飯嶋和一のレビュー一覧
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★5 百姓総代たちの決死の覚悟に震えろ! 江戸時代最大の公事訴訟、美濃国郡上藩の一揆 #虚空蔵の峯
■あらすじ
江戸の公事宿である秩父屋にたどり着いた六人、彼らは美濃国郡上から来た百姓たちの代表であった。翌日六人は登城途中だった老中の駕籠に直訴を決行。その後幕府老中の調べを受け、彼らの訴えが町奉行所に伝わることになる。
いったいどんな訴えだったのか… 江戸時代起こった最大の公事訴訟、美濃国郡上藩の百姓一揆の顛末や如何に。
■きっと読みたくなるレビュー
★5 おもろかったー、もはや大学の研究資料すね。学生時代、歴史って苦手だったんですよね。でもこんな内容の授業だったら興味津々に学べたのになー
さて本作は江戸時代に実際に合った訴訟のお話。現在の岐阜県郡上市、美濃国郡上藩の百姓一揆です。
藩主である金森頼錦以下代官たちが悪政を振りかざし、百姓から搾取を行い、過酷な生活を強いていた。耐えかねた藩の百姓総代が江戸の老中に直訴。その結果、大名や閣僚たちが大量処分されるという訴訟事件。
まず江戸時代の訴訟についてですよ。10年くらい前にNHKで『タイムスクープハンター』ってドラマがあったんですが、あの面白さですね。タイムワープで過去に戻り、当時の職業、風俗、文化などをレポートするというドラマ。
江戸時代の裁判、訴訟なんて、遠山の金さん? なんとなく「お白洲」って言葉は聞いたことあるけど、そんな程度しか知識がない… 例えば公事師、公事宿、駕籠訴とか、恥ずかしながら聞いたこともありませんでした。
そして藩主に対する訴えはどんなものだったのか、その訴訟がどのように進んでいくのか。奉行所ではどんな会話がされるのか? どんな利害関係者がおり、どう繋がっていたのかなどが吟味されていく。まるで江戸時代の北町奉行にタイムスリップしたかのごとく、綿密に詳細に綴られていくんです。素晴らしい歴史体験でしたね。
さらに登場人物たちもリアリティ溢れんばかりの描写なんです。まず駕籠直訴にぶっ込んだ百姓総代たちの息づかいですよ、この本気度を目の当たりすると、自分のダレた生活が恥ずかしくなるよね。
そして悪者側の主張ですよ、自身の都合で権力や規則を振りかざす醜さ。その結果の悲惨さをどう思っているんだろうかと腹立たしくなるわ。
私のイチ推しキャラは公事宿秩父屋の主人である半七。公事師(江戸時代の訴訟手続を生業とした職業)である彼は、他人の不幸や災難に常に関わり、生き死に際を目の当たりにしている。本作で彼の役回りは狂言回しでありながら、この江戸時代最大級の訴訟事件、そしてその結果をどう見ていたのでしょうか。
33項目にもわたる訴状の内容に愕然としますよね… もはや悪政というより乱暴狼藉ですよ。如何に当時の民たちが冷酷な環境におかれていたのか、読むほどに深々たる痛みが肌身に突き刺さってきました。
あと田沼意次って経済で頑張ったという印象だったけど、こんなこともしてたのね。エンタメで楽しめる江戸時代の訴訟、裁判小説!とっても勉強になるし、おすすめですよ。
■ぜっさん推しポイント
いつの時代、どの場所であっても、人はそれぞれ生まれや環境に振り回される。時には巨大な権力によって災難に巻き込まれることもあるのでしょう。しかしどれだけ強要されても、尊厳までは奪うことはできないのです。
読み終わってタイトル『虚空蔵の峯』を眺めてみる… 私が胸を張って主張したいこと、守りたいことは何だっただろうかと振り返るきっかけになりました。 -
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読み始めてすぐ思いついたのは、現在の中国の信訪制度である。様々な理不尽に遭う地方の人々が、地方政府に訴えると、公安によって即座に逮捕、強制収容所送りになる。そのため、北京の信報所に訴え、その判決を待ち望むため、多くの人が行列を作り、かすかな期待を寄せる。訴えが受理される確率は極めて低く、まして救済される例はほとんどないが、多くの人々は列をなすことになる。そこには地方の公安関係者が頻繁に訪れ、強制的な逮捕が繰り返される。
これは江戸時代の物語ではある事は承知しているが、強権制度の元では全く同じ状況が、司法は権力から独立すると言うのは幻想に過ぎないだろうと言うことを強く感じた。 -
Posted by ブクログ
ある土豪の村の住民が一夜に全て消えてしまう。
っていう説明にミステリーかなって勘違いをして手に取った。
いや作者が飯嶋和一さんなので、ミステリーとかSFじゃなく歴史小説だよね、とわかっているんだけど。
序章から二章の途中まで一体どういう話なのかピンとこないまま読んでいて、
私ったらまた背伸びして難しい本に手を出したかな?と後悔し始めた頃、
急に話が動いて、
これはボケ〜っと読んでたらいかんヤツや!となって再び序章から読み返したw
長い間、隠蔽された出来事だったらしいです。生瀬の乱とかって検索したら出てくるんですが、wikiじゃなくこの小説をぜひぜひ読んでみてほしいと思います!
抗えば一村亡所、見せしめか粛正か
女子ども老人もすべて撫で斬りという
凄惨な事件。
興味深くて面白い。
読み応えたっぷりでした。
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戦歴の兵であり、島原・南目の村を支える庄屋、甚右衛門は悪政に耐えかねて年貢の準備をやめた。一方、反乱の引き金を引いた寿安は長崎で医道へ。
寡作ながら書けば名作ハズレなしと言われる飯嶋さんの、最高傑作との呼び声も高い本作は島原の乱の顛末を描いた歴史大作です。島原の乱といえば、学校の授業では天草四郎が主導した宗教戦争と習いましたが、近年では重税と圧政に苦しんだ民衆の一揆が主体だという説になっているそうです。一方で宗教戦争説も見直されたりして、本当のところはよくわかりません。
本作では、島原の領主、松倉家が課した非常識な税(年貢)とキリシタン弾圧で疲弊しきった民衆が、キリストの教えの元に結束して一揆を起こす、という圧政説に基づいたお話になっています。膨大な資料を読み込んで緻密に組み立てる飯嶋さんの重厚で圧倒的な描写力で、ある事件をきっかけに転がる様に崩壊に向かっていく人々の姿は他にも「神無し月十番目の夜」などでも描かれていて、どちらもその結末が明らかなだけに読むのが辛くなっていきます。
とくに、本作では反乱の目標が殉教による救い、つまり圧政から解放されて生きることではなく、死ぬことによる救いを目指したというこの世への絶望感が本当に切ないのです。
そしていつの時代でも利権と自分の身の回りの利益にしか目を向けない為政者達は幅を利かせますが、そうした我が身ばかりを大事にして道を踏み外す権力者への怒りと、人として生きるとはどういうことなのかを語りかける静かな情熱に胸が熱くなります。私利私欲・今だけ金だけ自分だけという政治は今の日本や世界でも収まるところを知らず、人間の本質とはこういうものなのだろうと絶望にも似た諦念を抱かざるをえない時代ですが、終章で寿安が人に向き合い、生きる道を選んだように、少なくとも自分は人として恥ずかしくない生き方をしたいものだと切に思うのでした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ久々の飯島和一、やっぱ読みごたえあったわぁ。
文庫700Pがっつり6日間かかってしまった。
島原の乱というと「キリシタンの反乱」という、宗教の自由を得るための戦いという思い込みがある、多分歴史の授業(それも義務教育中の)においてそう思い込まされたのだろうけど、実は重税に耐えかねた農民たちの反乱というのが本筋。さらには豊臣・徳川の争いの最終局面という見方もできるし、幾層にも積みあがった戦国封建政治の歪みが島原天草地方で噴出したというのが正解。
ということを、この本は教えてくれる。小説の時代も現在も政治をつかさどる連中の中には「下々のモノなどは税金を納める家畜」と思っている連中は少なからずいて、そういう連中が時に暴走する。
俺みたいな下々のモノは、面倒くさい権力だの地位だのはどうでもよくて、税金を払ってれば、そういう諸事をやってくれるなら、どうぞご自由にやってください…なんだが、暴走されて家畜扱いされて死にそうな目に会うと、追い詰められて牙をむかざるを得ない。
権力者の傲慢と誤解、下々のモノの憤懣が不幸を呼ぶ。それはこの小説の時代も今も変わらない、どうか世の権力者たちは下々のモノたちをまぁまぁエエ気持ちにさせておきながらの搾取にいそしんで欲しい。
下々の我々は、日常をきちんと丁寧に生きて、権力者に与えられたものがどういうものか、どういう風に搾取されているのか、そのへんは下々なりに理解しておく必要があるよな。
寿安の生き様、素晴らしい。あと一歩のところ踏ん張り残して、物語を悲劇にしなかったあたり、この小説の後味を非常に良くしてくれている。 -
Posted by ブクログ
おもろかったです、が、飯島本のいいところも悪いところも出ている感じ。内容的には島原の乱が中心なんだが、最初に外崎恵舟から始まって、それがまた大変面白かったのでそのまま外崎恵舟とジュアンだけにフォーカスしてくれたらよかったのに、、ジェロニモ四郎のこととかいろんな話が詰め込まれすぎて散漫になりすぎ感あり。確かにいろんな方向からも知っとくとおもろいとは思うが、ゆうても娯楽小説なのでそこらへんは軽く流してよかろうか、、とは思う。もしくは高田本みたいに狭く狭く深く掘り下げてもらうほうが、、。ともかく、ハイレベルなところでの不満はあれど、やっぱり面白かったです。飯島本にハズレなし。