飯嶋和一のレビュー一覧
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とある方からお薦め、と借りた一冊。
思ったよりも、歯応えあり。
読むのに、意外と時間がかかった。
江戸時代を江戸時代のように、という作者の思いが込められてか、かなり綿密に描写されている。
フワッと読むタイプの私なので、その描写の凄さを逃している感はあるが、まあ、良しとして。
第1章では、幸吉と弥作の兄弟が、才と情という部分でお互いを補い合う姿が睦じい。
幸吉の、権威に対する反感と、表具師としての才のアンバランスさ。割とベタな設定ではあるものの、幸吉が純粋に成したいことと、それを周囲が曲解し、世の中の流れを変えていく数奇さが楽しい。
第2章では視点を変えて、塩の取り引きと廻船の話にパーンと飛んでゆく。
あれ?と思いながら、チラチラと人の噂の中に姿を見せる幸吉が、いよいよ源太郎と組み、新たな一歩を踏み出すところは、胸熱の展開。
なのに、だ(笑)
第3章では、そんな弥作や源太郎とはスッキリ一線を引いてしまう。
自分の中の「鳥のように飛ぶ」という想いも、昔のように形振り構わずではいられない。
そんな、「一般」のカタチに収まりつつある幸吉の体たらくを見ていると、残りこのページ数でどうするんだ!?と、読む側としては焦らされます。
クライマックスは、もうね、なんか、スローモーションになります。
第1章では、孤独と、反骨精神と、そんな中で夜が似合っている滑降だったけど。
第3章では、まさに夕暮れなんだよー。
日本昔話のエンディングなんだよー。(違うか)
そんな訳で、レビューを読んでいて、この一冊を愛でる人が多い意味が分かるように思いました。
個人的にはミルキィ・イソベさんの表紙と、その裏に……という遊びの効いたイラストも、すごく素敵で良かった! -
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世に言う島原の乱の話。
学校では、島原のキリシタンが蜂起をして幕府軍と戦った、ぐらいにしか習わないがじつはそんな単純な理由ではなく根深いものとして描いている。
前半は無能な藩主の圧政に苦しめられるもそれに耐え忍ぶ村人たちの生活を描く。そしてそんな大人たちに対しての歯痒さから島原の乱に繋がる火種を起こす少年たち。
後半は島原の乱の顛末。戦いのくだりが長く読み飛ばす場面もけっこうある。最後は蜂起が鎮圧と言うか皆殺しにされ救いがないように思えるが、島原の乱の火種を起こした少年があることから医者となり人の命を救うことに生涯をかけることになるのがこの小説での光だと思う。 -
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最近軽い本ばかり手を出している私は、ずいぶん苦戦しました。
天候不順も一切考慮されない通常の倍の年貢、栄養失調から子供たちの間に伝染病が広がる。そんな松倉家の苛政に武装蜂起する若い寿安。朝鮮出兵で戦いの悲惨さと無意味さを知り、農業の発展により苛政を凌ごうとする庄屋の甚右衛門。そんな二人がいつか入れ違い、甚右衛門は島原の乱を貫き、暴徒と化した民衆に失望した寿安は、長崎で子供たちの伝染病治療に邁進する。
島原の乱を題材にした700ページにわたる歴史大作です。司馬史観という言葉がありますが、この作品も飯嶋史観といった雰囲気もあります。ずいぶん濃密な書き込みでなかなか前に進まず。特に後半は戦闘場面が延々と続き、途中から少し流し読みみたいになってしまいました。
しかし悲惨な中に救いもあって、読後感はいいですね。
読み応えのある読書でした。 -
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読むのに時間がかかりました。
歴史小説。そう、小説なんですけど、盛り上がりがないんです。
徳川秀忠から家光へ、将軍が変わり時代も変わろうとしているとき。
海外との交易の玄関口だった長崎を舞台に、締め付けを強めてくる幕府、私腹を肥やそうとする大名たち、キリシタン、南蛮人などを相手に、外町代官末次平左伊右衛門が町民の平和と安全を守る物語なのです。
ドラマチックに書けば、どこまでもドラマチックになり得る題材を、淡々と書き進めるのはいいのですが、個別のエピソードが本筋にからんでこないのが、つらいです。
一つ一つのエピソードには、人としての思いがあふれ、なにがしかのものを次世代につなごうとしているのですが、エピソードが終わればその思いがリセットされてしまうように見えます。
面白いのに。
面白いのに、今一つノレない。
登場人物に感情移入しながら読むタイプの私としては、かなり苦戦しました。
なので作戦変更です。
これは小説ではありません。
例えていえば、新聞の短期連載特集記事。
そう思うことにしました。
一つ一つの出来事は直接のかかわりが薄くても、同じ時代同じ場所で起こった出来事なんです。
関係ないわけがないんです。
淡々と書かれた事実を読む。事実を読む。事実を読む。
そうすることで見えてくるその世界の在り様。問題点。
この人がやった事だから、ではなく、名前のない人々が、それぞれの考えで積み重ねてきた出来事が歴史を動かす〈こともある〉。
事実を元にした小説ではありますが、私の勉強不足によりどこが事実でどこからがフィクションなのかはわかりません。
それでもその時代から日本は海外渡航をすることなく幕末まで、長い鎖国期間を迎えます。
加藤清正の嫡子、黒田長政の嫡子が次々に領地を没収される中、幕府の思惑や海外の勢力からどうやって長崎の町の安寧を守ったのか。
淡々と書かれていてもなお、熱いものを感じるのは確かです。
なかなかに手こずる読書ではありましたが、読み応えのある一冊でした。 -
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いいなあ、これ。あしたのジョーにはまった記憶、あの高揚感がよみがえってきた。
挫折から這い上がる人間ドラマ。その先には栄光が…と、いかないところがいい。
孤独を感じていたが、実は多くの人に支えられていたことに気づく。
能力の限界と、折れた心を自覚しながらも、胸中の奥底にくすぶり続けていた夢に気づく。
のりちゃんがジョーから離れていったときのセリフ
「誰もが青春を謳歌しているのに、矢吹君は暗いジムで」うんたらかんたら。
のりちゃん目線の人にはわかるまい。
男はいくつになってもこういう世界に生きたいという憧れを持ち続ける。
主人公の設定もいいし、脇役も渋い。
「ボクシング小説の金字塔」という評価は決して大げさではない。 -
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なんとも読後感の悪い小説。今時の小説って勧善懲悪的なというか、水戸黄門的な終わり方のものは減った。ただ、なんらかの未来への希望がもてる結末であったり、たとえ主人公が死んでも、なんとなく読後感が爽やかだったりする。ところがこれは全く違う。史実から紐解き、飯島和一流の味付けがあったからこそ読めたが、でなければとても読めたもんじゃない。おもしろくないという事じゃなくて、人々にはなんの未来もなく、そしてただ死んでいく。どん詰まりに追い詰められて死んでいく。悪を蹴散らすスーパーヒーローなんて一切でてこない。お上に逆らう村の住民数百人が、老人・女・子供にかかわらず、みんな殺戮されていくという結末だ。年貢を納めない農民には死を。これがその当時の現実だったんですね。結局村は滅んでしまう。現代は人口減で滅んでしまう村が続出だけれど・・・
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Posted by ブクログ
ネタバレ実権が徳川秀忠から徳川家光に移る過渡期における長崎を舞台にした小説で、鎖国への道を歩んでいく貿易政策の変化と切支丹への取締の様子を描いている。
史実に基づいているのか、末次平蔵の変死とか、内町火消組の組頭・平尾才助の最期とか、いささか勿体ないような退場の模様である。長崎の民町を守る、その一点だけでぶれることなく凛とした末次平左衛門が魅力的だった。
“夢を見ているのか現のことなのかどこか判然としないまま右肩越しに平左衛門が振り返った時、蝶は再び高く上昇し、焼け野原となった町を軽々と飛び越えて見えなくなった。夢のなかに一人だけ置きざりにされた思いばかりが平左衛門の内に残った。”