後藤正治のレビュー一覧
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交差路クロスロード、人と人の人生が邂逅する場所。ノンフィクション作家歴40年の筆者が振り返る取材を通じた人々との出会い。
ノンフィクション作家として数多くの名作を残す筆者。多くのスポーツから医学の現場までテーマは多岐に渡る。
そんな筆者が取材により出会った印象に残る人々を出会いという視点から回想する作品。いわば筆者の作品のダイジェスト版。一話一話が少し短く物足りない気もするが、気になったテーマはたいてい書籍化されているので、そちらを読むための足が掛かりにもなるだろう。
本書はまたノスタルジックに振り返る昭和史の一断章でもある。
週刊朝日連載中だった「追想漢たらん」を加筆修正したもの。 -
Posted by ブクログ
先に柳田邦男さんの本を読んだ際、激賞されていたので手に取ってみました。後藤さんの著作はちょっと前にも「スカウト」という作品を読んだところでした。
さて、本書、舞台が「定時制高校のボクシング部」ということなので、材料となるエピソードには事欠かないことは想像に難くないのですが、後藤さんは、それら「教師と生徒という“人間と人間の関わり合い”」を徒にドラマチックに煽るでもなく丹念に綴り起こしています。それゆえに、書き込まれた登場人物は皆一人ひとりの個性が光り、とても魅力的に映ります。
確かにとオーソドックスで真っ当なノンフィクション作品だと思います。 -
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天声人語。たぶん知らぬ人はいないだろうが、朝日新聞朝刊一面下のコラムの事。
今は少し違うらしいが嘗てはただ一人の担当者が毎日の天声人語を執筆していた。
僕が小学生高学年で、中学受験の真っ只中にいた昭和50年代初め、天声人語は国語の入試問題に使用されることの多いネタとしても有名だった。そして、受験勉強の一貫で読むようにと渡されたのが「深代惇郎の天声人語」の単行本だった。
無論、いくら名コラムニストの文章とはいえ、小学生の段階では読んで味わうというのは難しい。読み切ることはできなくて、冒頭の方の数篇しか読まなかったと思う。
でも、それでも「サリドマイド」の薬害訴訟を取り上げたコラムのことは40年経 -
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西宮西高校の定時制高校ボクシング部を自ら発足させ、様々な家庭環境の生徒たちと向き合うボクシング部顧問の脇浜氏。受験や就職、様々な事情から定時制高校に通うことになった生徒達にとって、人生において「勝つ」という経験をさせてやりたいと生徒に寄り添う脇浜氏。決して熱血教師という印象ではありません。その溢れるような愛情と熱意を理解し、受け止めて人生の方向性を変える生徒がいる一方、すれ違いからボクシング部や高校からも姿を消す生徒達。約4年にわたる取材をもとに、濃密な時間を過ごす教師と生徒達の物語です。決してスーパーヒーローが登場するわけでもなく、ハッピーエンドだとも言えません。でも、親以外の大人とここまで
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無骨だが哀歓宿した中年教師とアカンタレの教え子ボクサーたち。定時制高校ボクシング部での攻防は彼らの敗者復活戦でもあった。教室だけでは築けない型破りな師弟の姿を描く書き下しノンフィクション。
95年大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。定時制高校に対して我々が持つ先入観や偏見を覆す内容ではなかった。「教育とは何かを考えさせられた」こともなかった。でも本作には伝わってくるものが確かにあるし、取材対象者と一定の距離を保って描く筆者のスタイルは心地よかった。この学校は当時「ニュース・ステーション」等が取り上げたという。その映像も観たかった。
(B) -
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大投手江夏、広島でもなく、日本ハムでもなく阪神の江夏とその時代を全て描ききっている、一冊。
大胆なイメージをもっていたが、コントロールの良さと記憶力の良さがあって、そこにスピードもあったので、間違いなくNo1の投手という証言。
当時の知らない先週も多数でてくるが、そのどれもが職人・文面からも近寄りがたさが伝わってくる、プロの選手でそのどれもが魅力的。
冴えない監督のイメージの村山実も、ものすごい大投手だったんだと勉強になる。
後半、江夏に関わった色々な選手、有名どころから無名どころまでを上げていき、最後に林健三という全く無名の選手、しかし何故か江夏が一番苦手にしていた打者、現在は個人タクシーの -
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後藤正治『拗ね者たらん 本田靖春 人と作品』講談社文庫。
読売新聞社会部記者からフリーのジャーナリストに転身し、数々のノンフィクション作品を描いた本田靖春の71年の生涯とその代表作の背景などを描いたノンフィクション。
本田靖春の作品では、『誘拐』『不当逮捕』『私戦』『疵 花形敬とその時代』は読んだことがあるが、その中でも特に『誘拐』と『疵 花形敬とその時代』が非常に面白かった。
本書を読むと、本田靖春はかなり魅力ある豪胆な人物だったようで、記者時代から周囲に慕われたようだ。独立後は数々の傑作ノンフィクションを上梓したが、晩年は糖尿病で満身創痍の中、筆を取り続けていたとのこと。加齢と共に若 -
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「いつの頃からか貧乏人の子がケンカに弱くなった。そのうえ怠け者で、横着で、金持ちの様に不人情になった、、、、」定時制高校の英語教師、脇浜はボクシング部の顧問でもある。そこには、他の高校からはじかれた、勉強のきらいな、高校だけは出ておこうかという、一度人生に負けた子供達がやってくる。自分自身も苦労して高校教師になった脇浜は人生のリターンマッチを子供たちにやらせてやろうと今日もリングで待っている。一回勝つ事がどれだけその子を勇気づけ、人生を変えるか、今まで勉強だけでなく人生負けっぱなしの子供が、自分の手で、自分の気持ちで勝ち取った一勝の大きさを感じる。ノンフィクションならではのボディーブローのよう