あらすじ
大阪の施療院で、殺害未遂事件が起こった。被害者は、憑かれたように女をあさる、背徳産婦人科医だった。彼を憎み、うらむ者は多い。犯人追及の過程で浮び上がる、彼や容疑者たちの暗い過去……。戦争で青春を失い、宿命ともいえる業を背負って、吹き溜りにうごめく、人間の生きざまを描いた、社会派ミステリー。直木賞受賞作。
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Posted by ブクログ
一時、直木賞作品をすべて読もうと思い立ち、かなりの数を集めた。まだコンプリートはできてないが今も古本屋などで持ってないものを見かけるとテンションが上がる。もっともまだ手元にないものは、かなりの古書価がつくものが多く、購入には二の足を踏んでしまうが・・
さてこの作品、昭和三十年代半ばの受賞作。高度成長期への入り口時代の作品になると思う。全体として重苦しいので好みは分かれる作品かもしれない。
格差や差別偏見は今からは考えられないレベルであるのが作品を通してよく分かる。ただ底辺に生きる人々も活気だけはあり、逞しく貪欲に生きる人間の力強さを感じる。
ストーリーは自分を殺そうとした犯人を探すのがメインストーリーになるが、謎解きそのものは途中で何となく分かる感じがする。
題名がおそらくダブルミーニングなのだが、謎解きそのものより、男と女の業、特に女の性を作者は描きたかったのではないだろうか。