黒岩重吾のレビュー一覧
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(上巻から続く)黒岩はその冒険に成功したといえるだろう。もちろん現代人の黒岩が中大兄皇子の思考や心情を完全に把握することなどできるわけがない。しかしこれは歴史を題材にとった小説なのだ。小説であると思えば、読者は黒岩の創出した新しい中大兄皇子像に共感にせよ反発にせよ、その傑出した生涯に何かを感じられるはずだ。
黒岩は、中大兄皇子の人物像について、「激情家である反面、冷静さと冷酷さを兼ね合わせに持つ人物で、ぼくは入鹿より凄いと思う」と述べている。本作でもその中大兄皇子観が反映されている。決めたことはそれがどんなに大胆で非難を浴びる行為だとしても断固としてやり抜く執着心。それは晩年に実弟の大海人皇 -
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信ぴょう性の高い資料がほとんどない古代史で、日本では空前絶後の天皇家の内戦、壬申の乱を想像で埋めてダイナミックにとりあげた作品。
天智天皇は兄、天武天皇は大海人、弘文天皇は大友皇子、藤原鎌足は内臣、持統天皇は讚良(さらら)と表記されます。たくさんの登場人物が出てくるのですが、メインキャストはこの4人で、前半では弟の大海人から息子の大友に皇位継承の気分が移りつつある中で、誰が味方か誰が敵か、色分けに収れんされます。女性の地位はかなり低く(天皇になる人もいますが)、政略で親がまぐあわせるケースが続出するのですが、その関係は狭い狭い。例えば、天智天皇は娘4人を天武天皇に嫁がせてますが、天武天皇は弟 -
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スルッと読めました。
久しぶりに小説を読みました。
大好きな西成の話。
雑多な街ですが、それぞれの人生のドラマがある。
かなり昔の物語ですが、スルッと読めて、読了後も不快じゃない一冊でした。 -
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700年ごろ。天智天皇,大友皇子,天武天皇,持統天皇,文武天皇,元明天皇に仕えた物部朝臣麻呂の話。
麻呂は石上物部に生まれ,蘇我・物部戦争では中立の立場を守ったがゆえに生きながら得ることが出来た。
蘇我氏に敗れた物部氏は政界から遠ざかり,物部の民は奴婢として貴族らに仕えることを余儀なくされ,麻呂も冠位は最下位近くだった。
武術や情報収集の才に恵まれ,常に先の時代の流れを読むことが出来た麻呂は,天智に才を見出され,大友皇子の武術師範に抜擢されたが,時代の流れは天武側に流れていた。麻呂はそんな流れを掴み,天武の舎人の一人で物部系の朴井連雄君にそれとなく自分を売り込んでおいた。大友皇子の最期を看取り