【感想・ネタバレ】始祖鳥記のレビュー

あらすじ

全日本人必読!数多の書評家が唸った稀代の歴史巨編

空前の災厄続きに、人心が絶望に打ちひしがれた暗黒の天明期、大空を飛ぶことに己のすべてを賭けた男がいた。その“鳥人”幸吉の生きざまに人々は奮い立ち、腐りきった公儀の悪政に敢然と立ち向かった――。 構想十三年、執筆二年。伝説の著者が心血を注いで書き上げ、発表当時には、朝日・読売・毎日・共同通信・週刊文春ほか、40にも上る媒体で大絶賛された傑作中の傑作が、遂に電子版で登場!
「本書の素晴らしさには感服しました。 このような本に出会えて幸せです。」 直木賞作家・山本一力

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

空を飛ぶことに執着した男。意図しない社会の反応。数奇な運命。漢たちの情熱。
江戸時代、岡山城下の表具屋の職人が空を飛んだことは事実として残ってるそうで、それに脚色してるんだとは思うけど、こんな人がいたかもと思わせる。
面白かった。

0
2023年08月20日

Posted by ブクログ

一万円選書に入ってた。
歴史物特有の言い回しにとっつきにくさを感じるけど、読み応えがあって、すごく面白かった。
安住せずに己の道を開く情熱に感動する一冊。

0
2023年01月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

江戸時代に空を飛ぶ事に取り憑かれた男
器用で、仕事でも対価を得ているのに・と思うのは一般人の考え。幸吉はただただ飛びたいという己れの思いで行動するのが良い。皮肉な事に彼の行動は腐った世の中ではヒーロー扱いされてしまうが、ブレることなく自分の欲望を叶えていく姿は清々しい。中々大凧が想像し難いのでドラマ化して見てみたい

0
2021年07月04日

Posted by ブクログ

実在した人をモチーフに描かれた話。
日本人初の有人飛行に成功したとされる人。

いつもそうだけれど、ここまで夢中になれる何かがあるのは羨ましい。いっそ妬ましいくらい。
例えそれが原因で周りや生活がうまくいかない時があっても、そんなに自分の情熱を傾けられるものに出会えることは一種の幸せだと思う。
表具師という仕事、今ではすっかり聞きなれない職業になってしまいましたが、自分でものを作り出すかっこいい仕事だな、と思います。

1万円選書の一つ。

0
2018年06月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 ライト兄弟の人類初の飛行機による初飛行よりも120年も前の江戸時代後期、人は空を飛べると確信した男がいた。

 備前屋幸吉は表具師としての腕を持ち、その腕で己を乗せた大凧を作った。
 職人としての最高位の銀払いの身であったが、空を飛んだことで人心を惑わした罪で岡山から追放された。

 幕政に苦しむ民は幸吉の行為を、お上に対する反発だと喜んだ。
 武士階級への反発心は、また別の男たちの心にも火をつけた。

 江戸衆が独占する下り塩に苦しんでいた行徳の塩問屋、巴屋伊兵衛と、起死回生に手を貸す児島廻船衆たち。
 そして幕府直轄で独占していた商人たちから、商いを奪い返す。

 ところ変わって、幸吉は駿府で商いを興して成功していた。しかし、このままで人生を終わらせていいのか悩み始める。
 やり残したことは一つ。再び空を目指す。


 お上に逆らえず、ただうなだれるだけの毎日を過ごしていた男たちが立ち上がる。

 その中心に幸吉がいた。本人は、ただ空を飛びたかっただけだが、周り放っておかなかった。

 確かに、備前屋幸吉は実在した人物らしい。空を飛ぼうとした男が200年以上前にいた。

 それを飛べる。そのためには何が必要か。鳥の羽を調べ、竹組の翼を技術で完成させる。

 そんな技術者の魂にとても惹かれた。人が思いもしなかった何か、それを生み出し完成させるまでのプロセスは昔から変わらない技術者の基本だ。

 そんな技術者になりたい。

0
2016年07月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

江戸後期の天明年間に日本で初めて空を飛んだ備前屋幸吉を描いた歴史小説。背景には一部商人による独占を許す、幕藩の悪政を批判も。
全く意識していなかったのに、たまたま並行して読んでいる、司馬遼太郎の「菜の花の沖」とほぼ同時代の話で、兵庫の北風家や松右衛門帆といった共通の用語も出て来る偶然性に驚き。

0
2014年07月27日

Posted by ブクログ

 安政6年(1859年) 山の峰から一里半(約6キロ)を大凧(グライダー)で飛んだ男がいた。リリエンタールのグライダーより32年も早い。しかしその快挙は賞讃されず、怪しげな術をつかう者として囚われの身に。そして死ぬまで座敷牢に閉じ込められ、しまいには狂ってしまった…

 というのが「キテレツ大百科」の第1話に載っている「キテレツ斎」の話。


 藤子・F・不二雄氏は、たぶんこの小説の主人公「浮田幸吉」の逸話を知っていて、キテレツ斎のエピソードとして採用したのだろう。キテレツ大百科の雑誌連載は、いまから40年くらい前。「浮田幸吉」は日本人の99%は知らないと答える、とんでもなくマイナーな人物だと思う。それでも藤子先生は知っていたわけで(あくまで推測)、つくづく博学な方だったんだなあ、と今さらながら感動している。


 幸吉は1757年、岡山の八浜にある旅宿桜屋の当主浮田瀬兵衛の3男1女の次男として生まれた。7歳で傘屋に奉公に出て、14歳で岡山城下の紙屋に移った。持ち前の器用さを発揮し、表具師としてメキメキと頭角を現し、腕の良いものだけがその格を得る「銀払い」の表具師として、金銭的にも富んでいく。そのまま一生つつがなく暮らしても、誰からも羨まれる境遇だったに違いないが、幸吉にはある夢があった。
 
 鳥のように空を飛びたい。


 彼は夜な夜な、自らが拵えた大凧を持って、橋の上から飛び降り、試験飛行を繰り返す。失敗つづきで勢いよく川に落ちるので、大きな音で人に気づかれるが、なにせ暗闇だから「身投げだ!」とか「酔っ払いが落ちた!」「河童が出た!」などの噂だけが広まる。水死人が浮かぶわけではもちろんないので、みな不思議に思う。そのうち幸吉の広げる大凧の影を見る者も現れるが、まさか鳥の真似ごとをしている人間がいるとは思わないから、これは鵺の仕業に違いない、と人々が口にするようになる。


 鵺はお上の政治が乱れたときに現れるとされる妖鳥だ。、人々は鵺の出現に世直しの気運を高める。幸吉の思惑とは別に、幸吉の行為はお上にとっては体制批判を扇動する危険な行為に映った。


 そしてついに彼は人々を扇動した危険人物として捕らえられてしまう。
 
 さあ、その後の彼の人生は如何に! キテレツ斎のように狂死してしまうのか…


 実はここから物語は面白くなる。


 でも、これ以上ネタばらししたくないから書かない。


 ラストはとても感動した。この後の幸吉の人生の紆余曲折も全て、このラストへと収斂されていくための艱難辛苦だったんだと思うと、涙腺が緩んだ。


 男は夢を追い続けることに憧れるが、ほとんどの男はできない。だから夢を追い続ける男に自らの夢を投影させる。
 最後まで読んだ人には、たぶんこの意味がわかると思う。


 


 


 


 

0
2017年08月15日

Posted by ブクログ

本作を読む直前に読んだのが、事を成した人物を描いた『天地明察』で
ちょっとご都合主義的な展開に物足りなさを抱いていたのですが
これはそんな自分の期待をはるかに超える傑作でした。

ただ、惜しむらくは日本初の飛行体験とそれを成した備前屋幸吉(浮田幸吉)を
描いた小説なのか、江戸時代後期に自分の信念を持って力強く生き抜いた
備前屋幸吉、巴屋伊兵衛、平岡源太郎の3人による歴史群像劇であり、
同じ時代を生きた3人が影響を受け合いながらそれぞれの生を送った
という小説なのかが判然としない点。

個人的には第2部も面白く読んだものの、
第1部、第2部、第3部で一貫したテーマで貫かれていたとは言いがたく
焦点がブレてしまった感は否めない。

自分としては、いろんなものに縛られつつも、
それに目をつぶりさえすれば日々安寧と暮らしていける生活に
どうしても満足できず、俗人の卑しさ・くだらなさに嫌悪しつつ
どうしようもない渇きと狂気のためにその身を滅ぼしてしまった
男の生きざまが描かれた第1部が一番テーマが鮮明で、
出色の出来だったと思っています。

幸吉が同心たちに家を包囲され鵺騒ぎの一件で
捕らえられようとする場面から始まり、
そこに至るまでの幸吉の幼年期からの人生を描き、
そしてまた幸吉が捕らえられ、すべてを失うシーンで終わる
という構成がすごく良くできているし、
銀払いの表具師として認められ、何不自由ない身となった上は
波風立てずに平穏に暮らしていこうとする弟・弥作と
それにどうしても満足できない幸吉を対照的に描きつつ
幸吉と同類であり、影響を与えた先達として
旅から旅の生活を続ける流浪の砂絵師・卯之助との類似性も際立っていて
第1部は人物の描き方も考え抜かれていました。

「空を飛ぶこと」それ自体が幸吉の夢や成し遂げたいことではなく、
幸吉の中にある何かを満たすための「手段」が空を飛ぶことだという点が
何とも言えず心に残った。

「世間を憂しとやさしと思へども
飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」

という山上憶良の歌に託された卯之助の気持ちを感じ取り
幸吉が自分の心に重ねていったときこそが
幸吉が空を飛ぶことを夢見た瞬間のように思うし、
幸吉の行動原理と初期衝動のすべてが描かれていた
第1部が自分には一番染みた。

それに比べると、第2部は熱量の大きさは感じたものの
テーマが第1部と違いすぎていたし、
第3部は第1部を受けての後日談的な扱いというか
幸吉がついに空を飛ぶというこれまでの物語に
決着を付けるための後始末的な描写のように思えてしまい
本来は物語全体のハイライトのはずなのに
個人的にはちょっとあっさりした読後感となりました。

0
2013年05月19日

Posted by ブクログ

ひとつの夢を追い続けることはとても難しいことだと思っている。子供のころ純粋に思い描き形にしようと思う傍ら生きてゆくための暮らしがある。それは年齢を重ねる程に大きな割合を占めるようになり、強く願っていたことは次第に生活の中次第に色色あせていってしまうことが多いのではないだろうか。そのため「夢は夢」…そんな切ない言葉がつい口を衝いて出てしまう。それは単なる言い訳なのかもしれないと、この本を読んで考えてしまった。

例えば生活の中、薄れてしまったとしてもいつまでもその思いを胸のどこかで温めていることで描いた夢へと向かうことが出来る瞬間を見逃すことなく進めることは出来るのだと思う。その時はとても勇気が必要となるかもしれないけれど夢を叶えるということは、何かを犠牲にする「勇気」や「ちから」が必要なものなのかもしれない。

そんな風に夢を持ち、夢へと向かう姿は他者からの目にも輝くものが見て取れ、それがその人の魅力となり、またその姿を見た人の希望にも変わる。誰かの夢が誰かの夢の手助けをする…そんな連鎖が続いていく。夢というものには、そんな不思議な力が宿っているようにも思えた。

この「始祖鳥記」は、そんな夢が夢を呼び忘れかけていた希望を手にして行く男たちのお話。またこのお話は実際にあった出来事をモデルとしたもので、この時代にとんでもない夢を持った人物がいたということに驚く。

夢は風を見極め掴むこと。
共に夢を見てくれる理解者。
そして何より飛び立つ勇気と羽ばたく力強さ。
それとほんの少しの運。
これらが重なったときに形をなすのかもしれない。

その運は単なる「運」ではなく夢に対する自身の思いが運んでくる「運」でそこには必ずひとがついてくると思う。そう考えると「夢を描き続けること」それこそが夢を叶えることに繋がるのだろう…

そんな風に自分の中で眠ってしまった夢を再び思い起こさせてくれる素敵な本だった。

0
2012年10月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本で始めて空を飛んだとされる浮田幸吉と
その偶像や実像に関わった人々の群像劇。

静かで、それでいて相当な熱量を持った小説だ。

浮田幸吉はとにかく完璧である。
手先も器用、先見の明もある、どんな困難にもめげない。
困難がなくなれば自らつくり出してでもそこに向かう。
彼にとって困難だったのは、
んの困難も挑戦もない、安寧な生活を送ること、
この一点に尽きるのだろう。
この小説では幸吉はまるで人では無いかのように描かれ
強い意志の象徴として描かれている。

そんな幸吉よりも私は、人間として描かれた巴屋伊兵衛が好きだ。
問屋と糞侍の腐敗に自身の故郷を潰されないために立ち上がり

怒りに当初の目的をすっかり忘れたときに、
「空飛ぶ表具師」の噂を聞き改心したり

塩が手に入らなくて絶望していたときに槖駝丸が入港して
歓喜、感謝するしたり

その時の手紙を紙がすり切れる程何度となく見返して、
多忙な日々を生きた。

そうして若くして死に、地域の人々の行動規範となる。

伊兵衛の意志が地域に息づいたことを表すシーンでは涙がでた。

因みに幸吉はアイドルなので、死にませんし。うんこしません。

0
2012年02月18日

Posted by ブクログ

想像通り読み応え充分で想像以上の感動!難しそうで買ってから読み出すまで時間がかかったけど、一回読み出したら止まらない!江戸時代、空を飛ぶことを夢見た男の話しかと思いきや、いろんな魅力的な人々が登場して、いろんな要素があって一口では感想が言えないけど、本を読んで震えるほど感動したのは久々。人と人との出会い、己の利益ではなくみんなのために悪政に知恵と勇気で立ち向かう商人たち、一つのところに安住できず夢をあきらめきれない男たち、どの登場人物も聡明で思慮深く魅力的だった。

0
2011年06月24日

Posted by ブクログ

江戸時代に手製の翼で空を飛んだと言われる実在の人物、浮田幸吉の生涯を軸に物語が進んで行くのですが、読み進める毎に本の中から伝ってくる力に圧倒されてしまいました。
現代と違って全てが人の手による時代だからなのでしょうか、何かを成し遂げる為に出す力やエネルギーのような物が、自分にはとんでもない衝撃に感じたのです。
何よりも人の意志の強さこそが世界を動かす程の力を持っているんだという逞しさを作品から受け取る事が出来ました。

0
2011年06月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 うおー!すごい!「全日本人必読!」と書くだけはある!
 ものすごい急展開もない。すさまじいオチもない。派手な名ゼリフがあるわけではないし、現実離れした濃いキャラクターが出てくるわけでもない。それなのに、とても胸が熱くなるのだ。第一部では天才表具師でありながら、空を飛ばずはにいられない幸吉の心中に共感し、第二部では「××が来た!」と伊兵衛と一緒になって叫んでしまった(笑)そして第三部では……と、それは読んでのお楽しみ。
 それじゃあ、この小説はどんな小説だったんだ、と振り返ってみる。ものすごくざっくりした言い方だが、ただ出会うべき人物が出会い、為すべきことを為し、淡々と、しかし着実に、物語が展開していき、辿り着くべき結果へ辿り着く。
 そこで、ああそうか、とはたと気づく。それが歴史というものなのだ。それは人間の営為の積み重ねなのだ。同作者の「出星前夜」に井上ひさし氏が寄せた賛辞と重なってしまうが、そこにはたしかに歴史があった。

0
2012年06月24日

Posted by ブクログ

【2025年21冊目】
時は江戸天明期。災厄の続く時代、ある噂が駆け巡っていた。鵺が夜な夜な出没し、「イツマデ、イツマデ」と叫んでは時の朝廷を批判しているのだという。その頃、一人の銀払いの表具師が夜な夜な凧を背にしてある挑戦をしていて――「鳥人」幸吉と纏わる人々を描いた歴史長編。

岩田書店の一万円選書で選んで頂いた一冊。最初はなかなか読み進められませんでしたが、話が幸吉だけでなく、彼に影響された人々の話に広がり始めるにつれ、どんどんと物語の中にのめり込んでいきました。

人の感情を書いた作品が好きなのですが、この作品ではわかりやすく感情を書いたシーンはあまりないと言えます。それにも関わらず、人々が挑戦する姿を丁寧に描くことで、その裏にある熱量や思いを読み取れる内容になっていて、何度か、ぐっと涙を滲ませながら読むことになりました。

願いは簡単には叶わないけど、思い続ければ、動き続ければきっと変わることを教えてくれる一冊でもあります。実際に、幸吉がどのような人生を歩んだのかはっきりした文献は残っていないようですが、筆者の筆力によって鮮やかにその生涯を描き切っています。読み応えも抜群、いい一作でした。

0
2025年03月04日

Posted by ブクログ

既に評判になっている作品で、読んだ方も多いのではないかと思いますが…。
とにかくもの凄く広がりのある作品で、いろんなことを感じ、気づき、知ることができる読んでいて没頭する物語でした。実在した人物を軸に、あの時代の圧倒的多数の一般市民の思いも疑似体験できます。

0
2024年05月29日

Posted by ブクログ

ただ飛びたかった、それだけだったというのに、この影響力!
市中は沸き立ち、さらには遠く行徳の伊兵衛や幼馴染だった源太郎たちの心までも揺さぶる。
思い切ったことをやる人がいるというのは、それだけで力になる。
同時に、そういう右へ倣えでない人たちの話は、読み手としても魅力的。

特に印象に残ったのが、卯之助や杢平たちも含め、それぞれが磨いてきた技術やものごとへのこだわり。
できることならドキュメンタリー番組にでもしてもらいたい。

0
2021年09月20日

Posted by ブクログ

内容はまさに作品紹介のとおり。
時代小説特有の用語がイメージしづらい部分もあるので、時代背景は押さえたところで読みたい。

0
2019年06月05日

Posted by ブクログ

評判を聞いて期待して読んだ飯島和一作品。期待通り。時代背景描写、人物描写が秀逸。これから他の作品を読むのが楽しみ。

0
2014年04月22日

Posted by ブクログ

"Tale of Archaeopteryx" 英訳するとこうなるのかな?小さいとき大好きだったアーケオプテリクス。ええもちろんスペルは辞書引かせてもらいましたとも。

0
2013年09月13日

Posted by ブクログ

何が違うか自分でも判然としないけど、他の人と違う飯嶋さん独特の読み味の時代小説。自分には主人公の飛ぶことへの動機が解るようで解らなかったのが少々辛かったけど、それでも十分楽しめました。

0
2012年11月24日

Posted by ブクログ

面白かった。最後まで心地よく読む事が出来た。
情景描写、心情描写も上手く、読んでいてどんどんと作品世界に引き込まれていく感じ。

0
2012年08月20日

Posted by ブクログ

航空学の父と称されるジョージ・ケイリー卿の有人グライダー実験に先立つこと60年、天明5年に有人飛行したといわれる備前岡山の表具師・幸吉の一生を描いた作品。
三部構成になっていますが、第一部で幸吉は空を飛んでしまいます。これから先、どういう展開になるのだろうかと思っていると、第二部では幸吉は完全に脇役に回り、岡山を所払いになった幸吉が身を寄せた船頭が主役になります。この第二部(塩の専売に対する幕府側商人と自由商人の闘争)が面白い。本音を言えば第一部の間は、引き込まれるという感覚がなかったのですが、第二部に入ってからページがどんどん進むようになります。
そして第三部。主人公は、船を降り、駿府で商人として生きる幸吉に戻ります。そして大団円。

たとえ罪とされても、ただ「飛ぶ」という事に止むに止まれる衝動を感じる幸吉。その幸吉の飛行を悪政への抗議として受け取り、自らを奮い立たせる周りの人々。そのどちらの姿も、見事に描き出して見せます。
前々から名前は聞いてたけれど、飯嶋さんは初めてでした。
少々重いけれど、良いですね。

0
2016年07月31日

Posted by ブクログ

江戸時代に鳥のように空を飛ぶことに人生を賭けた男の話。
凧揚げが盛んな地で育ち、表具屋としての技を磨くうちに凧で空を飛ぶことを思いつく。しかし実験を重ねるうちに大騒動になり町から追放となってしまう。そんな時に幼馴染の船乗りが彼を拾い、共に廻船業を営むが海育ちの者との差を感じ陸暮らしを始めるが、あることがきっかけで再び空を飛ぶことへの挑戦を始める。

実在の人物と思われるが、ほとんど記録が残っていないため大半が創作らしい。
他の作品と比べるとドラマチックさは控えめ。主人公の行動を通して、当時の世の中のシステムへの批判的な面も窺える。
空を飛ぶことへの執着は主人公の性質という感じではあるが、もう少し何らかの外因があると納得感が増し、迫力が出たのではないかとも思った。

0
2024年01月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一万円選書の二冊目。
私にはちょっと難しかったかも…
幸吉の人となりはわかったし、物語的にも面白かったけど、細かい設定があまり頭に入らず流し読みしてしまった。歴史小説は好きな方なんだけど、わかりやすく没入できる司馬遼太郎はすごいなと思ってしまった。ただただ私の読解力の問題だけど。

0
2024年01月03日

Posted by ブクログ

てっきりギリシア神話のイカロスをめぐるお話のような完全なフィクションを想像していたのですが。半分違ってました。実在の人物を題材にしており、作中で発生した事件も史実に基づいているみたいです。
この種の作品はどうしても歴史上の出来事に縛られてしまうため、往々にして展開が窮屈になってしまいがちですが、本作もその例に漏れていない印象です。
また、本作のキモは間違いなく第二部の塩をめぐる幕府や問屋との対決で、この部分はかなり面白く読めたのですが、相対的に幸吉が空を飛ぶお話が付け足し程度にしか思えないという弊害が・・・。第一部が終わった時はこの後何をやらかしてくれるんだろうと期待したんだけどなあ。結局、『始祖鳥記』というタイトルにしても文庫裏の説明文にしてもミスリード感があり、スタート地点から著者の意図と読み手である私の捉え方にズレが生じたのかな、という気がしています。

0
2021年09月09日

Posted by ブクログ

今年はエンタメ最優先と決めているので、基本的に小難しそうな文学には、たぶん殆ど手を出さない。当然本作も、各所で絶賛されているのを見て、なるべく早めに読みたいと思っていたものの一つ。個人的に感じるふとした懸念は、同じく絶賛される”黄金旅風”につき、それほどポジティブなイメージが残っていない点だった。そして本作。正直、しんどかった。上記の個人的今年のポリシーから、止めようかとも思った。時代背景についての細かい描写は、知っておくべきだろうし、分かった方が楽しめるんだろうけど、踏み込むとドツボに嵌ること必定なんで、基本的には読み飛ばし。その上で尚、読み進めるのがしんどかった。特に第2部は、ここだけ視点人物がガラッと変わるわけだけど、疲れた。それぞれに信を置く書評家、エンタメ系の北上次郎、文学系の豊崎由美、どちらからも絶賛されているし、それを読めない自分が悔しいんだけど、合わないものは仕方ない。他にも数冊所有しているんだけど、優先順位はダダ下がりだな、こりゃ。

0
2021年02月09日

Posted by ブクログ

私自身が時代小説が苦手で、存分にこの小説を堪能できたというわけではないのだが、江戸にはびこる悪政の中で男前に戦う、幸吉をはじめとした登場人物に魅了され、前代未聞のこころみを行う苦労、苦心、工夫に引き込まれた。今ぼんやり生きている自分の人生って何だろう・・・?と、作中の人物ではないが、考えさせられてしまう。私は空を飛ばないが、そういう意味では解説でも触れられていたが危険な小説である。

0
2018年10月26日

Posted by ブクログ

時代背景を詳細に書きまくっている小説。こういう日本人がいたことが凄いと言うか、日本人だからやったような気がする出来事。日本人という存在をあらためて考えさせられた。

0
2015年11月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

陸軍大佐の竹内正虎が日本航空発達史の中で取り上げている、備前屋幸吉の話で、凧が好きで、遂には、自分がその凧に乗って空を飛んで、世間を騒がせた話だ。当時は、飢饉などへの幕府の対応が悪く、世間は不満の塊であり、凧に乗って飛んだ幸吉が、鵺になぞらえられて、『イツマデ、イツマデ』と、幕府の失策がいつまで続くのか揶揄したと言ったように、間違って世間に捉えられ、幸吉は備前を追われる。
封印していた凧作りがひょんなことから、再びすることになり、また、大空を飛びたいという欲望に駆られ、とんでしまう。

幸吉は人間が空を飛んだ最初の人である。ライト兄弟より100年以上も前の話である。

0
2014年11月01日

Posted by ブクログ

備前の表具士 幸吉が凧を作って、空を飛ぶ物語。20代前半で所追いの刑になり、その後船乗り、入れ歯屋を経て最後に空を飛ぶのに成功するという実話。やりたい事があるなら意思を貫けという教訓だった。

0
2012年05月28日

「歴史・時代」ランキング