飯嶋和一のレビュー一覧
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ネタバレ江戸時代に実在した力士・雷電と、商人助五郎を描いた物語。
ときは天明、度重なる飢饉や一揆で苦しむ貧しい庶民を、雷電は相撲を取ることで希望を与えていく。
決しておごらず天性の体格を生かして自己鍛錬を重ねていく雷電だけでなく、彼の良き理解者として支える助五郎の気骨や人情もまた、すがすがしく心洗われる。
一番印象に残ったのは、大火事や天災の後に、雷電が赤子たちを抱き上げ厄災祓いをするシーン。
この場面は何度も繰り返し描かれるが、搾取し利権をむさぼる侍達とは対照的に、民衆を励ます存在として己のすべきことをこなす雷電の、民草への優しい視線に心打たれる。
また、この時代の庶民の生活が丹念に描写さ -
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ネタバレうおー!すごい!「全日本人必読!」と書くだけはある!
ものすごい急展開もない。すさまじいオチもない。派手な名ゼリフがあるわけではないし、現実離れした濃いキャラクターが出てくるわけでもない。それなのに、とても胸が熱くなるのだ。第一部では天才表具師でありながら、空を飛ばずはにいられない幸吉の心中に共感し、第二部では「××が来た!」と伊兵衛と一緒になって叫んでしまった(笑)そして第三部では……と、それは読んでのお楽しみ。
それじゃあ、この小説はどんな小説だったんだ、と振り返ってみる。ものすごくざっくりした言い方だが、ただ出会うべき人物が出会い、為すべきことを為し、淡々と、しかし着実に、物語が展 -
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飯嶋和一の新刊。前著「星夜航行」では文禄•慶長の役を描いていたが、本作はそのあと。鄭成功(1624〜1662)の明朝復興戦争の全貌を描いている。
明末の混乱から始まって、鄭成功が南海王国を打ち立て、三代に渡る台湾統治とその終焉までが冷徹な筆致で語られる。
大変な力作です。しかしながら、やはり一般的なレベルで読み通すにはハードルが高い。明の滅亡から清の成立までの部分では世界史上有名な人物が出て来るが、鄭成功が南海を拠点として抵抗戦争を始める辺りからは一般人には全く初見の人物が次から次へと登場し、次々と死んでいく。感情移入する隙さえ与えられない。(それに色っぽい話は微塵も出てこないしね)
…とい -
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島原の乱について、学校では単純に抑圧されたキリシタンの反乱と教えられたがそんなに単純なものでは無いと判った。
藩主が分不相応な家臣団を持ったため、年貢を倍以上取り立てられながらもキリストの教えにより逆らわずにいた島原や天草の地。だがそれも限界になり武装蜂起となる。
ちょっと無抵抗主義にも程があるし共感は出来ない。武装蜂起後も今一つ目的不明で人間臭くはあるが味方も敵もだらし無い。
またキリストの殉教とは逆らわずに死ぬ事とされているので島原の乱を起こしたキリシタンは殉教では無いらしい。何だかそれも馬鹿馬鹿しい。
物語の主題が自分に合わなかったが、小説としては面白かった。 -
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1616年、ヌルハチの寧遠城攻めから画く。新聞の広告、何より本書タイトルが意味不明なため、何の話かと思うのだが、敵について描くのは当たり前だろう。それにしても順番は違うだろう。導入が長すぎる。鄭芝龍についてもそれなりに丁寧に描くのもいい。しかし肝心の鄭成功の日本時代についてほとんど記述がない。何の記録もないのであろうが、推測で書いてほしかった。
終わりは1683年、台湾の鄭王国崩壊までだ。これは嬉しい。丁寧に書いているんだろうが、あっけない。実態もそうだったんだろう。それにしても鄭家内部はどうしようも無い。清の皇帝継承が上手く行っているのに対して対照的だ。この辺りは書いて欲しかったところ。
鄭 -
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【2025年21冊目】
時は江戸天明期。災厄の続く時代、ある噂が駆け巡っていた。鵺が夜な夜な出没し、「イツマデ、イツマデ」と叫んでは時の朝廷を批判しているのだという。その頃、一人の銀払いの表具師が夜な夜な凧を背にしてある挑戦をしていて――「鳥人」幸吉と纏わる人々を描いた歴史長編。
岩田書店の一万円選書で選んで頂いた一冊。最初はなかなか読み進められませんでしたが、話が幸吉だけでなく、彼に影響された人々の話に広がり始めるにつれ、どんどんと物語の中にのめり込んでいきました。
人の感情を書いた作品が好きなのですが、この作品ではわかりやすく感情を書いたシーンはあまりないと言えます。それにも関わらず、