黒岩重吾のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ一時、直木賞作品をすべて読もうと思い立ち、かなりの数を集めた。まだコンプリートはできてないが今も古本屋などで持ってないものを見かけるとテンションが上がる。もっともまだ手元にないものは、かなりの古書価がつくものが多く、購入には二の足を踏んでしまうが・・
さてこの作品、昭和三十年代半ばの受賞作。高度成長期への入り口時代の作品になると思う。全体として重苦しいので好みは分かれる作品かもしれない。
格差や差別偏見は今からは考えられないレベルであるのが作品を通してよく分かる。ただ底辺に生きる人々も活気だけはあり、逞しく貪欲に生きる人間の力強さを感じる。
ストーリーは自分を殺そうとした犯人を探すのがメ -
Posted by ブクログ
上巻に引き続き、大海人皇子は石橋を叩いて叩きまくりながら、対中央朝廷の準備をすすめる。そして、待ちに待った兄の天智天皇の死。大海人皇子は味方にした地方豪族たちを率い、三万の軍勢で近江宮を目指す。
著者は限られた資料や当時の戦場の地形、人々の体力や走力などを分析し、壬申の乱の局地戦を詳細に描き出す。下巻のほとんどがこの戦乱描写なのだが、あまりに詳細すぎて読むのがつらかった。あまり知られていない将軍や舎人に比べて、額田王や大友皇子の登場が少なく、人間ドラマそっちのけの下巻は、小説というより歴史書に近い。
と、そんな不満は置いといて、本作品を読んでわかった大海人皇子が圧勝した理由は2つ。一つは緊 -
Posted by ブクログ
ネタバレ下巻では、大友皇子に天皇位を奪われ、出家して吉野に隠遁していた大海人皇子が綿密すぎるほどに計画し、挙兵するまでの様子を描く。宮滝に落ち延びてからも決して態度を変えず大海人に寄り添い続ける勝気な妻、鸕野讃良との絆の深さも印象深い。
身分に隔たりのある舎人たちと心を通わせるなど、懐の大きな大海人に心を寄せるものは東国にも王族にも朝廷内にも多く、彼らは近江朝廷に愛想を尽かしてしばしば大海人を慕い、挙兵を促す。しかし大海人は舎人たちにさえギリギリまで本心をひた隠しに隠して、水面下で準備を推し進めていく。
決戦の日に備え、部下たちに土地勘を養わせたり、より強力な武器を製造させたり、まだ皇太弟として権威 -
Posted by ブクログ
ネタバレ壬申の乱をテーマとした小説で、大海人皇子の視点で描かれる。
この上巻では、主人公・大海人皇子は、兄である中大兄皇子の政権下で、「武人肌で政治にはあまり興味のない皇太弟」として過ごす。
中大兄皇子は、ブレーンである鎌足から独立して「大王」ではなく「天皇」という新しい観念の独裁者になることを望み、着々と実行していくが、白村江の惨敗を経て自信を失う。その頃から、老いとともに我が子大友皇子を溺愛するようになる。そして皇太弟である大海人から大友へ天皇位がわたるように巧妙に操作していく。
天智天皇の心変わりや大海人の野望が育っていく様など、心理描写は巧みで人間を深く描いている。「老い」というものに対す -
Posted by ブクログ
ネタバレ蘇我入鹿を主役として、きのとみのクーデターで暗殺されるまでを描いた作品。
私の中で、蘇我氏のイメージって、まんが日本の歴史で、蝦夷と入鹿が「天皇なんてお飾りさ」ってがははと笑ってる絵が、30年近くたった今でも鮮明に覚えてて。あとは、山岸さんのまんが、日いづる処の天子の、聖徳太子に翻弄される蝦夷像。
そんな貧弱な蘇我像だったので、とても楽しめました。
唐の制度の研究、啓蒙が進む中で、蘇我氏としては自身が大王になるか、現在の大君家への中央集権を指をくわえて見てて没落するか、の選択肢だったということにとても納得。
あとは、鎌足がイヤな奴で、とっても好み(笑)
推古女帝の恋の話が読みたい。
あ -
Posted by ブクログ
700年ごろ。藤原鎌足の次男である不比等の物語。不比等は天武朝と戦った大友皇子の父天智天皇の側近鎌足の子として生まれ,天武朝ではその才を認められつつも不遇の日を送っていた。陰では天智の子供ではともささやかれていたという。
しかし,鎌足譲りの策謀で次々と持統皇后,その子供の文武天皇に近づき,類まれな才覚により寵を得,政界に躍り出て,いつのまにか誰も立ち打ち出来ない寵臣になった。
自分の子供である宮子を文武の夫人とし,のちの聖武天皇が生まれ,聖武の妻には,これまた自分の子供である安宿姫(あすかひめ。のちの光明皇后)を送り込んだ。藤原氏による天皇家の略奪の感さえある。
不比等は蘇我氏のように豪腕で有 -
Posted by ブクログ
670年ごろ。大海人皇子(天武天皇)が中大兄皇子(天智天皇)の子供の大友皇子を倒し,天皇になるまでの物語。いわゆる壬申の乱の話。
戦自体の記述は少なく,主に,大海人皇子が天智やその取り巻きに疎外され吉野宮滝に仏門に入るまでのやりとりが物語の半分を占める。
このため,上巻は読んでいても少しだらける。下巻になると,挙兵までの大海人と舎人達のやりとりがスピード感を増し,いっきに読める。
また,黒岩小説の割には,鵜野讃良(大海人の妻。後,持統天皇)など女人との関係の記述は少ない。
本小説は大海人側に立った見方だが,大友皇子の取り巻き連中である左大臣の蘇我赤兄,右大臣の中臣金らは,近江朝側が持ち応えられ -
Posted by ブクログ
600年ごろ。蘇我馬子と物部守屋との戦いにより,物部氏が滅びるまでを描く。
守屋と妻の矢鳴姫の仲睦まじさが際立った作品。
終始守屋は馬子に押され気味であった。守屋は仏教の新鮮さや考えを理解し,自分でも寺を建立しつつも,馬子との駆け引き上,大王を守屋側に引入れるべく廃仏派(親神祇派)を唱えざるを得なくなっていく。
大王が亡くなった後の世の中の流れを的確に読めるような先見性を持った馬子だったが,それに加え,渡来系の東漢氏を味方につけ,大陸文化・物品を輸入し財を成し,それを利用し豪族たちを手なずけたということも大きいだろう。
大和政権が近畿に起こる前に既に大和を支配していたニニギノミコトからはじまる -
Posted by ブクログ
大和の巻,西征の巻に続き,倭建が駿河を勢力下に置く廬原王(イオハラオウ)が居る倭の国の東方の平定に行く話。
九州の熊襲征伐では武勇一辺倒だった倭建だが,東征へは始めは乗り気でなく,戦を行うことに嫌気を持っていた。
しかしながら,倭建の父であるオシロワケ王は建を嫌い,東征に向かわせ,出来ることなら殺されてしまえばいいとさえ思っていた。
これは,オシロワケ王のほか,物部十千根などの陰謀でもあった。
だが,倭建の戦の強さもさることながら,西征,東征での度の間に人望にも磨きがかかり,東征では戦というより,王者としての風格・徳により東方の部族を従えていった感じである。
最後にイオハラ王も倭建に従うのだが -
Posted by ブクログ
白鳥の王子(大和の巻)の続編。
倭男具那が父のオシロワケ王(景行天皇)に九州の熊襲討伐を命じられ,熊襲の首長である川上建(カワカミノタケル)を討つまでのストーリー。
九州は卑弥呼が支配していた頃は邪馬台国が熊襲(九州南部の国)の北上を抑えていたが,邪馬台国が大和に移って以来,熊襲は九州北部に勢力を伸ばしていた。
三輪王朝の王であるオシロワケ王は,九州北部の熊襲に対抗する国からの応援を求められた。断れば倭の国を代表する権威もなくなるため,西討には男具那を送った。
男具那には,男具那の妻の弟橘姫の兄である穂積内彦,葛城宮戸彦,吉備武彦,久米七掬脛(ナナツカハギ),日向襲津彦,それと,オシロワケ王と