【感想・ネタバレ】出星前夜のレビュー

あらすじ

キノベス1位&大佛次郎賞受賞作!

大佛次郎賞+キノベス第1位の2冠に輝いた、歴史超大作!

寛永14年(1637)、突如として島原を襲った傷寒禍(伝染病)は、一帯の小児らの命を次々に奪い始めた。有家村の庄屋・鬼塚甚右衛門は旧知の医師・外崎恵舟を長崎から呼ぶが、代官所はあろうことかこの医師を追放。これに抗議して少年ら数十名が村外れの教会堂跡に立てこもった。
折しも代官所で火事が発生し、代官所はこれを少年らの仕業と決めつけ討伐に向かうが、逆に少年らの銃撃に遭って九人が死亡、四人が重傷を負った。
松倉家入封以来20年、いっさいの抵抗をしてこなかった旧キリシタンの土地で起こった、それは初めての武装蜂起だった‥‥。

結局は幕藩体制そのものに抗うことになる海民・土豪らの絶望的な戦いがここから始まる。向かう先は破滅にほかならなかったが、それでも彼らが戦うことを選んだのはなぜだったのか?
原稿枚数1200枚! 大部ながら一気に読ませる本作もやはり「飯嶋和一にハズレなし!」である。

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Posted by ブクログ

戦歴の兵であり、島原・南目の村を支える庄屋、甚右衛門は悪政に耐えかねて年貢の準備をやめた。一方、反乱の引き金を引いた寿安は長崎で医道へ。

寡作ながら書けば名作ハズレなしと言われる飯嶋さんの、最高傑作との呼び声も高い本作は島原の乱の顛末を描いた歴史大作です。島原の乱といえば、学校の授業では天草四郎が主導した宗教戦争と習いましたが、近年では重税と圧政に苦しんだ民衆の一揆が主体だという説になっているそうです。一方で宗教戦争説も見直されたりして、本当のところはよくわかりません。
本作では、島原の領主、松倉家が課した非常識な税(年貢)とキリシタン弾圧で疲弊しきった民衆が、キリストの教えの元に結束して一揆を起こす、という圧政説に基づいたお話になっています。膨大な資料を読み込んで緻密に組み立てる飯嶋さんの重厚で圧倒的な描写力で、ある事件をきっかけに転がる様に崩壊に向かっていく人々の姿は他にも「神無し月十番目の夜」などでも描かれていて、どちらもその結末が明らかなだけに読むのが辛くなっていきます。

とくに、本作では反乱の目標が殉教による救い、つまり圧政から解放されて生きることではなく、死ぬことによる救いを目指したというこの世への絶望感が本当に切ないのです。
そしていつの時代でも利権と自分の身の回りの利益にしか目を向けない為政者達は幅を利かせますが、そうした我が身ばかりを大事にして道を踏み外す権力者への怒りと、人として生きるとはどういうことなのかを語りかける静かな情熱に胸が熱くなります。私利私欲・今だけ金だけ自分だけという政治は今の日本や世界でも収まるところを知らず、人間の本質とはこういうものなのだろうと絶望にも似た諦念を抱かざるをえない時代ですが、終章で寿安が人に向き合い、生きる道を選んだように、少なくとも自分は人として恥ずかしくない生き方をしたいものだと切に思うのでした。

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2023年08月12日

Posted by ブクログ

飯嶋和一、やっぱり「力量もある善なる者」が絶望的に負ける話がええのよね、「神無き月〜」とか。こんな読み方性格悪いんかも知れんけど。
島原の乱、正直よく知らんかった、そもそも「島原」なのにリーダーがなんで「天草」なのか、とか。まぁ読み甲斐あるわ。

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2022年11月17日

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素晴らしい。目の前で、ひとびとが動いているのが、リアルにわかる表現。しかも丁寧な取材をされている。
島原の乱はこうだったんだ、とドキュメンタリー映画を観ているような感覚になった。
虐げられる側に立った優しさと、正義の強さをもった作家の力作だ。
これは、大傑作である。
なんども読み直したい。

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2021年12月13日

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ネタバレ

初飯嶋。学生時代に習った“島原・天草の乱”の裏側?というか、実際はこうだったのかのではないかと思う程の描写に力がありました。この時代のトップらもやはり糞ばかりでホント反吐が出る…。傑作でした!最後のジュアンがこの物語の唯一の希望の光でした^^ 個人的には松平伊豆守を刀で斬り伏せて欲しかったなぁ。星四つ半。

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2019年05月14日

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ネタバレ

久々の飯島和一、やっぱ読みごたえあったわぁ。
文庫700Pがっつり6日間かかってしまった。

島原の乱というと「キリシタンの反乱」という、宗教の自由を得るための戦いという思い込みがある、多分歴史の授業(それも義務教育中の)においてそう思い込まされたのだろうけど、実は重税に耐えかねた農民たちの反乱というのが本筋。さらには豊臣・徳川の争いの最終局面という見方もできるし、幾層にも積みあがった戦国封建政治の歪みが島原天草地方で噴出したというのが正解。

ということを、この本は教えてくれる。小説の時代も現在も政治をつかさどる連中の中には「下々のモノなどは税金を納める家畜」と思っている連中は少なからずいて、そういう連中が時に暴走する。

俺みたいな下々のモノは、面倒くさい権力だの地位だのはどうでもよくて、税金を払ってれば、そういう諸事をやってくれるなら、どうぞご自由にやってください…なんだが、暴走されて家畜扱いされて死にそうな目に会うと、追い詰められて牙をむかざるを得ない。

権力者の傲慢と誤解、下々のモノの憤懣が不幸を呼ぶ。それはこの小説の時代も今も変わらない、どうか世の権力者たちは下々のモノたちをまぁまぁエエ気持ちにさせておきながらの搾取にいそしんで欲しい。

下々の我々は、日常をきちんと丁寧に生きて、権力者に与えられたものがどういうものか、どういう風に搾取されているのか、そのへんは下々なりに理解しておく必要があるよな。

寿安の生き様、素晴らしい。あと一歩のところ踏ん張り残して、物語を悲劇にしなかったあたり、この小説の後味を非常に良くしてくれている。

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2018年08月07日

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おもろかったです、が、飯島本のいいところも悪いところも出ている感じ。内容的には島原の乱が中心なんだが、最初に外崎恵舟から始まって、それがまた大変面白かったのでそのまま外崎恵舟とジュアンだけにフォーカスしてくれたらよかったのに、、ジェロニモ四郎のこととかいろんな話が詰め込まれすぎて散漫になりすぎ感あり。確かにいろんな方向からも知っとくとおもろいとは思うが、ゆうても娯楽小説なのでそこらへんは軽く流してよかろうか、、とは思う。もしくは高田本みたいに狭く狭く深く掘り下げてもらうほうが、、。ともかく、ハイレベルなところでの不満はあれど、やっぱり面白かったです。飯島本にハズレなし。

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2017年10月27日

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ネタバレ

読み進めるに連れて読む速度が遅くなり、しかしあるところから転げ落ちるように速度が早くなり、だけども読み終えることが辛くて、その速度を何度も落とそうとしたのだけども…読み終えました。
この本に出会えて苦しくとも幸せでした。読んでいる時期に自身の環境の変化があり、余計に感慨深いものがありました。
江戸初期に実際にあった、キリシタンに対しての苛烈を極めた弾圧と過酷な課税、そのためにすべての普通の生活を奪われ、天災による不作と貧困のために伝染病が蔓延し、もうどこにも引き返せなくなった農民たちが起こした、最大規模の反乱の話である。
キリシタンであることが反乱のすべての理由ではないのに、最後は討伐軍側の都合のいいように、都合の悪いことは隠蔽され、見せしめのために叛乱軍は全滅させられる。女子供すべて。
解説にもあったとおり、元々史実であり、絶望しかない物語なのだけれど、それでも微かな希望は撒かれ、僅かにでも広がっていく。
人の救いは、信じるものは、絶望の中でも決して無くなりはしないと、信じたい。悲しみの物語が終わり、エンディングに僅かな希望を読んだ時に、そう思った。

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2017年08月13日

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 飯嶋氏の作品を読むのはいつもためらう。内容が濃く分厚いのでだいたい2週間くらいかかり、その間は他の本が読めない。でも読みきったあとの恍惚感というか、忘我の境地を味わえる本はそうそうない。それだけすごい。これぞ歴史小説。
 
 舞台は島原の乱が起きる少し前の島原近辺。天候不順で不作が続き年貢を納めることもできなければ、自分たちが食べる穀物すらない状況下で、病が流行った。栄養状態が悪い子どもたちが真っ先に犠牲になり、ばたばたと死んでいった。にもかかわらず領主は備蓄米を放出することを拒み、年貢を納めらない農民から年貢代わりに牛馬を取り上げるという悪政で報いる始末。


 かつてキリシタンの教えが広まった地域のため、大人たちは信仰心から、そんな悪政にも耐えて暮らしていたが、10代の少年たちは幼い子どもたちが死んでいく様をみて我慢の限界を超え、怒りから蜂起した。
 少年たちの行動に感化された人たちは次々と立ち上がる。


 しかし蜂起は鎮圧されるのが半ば必然。鎮圧とは皆殺しされることを意味する。いまは農民でもかつては武士として朝鮮出兵での過酷な籠城戦を経験した長老たちはその無残さを知ってるだけに、事態を鎮静化させたかった。しかし、暴挙に見えた少年たちの行動に、長老たちもようやく気づく。
 
 このままじわじわと飢餓により殺されていくことを選ぶのか、それとも戦って死ぬのか。
 
 彼らの目の前に示された問いはこれしかなかった。
 
 さあ、お前たちはどちらを選ぶのだ?
 
 いまだに島原の乱をキリスト教弾圧に対する農民たちの蜂起だと思っている人がいたら、こう言いたい。
 
 この本を読みなさい。

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2017年08月15日

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早く次の作品が出ないかなと、いつも待ちきれない数少ない作家の一人。
飯島和一さんの作品は四~五年に一回くらいしか出ず、それだけ内容に吟味を重ねて作られているのだろうと想像する。時代小説を書く作家は多けれど、これほど引き込まれ心を震わす作品を書かれる作家も珍しいのではないか。
ならば何故有名では無いのか。飯島さんは一切マスコミには登場しない。マスコミに一切媚びを売らない。という方だからだ。
どなたかが飯島和一にハズレなしと言ったらしいが、まったくその通り。
今回の出星前夜は島原の乱をテーマとしているが、天草四郎が主人公ではない。もちろん討伐軍が主役でも無い。所謂一般の市井の人々だ。その目線で描かれた島原の乱がいかに愚かな戦いであったかを活写している。
飯島さんはいつも英雄になったような人物は描かない。そこがまたいい。
しかも歴史に翻弄され、未来に希望の欠片もみえない状況を描きつつ、最後には真っ暗闇に微かな光が見えるような終わり方をする。
ああ、次の作品がすでに待ちきれない。

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2016年01月15日

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2009年本屋大賞7位

島原の乱

自分の今まで持っていた「島原の乱」のイメージといえば
“エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、我は求め訴えたり” の山田風太郎「魔界転生」。
“妖艶”且つ“神格化”された悲劇のヒーローだったのに、本作を読んであまりのギャップに驚愕。

沈鬱な話であるのに、征伐軍のアホさ加減には笑ってしまった。ただ、300年以上経った今でも「保身」「出世欲」といった業(ごう)というものは変わらんのだなぁ、と。

重苦しい中に、タイトルでもある寿安(北山寿庵がモデル⁉︎)の話は、本当に星の如き光が射してジーンときました。

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2015年10月17日

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圧政は圧制を生み、歪は下へ。
最下層は望みもなくただどうにか生き耐える。
島原の乱。
著者の史実への誠実さが、深く重く心にのしかかる。
それは読み終えてほっとするほど、強烈に辛い事実。
いま。時代が変わっても変わらぬに悪政。過去から学ぶことはたくさんあるのに。

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2014年05月14日

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いわゆる「島原の乱」を描く、重く、辛い、圧倒的な物語。それなのに、物語の中にほんとうの、強靭な希望が宿っている。読みだしたら止まらない傑作。飯嶋和一、ほんとにすごいや。

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2014年05月01日

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或いは読む方によって色々な感じ方が在る作品であるような気がする。各劇中人物がどうなって行くのか、どうして行くのか…「島原の乱」を背景とした重厚な群像劇であり、なかなかに興味深いと思う。

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2014年04月10日

Posted by ブクログ

圧倒される。著者の作品でも一番流される血の量が多いけど。
文庫本のカバーで紹介されている過去の二作品、なるほどと頷く。確かに繋がっている。単行本が出てから時間が経つので忘れていました。

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2013年03月23日

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島原の乱について、学校では単純に抑圧されたキリシタンの反乱と教えられたがそんなに単純なものでは無いと判った。
藩主が分不相応な家臣団を持ったため、年貢を倍以上取り立てられながらもキリストの教えにより逆らわずにいた島原や天草の地。だがそれも限界になり武装蜂起となる。
ちょっと無抵抗主義にも程があるし共感は出来ない。武装蜂起後も今一つ目的不明で人間臭くはあるが味方も敵もだらし無い。
またキリストの殉教とは逆らわずに死ぬ事とされているので島原の乱を起こしたキリシタンは殉教では無いらしい。何だかそれも馬鹿馬鹿しい。
物語の主題が自分に合わなかったが、小説としては面白かった。

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2025年08月31日

Posted by ブクログ

島原の乱のお話

以下、公式のあらすじ
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寛永14年(1637)、突如として島原を襲った傷寒禍(伝染病)は、一帯の小児らの命を次々に奪い始めた。有家村の庄屋・鬼塚甚右衛門は旧知の医師・外崎恵舟を長崎から呼ぶが、代官所はあろうことかこの医師を追放。これに抗議して少年ら数十名が村外れの教会堂跡に立てこもった。
折しも代官所で火事が発生し、代官所はこれを少年らの仕業と決めつけ討伐に向かうが、逆に少年らの銃撃に遭って九人が死亡、四人が重傷を負った。
松倉家入封以来20年、いっさいの抵抗をしてこなかった旧キリシタンの土地で起こった、それは初めての武装蜂起だった‥‥。
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読み始めは江戸時代のパンデミックの話かと思ってたけど、立てこもる少年達のあたりで「これは島原の乱か?」と思い至る

島原の乱と言えば、天草四郎が率いた宗教一揆と思っていたけど
それはあくまで幕府側の残した歴史認識であって
実は重税と圧政に苦しめられた農民達の一揆が主体であり
その背景には宗教弾圧があり、またキリスト教の「耐える」という教えの最後の箍が外れた事で起こったという解釈になっている

キリスト教はうまく使えば民衆に耐えさせる道具にもできるけど
その結果、却って手痛いしっぺ返しを食らったというものですね

普通の一揆と違って、途中からは殉死する事が目的にもなり
結局は死兵となってしまったというのは、支配者層の無能エピソードだよなぁと思う


ただ、この島原の乱はキリスト教として殉教とはされていない
何故なら、耐え忍ぶというキリスト教の教えに従っていないから
やはり、遠藤周作の「沈黙」でも語られていたけど、キリスト教も日本に入ってきた時点で、どれだけ忠実に教義を守ろうとしても土着の思想と融合して、まったく異なる宗教になっている気がする


それにしても、蜂起勢を鎮圧するために何万もの軍勢を数ヶ月養える物資があるにもかかわらず
そうなる前になぜもっと早く救ってやれなかったのかという矛盾がある

まぁ、江戸表への報告と統治の実態の差異のせいではあるんだけど
幕府の中央の方では本当はどんな認識だったのかね?


それはそうと、「黄金旅風」の主人公、長崎代官末次平左衛門も結構活躍している
蘭学の医療を学んだ外崎恵舟とのやり取りでも、ひととなりが伺い知れるエピソードなどあって嬉しい

先々の事まで見据えた上で、民のために現状対策を行えるのは為政者として優れているよなぁ


あと、立花宗茂もおじいちゃんになって登場している
戦国無双とかで名前を知ってる程度ですけど、こんなに長生きしてたんですねぇ


そして、タイトルの意味
星とはあの人の事であり、そうなった経緯
そして、同じ道を選んでいたら辿ったであろう人たちの終焉がこの物語なのですね

その医者は実在した人のようで
出自など辻褄をあわせる形で物語の設定に組み込んでるようだ
この話、どこまで史実なんでしょうね?

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2024年09月02日

Posted by ブクログ

島原の乱について書かれた本。
何年か前に島原の乱はカトリックから殉教と認められてないという話を聞いて、実際のところは何が起こっていたのか知りたいと思っててこの本に出会いました。

長崎方面の土地勘がなく地名を聞いてもよくわからず、昔の日本あるあるで似た名前の人たちに苦しめられながら読み進めた前半でしたが、あまりにも酷い当時の状況に心が痛みました。不都合な真実にはキリシタンというレッテルを貼って処罰する圧政を敷かれ、生きることに希望を見出せず乱を起こすしかなかったのはあまりにも悲し過ぎました。
乱後の後半の流れは一つ一つの戦況の説明が詳細すぎるのと最後の結末は知っているためか読み進めるのか辛かったですがなんとか読破しました。読んで辛かったですが読んでよかったです。

物語の最後の方で花火師の人が「討伐軍はここで何をやっていたんだ。これほどの軍勢がありながら、なぜもっと早く、救う道をつけることができなかったものか」というところが一番心に刺さりました。10万の軍勢とそれを4ヶ月も養える物資があるくらいなら領民たちを救うことくらいなんということはなかったはず。島原の乱は武家社会の起こした人災だったと思いました。ただ、こういうボタンのかけ違いによる悲劇は昔に限らず、いつの時代でも起こりうるので繰り返されないことを祈るばかりです。

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2023年05月10日

Posted by ブクログ

島原の乱を題材にした700P超の大作。主人公は天草四郎…ではなく、この時代に生きた人々。自らの運命に苦しむ者、自らの矜持に殉じる者、強かに立ち回る者などを時に熱く、時に冷静に描く歴史ロマン!題名の意味が最後の最後に分かる感動!面白かったー!

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2021年08月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

凄い。圧倒される。

棄教したとはいえ、受け継がれてきたキリストの教えを忠実に守ることによってその苛政に耐えてきた農民たち。
そんな農民たちを踏みにじるように搾取し続ける松倉家の武士たち。

幼い子どもたちの原因不明の流行り病がきっかけとなり農民と武士との均衡は一気に崩れる。

追い込まれた人間たちが確固たる信念とともに覚悟を決めたとき、大きなエネルギーとなって歴史の転換点を生み出す。

そのエネルギーの強さに圧倒され、呆然としながらもページをめくる手が止まらない。

久しぶりに歴史小説の醍醐味を味わった。

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2019年12月31日

Posted by ブクログ

「一万円選書」で送られてきましたシリーズ。
なんの予備知識もなく、つまり時代小説だということも知らずにいきなり読み始めたので、ある意味新鮮な読書体験でした(笑)
島原の乱については学校の教科書以上の知識はなかったので、最後まで興味深く拝読しました。
長い小説が好きなので、面白かったです。

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2019年05月14日

Posted by ブクログ

世に言う島原の乱の話。
学校では、島原のキリシタンが蜂起をして幕府軍と戦った、ぐらいにしか習わないがじつはそんな単純な理由ではなく根深いものとして描いている。
前半は無能な藩主の圧政に苦しめられるもそれに耐え忍ぶ村人たちの生活を描く。そしてそんな大人たちに対しての歯痒さから島原の乱に繋がる火種を起こす少年たち。
後半は島原の乱の顛末。戦いのくだりが長く読み飛ばす場面もけっこうある。最後は蜂起が鎮圧と言うか皆殺しにされ救いがないように思えるが、島原の乱の火種を起こした少年があることから医者となり人の命を救うことに生涯をかけることになるのがこの小説での光だと思う。

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2017年02月28日

Posted by ブクログ

農民たちの苦労が延々と語られるを読むのに疲れる。本書を読むと、島原の乱の最大の原因は、信仰の迫害というより為政者の無能だという印象を受ける。本書に記載されている松倉家の為政はそれほどひどい。しかし、社会構造の中で、自分もこの松倉家のように、弱者を搾取する側に回ってしまっているかもしれない。そんなことを考えさせられる。

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2017年01月05日

Posted by ブクログ

すごい。
江戸時代の暮らし、社会の仕組み、医療や漢方薬に関すること、宣教師とキリシタンのこと、島原の地理、城の作り、戦の仕方、ほかにもたくさんのことをどれだけ調べたらこんな話が書けるのか。
島原の乱を描いたら悲劇になるに決まってると思ってたけど、ただ悲惨なだけじゃない、すごい世界があった。

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2015年07月18日

Posted by ブクログ

最近軽い本ばかり手を出している私は、ずいぶん苦戦しました。
天候不順も一切考慮されない通常の倍の年貢、栄養失調から子供たちの間に伝染病が広がる。そんな松倉家の苛政に武装蜂起する若い寿安。朝鮮出兵で戦いの悲惨さと無意味さを知り、農業の発展により苛政を凌ごうとする庄屋の甚右衛門。そんな二人がいつか入れ違い、甚右衛門は島原の乱を貫き、暴徒と化した民衆に失望した寿安は、長崎で子供たちの伝染病治療に邁進する。
島原の乱を題材にした700ページにわたる歴史大作です。司馬史観という言葉がありますが、この作品も飯嶋史観といった雰囲気もあります。ずいぶん濃密な書き込みでなかなか前に進まず。特に後半は戦闘場面が延々と続き、途中から少し流し読みみたいになってしまいました。
しかし悲惨な中に救いもあって、読後感はいいですね。
読み応えのある読書でした。

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2016年05月15日

Posted by ブクログ

期待通りの読み応え。
ジリジリと導火線を這う火花のような緊張感。
その場にいるような臨場感。
これは読まないと。

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2014年07月10日

Posted by ブクログ

初めて作者の作品を読んだが、躍動感を感じられなかったことと、討伐軍・蜂起軍双方に感情移入できなかったことから、メインの島原の乱の攻防シーンが遅々として読み進まなかった。

序盤の村での蜂起の場面までは同情し怒りを共感し没入できたが、寿安や鬼塚監物が暴徒化を自覚した段階で同時に熱が冷めてしまった。作者は蜂起側寄り(というより客観的な歴史分析として幕府の非を糾弾する意図だと思うが。)だったが私個人は松倉家以外の大名・家来にも同情を禁じ得ず、勿論根底には劣悪な環境改善の訴えがあるとはいえ、信仰を盾にして人を殺していく蜂起勢への身勝手さに怒りを覚えるほどだった。鬼塚監物はまだ理性的な人物として描かれているが本当の理性を持った人ならば頃合いを見て主犯の首と引き換えに女・子供の助命を条件とした講和をすべきではないか。

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2023年01月08日

Posted by ブクログ

706ページの大作は、繰り返しの多い筋運びも相まって、読み切るのに骨が折れた。
歴史の教科書では数行で終わる「島原の乱」が、これほど凄惨なものだったとは。大作の過半が戦い以前に割かれ、為政者の出鱈目な圧政に虐げられた民衆の苦しみが限界に達していく様が描かれる。閾値を超えた民衆の苦しみは支配への抵抗へと向かうが、もたらされるのは救いでも解放でもなく、殺戮合戦による膨大な屍だった。
それは私の受け取りであって、彼らにとって戦いの果の死は、救いや解放を意味するのだろうか。

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2021年07月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

島原の乱が起こった背景を丁寧に描く時代小説。乱の首謀者といわれている天草四郎を主とするのではなく、生活苦に悩む人々に焦点を当てて、物語は進んでいく。

これを読むとキリスト教というより、悪政に苦しんだ結果、蜂起がおこったというのが正しい見方なのかも知れない。キリスト教を禁止するための名目にこの反乱が利用されたのだろう。

本作は悲劇的な話だが、政治に翻弄される人民、反乱そのものを政治利用する政府(幕府)、騙される人民という構図は今も変わっていないのだろうと思う。

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2020年01月12日

Posted by ブクログ

な、ながかった。。。。面白いんだけど、だんだん最後の方は流し読みになってしまった。とはいえ、色々なことを考えさせれられる1冊だった。

島原の乱をベースに描かれた時代小説。
松倉家への苛政に対する武装発起を様々な角度から描かれている。英雄が現れて、民衆とともに立ち上がる!というようなものではなく、そこにいる一人ひとりが主役になっている。

解説より↓
「殉教という響きに陶酔する危うさ。戦の寒々しい熱狂の後にやってくる虚無感。上を前にした時に現れる人間の本性。カリスマを崇める心の弱さ。統率を失った時、いとも簡単に崩れる個人の意思と自制。善の陰に潜む醜さ。特定の人間を崇めることなく、また特定の宗門や立場を支持するわけでもなく、ただ淡々と徹底的に、著者は個人に寄り添う。そして二万七千という数字が一人ひとりの顔を持った個人となって浮かび上がり、その生が限りなくいとおしいものだと気づかされる」

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2017年02月20日

Posted by ブクログ

島原の乱をテーマに描かれた作品。
発端となったのは飢餓からくる伝染病で、藩の悪政に対抗してやがてキリシタンが立ち上がり武装蜂起となっていく。
しかしこの作品の主人公は天草四郎ではなく、争いをなるべく止め、民を助けようとする青年寿安や庄屋の甚右衛門や医者の恵舟である。
島原・長崎の男気あふれる人物たちの物語は読んでいてすがすがしい。
ハッピーエンドとはならないが、心意気の強さは伝わる。

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2013年06月17日

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