飯嶋和一のレビュー一覧
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ネタバレ先に読んだ『天地明察』のライトな感じにいささか不完全燃焼な感じを覚え、私としては珍しく続けて歴史モノをチョイス。高校日本史Bの教科書に名前が載っていた末次平蔵の息子・平左衛門(二代目末次平蔵)が主人公。
もはや小説なのか歴史書なのか、どこまでがフィクションでどこからが史実なのかわからんほどに書き込まれていて、しかも次々新しい人名が登場するため、一見不親切で難解に見える。けれど、重要な部分は繰り返し筆を費やしているため、いつの間にか気にならなくなってくる。さすが信頼の飯嶋和一クオリティ。
ついつい歴史的考察の深さにばかり目が行ってしまうけど、作者が創作したエピソードもすごく面白い。了介のも -
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航空学の父と称されるジョージ・ケイリー卿の有人グライダー実験に先立つこと60年、天明5年に有人飛行したといわれる備前岡山の表具師・幸吉の一生を描いた作品。
三部構成になっていますが、第一部で幸吉は空を飛んでしまいます。これから先、どういう展開になるのだろうかと思っていると、第二部では幸吉は完全に脇役に回り、岡山を所払いになった幸吉が身を寄せた船頭が主役になります。この第二部(塩の専売に対する幕府側商人と自由商人の闘争)が面白い。本音を言えば第一部の間は、引き込まれるという感覚がなかったのですが、第二部に入ってからページがどんどん進むようになります。
そして第三部。主人公は、船を降り、駿府で商人 -
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江戸初期の貿易都市長崎を描いた作品だ。とにかくすごいの一言だ。
その一 鎖国が行われるかもしれない政治的閉塞感がすごい
その二 宗教政策から人種政策まで長崎の特殊と雰囲気がすごい
その三 人間がでっかいのがすごい
なんだか三言になっているが江戸初期のポルトガル、イギリス、オランダ、中国との交易から宗教問題がよく分かる。さらに国際都市としての長崎の複雑さ、幕府とのやり取りの煩雑さや派閥争いから来る命のやりとりが手を握るほど熱い。
一体誰の目を通して長崎が描かれているか?それがこの小説の主人公、末次平左衛門と平尾才介だ。自由奔放にして素晴らしい平衡感覚(政治、人種間など) 同 -
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寡作の人、飯嶋和一。こんなに数年に一冊しか出さなくて食べていけるのかしらとこちらが余計な心配をしてしまう。
この本、2004年に単行本で読んでたのだけど、息子がずっと前に買ってきた文庫本が本棚に積まれてあったので、もう一回読んでみる。
寛永年間、多くの国籍の人が雑居し隠れキリシタンが多数散在する貿易都市・長崎を舞台に、その長崎を内外の脅威から守った末次平左衛門とその親友・平尾才介の物語。
キリスト教禁止令強化と一体となった貿易政策転換の狭間の時代に、利権に群がる貿易商と幕閣たち、そこに住まいする庶民の困窮と平和への希求。鎖国政策が開始される直前の時代を、いつもながらに重厚且つ精緻な構成で描きき -
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第25回文藝賞受賞作。
飯嶋和一の作品を読んだのは『始祖鳥記』に続き実はこれが2作目。
そんでミクシィの飯嶋コミュに入ってるってどうなんかな、と思うけど。
まいっか。(口癖)
恵まれた体躯と才能を持ちながらも、アルコールに溺れリングを去ったボクサー。生まれ故郷の南の島への帰郷、ジムの会長の死、そして彼を影になり日向になり支え続けてきた人々との交流を経てボクサーとして人間として見事に再生する。
まぁありがちなというか"ベタ"ではあるストーリーなのだけど、町の風景、島の風景が主人公のフィルターを通して丁寧に表現されてて、その時々の心情が痛いほど伝わってきて