多摩川物語

多摩川物語

小説・文芸
660円 (税込)

3pt

映画撮影所の小道具係を辞めようかと悩む隆之さん、客の少ない食堂で奮闘する継治さん、月明かりのアパートで母をしのぶ良美さん……。 多摩川の岸辺の街を舞台に繰り広げられる心温まる人生のドラマ。 収録作品は「黒猫のミーコ」「三姉妹」「明滅」「本番スタート!」「台風のあとで」「花丼」「越冬」「月明かりの夜に」の全8篇。 名もなき人びとの輝ける瞬間が胸を打つ、珠玉の連作短篇集。

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多摩川物語 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    多摩川の岸辺の街を舞台にした8つの連作短篇集。

    どれも優しさが隠れている。
    ほろっとさせる場面もあって、心に染みてくる。
    読みやすくて短篇なのに内容も熱くてドラマ1本観たようだった。

    ○黒猫のミーコ〜無人販売所を出す雅代さんに寄り添う黒猫ミーコ。

    ○三姉妹〜古書店で働く洋平が気になるのは、料理を作る匂いなのか三姉妹なのか。

    ○明滅〜克之とマル君の友情

    ○本番スタート!〜隆之の裏方仕事・小道具は主人公でもある。

    ○台風のあとで〜雅之がホームレスから貰ったものは知恵。

    ○花丼〜「大幸運食堂」の継春さんが助けた看板屋が書いた看板は。

    ○越冬〜父子家庭と母子家庭の出会いと将来。

    ○月明かりの夜に〜亡くなった母が残していた言葉。




    花丼に残していった看板の言葉が良い。
    それを見たら店主も力が漲るはず。
    「生きていきますどこまでも」
    「花丼食べて花咲かせ」

    月明かりの母の言葉も心に残る。
    大変な時期もそれも景色のひとつ。
    いい時も悪い時も、すべての景色を味わうのが人生。
    だめな日は、だめな日なりに毎日を味わって生きていきなさいね。
    笑っていれば、またきっといい景色の日がきますから。



    愛のある優しい言葉がたくさん溢れている物語だった。




    0
    2024年03月10日

    Posted by ブクログ

     8編からなる短編集。最初の二編辺りでもう、やっぱりこの作家さん一番好きだわ〜と、ときめいた。もっと評価されていい作家さんだと心から思う。

     中でも、「黒猫のミーコ」「明滅」「台風のあとで」「花丼」は特に好きだった。

    ドリアン助川さんの文章には優しさが溢れている。その人物の心の声を、1つずつ丁寧に掬って文章にしてくれる。余白を省いて、行間を読みなさい!というスタイルではなく、読む人にも優しい。なので、読んでいる最中はあれこれ考えることなく、その人物の心が素直に真っ直ぐに心に刺さってくる。では、簡単な内容なのかというとそうでもなく、読んでいる間中、そして読後も、その風景や、人物の感情、どうかすると、その周りに生きる人々まで含めた世界観が、しばらく自分の周りを覆っているような、別世界でありながら、とても親しみのある所へ身を置かせてくれる。しっかりとした物語の世界の中で、読者はあれこれと想像を働かせることができる。そして、その多くは、本来日頃の生活の中で感じ得る人間の優しさであったり、辛さであったりする。これこそが、人の気持ちを考えたり、想像したりするということではないだろうか。

    そして、最後に突然の散文詩。スケールが大きく、何者も近づけないような大きな流れた時の存在。震えました。

    今読んで良かった。こういう本を読みたかった。文が美しく、現実の生活に即していながらも、なかなか出会うことのない人の真心や優しさに触れさせてくれる本。移り変わる自然の風景と人生の時。
    上質な上にわかりやすい文章なので、若い方にもたくさん読んでもらいたいです。

    好きだったところ******

    少し前に南の風が強く吹いたろう。あれが春の挨拶だ。透き通った刷毛を走らせて、自分の通り道を見せていく。131

    今日も一人励ましたと、言った本人だけは思っている。相手の思いやりの方が上でうなずいてくれたかもしれないのに、いいことを言ったような気分で鼻の穴を膨らましている。
    だが、一人ぼっちになると、他人を励ました分だけへこむようなところが継治さんにはあった。すべては虚勢なのだ。166

    良い時も悪い時も、すべての景色を味わうのが人生なんだとお母さんは思うわ。235

    時よ、いつ過ぎ去ったのだ。
    輪郭のつかめないこの風景を、
    今、愛せよというのか。
    なにもかも、これが本当の姿だというのか。239

    0
    2024年01月04日

    Posted by ブクログ

    ドリアン助川さん、放送作家にラジオのパーソナリティに、そして作家業に多才なんだ。たくさん表現して行く行き方なんだ 多摩川は遠すぎて思い入れはないけど、8人だけじゃないまだまだ物語に富んで2出来てもいいね。正子さんの回が好きかな 娘を1人で育て上げ、逃げずに自分の言葉で立ち向かう、線香を上げにきた友達の会話で人となりも分かる。良い人だった 最後の多摩川を舟で下る回想は正子さんで切ないけど、多摩川に見守られる人生って良いと思う。あんを読んでこんな胸打つ物語をもっと読みたいです、で本屋に出ないのが切ない。

    0
    2023年08月31日

    Posted by ブクログ

    前に「あん」を読んですごく心地良い温かさを感じたから、同じ著者の小説をもうひとつ読んでみようと思って…
    この小説も、じんわり涙が出てくるような温かさに包まれてた。
    感動の押しつけはまったくないんだけど。ほんとに、じんわり、という感じ。

    多摩川沿いで生活を営む人々の短編集。多少、連作めいた要素もあり。
    野良猫に名前をつけて可愛がる農家の中年女性、古書店で働く恋する青年、川べりに棲むホームレスに絵を教えてもらった少年、閑古鳥が鳴く食堂の主人、妻をなくしたシングルファーザーetc
    日々を送る人々の傍にはいつも川があって、そこには悲しみや辛さや笑顔がある。
    ただ通りすがるだけの川、時に訪れて遊ぶ川、たまに脅威にもなる川。
    普段そこにあることは意識しなくても、そのエネルギーに影響される、自然というものの力。

    それぞれの人間にドラマがある、ということを改めて思った。
    毎日、ただすれ違うだけの人にも、生きてきた年数分のドラマがある。
    衝撃的なことはめったに起きないからこそ、取り立てて大きな衝撃が起きない物語群がとてもリアルで、とても胸にくる。
    日々生きてて、あぁ嫌だなぁと思うこととか、ちょっと嬉しくて笑っちゃう感じとか、してしまったことを悔いて落ち込むこととか、そういう些細なリアルが溢れてる。

    最後に温かさが満たす、そういう物語ばかりじゃないのもリアル。
    生きてて痛いことも、たくさんあるもんね。

    0
    2016年05月27日

    Posted by ブクログ

    多摩川は馴染みの深い川であり書店に平積みされていることもあり購入。
    最初の「黒猫のミーコ」を電車で読んでいたら泣きそうになり危なかった。
    著者の名前は知っていたがこれからもう少し読んでみよう

    0
    2016年04月30日

    Posted by ブクログ

    ドリアンさんの物語はどれも 優しくて哀しい。
    生きている人間たちの生きてきた事、生きていく事の 哀愁・喜び・後悔・希望。 そんなモノが語られる。
    人間の生は どれもこれも 本当に愛おしい。

    0
    2024年04月27日

    Posted by ブクログ

    8本の短編集
    ちょっとどこかで繋がっている物語。
    さすが叫ぶ詩人の会、ところどころドキッとするような表現が出てくる
    なんだか優しい物語で、さん、くん付の第三者目線で書かれているのもそれを助長させている感がある。
    切なくなるけど決して苦しくはならず、逆に心が温かくなるそんな本でした。
    多摩川に行ったことがあれば、情景が浮かんでセピアな感じで読めるのだろう。

    0
    2023年11月21日

    Posted by ブクログ

    ドリアン助川、映画「あん」の原作者という知識しかありませんでしたが、短編もいい。とにかく文章力は嫉妬を覚えるほど素晴らしい。こうした良い文章に触れるといつの間にか読む方も心が豊かになります。
    内容は、どこにでも居そうな庶民の姿が、思いやりやお節介を通して人生の襞として描かれる連作集。特に、心の底で遠い記憶に埋もれていたはずの出来事が、あることをきっかけでさざなみの様に蘇ってくる様は、時を経ることによって甘酸っぱくより芳醇さを増しているようです。短編小説の名作です。

    0
    2023年10月09日

    Posted by ブクログ

    都会を流れる多摩川沿いに暮らす、年齢も性別もさまざまな人々の何気ない日常のお話し。裕福だったり、そうじゃなかったりするけれど、共通するのは悩みがあること。けれど、ちょっとしたことがきっかけで、すうーっと雲が流れて太陽が顔を出すように解決する。
    以下本文より
    「人間はね、うちのそばの多摩川を流れていく葉っぱのように、岸辺のあらゆる景色を見て行くの。だからいい時も悪い時も、すべての景色を味わうのが人生なんだとお母さんは思うわ。」
    市井の人々の格言です。
    ドリアン先生、今回もありがとうございました。

    0
    2022年09月19日

    Posted by ブクログ

    過小評価されている作家の筆頭であるドリアン助川。名前が悪いのでしょうか。
    「あん」で知名度が上がって見な手に取るかと思いきやいまいちパッとしないです。「新宿の猫」とかかなりの佳作だと思うんですけどね。
    本作は題名通り多摩川のほとりの町での連作で、どれもこれも少々苦くてでも希望にあふれた物語です。この苦みというのはドリアンさんの本には欠かせない要素で、誰しも何かを失って生きている事を感じられるんですね。優しい視点で描かれながらも、人生の味というのは苦みも含めての事なんだなと思わせてくれます。

    0
    2021年04月05日

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