情を寄せることができるようになった。
春が来る。
桜の花が咲いて散る。
と言う一年を表しているフレーズと、冒頭の
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせす
に込められた無常感を思うと苦しくなる。
しかし、それを静かに掬い取った作者の力に感動した。
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風船爆弾については、いろいろなところで読んできた。アメリカの原子爆弾に対抗して、日本は風船爆弾をアメリカに向けて飛ばしていた、と言う本を読んだときにはこれは本気だったんだろうか?これでアメリカに勝てると思ってやっていたのだろうか?半ば冗談の話では無いなんだろうか?と思いながら読んだ記憶がある。
本書で風船爆弾を作る少女たちの物語を読むにつけ、陸軍登戸研究所、満州国731部隊、日本全国で100,000発の直径10メートルの風船爆弾を作っていたと言う事実に驚かされた。
様々な物語は、語り継がれること、語り継がれずに歴史の中に消えていくこと、戦争をどう考えるのか?いろいろなことを考えさせられた。 -
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風船爆弾って聞くと、最近は爆弾ではないけれど北朝鮮から韓国に飛ばされているゴミ入りの風船のことがニュースになってますよね!でも、この作品での「風船爆弾」は軍事兵器なんです。第二次世界大戦末期、日本で開発されたもので、和紙をこんにゃく糊で貼り合わせた直径10mの風船の中に爆弾を仕込んで、偏西風を利用してアメリカ本土を爆撃することを目的としたものです。
第2次世界大戦開戦前小学校に入学した少女たちは、開戦後、制服を着ることは許されず国民服を着て、長い髪は束ねないと空襲時に焼けてしまうと三つ編みにし、戦争末期は授業もなく戦時学徒動員として働く日々…。東京宝塚劇場は、中外火工品株式会社日比谷第一 -
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なに?もっとこどもみたいにいうと思った?
というコピーに挑発されて(?)手にとってみました。
ざーっと最後まで読んでみて、
・・・うん、おこさまのいうことだね(笑)。
でも、なんだろ、
悩みって、あるべきと思いこんでいる常識と現実が違うと感じるところからはじまるのかな、と思えてきて、常識が通じない相手と対話することで見えてくる地平はあるのかも、と思いました。
お子さまたちは、こちらの立場に立って考えてはくれない、こちらの思いを汲み取れないのは心苦しい、とか、申し訳ない、とか思ってはくれないからねー。
そんな相手と対話してると、こんなことで悩まなくてもいっかーーとか、思えてくることがあるかも -
Posted by ブクログ
最初は少し文章が読みづらく、話の内容もすぐには頭に入ってきませんでした
ただ、読み進めるうちに、戦時中の女の子たちの現実が少しずつ見えてきました
宝塚に憧れていた女の子が、夢を追いかけることもできず、毎日風船爆弾を作る作業をさせられていたり、憧れの制服を着たくて勉強を頑張ったのに、結局その制服すら着られなかったりと、戦争によって多くの夢や希望を奪われてしまった女の子たちの姿が印象に残りました
当時は、自分のやりたいことや将来の夢よりも、国のために何かをすることが優先され、子どもであっても自由に生きることができなかったのだと思うと、とてもつらく、可哀想に感じました
一人ひとりの人生や想いが -
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Posted by ブクログ
銃後の女性の視点からの作品を読みたくて。大戦末期、和紙と蒟蒻糊で出来た風船爆弾の製造に携わった少女達の戦前から戦後までを追う。何人もの少女達の夢と青春を犠牲にしながら、なんて馬鹿なものを造ったんだ、とやるせない思いに駆られたし、それでもピクニックに出掛けていた妊婦と子供達が犠牲になったと知り、更に居た堪れない気持ちに。あの戦争全体を象徴するかのようだ。
「わたし」には、名前があり、通う学校があり、先生や友もいるが、「わたしたち」には掲げる理想と与えられた使命しかない。名前の消えた「取るに足らない」女性達の日常が徐々に侵され、知らず知らずの内に被害者となり、加害者となっていく様が独特な語り口と