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社会の落伍者が集まるアパート「飛田ホテル」。刑期を終えたヤクザ者の有池が戻ると待っているはずの妻がいない。有池は妻の足取りを追うが、思いもよらなかった彼女の姿を知ることになる(表題作)。昭和の大阪、光の当たらない暗がりで悲しく交わる男女の情と性。自身も大阪のどん底を経験した直木賞作家が「人間の性」を抉り出す、傑作ミステリ短篇集。
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Posted by ブクログ
黒岩重吾の作品。 主に西成を舞台にした短編集で、特に表題作が印象的。 表題作は、かつての釜ヶ崎を思わせる場所にある「飛田ホテル」に暮らす人々の物語。さまざまな事情を抱えた人たちが住むこのホテルに、刑期を終えた主人公が戻って来るが、愛した人は、もういなくなっている…。 他の短編も、それぞれに登場人...続きを読む物たちの哀しい過去や現在が描かれている。みな救われないが、それでも懸命に生きている。 当時の時代もあって、かなり心重い印象。これも少し前の日本。いや、現在でもあるかもしれない。忘れないようにしたい。 ちくま文庫360ページ
舞台となってる大阪市内南部エリア、私にとっては、毎日、電車に揺られて通り過ぎている、興味あるエリア。 善と悪、陽と陰、光と影、色々ですが、大阪人がみんな、一生懸命に生きている姿、人間臭い姿、私は好きです。 今風に言うと、エモい。昭和レトロ。
スルッと読めました。
久しぶりに小説を読みました。 大好きな西成の話。 雑多な街ですが、それぞれの人生のドラマがある。 かなり昔の物語ですが、スルッと読めて、読了後も不快じゃない一冊でした。
はっきり言って誰も救われない。けれど読後に辛さがないのが不思議で、そこがいい。日陰者が集まってより深く影を作っていく。昭和の、まだ戦争の残り香さえあるような、そんな短編集だった。
戦後間もない昭和の大阪。 社会の落伍者が集うアパート「飛田ホテル」 光の当たらない暗がりで悲しく交わる男女の情と性。 今日日、男女の愛憎という言葉が最早昼ドラで使われるのか怪しいくらいに、陳腐な響きになってしまったように思うが、時代と共に、貞操観や死生観というのは移ろいでゆくもの。 平安から江戸...続きを読む期はもちろんのことだが、戦前、戦中、全てが焼け野原になった直後からやや落ち着き始めた時期、貞操観や死生観が現代と異なるのは当然。 そんな時代を最底辺で生活している、男と女の六編の物語。 なんだろう、重いはずなんだけど、暗い気持ちにはならないな。人間の根源みたいな原始的な、生きるって要素が滲み出てるのかな。いや、死んだら殺されたりするんだけどさ。そこに歪んではいるけど、彼等彼女らのイデオロギーを感じるからなのか。 不思議な一冊でした。
なにかの書評で高評価だったので読んでみた。 読み始めて、あまりの昭和感と薄暗さに全部読むかどうしようか悩んだのだけど… 読んでいくうちに、なんかこ~じわじわとおもしろさがにじんできて、最後まで一気に読んでしまった。 戦後の大阪(関西)を舞台にした男と女の短編物語集 と、こう書くだけでなんかジメジメ...続きを読むする感じだけど… このジメジメ感がなんかいい。 社会の落伍者が集まるアパートで繰り広げられる男女の愛「飛田ホテル」 神戸の怪しいクラブと息子の死の真相を探る「口なしの女たち」 コールガールの姉妹を描いた「隠花の露」 お金と人生と愛を描いた「虹の十字架」 愛した女の過去を探る「夜を旅した女」 女の愛情の恐ろしさを描く「女蛭」 どの物語も救いようがない結末なんだけど ある意味では幸せな結末なのかもしれない。
人生は平等な訳がない。産まれながらに不幸で死ぬまで不幸の人もいれば、産まれてから死ぬまで幸せな人もいる。小説は不幸であればあるほど面白い。
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