飯嶋和一のレビュー一覧

  • 始祖鳥記

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    ネタバレ

     ライト兄弟の人類初の飛行機による初飛行よりも120年も前の江戸時代後期、人は空を飛べると確信した男がいた。

     備前屋幸吉は表具師としての腕を持ち、その腕で己を乗せた大凧を作った。
     職人としての最高位の銀払いの身であったが、空を飛んだことで人心を惑わした罪で岡山から追放された。

     幕政に苦しむ民は幸吉の行為を、お上に対する反発だと喜んだ。
     武士階級への反発心は、また別の男たちの心にも火をつけた。

     江戸衆が独占する下り塩に苦しんでいた行徳の塩問屋、巴屋伊兵衛と、起死回生に手を貸す児島廻船衆たち。
     そして幕府直轄で独占していた商人たちから、商いを奪い返す。

     ところ変わって、幸吉は

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    2016年07月16日
  • 出星前夜

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    早く次の作品が出ないかなと、いつも待ちきれない数少ない作家の一人。
    飯島和一さんの作品は四~五年に一回くらいしか出ず、それだけ内容に吟味を重ねて作られているのだろうと想像する。時代小説を書く作家は多けれど、これほど引き込まれ心を震わす作品を書かれる作家も珍しいのではないか。
    ならば何故有名では無いのか。飯島さんは一切マスコミには登場しない。マスコミに一切媚びを売らない。という方だからだ。
    どなたかが飯島和一にハズレなしと言ったらしいが、まったくその通り。
    今回の出星前夜は島原の乱をテーマとしているが、天草四郎が主人公ではない。もちろん討伐軍が主役でも無い。所謂一般の市井の人々だ。その目線で描か

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    2016年01月15日
  • 出星前夜

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    2009年本屋大賞7位

    島原の乱

    自分の今まで持っていた「島原の乱」のイメージといえば
    “エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、我は求め訴えたり” の山田風太郎「魔界転生」。
    “妖艶”且つ“神格化”された悲劇のヒーローだったのに、本作を読んであまりのギャップに驚愕。

    沈鬱な話であるのに、征伐軍のアホさ加減には笑ってしまった。ただ、300年以上経った今でも「保身」「出世欲」といった業(ごう)というものは変わらんのだなぁ、と。

    重苦しい中に、タイトルでもある寿安(北山寿庵がモデル⁉︎)の話は、本当に星の如き光が射してジーンときました。

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    2015年10月17日
  • 神無き月十番目の夜

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    読み始めは結構辛い。

    ガチな文体の歴史小説で物語が
    どう進んでいくのかわからず
    手探りな状態で序章を読み終わるまでが
    ある意味最大の山。

    時系列を遡る形で進む第一章以降は、
    序章で提示された謎の解明がされていく
    という意味でも、文体への慣れという意味でも
    読み進めるスピードが加速していくし、
    本作がなぜ評価をされている作品なのかを
    実感する。

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    2015年06月30日
  • 始祖鳥記

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    ネタバレ

    江戸後期の天明年間に日本で初めて空を飛んだ備前屋幸吉を描いた歴史小説。背景には一部商人による独占を許す、幕藩の悪政を批判も。
    全く意識していなかったのに、たまたま並行して読んでいる、司馬遼太郎の「菜の花の沖」とほぼ同時代の話で、兵庫の北風家や松右衛門帆といった共通の用語も出て来る偶然性に驚き。

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    2014年07月27日
  • 出星前夜

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    圧政は圧制を生み、歪は下へ。
    最下層は望みもなくただどうにか生き耐える。
    島原の乱。
    著者の史実への誠実さが、深く重く心にのしかかる。
    それは読み終えてほっとするほど、強烈に辛い事実。
    いま。時代が変わっても変わらぬに悪政。過去から学ぶことはたくさんあるのに。

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    2014年05月14日
  • 出星前夜

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    いわゆる「島原の乱」を描く、重く、辛い、圧倒的な物語。それなのに、物語の中にほんとうの、強靭な希望が宿っている。読みだしたら止まらない傑作。飯嶋和一、ほんとにすごいや。

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    2014年05月01日
  • 黄金旅風

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    “放蕩息子”と言われた、実は広い視野を備えていて、正論を胸に秘めた、強い心を持つ男が代官に就任し、恐るべき陰謀を動かす敵役達と対峙…非常に痛快な物語だ!!未読の皆さんに御迷惑を掛けてしまうので仔細は綴らないが、何となく目頭が熱くなる場面も在り、夢中になる…他方で「政治とは何か?」、「“権力”とはどういう性質のものか?」というような普遍的なテーマを持ち、加えて「江戸時代とは何だったのか?」というようなテーマに関しても、キリシタン弾圧の経過や貿易制度の変遷という、平左衛門達の時代に実際に起こっていたことを交えながら、一定の回答例を示唆している…非常に充実した作品だ!!

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    2014年04月30日
  • 神無き月十番目の夜

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    まず結末が提示され、「どうしてこうなった?」を紐解く、ミステリーにもよくある手法。
    そしてそこらのミステリーをはるかに凌駕する怒涛の展開。
    時代小説を読みなれてない人は最初はとっつきにくいと思いますが、なんとか序章は読みきって下さい。その後止まらなくなります。

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    2014年04月27日
  • 出星前夜

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    或いは読む方によって色々な感じ方が在る作品であるような気がする。各劇中人物がどうなって行くのか、どうして行くのか…「島原の乱」を背景とした重厚な群像劇であり、なかなかに興味深いと思う。

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    2014年04月10日
  • 始祖鳥記

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     安政6年(1859年) 山の峰から一里半(約6キロ)を大凧(グライダー)で飛んだ男がいた。リリエンタールのグライダーより32年も早い。しかしその快挙は賞讃されず、怪しげな術をつかう者として囚われの身に。そして死ぬまで座敷牢に閉じ込められ、しまいには狂ってしまった…

     というのが「キテレツ大百科」の第1話に載っている「キテレツ斎」の話。


     藤子・F・不二雄氏は、たぶんこの小説の主人公「浮田幸吉」の逸話を知っていて、キテレツ斎のエピソードとして採用したのだろう。キテレツ大百科の雑誌連載は、いまから40年くらい前。「浮田幸吉」は日本人の99%は知らないと答える、とんでもなくマイナーな

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    2017年08月15日
  • 雷電本紀

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    100を吸収し1を生み出す。まさにそんな小説だと思う。細部を描くことでその時代に生きているような感覚に陥る。だから、この方の小説は凄まじい。

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    2013年05月26日
  • 始祖鳥記

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    本作を読む直前に読んだのが、事を成した人物を描いた『天地明察』で
    ちょっとご都合主義的な展開に物足りなさを抱いていたのですが
    これはそんな自分の期待をはるかに超える傑作でした。

    ただ、惜しむらくは日本初の飛行体験とそれを成した備前屋幸吉(浮田幸吉)を
    描いた小説なのか、江戸時代後期に自分の信念を持って力強く生き抜いた
    備前屋幸吉、巴屋伊兵衛、平岡源太郎の3人による歴史群像劇であり、
    同じ時代を生きた3人が影響を受け合いながらそれぞれの生を送った
    という小説なのかが判然としない点。

    個人的には第2部も面白く読んだものの、
    第1部、第2部、第3部で一貫したテーマで貫かれていたとは言いがたく

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    2013年05月19日
  • 出星前夜

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    圧倒される。著者の作品でも一番流される血の量が多いけど。
    文庫本のカバーで紹介されている過去の二作品、なるほどと頷く。確かに繋がっている。単行本が出てから時間が経つので忘れていました。

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    2013年03月23日
  • 神無き月十番目の夜

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    久々に面白い歴史小説を読んだなぁ。
    悲劇的な結末に物事が収束していく様子を描いていて、読後感は「救いの無いもののけ姫」のような感じ。物語自体は、徳川家康の治世がまさに始まろうとしている時代の史実にある事件をあつかったものなのであるから、劇的というよりは淡々とした悲しい話である。しかし、人と自然の生活がまだ切り離されていない時代を異常なまでの細かな描写で描いていく筆力でグイグイ引き込まれて最後まで一気に読んでしまった。

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    2012年12月01日
  • 始祖鳥記

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    ひとつの夢を追い続けることはとても難しいことだと思っている。子供のころ純粋に思い描き形にしようと思う傍ら生きてゆくための暮らしがある。それは年齢を重ねる程に大きな割合を占めるようになり、強く願っていたことは次第に生活の中次第に色色あせていってしまうことが多いのではないだろうか。そのため「夢は夢」…そんな切ない言葉がつい口を衝いて出てしまう。それは単なる言い訳なのかもしれないと、この本を読んで考えてしまった。

    例えば生活の中、薄れてしまったとしてもいつまでもその思いを胸のどこかで温めていることで描いた夢へと向かうことが出来る瞬間を見逃すことなく進めることは出来るのだと思う。その時はとても勇気が

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    2012年10月31日
  • 神無き月十番目の夜

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    ネタバレ

    始まりは、つい先程まで人がいた気配がありながら、人っ子一人消えてしまった村というミステリー風でありながら、読み進めて行くと一つの村を襲った惨劇となり、さらに読み進めていくと、戦国から江戸へと変わっていく社会や、文化の狭間にある人々の葛藤が悲劇へと至る過程が身に迫る筆致で描かれていて、目が離せなくなりました。

    弥三郎は逃げ切れたのかが気になるなぁ。

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    2013年06月21日
  • 黄金旅風

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    再読。やっぱりいいです。好きです、平左衛門。淡々と事実を重ねていく文体なのに、熱さがにじみ出てきます。平左衛門の周りに魅力的な人が多くて、それもまた楽しいところ。かなり視点が平左衛門有利に寄っていて、勧善懲悪な印象はあります。最後、平左衛門は誰と話したのでしょうね。

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    2012年06月15日
  • 神無き月十番目の夜

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    その時代に迷い込んだような臨場感。土台が揺るがないからこその重厚さは圧巻。これだけの物語が、初版のまま書店に並んでいた事実が何より勿体ない。

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    2012年03月12日
  • 始祖鳥記

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    ネタバレ

    日本で始めて空を飛んだとされる浮田幸吉と
    その偶像や実像に関わった人々の群像劇。

    静かで、それでいて相当な熱量を持った小説だ。

    浮田幸吉はとにかく完璧である。
    手先も器用、先見の明もある、どんな困難にもめげない。
    困難がなくなれば自らつくり出してでもそこに向かう。
    彼にとって困難だったのは、
    なんの困難も挑戦もない、安寧な生活を送ること、
    この一点に尽きるのだろう。
    この小説では幸吉はまるで人では無いかのように描かれ
    強い意志の象徴として描かれている。

    そんな幸吉よりも私は、人間として描かれた巴屋伊兵衛が好きだ。
    問屋と糞侍の腐敗に自身の故郷を潰されないために立ち上がり

    怒りに当初の目

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    2012年02月18日