飯嶋和一のレビュー一覧
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江戸初期の長崎にて、鎖国に至るまでの経緯を代官の家に生まれた平左衛門の視点を中心に描かれた物語
以下、公式のあらすじ
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江戸寛永年間、栄華を誇った海外貿易都市・長崎に二人の大馬鹿者が生まれた。「金屋町の放蕩息子」「平戸町の悪童」と並び称されたこの二人こそ、後に史上最大の朱印船貿易家と呼ばれた末次平左衛門と、その親友、内町火消組惣頭・平尾才介だった。代官であった平左衛門の父・末次平蔵の死をきっかけに、新たな内外の脅威が長崎を襲い始める。そのとき、卓越した政治感覚と強靱な正義感を持つかつての「大馬鹿者」二人が立ち上がった。
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江戸時代に鳥のように空を飛ぶことに人生を賭けた男の話。
凧揚げが盛んな地で育ち、表具屋としての技を磨くうちに凧で空を飛ぶことを思いつく。しかし実験を重ねるうちに大騒動になり町から追放となってしまう。そんな時に幼馴染の船乗りが彼を拾い、共に廻船業を営むが海育ちの者との差を感じ陸暮らしを始めるが、あることがきっかけで再び空を飛ぶことへの挑戦を始める。
実在の人物と思われるが、ほとんど記録が残っていないため大半が創作らしい。
他の作品と比べるとドラマチックさは控えめ。主人公の行動を通して、当時の世の中のシステムへの批判的な面も窺える。
空を飛ぶことへの執着は主人公の性質という感じではあるが、もう少 -
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初めて作者の作品を読んだが、躍動感を感じられなかったことと、討伐軍・蜂起軍双方に感情移入できなかったことから、メインの島原の乱の攻防シーンが遅々として読み進まなかった。
序盤の村での蜂起の場面までは同情し怒りを共感し没入できたが、寿安や鬼塚監物が暴徒化を自覚した段階で同時に熱が冷めてしまった。作者は蜂起側寄り(というより客観的な歴史分析として幕府の非を糾弾する意図だと思うが。)だったが私個人は松倉家以外の大名・家来にも同情を禁じ得ず、勿論根底には劣悪な環境改善の訴えがあるとはいえ、信仰を盾にして人を殺していく蜂起勢への身勝手さに怒りを覚えるほどだった。鬼塚監物はまだ理性的な人物として描かれて -
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てっきりギリシア神話のイカロスをめぐるお話のような完全なフィクションを想像していたのですが。半分違ってました。実在の人物を題材にしており、作中で発生した事件も史実に基づいているみたいです。
この種の作品はどうしても歴史上の出来事に縛られてしまうため、往々にして展開が窮屈になってしまいがちですが、本作もその例に漏れていない印象です。
また、本作のキモは間違いなく第二部の塩をめぐる幕府や問屋との対決で、この部分はかなり面白く読めたのですが、相対的に幸吉が空を飛ぶお話が付け足し程度にしか思えないという弊害が・・・。第一部が終わった時はこの後何をやらかしてくれるんだろうと期待したんだけどなあ。結局、『 -
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今年はエンタメ最優先と決めているので、基本的に小難しそうな文学には、たぶん殆ど手を出さない。当然本作も、各所で絶賛されているのを見て、なるべく早めに読みたいと思っていたものの一つ。個人的に感じるふとした懸念は、同じく絶賛される”黄金旅風”につき、それほどポジティブなイメージが残っていない点だった。そして本作。正直、しんどかった。上記の個人的今年のポリシーから、止めようかとも思った。時代背景についての細かい描写は、知っておくべきだろうし、分かった方が楽しめるんだろうけど、踏み込むとドツボに嵌ること必定なんで、基本的には読み飛ばし。その上で尚、読み進めるのがしんどかった。特に第2部は、ここだけ視点
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な、ながかった。。。。面白いんだけど、だんだん最後の方は流し読みになってしまった。とはいえ、色々なことを考えさせれられる1冊だった。
島原の乱をベースに描かれた時代小説。
松倉家への苛政に対する武装発起を様々な角度から描かれている。英雄が現れて、民衆とともに立ち上がる!というようなものではなく、そこにいる一人ひとりが主役になっている。
解説より↓
「殉教という響きに陶酔する危うさ。戦の寒々しい熱狂の後にやってくる虚無感。上を前にした時に現れる人間の本性。カリスマを崇める心の弱さ。統率を失った時、いとも簡単に崩れる個人の意思と自制。善の陰に潜む醜さ。特定の人間を崇めることなく、また特定の宗門 -
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ネタバレ陸軍大佐の竹内正虎が日本航空発達史の中で取り上げている、備前屋幸吉の話で、凧が好きで、遂には、自分がその凧に乗って空を飛んで、世間を騒がせた話だ。当時は、飢饉などへの幕府の対応が悪く、世間は不満の塊であり、凧に乗って飛んだ幸吉が、鵺になぞらえられて、『イツマデ、イツマデ』と、幕府の失策がいつまで続くのか揶揄したと言ったように、間違って世間に捉えられ、幸吉は備前を追われる。
封印していた凧作りがひょんなことから、再びすることになり、また、大空を飛びたいという欲望に駆られ、とんでしまう。
幸吉は人間が空を飛んだ最初の人である。ライト兄弟より100年以上も前の話である。