ライト兄弟の人類初の飛行機による初飛行よりも120年も前の江戸時代後期、人は空を飛べると確信した男がいた。
備前屋幸吉は表具師としての腕を持ち、その腕で己を乗せた大凧を作った。
職人としての最高位の銀払いの身であったが、空を飛んだことで人心を惑わした罪で岡山から追放された。
幕政に苦しむ
...続きを読む民は幸吉の行為を、お上に対する反発だと喜んだ。
武士階級への反発心は、また別の男たちの心にも火をつけた。
江戸衆が独占する下り塩に苦しんでいた行徳の塩問屋、巴屋伊兵衛と、起死回生に手を貸す児島廻船衆たち。
そして幕府直轄で独占していた商人たちから、商いを奪い返す。
ところ変わって、幸吉は駿府で商いを興して成功していた。しかし、このままで人生を終わらせていいのか悩み始める。
やり残したことは一つ。再び空を目指す。
お上に逆らえず、ただうなだれるだけの毎日を過ごしていた男たちが立ち上がる。
その中心に幸吉がいた。本人は、ただ空を飛びたかっただけだが、周り放っておかなかった。
確かに、備前屋幸吉は実在した人物らしい。空を飛ぼうとした男が200年以上前にいた。
それを飛べる。そのためには何が必要か。鳥の羽を調べ、竹組の翼を技術で完成させる。
そんな技術者の魂にとても惹かれた。人が思いもしなかった何か、それを生み出し完成させるまでのプロセスは昔から変わらない技術者の基本だ。
そんな技術者になりたい。