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新聞史上最高のコラムニストと評される深代惇郎。「天声人語」の執筆者として輝きを放つも、担当したのはわずか2年9ヵ月、46歳で早世する。その文章は、ウイットとユーモアに満ち、視野広く、思考は柔軟でありながら、硬派を貫いた。なぜ彼のような書き手が生まれたのか。多くの証言から綴る、傑作評伝!
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Posted by ブクログ
天声人語。たぶん知らぬ人はいないだろうが、朝日新聞朝刊一面下のコラムの事。 今は少し違うらしいが嘗てはただ一人の担当者が毎日の天声人語を執筆していた。 僕が小学生高学年で、中学受験の真っ只中にいた昭和50年代初め、天声人語は国語の入試問題に使用されることの多いネタとしても有名だった。そして、受験勉強...続きを読むの一貫で読むようにと渡されたのが「深代惇郎の天声人語」の単行本だった。 無論、いくら名コラムニストの文章とはいえ、小学生の段階では読んで味わうというのは難しい。読み切ることはできなくて、冒頭の方の数篇しか読まなかったと思う。 でも、それでも「サリドマイド」の薬害訴訟を取り上げたコラムのことは40年経った今でもよく覚えている。 ただ一編、800文字の文章とはいえ、小学生の少年の心に刺さり、40年過ぎても思い出させるのだから、それは名文なんだと思う。 本書はその天人(天声人語)を担当した深代惇郎氏の生涯を辿り、彼のコラムニストとしての才能がどうやって培われたのかを、氏の未亡人、先輩、後輩、同僚、ライバル、等々への取材によって探ろうというもの。 天人は朝日新聞の顔とも言えるものなので、もっとも優れた論説員が担当する。深代氏の取材記事はその着眼点の良さ、文章のリズム、バランス感覚のある見解を述べながら反骨心も欠かさないところがあり、将来は天人を担当するに違いないと周りから思われるほど、抜きんでていた。立場的には朝日と対極にある他誌の記者からも一目置かれ、また同じ新聞記者として多くの人と深く交流を持ったという。 天人その多くの執筆者が5年、10年と担当するのに比べ、深代惇郎氏は担当中に急性骨髄性白血病を発症し46歳という若さで急逝したため、執筆期間は3年に満たない。 しかし、翌年には氏の約1000篇の天声人語から抜粋した「深代惇郎の天声人語」が発刊される。それだけ氏の天声人語が魅力的であり、その早逝が惜しまれたからだろう。 この本の中にも何編か氏の天声人語が引用されている。 その主義主張に異論があったとしても、それを読んだ時、何か考えさせるものが残る。氏は自らの主張を正しいものとして押し付けるのではなく、常に懐疑的に反対意見も紹介しながら、読む者に自分自身の判断を自然と求めるような流れを作る。 天声人語が読みたい訳ではない。 「深代惇郎の天声人語」を読みたくなった。
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