飯嶋和一のレビュー一覧
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ネタバレライト兄弟の人類初の飛行機による初飛行よりも120年も前の江戸時代後期、人は空を飛べると確信した男がいた。
備前屋幸吉は表具師としての腕を持ち、その腕で己を乗せた大凧を作った。
職人としての最高位の銀払いの身であったが、空を飛んだことで人心を惑わした罪で岡山から追放された。
幕政に苦しむ民は幸吉の行為を、お上に対する反発だと喜んだ。
武士階級への反発心は、また別の男たちの心にも火をつけた。
江戸衆が独占する下り塩に苦しんでいた行徳の塩問屋、巴屋伊兵衛と、起死回生に手を貸す児島廻船衆たち。
そして幕府直轄で独占していた商人たちから、商いを奪い返す。
ところ変わって、幸吉は -
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早く次の作品が出ないかなと、いつも待ちきれない数少ない作家の一人。
飯島和一さんの作品は四~五年に一回くらいしか出ず、それだけ内容に吟味を重ねて作られているのだろうと想像する。時代小説を書く作家は多けれど、これほど引き込まれ心を震わす作品を書かれる作家も珍しいのではないか。
ならば何故有名では無いのか。飯島さんは一切マスコミには登場しない。マスコミに一切媚びを売らない。という方だからだ。
どなたかが飯島和一にハズレなしと言ったらしいが、まったくその通り。
今回の出星前夜は島原の乱をテーマとしているが、天草四郎が主人公ではない。もちろん討伐軍が主役でも無い。所謂一般の市井の人々だ。その目線で描か -
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“放蕩息子”と言われた、実は広い視野を備えていて、正論を胸に秘めた、強い心を持つ男が代官に就任し、恐るべき陰謀を動かす敵役達と対峙…非常に痛快な物語だ!!未読の皆さんに御迷惑を掛けてしまうので仔細は綴らないが、何となく目頭が熱くなる場面も在り、夢中になる…他方で「政治とは何か?」、「“権力”とはどういう性質のものか?」というような普遍的なテーマを持ち、加えて「江戸時代とは何だったのか?」というようなテーマに関しても、キリシタン弾圧の経過や貿易制度の変遷という、平左衛門達の時代に実際に起こっていたことを交えながら、一定の回答例を示唆している…非常に充実した作品だ!!
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安政6年(1859年) 山の峰から一里半(約6キロ)を大凧(グライダー)で飛んだ男がいた。リリエンタールのグライダーより32年も早い。しかしその快挙は賞讃されず、怪しげな術をつかう者として囚われの身に。そして死ぬまで座敷牢に閉じ込められ、しまいには狂ってしまった…
というのが「キテレツ大百科」の第1話に載っている「キテレツ斎」の話。
藤子・F・不二雄氏は、たぶんこの小説の主人公「浮田幸吉」の逸話を知っていて、キテレツ斎のエピソードとして採用したのだろう。キテレツ大百科の雑誌連載は、いまから40年くらい前。「浮田幸吉」は日本人の99%は知らないと答える、とんでもなくマイナーな -
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本作を読む直前に読んだのが、事を成した人物を描いた『天地明察』で
ちょっとご都合主義的な展開に物足りなさを抱いていたのですが
これはそんな自分の期待をはるかに超える傑作でした。
ただ、惜しむらくは日本初の飛行体験とそれを成した備前屋幸吉(浮田幸吉)を
描いた小説なのか、江戸時代後期に自分の信念を持って力強く生き抜いた
備前屋幸吉、巴屋伊兵衛、平岡源太郎の3人による歴史群像劇であり、
同じ時代を生きた3人が影響を受け合いながらそれぞれの生を送った
という小説なのかが判然としない点。
個人的には第2部も面白く読んだものの、
第1部、第2部、第3部で一貫したテーマで貫かれていたとは言いがたく
焦 -
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ひとつの夢を追い続けることはとても難しいことだと思っている。子供のころ純粋に思い描き形にしようと思う傍ら生きてゆくための暮らしがある。それは年齢を重ねる程に大きな割合を占めるようになり、強く願っていたことは次第に生活の中次第に色色あせていってしまうことが多いのではないだろうか。そのため「夢は夢」…そんな切ない言葉がつい口を衝いて出てしまう。それは単なる言い訳なのかもしれないと、この本を読んで考えてしまった。
例えば生活の中、薄れてしまったとしてもいつまでもその思いを胸のどこかで温めていることで描いた夢へと向かうことが出来る瞬間を見逃すことなく進めることは出来るのだと思う。その時はとても勇気が -
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ネタバレ日本で始めて空を飛んだとされる浮田幸吉と
その偶像や実像に関わった人々の群像劇。
静かで、それでいて相当な熱量を持った小説だ。
浮田幸吉はとにかく完璧である。
手先も器用、先見の明もある、どんな困難にもめげない。
困難がなくなれば自らつくり出してでもそこに向かう。
彼にとって困難だったのは、
なんの困難も挑戦もない、安寧な生活を送ること、
この一点に尽きるのだろう。
この小説では幸吉はまるで人では無いかのように描かれ
強い意志の象徴として描かれている。
そんな幸吉よりも私は、人間として描かれた巴屋伊兵衛が好きだ。
問屋と糞侍の腐敗に自身の故郷を潰されないために立ち上がり
怒りに当初の目