【感想・ネタバレ】出星前夜のレビュー

あらすじ

キノベス1位&大佛次郎賞受賞作!

大佛次郎賞+キノベス第1位の2冠に輝いた、歴史超大作!

寛永14年(1637)、突如として島原を襲った傷寒禍(伝染病)は、一帯の小児らの命を次々に奪い始めた。有家村の庄屋・鬼塚甚右衛門は旧知の医師・外崎恵舟を長崎から呼ぶが、代官所はあろうことかこの医師を追放。これに抗議して少年ら数十名が村外れの教会堂跡に立てこもった。
折しも代官所で火事が発生し、代官所はこれを少年らの仕業と決めつけ討伐に向かうが、逆に少年らの銃撃に遭って九人が死亡、四人が重傷を負った。
松倉家入封以来20年、いっさいの抵抗をしてこなかった旧キリシタンの土地で起こった、それは初めての武装蜂起だった‥‥。

結局は幕藩体制そのものに抗うことになる海民・土豪らの絶望的な戦いがここから始まる。向かう先は破滅にほかならなかったが、それでも彼らが戦うことを選んだのはなぜだったのか?
原稿枚数1200枚! 大部ながら一気に読ませる本作もやはり「飯嶋和一にハズレなし!」である。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

初飯嶋。学生時代に習った“島原・天草の乱”の裏側?というか、実際はこうだったのかのではないかと思う程の描写に力がありました。この時代のトップらもやはり糞ばかりでホント反吐が出る…。傑作でした!最後のジュアンがこの物語の唯一の希望の光でした^^ 個人的には松平伊豆守を刀で斬り伏せて欲しかったなぁ。星四つ半。

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2019年05月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

久々の飯島和一、やっぱ読みごたえあったわぁ。
文庫700Pがっつり6日間かかってしまった。

島原の乱というと「キリシタンの反乱」という、宗教の自由を得るための戦いという思い込みがある、多分歴史の授業(それも義務教育中の)においてそう思い込まされたのだろうけど、実は重税に耐えかねた農民たちの反乱というのが本筋。さらには豊臣・徳川の争いの最終局面という見方もできるし、幾層にも積みあがった戦国封建政治の歪みが島原天草地方で噴出したというのが正解。

ということを、この本は教えてくれる。小説の時代も現在も政治をつかさどる連中の中には「下々のモノなどは税金を納める家畜」と思っている連中は少なからずいて、そういう連中が時に暴走する。

俺みたいな下々のモノは、面倒くさい権力だの地位だのはどうでもよくて、税金を払ってれば、そういう諸事をやってくれるなら、どうぞご自由にやってください…なんだが、暴走されて家畜扱いされて死にそうな目に会うと、追い詰められて牙をむかざるを得ない。

権力者の傲慢と誤解、下々のモノの憤懣が不幸を呼ぶ。それはこの小説の時代も今も変わらない、どうか世の権力者たちは下々のモノたちをまぁまぁエエ気持ちにさせておきながらの搾取にいそしんで欲しい。

下々の我々は、日常をきちんと丁寧に生きて、権力者に与えられたものがどういうものか、どういう風に搾取されているのか、そのへんは下々なりに理解しておく必要があるよな。

寿安の生き様、素晴らしい。あと一歩のところ踏ん張り残して、物語を悲劇にしなかったあたり、この小説の後味を非常に良くしてくれている。

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2018年08月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読み進めるに連れて読む速度が遅くなり、しかしあるところから転げ落ちるように速度が早くなり、だけども読み終えることが辛くて、その速度を何度も落とそうとしたのだけども…読み終えました。
この本に出会えて苦しくとも幸せでした。読んでいる時期に自身の環境の変化があり、余計に感慨深いものがありました。
江戸初期に実際にあった、キリシタンに対しての苛烈を極めた弾圧と過酷な課税、そのためにすべての普通の生活を奪われ、天災による不作と貧困のために伝染病が蔓延し、もうどこにも引き返せなくなった農民たちが起こした、最大規模の反乱の話である。
キリシタンであることが反乱のすべての理由ではないのに、最後は討伐軍側の都合のいいように、都合の悪いことは隠蔽され、見せしめのために叛乱軍は全滅させられる。女子供すべて。
解説にもあったとおり、元々史実であり、絶望しかない物語なのだけれど、それでも微かな希望は撒かれ、僅かにでも広がっていく。
人の救いは、信じるものは、絶望の中でも決して無くなりはしないと、信じたい。悲しみの物語が終わり、エンディングに僅かな希望を読んだ時に、そう思った。

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2017年08月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

凄い。圧倒される。

棄教したとはいえ、受け継がれてきたキリストの教えを忠実に守ることによってその苛政に耐えてきた農民たち。
そんな農民たちを踏みにじるように搾取し続ける松倉家の武士たち。

幼い子どもたちの原因不明の流行り病がきっかけとなり農民と武士との均衡は一気に崩れる。

追い込まれた人間たちが確固たる信念とともに覚悟を決めたとき、大きなエネルギーとなって歴史の転換点を生み出す。

そのエネルギーの強さに圧倒され、呆然としながらもページをめくる手が止まらない。

久しぶりに歴史小説の醍醐味を味わった。

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2019年12月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

島原の乱が起こった背景を丁寧に描く時代小説。乱の首謀者といわれている天草四郎を主とするのではなく、生活苦に悩む人々に焦点を当てて、物語は進んでいく。

これを読むとキリスト教というより、悪政に苦しんだ結果、蜂起がおこったというのが正しい見方なのかも知れない。キリスト教を禁止するための名目にこの反乱が利用されたのだろう。

本作は悲劇的な話だが、政治に翻弄される人民、反乱そのものを政治利用する政府(幕府)、騙される人民という構図は今も変わっていないのだろうと思う。

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2020年01月12日

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