矢樹純のレビュー一覧
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どんでん返し系短編五篇。夫が元妻とよりを戻して自分を殺そうとしていると思う『妻は忘れない』、急に接近してきたママ友と夫の仲を疑う『無垢なる手)、死体処理をする引きこもり男が母親の死体を見つける『裂けた繭』、長年帰っていなかった田舎で姉の本性を知る『百舌鳥の家』、息子がストーカー殺人を犯してしまった『戻り梅雨』。
『戻り梅雨』は、結果、息子は殺人を犯していないのだけれど、母親が夫のDVで離婚をしていて、それが影響して息子に暴力的な面があるのではと思わせるところなど、うまいなーと思った。保育園の給食室での仕事の様子とか、地味だけどリアリティがあって読ませるし、そこにもちゃんと伏線を仕込んでいる。 -
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「新しい法律ができた。」という一文から始まる短編小説が25編載っています。
25人の書き手が、もしこんな新しい法律ができたら、という視点でお話を綴ります。
「新しい法律」ができた理由がそれぞれ興味深いです。
例えば、
・金子玲介さん「ルパちゃん」では、「少子化対策」のために「子どもがわりに人口知能を搭載したぬいぐるみを所持することを禁止する法律」ができます。
・日野瑛太郎さん「推し活制限法」では、「推し活にハマり過ぎて身を持ち崩す人が出た」ために「推し活への課金上限を制定する法律」ができます。
(わたしが、ぜひ読んでみたいと思っていた、くどうれいんさんの場合は、)
・くどうれいんさん「ショートケーキの夜」では、「フードロスと人口減少を同時に解決する」ために「ショートケーキはふたりで食べなければならない法律」ができました。
それぞれ興味深いです。
では、「新しい法律ができた。」から「どうなのか」というと、
・「だから、もう〇〇ができない。」というもの、
・「そのせいで、社会が〇〇になった。」というもの、
・「新しく〇〇をしなくちゃいけない。」というものに、分かれているような気がします。
そして、登場人物たちは、「新しい法律」がどこかで、知らないうちに「できて」、しぶしぶそれに従わざるを得ないという感覚で生活が変えられていっている作品が多いように見えます。表現の効果上、まあそうなりますよね。
(さてここからは私見です。)
世の中にはいろいろと従わなくてはいけないルールが存在しますが、「法律」とは国会で制定されるルールです。おおまかに言うと、国会は国会議員が審議する場です。国会議員は公職選挙によって選ばれます。選挙で投票できるのは18歳以上の国民です。
つまり、我々が選んだ国会議員が「法律」を国会で作るのだから、本来「新しい法律ができた」といった時事的、他人事的な表現ではなく、(意識としては)「新しい法律を(我々が国会議員をして)作らせた。」「新しい法律を作った。」と当事者意識で言うのが理想と言えるのかもしれません。
小説集の話に政治の話を持ち込むのは文字通りご法度なのかもしれませんが、「できた」という表現に自分の生活とは縁が薄いという意識が隠れていないか気になるところです。面倒くさいヤツですみません。
この小説集に書かれているような理不尽な「新しい法律」が制定されて社会がディストピアと化さないように、しっかり政治を監視しなくちゃな、と思ったしだいです。放言をお許しください。
それはさておき、いろいろな視点で語られるお話はそれぞれ読み物として面白いですので、オススメいたします♡
著者一覧(掲載順)
金子玲介
日野瑛太郎
朱野帰子
阿部智里
真下みこと
須藤古都離
嶋戸悠祐
多崎 礼
風森章羽
名倉編
真梨幸子
東川篤哉
霜月流
矢樹純
高田崇史
潮谷 験
献鹿狸太朗
高田大介
大沼紀子
矢部嵩
柾木政宗
くどうれいん
白井智之
赤川次郎
五十嵐律人 -
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[こんな人におすすめ]
*じわじわ怖くなるタイプの話が好きな人
水が浸透するようにスロースピードで怖さがやってきます。夜道を歩けなくなったり眠れなくなったりする怖さというより、読み始めはなんとなく気味が悪く、いつのまにか恐怖が加速していて、気づいてしまった瞬間に急激に体温が下がるタイプの本です。
※ホラー小説があまり得意でない人間の感想です。
[こんな人は次の機会に]
*人に話すことで怖かった経験を消化するタイプの人
あらすじを説明しても相手にはいまいち伝わらないタイプの本です。小説ゆえの面白さというか、一対一で向かい合って読むことで言語化できない怖さが遠くからやってくるので、ホラーミステリー系の小説が苦手な人はご注意ください。 -
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ネタバレ石に相手の血を捧げると縁切りが叶うという神社。姉は弟の行動にある疑惑を抱くーという表題作他、家族や家庭に潜む不穏さと闇(時に疎ましさ)を描き出したホラー・ミステリ全6編。
・一周忌を終えた夫が「枕元に立って何か訴えて唇に触れてくる」と語る義妹。だがこの義妹は色々難ありの人物の上、軽い認知障害に罹っていた(魂疫【たまえやみ】)。ラスト、本当に《鬼》から逃れられていたのか―。
・弟家族とキャンプに来た幸菜。弟はその朝早くに近くの縁切り神社へ行ったようだった。仕事で来れないという義妹に連絡が付かないことから、彼女の中に恐ろしい疑念が膨らむ(血腐れ)。弟夫婦の未来は何れにしても……。
・老いた父親を介護する弟と口だけは出す兄。弟は亡母から「地獄に落ちた者は遺骨が黒くなる」と聞かされてきた(骨煤【ほねすす】)。地獄は其処にあったということか。老親の介護をどうするかという問題は収録作の中で最も切実なリアリティがあるかもしれない。
・ある事件からアイドルを引退して引きこもりになった妹。彼女に頼まれネットで購入したネイルチップは注文したものと全く違う不気味なもので、返品しようにも出品者と連絡がつかず、捨ててもなぜか戻ってくるのだった(爪穢し)。仕事上のトラブルは解決しても……最も救いのない結末。
・オカルト系編集者の和久と社長でもある叔父は、祖父が住職を務める福島の寺に向かっていた。撞くと人が消える《神隠しの鐘》の取材だったが……(声失【こわう】せ)。神隠しの謂れの理由を合理的に解明しているのは面白い。各地の禁忌や伝承にも多分にこういう理由があったのかも。
・幼い息子の検査入院の付き添いで泊まった夜、真希はベッド脇に不気味な黒い影を見る。不安と疲労に苛まれる中、同じく息子が入院しているという中年女性里佳に声をかけられる(影祓え)。人怖と呪い、我が子に死の手が及ぶ恐怖―それらが入り混じる最もホラー度の高い一編。
6編とも家族や近親者との関係が舞台となり、不意に訪れた死や災難が日常に作った裂け目。家族や血縁があるからこそ容易に断ち切れない関係が時に疎ましさや歪みを産む。『血腐れ』は収録作のタイトルだが、作中の人物の言葉にある「腐れ縁」のように血の繋がりによる腐れ―倦んだ関係というのは全作に共通しているようにも思えた。家族とは基本的に大切なものではあるけれど、近しいが故の煩わしさというのもまた、誰しも多少は身に覚えがあるものではないか。
またどれも一人称で書かれているが、それを活かした「信頼できない語り手」の構成を取っているものもあって面白い。
帯で謳っているほどの"イヤミス"とは感じないまでも、ホラー的な恐怖よりも「うわ、なんだかなぁ……」という"厭さ"が際立つ短編集、だった。 -
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この作品も以前から読みたくって、気づけば「積読」になっていた作品です。読みたかったわりに、9つもの短編集だったことは知らなかったんですけどね!
特に印象的な作品は…と、考えてみても、どの作品も同じくらいだとに感じてしまう…。だけど、9作品もあるとそれぞれをレビューしておくのも躊躇してしまいます。そして何より、読んですぐにレビューを作れなかったからか、ちょっと内容が曖昧になっています。どの作品も、家族をテーマにしているある意味イヤミス系です。そして、エンディングで、そうだったのかぁ~と思わせてくれる作品でした。
でもこの作品を読む前に「撮ってはいけない家」を読んでるからか、矢樹純さんの作品は長編の方が面白く読めると私的には感じました。あ、2作品しか読んでないし、まだそう結論づけるのは早いかもだけど…。 -
Posted by ブクログ
『妻は忘れない』を最初に読んで矢樹純さんのイヤミス✕ホラーの短編集にハマり『夫の骨』『マザー・マーダー』なども既読。本書で6冊目となりました。
こちらは6編のホラー・ミステリーでしたが、ここ最近日中に読書する時間がなく、寝る前が唯一の読書タイム。しかしこの本は寝しなに読んではいけない本でした〜。
部屋の電気を消したくない〜。夜中にトイレ起きたくない〜。だって思い出しちゃうんだもの….(TT)
表題作の「血腐れ」を始め、「魂疫」「骨煤」など6編のタイトルだけでもただならぬ雰囲気があってザ・日本のホラー・ミステリーを堪能したい人にはおすすめの1冊です。