小林エリカのレビュー一覧

  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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    ネタバレ

    気軽に読み始めたんだけどとても重かったしよかった。

    始まりは昭和10年。雙葉や跡見や麹町に通い宝塚歌劇を見にいく女の子たちの豊かでモダンな日常とその後景の軍国主義と翼賛の描写。よく史料で見る昭和初期の奇妙に明るい都市生活が活写される。まもなくその後景はずいずいと前へ出てきて女の子たちの生活を塗り潰し、兵器の製造に加担させるまでになる。

    主語は「わたし」だが匿名で複数の群。歴史上の有名人も「〜した男」と匿名。「わたしたちの兵隊」「わたしたちの飛行機」という繰り返しは女の子たちも戦時体制と一体であり第三者ではないことを意識させる。あるいは読者もか。人称の使い方が非常に効果的。
    その中で靖国など

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    2025年11月16日
  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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    これは今年1番かもしれない。読んで良かった1冊。1人でも多くの人に読んでもらいたい本。普通の日常から、段々と戦争に巻き込まれていく様が、心の描写が丁寧に繊細に静かに語られていく。恥ずかしながら風船爆弾の事はこの本で初めて知った。風船爆弾だけではなく、自分はまだまだ知らないことばかりだと痛感した。

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    2025年09月18日
  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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    ものすごい本。知らないことばかり。
    戦争がはじまる前の社会の雰囲気や、そこでの普通の私たちのたわいもない日常が、とても細やかに描かれていて、段々と段々と、戦時中になっていったんだ、ということが染み入った。私だったかもしれない、わたしたち。まず忘れ去られるような、小さな小さな市民の具体的な記憶を、こんなにも丁寧に掬い上げて本にしてくれて、本当に読めてありがたい。

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    2025年09月13日
  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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    すさまじい傑作!
    毎日出版文化賞らしいが、そんなことより、もっと話題になって、大ヒット作になるべき!



    まず最初に、本作の先見性について指摘しておく。

    本作では、「わたしたち」という主語が多用される。
    「わたしたち」が指す対象が、一文ごとに、変化したり、二重・三重の意味があったりする。
    その表現手法により、現在の日本社会に、鋭い問題提起をしている。

    2025年7月の参院選において、なぜか突如として"外国人"が焦点となった。

    「わたしたち」の健康保険制度や生活保護制度を、外国人が悪用している。
    「わたしたち」の町の治安を、外国人が悪化させている。

    といった、排外

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    2025年08月03日
  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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    すごい本を読んだ。
    かつての東京宝塚劇場、中外火工品株式会社日比谷第一工場に集められた「わたし」たちは「ふ号兵器」、風船爆弾の製造に従事する。

    最初は「わたしは、ドキドキする。わたしは、わくわくする。わたしは、そのどちらでもない。」とか「わたしたちの兵隊」とか「わたしたちの朝鮮の首都」といった文章に混乱する。そのうち、なるほど色々な少女がいたことを表現しているのだなとか、わたしたちの=大日本帝国のというような意味なのだなとかがわかってくる。

    自分もその少女の一人のような気持ちになってきて、この時代に生まれていたら自分はどんなふうに生き抜いただろうかと想像しながら読む。
    焼夷弾で焼けた焼けた

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    2025年06月15日
  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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    風船爆弾について知りたくて手にした。
    勤労動員で東京宝塚劇場に集められた女学生たち。彼女たちが作ったものは秘密兵器「ふ号」と呼ばれる風船爆弾だった。

    何不自由ない女学生生活を送っていた彼女たち(雙葉、跡見、麹町・・)は次第に戦争に巻き込まれていく。憧れの制服は国民服に、聖書でなく「教育勅語」を読む。特攻警察が学校にやってきた日を境に「変わらないはずだったわたしたちの日常」が消えた…。

    膨大な参考資料を調べ、著者自らが聞き取りを行ったと知り驚いた。
    散文詩のような文を、朗読劇のようにリズムをつけて読んでみた。知らなかった事柄も彼女たちの目を通して語られるのでわかりやすい。

    偏西風に乗ってア

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    2025年06月14日
  • 彼女たちの戦争 嵐の中のささやきよ!

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    まだ発展途中の女性の権利。ここまで命をかけて積み上げてきた人達がいる。踏みつけにされ無かったことにされた人達がいる。
    読んでいるとじんわり勇気のもらえる本。

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    2025年04月28日
  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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    宝塚歌劇団と戦前からそれを観劇できるような中産階級の少女たち。彼女らを軸に戦前・戦中・戦後の日本を、彼女たちを取り巻く環境や彼女たち自身が次々と塗り替えられていく様を、詩のリズムで歌のリズムで、静かにしかし目をそらすことなく描いていく。新しい歴史の語り方に出会ったような気がする。

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    2025年03月19日
  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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    わたしたちの〇〇…というフレーズが幾度となく印象的に使われており、ドキッとした。
    戦争の話となると、近しい現実であるのにどこかパラレルワールドの話のように感じてしまうのだが、「わたしたちの〇〇」により、いつの間にか自分の事のように恐怖や洗脳、胸の高鳴り、不快や悲しみなど言葉には言い表せない感情がなだれ込んでくるようだった。

    戦争って終わらないんだな。
    おじいちゃんやおばあちゃんから直接戦争の話を聞いた事ないもの。
    心の奥底に抱えたままだったのかな。

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    2025年02月24日
  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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    「わたしは」「わたしは」「わたしたちは」
    いつまでも青春の只中にあるあの日の少女たちは

    こんな小説初めて読んだ。
    個人が主人公でもない。主人公はいるかもしれないし、いないかもしれない。わたしは、わたしたちは、といった主語で綴られていく、確かにあった記憶の数々。
    少女たちの戦争は、たとえ形式的に戦争が終わったとしても、いつまでも続いていく。
    あの太平洋戦争を、戦時中の部分だけを切り取ってはい、戦争は終わり。という話ではない。
    そのことに、強い衝撃を受けた。
    なんとも言えない、壮大な少女たちの記録を読み、様々な感情が胸で入り混じる。
    ぜひ読んで、その読後感を、噛み締めてほしい。

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    2024年10月16日
  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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    膨大な資料や証言を元に「名もない」女の子たちの戦争体験をつづった圧巻の書。
    これまでも戦争の話は聞いたり読んだりしてきたと思っていたけど、まだ全然足りてなかった。女性の、弱い立場の人たちの体験、被害者であると同時に加害者でもあるということ。
    他人事ではないし、「かつて」の話でもない。戦争は、今を生きるわたしたちに地続きであることを、強く感じさせる作品だった。

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    2024年09月14日
  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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    関東大震災以降、長く続いた先の戦争の時代、さらに戦後から現代に至るまで、権力側ではない市井の人々が、権力側の人々により翻弄された(というか、破壊された)生活を、今も変わらず差別されている人たち(少女)からの視点で描かれてる

    事実をもとに描かれてる(と思う)、ただ表現の仕方に、読んでて初めは戸惑ったけど、わたしたちのと何度も何度も繰り返す意図が少し理解できてくると、今まで見たことがなかった表現に深く同意するようになる

    とても良かったです

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    2024年09月05日
  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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    物語は、日中全面戦争前夜の1935年(昭和10年)、東京都心で生活し、学校に通った少女の目を通して、第2次世界大戦の戦前、戦中、戦後を生活史の視点で描きます。1937年の南京陥落では提灯行列を行い、戦勝記念に湧きます。戦中は、風船爆弾組み立て工場として使用された東京宝塚劇場に集められ、製造に携わった女学校の生徒たち。風船爆弾は9300発がアメリカに向け放たれ、約1000発が米本土に到達したと推定され、アメリカ人6人が犠牲になった事実も丁寧に考証します。少女たちの目線から、戦争と無縁に見えた日常が国粋的な空気に包まれ、国家総戦力に駆り立てられる空気。戦争は、軍隊の戦闘による生死だけではなく、非戦

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    2024年08月09日
  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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     アジア太平洋戦争下で日本軍が秘密裏に打ち上げた「風船爆弾」の製造に雙葉・跡見・麹町の各女学校生徒が動員されていたこと、風船爆弾の製造工場の一つが東京宝塚劇場だったことをモチーフに、少女の一人としての「わたし」と少女たちという意味でもあり、帝国日本の臣民という意味でもある「わたしたち」という人称をリフレインのようにくり返しながら、時代を生きた女性ジェンダーの生を呼び返そうとする試み。戦争の時代を扱っているのに、軍人や政治家たちは決して固有名では呼ばれず、戦争の死を死んだ被害者――「風船爆弾」で命を落とした米国人の女性と子どもを含む――の名前のみが書き込まれる。
     
     特定の固有名に依存しない語

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    2024年06月13日
  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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    膨大な量の文献とその引用に驚いた。こんなにも酷いことが出来る大人が大勢いたことが、哀しくて恥ずかしくて情けない。

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    2024年05月31日
  • 彼女たちの戦争 嵐の中のささやきよ!

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    たくさんの女性たちが紹介されている。初めて知る人についてはもっと詳細を知りたいなと思い、すでに知っている人に関しては簡潔にまとめているなぁと思う。もっと知りたいなら、ぜひ自分で調べたり探してみたりして!というメッセージかなぁ。まずは知るところから、というきっかけを作ってくれる本でした。

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    2024年03月24日
  • 最後の挨拶 His Last Bow

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    最後、ドラマチックに全ての違う時間の場所の、物語が集結していって、涙をだらだら流しながら読みました。読後感が素晴らしい。。。。
    どんな時代にも、辛いことや苦しいことを抱えて、人が生き抜いて、そして死んでいって、その人生は少しづつ誰かが受け継いでいって・・・
    これが読めて嬉しい。

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    2021年09月16日
  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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    私は、あるいは私たちは、
    で始まる短い文章で構成されている。記録でも、物語でもない感情の乗らない文章。名前のない人物の集合体。
    作者が現代アートの作家でもあるからか、ボルタンスキーみのある作品として、文章のインスタレーションとして読めた。
    すごい量の情報。そこから立ち上がってくる少女性と戦争の対比が凄まじかった。
    戦時下の雙葉学園、跡見学園、麹町学園の東京宝塚開館での風船爆弾作りと、宝塚歌劇団の慰問の様子を膨大な資料を使って戦争を切り取っている。胆力のある作品だった。

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    2025年11月14日
  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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    都内に住んでて、私立の女子校に通い、クリスマスには家族でディナーを食べ、宝塚を見ることが娯楽の、裕福な女の子「わたし」たちが戦争にかかわるところ。
    宝塚って戦時中もやってたんだ、そして慰問で戦地に行ったりしてたんだ…知らなかった。
    きれいな指を痛めてつくった風船で、亡くなったのは、5人。しかも子どもとそのお母さん。
    これ読んだ後に丸の内のビル群を歩いたら、複雑な気分になった。すごい本だった。

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    2025年10月12日
  • 女の子たち風船爆弾をつくる

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    当時の女性の扱われ方が表現されていて辛かった。男子は兵士として戦って亡くなると英霊になり靖国神社で拝まれ、女子はただ死んで数になる、という部分か哀れに思えた。戦後80年に読むべき大切な作品だと思います。

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    2025年08月03日