ドリアン助川のレビュー一覧

  • 太陽を掘り起こせ

    Posted by ブクログ

     ちょっと変わった構成の童話みたいなお話。おそらくコロナに罹患して瀕死の状態になった70歳の女性とその文学部仲間の男性とが紡ぐ物語です。
     この世から太陽が消えてしまい、彷徨ううちにたくさんの子供たちに出会います。

     人は死ぬ間際に何を思うのか。それは生きているうちには誰にもわかりません。そろそろいつ起きても不思議ではない年になった我々は、そういうことをいろいろ考えるわけですね。
     ドリアンさんは詩人でもあらせるのですね。もっとたくさん詩を入れてもよかったです。

    0
    2024年05月03日
  • 多摩川物語

    Posted by ブクログ

    ドリアンさんの物語はどれも 優しくて哀しい。
    生きている人間たちの生きてきた事、生きていく事の 哀愁・喜び・後悔・希望。 そんなモノが語られる。
    人間の生は どれもこれも 本当に愛おしい。

    0
    2024年04月27日
  • 太陽を掘り起こせ

    Posted by ブクログ

    病に伏せる年老いた二人が、書簡を交わしながら紡ぐ物語。
    太陽が消えた闇の世界で、今はなき人々たちが姿を変え、二人を太陽に導いてゆく。
    昔子供だった大人たちへ、そして今の子供たちへ、本当に大切なものはなにか、歴史に埋もれてきた人々の心を教えてくれる。
    星の王子さまを読んでいるような、銀河鉄道の夜を読んでいるような、それでいてなにか違う優しいお話です。

    0
    2024年04月04日
  • 夕焼けポスト

    Posted by ブクログ

     日没前にだけ突然現れるポスト。そのポストには、あらゆる人の悩みや願いが記された手紙が入っている。主人公は、妻子を突然事故で亡くし、悲しみにくれて生きるうちに、そのポストの手紙に返信する、管理人の役割を担うことになる。

    主人公は長年返事を書き続け、相談者を励まし続けます。そのアドバイスの中で大切にしているある教えがあり、何とか続けていますが、人を救ったり励ましたりしていることが綺麗事で、なにより自分自身が全く救われず先に進めていないことに罪悪感を感じています。

    インドでの体験、仏陀の教えなどを交えながら、新たな境地を開いていく主人公。
    ただの綺麗事やポジティブシンキングとは違う、心を伴った

    0
    2024年03月30日
  • 動物哲学物語 確かなリスの不確かさ

    Posted by ブクログ

    様々な野生動物を主人公とした、大人向けの童話仕立てのような文体・構成で20編の小編集。相互に繋がりは無い。スキマ時間で読み進められる。初めのうちは馴染めなかったが、徐々に面白く感じられて来た。童話はコミカルな表現が少なからずだと思うが、大人向け童話としてのスタイルが、この面でも楽しめた。

    0
    2024年03月20日
  • 動物哲学物語 確かなリスの不確かさ

    Posted by ブクログ

    動物目線で話が進み、一つ一つが短いから哲学という読みづらいジャンルだけど読みやすかった。猿とコウモリとウリ坊の話が人間の話として共感できて面白かった。

    0
    2024年03月04日
  • あん

    Posted by ブクログ

    ウチの高校生が部活で朗読の課題になってると言っていたのがきっかけで読んでみた。
    映画化されていたのでタイトルくらいは知っていた。なるほど、2時間くらいのドラマにするにはちょうど良さそう。
    人生を諦めかけた男と人生のほとんどを理不尽に奪われた高齢の女性が出会い、心を通わせる物語。
    ハンセン病については知っているつもりで知らなかったのかもしれない。こうやって物語を読み登場人物の一生に思いを馳せると、事の重大さに心が苦しくなった。

    0
    2024年02月14日
  • 星の降る町 六甲山の奇跡

    Posted by ブクログ

     今年はドリアン助川さんの本を沢山読もうと決めている。明川哲也の名で出版されている物も含めると、自分が知らなかっただけで、割と沢山書かれていた。暫くは、「面白かったけど、読まなくてもよかったなぁ」と後で思うような本になるべく手を出さないようにしようと思っている。いろいろで行き詰まっているせいで、何か好転する糸口を本から得たいのだと思う。ただ歳をとっただけかもしれないけれど、時の有限性も無意識に感じるようになった。だから今は、期間限定で、本当に好きだ、本当に良い本だ、と思えるような本を、今までより少し慎重になって、次に読む本に選ぼうと思う。

    この本、割と短く、中学生くらいから読めそうだ。一方で

    0
    2024年02月01日
  • あん

    Posted by ブクログ

    映画化もされており、作者の作品を初めて手にして読んだ。 どういう話か読んでみてわかった。 ハンセン病がリンクしていた話だとは思わなかったので、手にしてみないとわからない一冊。

    0
    2024年01月28日
  • あん

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    前科者で先代に恩があるためだけにやっていたどら焼き屋さん「どら春」の店長さん。ある日、店の前に立ちこちら見つめている年配のおばあさんと出会う。体が少し不自由そうなその人は、その店で働かせてほしいと話す。断り切れず試しに働いてもらうことにするが、その人の作るあんに驚く。そのあんの作り方を教わりながら、その人・吉田さんの過去や思いに触れながら自分のこと・店のこと・これまでのこと・これからのこと等について少しづつ変えていこうとする店長さんの、吉田さんとのお話。

     前から読みたいリストに登録していた本。あんこを通して再生していく話だと思って読んでたけど、思ってた話とは話の流れが違ってちょっと驚いた。

    0
    2024年01月22日
  • あん

    Posted by ブクログ

     天生園のモデルになった全生園の裏に住んでいます。1997年頃は、学校が終わると毎日友だちと全生園で遊んでいました。学校でもハンセン病についての学習があった地域でした。祖母の友だちにもトクさんや森山さんのような様相の方がいらっしゃいました。
     私にとっては身近な題材です。それでも、罹患した方の視点から語られる場面は胸がギュッと苦しくなりました。いくら身近でも、決して慣れることはない苦しい過去がある病気だと改めて思いました。
     ただ、苦しい過去がある病気が題材でも、この小説を通じてだと甘いあんも心に残るので、なんとか最後まで読み切ることができました。
     「あん」という言葉が題名になったことに、店

    0
    2024年01月06日
  • 寂しさから290円儲ける方法

    Posted by ブクログ

    2023年刊。これは、作者自身が作家として感じている日常から、明日にジャンプアップする為の、過去反芻と未来に向けたファンタジーなのでは?…と思ったり。
    形としては、日本を主として世界中の何処へでも行く、麦わら帽子を被ったお助けマン。ちょっと変態的な癖も有る。行く先々に纏わるウンチクも展開されつつ、お悩み解決、或いは糸口まで導く。小編が進むにつれファンタジー度が急峻に上がる。
    普通に「小説」を読みたい人には勧めない。筆者のファンタジーに付き沿う感じで読むと面白いのでは。

    0
    2023年12月21日
  • 動物哲学物語 確かなリスの不確かさ

    Posted by ブクログ

    最初の3話くらいは宮沢賢治っぽいなと思ったが、読み進めればやはり哲学の本だった。
    それぞれの動物の生態にあわせて紡ぎ出す哲学の物語。
    そしてそれは、今我々が生きている人間の世界を投影している。

    0
    2023年12月13日
  • 寂しさから290円儲ける方法

    Posted by ブクログ

    一つ一つの物語が不思議な感覚に包まれていながら、場面を頭の中で想像しやすい進み方だった。なぜか、それぞれの短編がドラマ化されると面白そうだなとも考えていた。
    コンピュータが支配する世界で効率性だけを求める時代のなか、人間にしかできない非効率な動きの中に、幸せが存在する。
    「時代ではなく居場所を作る」

    0
    2023年11月23日
  • 多摩川物語

    Posted by ブクログ

    8本の短編集
    ちょっとどこかで繋がっている物語。
    さすが叫ぶ詩人の会、ところどころドキッとするような表現が出てくる
    なんだか優しい物語で、さん、くん付の第三者目線で書かれているのもそれを助長させている感がある。
    切なくなるけど決して苦しくはならず、逆に心が温かくなるそんな本でした。
    多摩川に行ったことがあれば、情景が浮かんでセピアな感じで読めるのだろう。

    0
    2023年11月21日
  • 多摩川物語

    Posted by ブクログ

    ドリアン助川、映画「あん」の原作者という知識しかありませんでしたが、短編もいい。とにかく文章力は嫉妬を覚えるほど素晴らしい。こうした良い文章に触れるといつの間にか読む方も心が豊かになります。
    内容は、どこにでも居そうな庶民の姿が、思いやりやお節介を通して人生の襞として描かれる連作集。特に、心の底で遠い記憶に埋もれていたはずの出来事が、あることをきっかけでさざなみの様に蘇ってくる様は、時を経ることによって甘酸っぱくより芳醇さを増しているようです。短編小説の名作です。

    0
    2023年10月09日
  • 夕焼けポスト

    Posted by ブクログ

    ファンタジー調の優しく悲しく温かいお悩み相談物語

    主人公自体が悩みを持ちながら、他人の悩みに誠実に答えていくという構造が、奥行きを感じさせてくれる。
    人生や悩みに関して真正面に取り組まれていて、仏教やタゴールについて読んでみたくなった。

    0
    2023年09月06日
  • 寂しさから290円儲ける方法

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    実費以外、たったの290円で悩める人のところに行き、その場に見合った料理を提供する麦わらさん。
    自身も抱えるものが合うところを見せながらも、お悩みを解消してゆく。
    悩める人が自分の分身のように思えて、その場所に行ってみたくもあり、その料理を食べてみたくもなった。
    そして、麦わらさんはおそらく著者の分身なのだと思う。
    290円の値段の理由を知ってしまうと、おそらく今は値上げされているんでしょうね。

    0
    2023年07月14日
  • 寂しさから290円儲ける方法

    Posted by ブクログ

    悩みを抱えた10人(+1人)と麦わらさんの会話が哲学的。絵本のような優しさで語る。相談者に寄り添い、290円で請け負う理由とは…第三話『池袋 平和通り』に思いを馳せた。

    0
    2023年07月11日
  • 寂しさから290円儲ける方法

    Posted by ブクログ

    短編なのでとても読みやすく、くっすと笑えるところもあり面白かったです。

    少し哲学的な内容もあり、一話一話を噛みしめて読むとなかなか味わい深いです。
    個人的にはメロンパンの話が好きでした。

    また、最後の話は現代人に向けてのメッセージが奥深かったです。
    僕の中では、そこそこオススメできる小説です。
    慣れていない人でも読みやすいと思います。

    0
    2023年06月30日