ドリアン助川のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
多摩川の岸辺の街を舞台にした8つの連作短篇集。
どれも優しさが隠れている。
ほろっとさせる場面もあって、心に染みてくる。
読みやすくて短篇なのに内容も熱くてドラマ1本観たようだった。
○黒猫のミーコ〜無人販売所を出す雅代さんに寄り添う黒猫ミーコ。
○三姉妹〜古書店で働く洋平が気になるのは、料理を作る匂いなのか三姉妹なのか。
○明滅〜克之とマル君の友情
○本番スタート!〜隆之の裏方仕事・小道具は主人公でもある。
○台風のあとで〜雅之がホームレスから貰ったものは知恵。
○花丼〜「大幸運食堂」の継春さんが助けた看板屋が書いた看板は。
○越冬〜父子家庭と母子家庭の出会いと将来。
○月 -
Posted by ブクログ
8編からなる短編集。最初の二編辺りでもう、やっぱりこの作家さん一番好きだわ〜と、ときめいた。もっと評価されていい作家さんだと心から思う。
中でも、「黒猫のミーコ」「明滅」「台風のあとで」「花丼」は特に好きだった。
ドリアン助川さんの文章には優しさが溢れている。その人物の心の声を、1つずつ丁寧に掬って文章にしてくれる。余白を省いて、行間を読みなさい!というスタイルではなく、読む人にも優しい。なので、読んでいる最中はあれこれ考えることなく、その人物の心が素直に真っ直ぐに心に刺さってくる。では、簡単な内容なのかというとそうでもなく、読んでいる間中、そして読後も、その風景や、人物の感情、どうか -
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考え方が大きく変わるきっかけになりそうな本。田我流味を感じるし、多分彼はこれを読んでる。笑
本の中に答えを見つけた気分になれました。
実際のエピソードというか、日常での考え方を盛り込んでくれたので共感しやすかった。全部の章が納得できるわけではなかったけど、今はそれでいいと思う。わかる時が来るかもしれないし。
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あれが欲しいこれが欲しいと欲の塊になっている人は、結果として現れたものの姿しか観ることができない。無欲の人のみが、現象の向こう側にある、見えない本質を観ることができる。言葉でわかるようなものはTAOではない。
全ての感覚は、相対性のもとに成り立っている。褒められたとしてもその座 -
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本書の帯びには「9.11の悲劇を体験した作家が混迷の世に問う長編」とありました。
ニューヨークのマンハッタン周辺を舞台に,色々な国籍の若者たちが交流する中で,自分のアイデンティティーを確認しながら,迷いながら生きていく,命の交流が描かれています。
自分の国と自分とは同じなのか…。あるときには,重荷に感じる国。でも,立ち位置として持っていたい国。タイトルにある「国」は,実際の国であり,心の中の国である。国は自分の一部であるけれども,じゃまな存在ともなる。
英語教室の講師が,国をめぐって言い争う若者たちに言う。
「こういう晩に,人を区別するような話はやめてもらおうか。そういうものを,背負わ -
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多摩川の河川敷に住むホームレスたち(主人公は新入りの望太)の物語と,単位制高校2年生の絵里との物語が並行して進んでいく。もちろん,最終的にはどこかで接点はあるという設定。
随所に出てくるホームレスの古株ブンさんの言葉が,なぜかわたしの心に染み入る。どん底ともいえる状態の中で生きている意味とは何なのか。彼らの未来とは何か。今この時間とは何か。ドリアン助川の心の言葉が,この古株の言葉を通してわたしに迫ってくる。
そして,やっぱり,ドリアン助川の目は温かい。人生に失敗した(と思っている人)も,普通に歩いているサラリーマンも,同じように生きていくべきであるし,未来はある。望太の結末と絵里の結末は -
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素敵な表現がたくさんでてきます。読後,今,生きているこの時間を大切にしたくなる,そんな本です。ドリアン,優しいな。
著者は,ラジオ放送のパーソナリティーをつとめている時に,実際に,いろんな悩みを訴えてくる視聴者に,彼の言葉で応えるということもやっていたらしい。本作品は,夕暮れ時だけ現れるポストに入っている手紙への返事を通して,多角的に物事を見ること=観自在菩薩の助けを頂くことを教えてくれる。しかし,人には言うことができても,本人自身が感じている悩みには角度を変えてみることができない。これもまた,ドリアン助川の姿と重なってくる。「他人にエラソウニ言うけど,自分はどうなのだ!」と叫ぶ曲が,彼( -
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もう「叫ぶ詩人の会」の歌を聞いて以来,ドリアンのファンになってしまったので,評価は付けられない(5以外にない(^^;;)。
さて本書について…
新宿に住む十数匹の野良猫を題材にして小説が書けることが面白い。主人公の山ちゃんという男性(ボク)。小さな焼き鳥屋の店員の夢ちゃんという女性。その焼き鳥屋に集まる常連は,なかなかクセのあるメンバーだ。
小説の常で,内容についてちょっとでも紹介すると,読むときのドキドキさがなくなる。だから,これ以上は書かない。
ただ,いろんな創作や文学や芸術は,一般大衆の大多数を相手にするのではなく,目の前にいる一人に向けて行うものではないか…という作者の訴えに