これら、一連の藤子・F・不二雄SF短編作が出版された1970前後の頃、その売れ行きはさっぱりだったそうだ。「ドラえもん」は売れ行きが伸びているのに、時間をかけてリサーチして作っているSFはまるで売れなかったという。
しかし、名作は永い年月の間にもしっかりと残るもので、今こうして、全112話のSF短編は装丁を変えて新たに世に出され、読者に感動を与えている。物語の作り手からすると、これ以上の喜びはないのではないかと思う。
特に名作だと思うのは、1巻の「ミノタウロスの皿」「劇画オバQ」「気楽に殺ろうよ」、4巻の「カンビュセスの籤」「未来ドロボウ」。
いずれの作品も、考えもつかないような盲点を突いた価値観の逆転を示していて、しかも風刺がきいている。ほんの数十ページの短編だけれども、何千ページもの文学作品にも匹敵する大作だと思う。
その他の作品にも駄作というようなものはなく、純粋にSFとしてとてもレベルが高い。本来、「ドラえもん」のような作品よりも、きっとこういうSFの分野のほうが、藤子・F・不二雄の本領がより存分に発揮されている感じがする。
あたしたちの死は、そんなむだなもんじゃないわ。おおぜいの人の舌を楽しませるのよ。(p.34)
食欲、性欲・・ともに最も根源的な欲望ですな。
どちらが欠けても地球人は滅亡する。
ところで、このふたつのうちどっちかはずかしがらねばならんとすれば、はたしてどちらですかな。
食欲とはなにか!?個体を維持するためのものである!
個人的、閉鎖的、独善的、欲望といえますな。
性欲とは!?種族の存続を目的とする欲望である!
公共的、社会的、発展的、性格を有しておるわけです。(p.240)
そうか・・・正ちゃんに子供がね・・。
と、いうことは・・正ちゃんはもう子供じゃないってことだな・・・な・・・。(p.322)