飯嶋和一のレビュー一覧
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島原の乱を描いた大叙事詩。
飯嶋和一にハズレ無しと言われるが、初めての飯嶋作品。
濃厚かつ重厚な歴史ドラマに自分の浅はかな知識が恨めしく思えた。
寛永14年(1637年)、突如として島原を襲った傷寒禍(伝染病)が
一帯の小児らの命を次々に奪い始めた。
有家村の庄屋・鬼塚甚右衛門は旧知の医師・外崎惠舟を長崎から呼ぶが、
代官所はあろうことかこの医師を追放。
これに抗議して南蛮人の血を引く寿安を中心とした少年数十名が
村外れの教会堂跡に集結した。
折しも代官所で火事が発生し、代官所はこれを彼らの仕業と決めつけ
討伐に向かうが、逆に寿安ら少年たちの銃撃に遭って
9人が死亡、4人が重傷を負う事態に。
松倉家入封依頼20年、無抵抗を貫いてきた旧キリシタンの土地で起こった、
それは初めての武装蜂起だった。
まず、歴史的背景がわかってないと全くついていけない内容である。
如何に島原の乱が起こったのか、それが丁寧に描かれている。
フィクションとは言え、史実に基づき描かれた内容、
それはもう、地獄以外の何物でもなかった。
結局、いつの時代においても、どの国においても同じことである。
勝者がいて敗者がいる結末には決してならないということ。
そして両者共大義を掲げるが、それが必ずしも正しいというわけではないこと。
迫害され続け、異常なまでの年貢を課せられた島原南目の各村の村民たち。
そんな中、キリシタンに返り咲き戦うことを決意する。
それは村民たちを守るため、明らかにおかしい政治に否を突きつけるため、
そんな正義の為に立ち上がった筈なのに、
あるタイミングからそれは狂ってくる。
歴史の授業で学ぶ限りでは、当初の幕府側と同じ見解であった。
農民たちが貢税に歯向かうただの蜂起だと。
だが、そんな実際は勿論単純明快なものではなく
歴史に刻まれた根深いものが爆発した結果なのである。
そしてさも島原の乱の主役として知られている天草四郎も
この作品においては脇役、というよりもむしろ掻き乱す役回り。
ある意味、よりミステリアスに、
そして嘘くさく描かれているような気さえもした。
島原の乱へと発展するまでの第一部はかなりの読み応えだったが、
第二部に突入してからは戦乱描写がひたすら続き、
それもどこか俯瞰した表現で淡々と描かれていくさまが
どうにも不気味に感じ、より恐怖を感じた。
登場人物の多さに戸惑うし、いわゆる戦国時代の専門表現も多く、
読み進めるのに非常に苦労するので、
歴史的背景含め、ある程度の知識を身につけてから読むのがオススメ。
悲劇でしかない物語ではあるが、
その中でも一筋の希望があったことは救いであった。 -
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飯嶋和一の新刊。前著「星夜航行」では文禄•慶長の役を描いていたが、本作はそのあと。鄭成功(1624〜1662)の明朝復興戦争の全貌を描いている。
明末の混乱から始まって、鄭成功が南海王国を打ち立て、三代に渡る台湾統治とその終焉までが冷徹な筆致で語られる。
大変な力作です。しかしながら、やはり一般的なレベルで読み通すにはハードルが高い。明の滅亡から清の成立までの部分では世界史上有名な人物が出て来るが、鄭成功が南海を拠点として抵抗戦争を始める辺りからは一般人には全く初見の人物が次から次へと登場し、次々と死んでいく。感情移入する隙さえ与えられない。(それに色っぽい話は微塵も出てこないしね)
…というわけで⭐︎は四つ。“大変に力のある作家が、歴史的には余り顧みられない所に全力を注いだ”って言うと偉そうな物言いだけど、本当にそんな感じです。
台湾をめぐる政治状況がきな臭くなっている今、かつての清王朝が台湾にできた“仮”亡命政府と如何に戦ったかを知っておくのはタイムリーなのかもしれません。 -
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島原の乱について、学校では単純に抑圧されたキリシタンの反乱と教えられたがそんなに単純なものでは無いと判った。
藩主が分不相応な家臣団を持ったため、年貢を倍以上取り立てられながらもキリストの教えにより逆らわずにいた島原や天草の地。だがそれも限界になり武装蜂起となる。
ちょっと無抵抗主義にも程があるし共感は出来ない。武装蜂起後も今一つ目的不明で人間臭くはあるが味方も敵もだらし無い。
またキリストの殉教とは逆らわずに死ぬ事とされているので島原の乱を起こしたキリシタンは殉教では無いらしい。何だかそれも馬鹿馬鹿しい。
物語の主題が自分に合わなかったが、小説としては面白かった。 -
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1616年、ヌルハチの寧遠城攻めから画く。新聞の広告、何より本書タイトルが意味不明なため、何の話かと思うのだが、敵について描くのは当たり前だろう。それにしても順番は違うだろう。導入が長すぎる。鄭芝龍についてもそれなりに丁寧に描くのもいい。しかし肝心の鄭成功の日本時代についてほとんど記述がない。何の記録もないのであろうが、推測で書いてほしかった。
終わりは1683年、台湾の鄭王国崩壊までだ。これは嬉しい。丁寧に書いているんだろうが、あっけない。実態もそうだったんだろう。それにしても鄭家内部はどうしようも無い。清の皇帝継承が上手く行っているのに対して対照的だ。この辺りは書いて欲しかったところ。
鄭家内部だけでなく軍についても上手く行ってない。鄭成功が厳しすぎることが原因か。もし将軍が一人も離反しなかったとしたら、清よりずっと強い国になっていただろうに。
後は南京での戦いでの成功の決断問題か。歴史にifはないのだが。『鄭成功』が入ってない。小説だから抜いたのか、読んだが参考にしていないということか。こちらも面白いぞ。
参考文献に陳舜臣の『鄭成功』が入ってない。小説だから入れてないのか、参考にしていないということか。こちら面白いし、長さも1.5倍あり。 -
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【2025年21冊目】
時は江戸天明期。災厄の続く時代、ある噂が駆け巡っていた。鵺が夜な夜な出没し、「イツマデ、イツマデ」と叫んでは時の朝廷を批判しているのだという。その頃、一人の銀払いの表具師が夜な夜な凧を背にしてある挑戦をしていて――「鳥人」幸吉と纏わる人々を描いた歴史長編。
岩田書店の一万円選書で選んで頂いた一冊。最初はなかなか読み進められませんでしたが、話が幸吉だけでなく、彼に影響された人々の話に広がり始めるにつれ、どんどんと物語の中にのめり込んでいきました。
人の感情を書いた作品が好きなのですが、この作品ではわかりやすく感情を書いたシーンはあまりないと言えます。それにも関わらず、人々が挑戦する姿を丁寧に描くことで、その裏にある熱量や思いを読み取れる内容になっていて、何度か、ぐっと涙を滲ませながら読むことになりました。
願いは簡単には叶わないけど、思い続ければ、動き続ければきっと変わることを教えてくれる一冊でもあります。実際に、幸吉がどのような人生を歩んだのかはっきりした文献は残っていないようですが、筆者の筆力によって鮮やかにその生涯を描き切っています。読み応えも抜群、いい一作でした。 -
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島原の乱のお話
以下、公式のあらすじ
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寛永14年(1637)、突如として島原を襲った傷寒禍(伝染病)は、一帯の小児らの命を次々に奪い始めた。有家村の庄屋・鬼塚甚右衛門は旧知の医師・外崎恵舟を長崎から呼ぶが、代官所はあろうことかこの医師を追放。これに抗議して少年ら数十名が村外れの教会堂跡に立てこもった。
折しも代官所で火事が発生し、代官所はこれを少年らの仕業と決めつけ討伐に向かうが、逆に少年らの銃撃に遭って九人が死亡、四人が重傷を負った。
松倉家入封以来20年、いっさいの抵抗をしてこなかった旧キリシタンの土地で起こった、それは初めての武装蜂起だった‥‥。
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読み始めは江戸時代のパンデミックの話かと思ってたけど、立てこもる少年達のあたりで「これは島原の乱か?」と思い至る
島原の乱と言えば、天草四郎が率いた宗教一揆と思っていたけど
それはあくまで幕府側の残した歴史認識であって
実は重税と圧政に苦しめられた農民達の一揆が主体であり
その背景には宗教弾圧があり、またキリスト教の「耐える」という教えの最後の箍が外れた事で起こったという解釈になっている
キリスト教はうまく使えば民衆に耐えさせる道具にもできるけど
その結果、却って手痛いしっぺ返しを食らったというものですね
普通の一揆と違って、途中からは殉死する事が目的にもなり
結局は死兵となってしまったというのは、支配者層の無能エピソードだよなぁと思う
ただ、この島原の乱はキリスト教として殉教とはされていない
何故なら、耐え忍ぶというキリスト教の教えに従っていないから
やはり、遠藤周作の「沈黙」でも語られていたけど、キリスト教も日本に入ってきた時点で、どれだけ忠実に教義を守ろうとしても土着の思想と融合して、まったく異なる宗教になっている気がする
それにしても、蜂起勢を鎮圧するために何万もの軍勢を数ヶ月養える物資があるにもかかわらず
そうなる前になぜもっと早く救ってやれなかったのかという矛盾がある
まぁ、江戸表への報告と統治の実態の差異のせいではあるんだけど
幕府の中央の方では本当はどんな認識だったのかね?
それはそうと、「黄金旅風」の主人公、長崎代官末次平左衛門も結構活躍している
蘭学の医療を学んだ外崎恵舟とのやり取りでも、ひととなりが伺い知れるエピソードなどあって嬉しい
先々の事まで見据えた上で、民のために現状対策を行えるのは為政者として優れているよなぁ
あと、立花宗茂もおじいちゃんになって登場している
戦国無双とかで名前を知ってる程度ですけど、こんなに長生きしてたんですねぇ
そして、タイトルの意味
星とはあの人の事であり、そうなった経緯
そして、同じ道を選んでいたら辿ったであろう人たちの終焉がこの物語なのですね
その医者は実在した人のようで
出自など辻褄をあわせる形で物語の設定に組み込んでるようだ
この話、どこまで史実なんでしょうね? -
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島原の乱について書かれた本。
何年か前に島原の乱はカトリックから殉教と認められてないという話を聞いて、実際のところは何が起こっていたのか知りたいと思っててこの本に出会いました。
長崎方面の土地勘がなく地名を聞いてもよくわからず、昔の日本あるあるで似た名前の人たちに苦しめられながら読み進めた前半でしたが、あまりにも酷い当時の状況に心が痛みました。不都合な真実にはキリシタンというレッテルを貼って処罰する圧政を敷かれ、生きることに希望を見出せず乱を起こすしかなかったのはあまりにも悲し過ぎました。
乱後の後半の流れは一つ一つの戦況の説明が詳細すぎるのと最後の結末は知っているためか読み進めるのか辛かったですがなんとか読破しました。読んで辛かったですが読んでよかったです。
物語の最後の方で花火師の人が「討伐軍はここで何をやっていたんだ。これほどの軍勢がありながら、なぜもっと早く、救う道をつけることができなかったものか」というところが一番心に刺さりました。10万の軍勢とそれを4ヶ月も養える物資があるくらいなら領民たちを救うことくらいなんということはなかったはず。島原の乱は武家社会の起こした人災だったと思いました。ただ、こういうボタンのかけ違いによる悲劇は昔に限らず、いつの時代でも起こりうるので繰り返されないことを祈るばかりです。 -
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私自身がこれまで読んできた時代小説とは一味違う小説だった。戦国時代や江戸の人情もの、幕末、と言った小説とは違い、鎖国前の長崎の短い一時代を描いた小説。
どの程度、史実に基づいているのかは、知識がないので分からないのだが、この時代に、これだけ広い視野と高い視座を持ち、正義感に溢れた人がいたのか、と熱い気持ちになるストーリーだった。
ただ、読み終わってのこの読後感(満足感)と矛盾するようなのだが、読むのにけっこう時間がかかってしまった。自分の歴史の知識が無さすぎることも一因なのだが、
漢字(にカナのルビ)の地名を現在のどこのあたりなのか変換するのに、一瞬頭の中でタイムラグがあったり、各国の事情・パワーバランス・事件の順番や経緯を把握するのに少し手間取ったりし、
本来のこの物語のメインであろう、魅力的な登場人物の思考や言動に入り込んで、ぐんぐん引き込まれていくのに、時間がかかってしまったのだ。
正直、エンジンがかかってきたのは、第4章に入ってから、と言う感じだった(苦笑)
著者の描く日本人像、特に権力者は、ある意味、現代にも通じるもので、著者の本音(と言うか嫌なタイプ)の権力者像であり、平左衛門には理想を託しているのかもしれないが、
私自身も共感してしまうところがいくつもあり。今の国の中心、官僚や政治家も、こんな感じだよなあと思うと、ため息が出てしまう。人間の本質と言うものは、数百年経っても、そう簡単に変わらないものなのかもしれないな、と。
『日本人は自分の縄張りや仲間内では偉く尊大でありながら、オランダ商館へ単独で来た時には別人のごとく卑屈なものだった。個人がどこにもなく、いったいそれは誰の考えなのか誰の意志なのか、いちいち確かめるのに苦労させられた。しかも返ってくる答えは「みんながそう思っている」などという訳のわからないものばかりだった』
『大げさな大義などというものを平左衛門は持ち合わせてはいない。むしろ平左衛門は、馬鹿げた大義には憎しみすら抱いている。大愚を行う者は必ず大義を振りかざし、結果最も弱き者が悲惨を見ることとなる』
「どうか上様の御政道におかれましては、打ち出されましたる御法は、その時勢のいかんにかかわらず、是非に厳正なるお運びをたまわりたく願う次第でございます。わたくしども下々におきましては、その時々に応じまして恣意的に御法を運ばれますことが、何よりも動揺と不安を招くものとなるのでございます」