あらすじ
歴史小説の巨人が描く、土豪の村の悲劇!
慶長七年(一六〇二)陰暦十月、常陸国北限、小生瀬の地に派遣された大藤嘉衛門は、野戦場の臭気が漂う中、三百名以上の住民が消えるという奇怪な光景を見る。いったいこの地で何が起きたのか? 恭順か、抵抗か―体制支配のうねりに呑み込まれた誇り高き土豪の村の悪夢。長く歴史の表舞台から消されていた事件を掘り起こし、その真実の姿をミステリアスかつ重厚に描いて大絶賛された戦慄の巨編。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ある土豪の村の住民が一夜に全て消えてしまう。
っていう説明にミステリーかなって勘違いをして手に取った。
いや作者が飯嶋和一さんなので、ミステリーとかSFじゃなく歴史小説だよね、とわかっているんだけど。
序章から二章の途中まで一体どういう話なのかピンとこないまま読んでいて、
私ったらまた背伸びして難しい本に手を出したかな?と後悔し始めた頃、
急に話が動いて、
これはボケ〜っと読んでたらいかんヤツや!となって再び序章から読み返したw
長い間、隠蔽された出来事だったらしいです。生瀬の乱とかって検索したら出てくるんですが、wikiじゃなくこの小説をぜひぜひ読んでみてほしいと思います!
抗えば一村亡所、見せしめか粛正か
女子ども老人もすべて撫で斬りという
凄惨な事件。
興味深くて面白い。
読み応えたっぷりでした。
Posted by ブクログ
読み始めは結構辛い。
ガチな文体の歴史小説で物語が
どう進んでいくのかわからず
手探りな状態で序章を読み終わるまでが
ある意味最大の山。
時系列を遡る形で進む第一章以降は、
序章で提示された謎の解明がされていく
という意味でも、文体への慣れという意味でも
読み進めるスピードが加速していくし、
本作がなぜ評価をされている作品なのかを
実感する。
Posted by ブクログ
まず結末が提示され、「どうしてこうなった?」を紐解く、ミステリーにもよくある手法。
そしてそこらのミステリーをはるかに凌駕する怒涛の展開。
時代小説を読みなれてない人は最初はとっつきにくいと思いますが、なんとか序章は読みきって下さい。その後止まらなくなります。
Posted by ブクログ
久々に面白い歴史小説を読んだなぁ。
悲劇的な結末に物事が収束していく様子を描いていて、読後感は「救いの無いもののけ姫」のような感じ。物語自体は、徳川家康の治世がまさに始まろうとしている時代の史実にある事件をあつかったものなのであるから、劇的というよりは淡々とした悲しい話である。しかし、人と自然の生活がまだ切り離されていない時代を異常なまでの細かな描写で描いていく筆力でグイグイ引き込まれて最後まで一気に読んでしまった。
Posted by ブクログ
始まりは、つい先程まで人がいた気配がありながら、人っ子一人消えてしまった村というミステリー風でありながら、読み進めて行くと一つの村を襲った惨劇となり、さらに読み進めていくと、戦国から江戸へと変わっていく社会や、文化の狭間にある人々の葛藤が悲劇へと至る過程が身に迫る筆致で描かれていて、目が離せなくなりました。
弥三郎は逃げ切れたのかが気になるなぁ。
Posted by ブクログ
冒頭の強烈な血生臭さに圧倒され、手が震えた。
衝撃的な作品は「歴史小説」に非ず、「記録」であろう。
言葉が不慣れなのもあるが、これほど一語ずつ噛み締めて読んだ作品はない。
ああ、本読みでよかった。
Posted by ブクログ
戦国が終わってまもなく起きた小生瀬の一種のクーデターを描く。村民と土俗的な宗教、そしてそれを抑える権力の構図の中で物語りは悲惨なラストを目指して一気に展開する。面白い小説ではあったが、重くて暗い。
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飯嶋氏の著作全て読んだが今までの最高傑作だ。有名でない史実を取り上げ緻密に書きあげる力量には感嘆を覚える。淡々とした文章ながら熱きものを感じてしまう。
Posted by ブクログ
ついさっきまで生活していた痕跡を残して、突然住人達が消えてしまった隠れ里をめぐるお話。
はじめはバラバラだった謎が
グイイイイイイっと一つに収束して
しかも最悪の格好で完成するという鬱ストーリーなのに
「どうだ!読んだった!」という達成感いっぱいです。
誇り高い隠れ里の住人たちがカッコイイ!
Posted by ブクログ
重厚で緻密な、石造りの建物のような小説。丹念に削りぬいて積み上げられ、その隙間には紙一枚も入らない。
血なまぐさいあらすじに惹かれて読み始めたが、本を閉じると、物悲しく静かな余韻が残る。
Posted by ブクログ
時は、慶長七年。
所は、常陸国小生瀬。
村人三百五十人余が忽然と姿を消した。
幕府による年貢増加と百姓による対立。
ここまで、根深いのかと愕然とした。
無いものは出せないでは済まされない。
それを、ただただ、受け入れるしかなかった時代に恐ろしさを感じた。
Posted by ブクログ
ページ数の割に中身が濃く、読み応え十分、というより前半は読み進めるのに一苦労。悲劇に突き進む後半は一気読み。重く、切なく、やり切れない読後感。藤九郎の最期のメッセージが心に残る。
Posted by ブクログ
重い。
重厚と言うのともちょっと違う、ただひたすらに重い。
一村三百数十人の皆伐という背景の事件の重さもあるのですが、文体や一人一人の登場人物をじっくり描き込んでいく手法も重く。それが飯島さんらしさなのですが。
歴史の片隅の事件ですし、さほど資料が多いわけがないのですが、乏しい資料から矛盾無く。確かにそうだったんだろうなと読者が納得できるようなストーリーにまとめて行く力量は大したものです。
ただ、ひたすら重苦しい雰囲気には少々辟易してしまいましたが。
Posted by ブクログ
なんとも読後感の悪い小説。今時の小説って勧善懲悪的なというか、水戸黄門的な終わり方のものは減った。ただ、なんらかの未来への希望がもてる結末であったり、たとえ主人公が死んでも、なんとなく読後感が爽やかだったりする。ところがこれは全く違う。史実から紐解き、飯島和一流の味付けがあったからこそ読めたが、でなければとても読めたもんじゃない。おもしろくないという事じゃなくて、人々にはなんの未来もなく、そしてただ死んでいく。どん詰まりに追い詰められて死んでいく。悪を蹴散らすスーパーヒーローなんて一切でてこない。お上に逆らう村の住民数百人が、老人・女・子供にかかわらず、みんな殺戮されていくという結末だ。年貢を納めない農民には死を。これがその当時の現実だったんですね。結局村は滅んでしまう。現代は人口減で滅んでしまう村が続出だけれど・・・
Posted by ブクログ
まず、藤九郎と直次郎萌え。
歴史に興味のない私でも、ぐいぐい読めた。詳しい人なら倍以上おもしろいんだろう、と思う。
登場人物が、皆魅力的。
なのに、それぞれが己の想いで動いた結果、最悪の事態となっていく。
荻原規子さんの勾玉三部作で育って、もう良い大人になってしまった方にオススメしたい。
Posted by ブクログ
史実を基にしてこれを書いたなら相当この作者、つわものだと思う。
最初は人物も状況もよくわからないままだけど、
途中から流れがつかめてくると、全容が一気に駆け抜ける。
そして最初のシーンに戻るという驚愕の小説。
人の欲の尽きるところなし。
どの時代もそこは一緒なんだなと実感させられる。
Posted by ブクログ
太平の世を築き上げようとする江戸初期の裏歴史。徹底した封建制度のなかで、消えていったのは誇り高い百姓たちだけではなく、神もまたその一人だった。
とにかくやるせない読書だった。誰かが大切にしているものが踏みにじられていくのを読むのがこんなに辛いものだとは。途中でもう何度もやめようと思ったが、最後までなんとか読み終えた。HPが大幅に減った気がする。
Posted by ブクログ
戦国末期、ヒエラルキー下部に位置づけられてしまった農民たちの、その溢れる生命力ゆえの戦いと弾圧の軌跡を描いた力作。倒叙的に結末が見えているせいか、ただただ読み進むのがつらい(決して読みにくい文章だという意味ではありません。念のため)。口伝も記録もほとんどない日本の片隅の小さな史実から、よくここまでの物語をつむげるものだと驚嘆します。
Posted by ブクログ
この作家の作品にはずれは無いんじゃないだろうか。
まだ2作品しか読んでいませんが、どちらとも満点です。
内容は大勢に飲み込まれる小さなコミュニティの無力さを散々味合わされる物語で、一方的に搾取されるということの理不尽さが読んでいてつらかったです。
Posted by ブクログ
江戸時代が舞台の歴史小説って普段あまり馴染みないから苦労した・・・。正確な背景知識がないとなかなか難しい。隠田検地のシーンなんかはシリアスで良いね。
Posted by ブクログ
誇りを守るために死ぬべきか
苦しい暮らしとなっても生き残るべきか。
戦を経験したことがある者とない者とでは
命に対する捉え方が全く異なっている。
これは現代でも言えること。
最初は辰吉の愚かさに全く気がつかなかった。
Posted by ブクログ
私は読後に唸ってました。なんなのだ!あの見事に突き放されたような終わり方は!坂口安吾は、物語が人を突き放すことについて書いているが、まさにこの本はそれにふさわしい。暗い。とことん暗い。そしてすさまじい重量。こんなの二度と読みたくない!でもこれもひとつの読書との出会いであり、あり方なんだろうねぇ。
正直、かなり良い体験させてもらいました。