ドリアン助川のレビュー一覧
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読み終えて、なんて言ったら良いのだろう。ホッとするような、やっぱりって言いたい気分と言うか、また、時間を置いてもう一度読んでみたら、印象が変わるカモと言う気分になる本である。
この作者は一体何者なんだろう。怪しいネーミングの作家名。私より若い世代の作家ではあるけど、断絶を感ずるような世界観。
一気読みして、暇に任せてまた開いたところのお話だけ読んで、また閉じてを繰り返している。まだまだ手元に置いて、時間を使って読みたいかも。
そういえばこの作家の本はこれで三冊目。共通しているのは、文章を読み進めると、この作者は「オス」って直感する部分がある。それは私が若い頃、男の子も育てた経験から感ずる事であり良いとか悪いとか言う事柄ではなく、事実として厳粛に受け止めて残りの人生を生きていくのだなぁと思っている。 -
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福島の原発事故から15年が経ち、原発をベース電源とすると政権は舵を切った。
そんな中、著述業の集まりである日本ペンクラブは2025年に創立90年を迎え、2012年に「今こそ私は原発に反対します」を出したので、その続編として出版されたのが本書である。
最近青木美希さんの本を何冊か読んだので、他にないか探したら検索にかかり、読むことにした。
内容が原発、原爆、被曝などのため読んでいて心地よい本でもなく、どんどん読みたくなる本でもなかったので、少しづつ読み進めることになった。12人の書き手よる内容の濃い本となっている。もっと話題になっても良い本だとおもった。話題の多岐に渡っており情報の咀嚼力も必要である。
色々知らなかったことも多数書かれていた。
1.ゴルバチョフ大統領はクーデターで軟禁されている時は核のボタンは無効化されていた。
2.1989年。アメリカのショーラム原発が完成するも、避難経路がないと住民が反対し、それを受けて州政府は56億ドルかけて作られた原発をわずか1ドルで買い上げ、解体を決めた。
3.福島原発の核物質がどう拡散するのかSPEEDIのデータは国内では発表されなかったが、欧米の国々には毎時報告されていた。
4.電力コストという点で原発は決して安くない。
5.原発が有事の時、狙われやすい施設であるのは確かなのに防御の方法はほとんどない。 -
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ネタバレ自分が見ている世界は自分が居るからこそ存在するのだという考え方に救われる気がした。
差別により不当に制限された暮らしの中で徳江さんがみつけた生き方に、どう言葉にして良いかわからない感情を抱いた。
不当な差別や偏見がなければ失わずに済んだ人生も存在するから、簡単に、尊敬とか凄いとか言えないけれど、徳江さんの闘い方はやはり簡単に真似できないと思う。
自分がこの作品の世界に元患者ではない立場で存在したら、千太郎やワカナのように徳江さんの人間性と向き合えるだろうか。
偏見で他人の人生を縛る側になりたくないとは思うが、実際はオーナーの奥さんやワカナの母のように「世間」を盾にして差別する側に簡単に立ってしまうのではないだろうか。そんなことも考えた。
噂に左右されず、事実を追求し、対峙する一人一人の人間そのものと向き合える(物語で言うなら「聞く」ことができる)人でありたい。 -
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この物語を読み終えて、
向き合えなかった過去と向き合うことで、人生は再生されていくのかもしれない、
そんな思いが静かに残った。
人は、思い出そうとすると心の奥がチクチクと痛むような出来事に対して、
無意識のうちに蓋をして生きてしまうことがある。
ちゃんと見つめるには、あまりにも怖くて、
見なかったことにしたほうが楽だからだ。
主人公は、どうしようもない運命を背負いながら、悩み、迷い、それでも懸命に生きている。
何か大きな罪を犯したわけでもないのに、
まるで自分を罰するかのように生きてきた人のようにも見えた。
作中で恩師が主人公に直接伝えたがっていた
「いついかなるときも、潮の流れが止むことはない……」
という言葉は、とても印象に残っている。
人生もまた同じで、止まっているように見えても、時間も感情も、静かに流れ続けているのだと思わされた。
振り返ると、自分自身の人生も決して順調だったとは言えない。
迷い、決断できず、流されてきたと感じる場面も多い。
それでも、その時々で起こった出来事を受け止めながら、ここまで生きてきたのだという事実は残っている。
主人公の人生と自分の人生が重なり、
華やかではないけれど、
もう若くはないけれど、
それでもこれからの人生を、
自分なりにきちんと歩いていこうと思えた。
静かに、けれど確かに、
心の奥に波紋を残す一冊だった。 -
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多摩川の岸辺の街を舞台にした8つの連作短篇集。
どれも優しさが隠れている。
ほろっとさせる場面もあって、心に染みてくる。
読みやすくて短篇なのに内容も熱くてドラマ1本観たようだった。
○黒猫のミーコ〜無人販売所を出す雅代さんに寄り添う黒猫ミーコ。
○三姉妹〜古書店で働く洋平が気になるのは、料理を作る匂いなのか三姉妹なのか。
○明滅〜克之とマル君の友情
○本番スタート!〜隆之の裏方仕事・小道具は主人公でもある。
○台風のあとで〜雅之がホームレスから貰ったものは知恵。
○花丼〜「大幸運食堂」の継春さんが助けた看板屋が書いた看板は。
○越冬〜父子家庭と母子家庭の出会いと将来。
○月明かりの夜に〜亡くなった母が残していた言葉。
花丼に残していった看板の言葉が良い。
それを見たら店主も力が漲るはず。
「生きていきますどこまでも」
「花丼食べて花咲かせ」
月明かりの母の言葉も心に残る。
大変な時期もそれも景色のひとつ。
いい時も悪い時も、すべての景色を味わうのが人生。
だめな日は、だめな日なりに毎日を味わって生きていきなさいね。
笑っていれば、またきっといい景色の日がきますから。
愛のある優しい言葉がたくさん溢れている物語だった。
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Posted by ブクログ
8編からなる短編集。最初の二編辺りでもう、やっぱりこの作家さん一番好きだわ〜と、ときめいた。もっと評価されていい作家さんだと心から思う。
中でも、「黒猫のミーコ」「明滅」「台風のあとで」「花丼」は特に好きだった。
ドリアン助川さんの文章には優しさが溢れている。その人物の心の声を、1つずつ丁寧に掬って文章にしてくれる。余白を省いて、行間を読みなさい!というスタイルではなく、読む人にも優しい。なので、読んでいる最中はあれこれ考えることなく、その人物の心が素直に真っ直ぐに心に刺さってくる。では、簡単な内容なのかというとそうでもなく、読んでいる間中、そして読後も、その風景や、人物の感情、どうかすると、その周りに生きる人々まで含めた世界観が、しばらく自分の周りを覆っているような、別世界でありながら、とても親しみのある所へ身を置かせてくれる。しっかりとした物語の世界の中で、読者はあれこれと想像を働かせることができる。そして、その多くは、本来日頃の生活の中で感じ得る人間の優しさであったり、辛さであったりする。これこそが、人の気持ちを考えたり、想像したりするということではないだろうか。
そして、最後に突然の散文詩。スケールが大きく、何者も近づけないような大きな流れた時の存在。震えました。
今読んで良かった。こういう本を読みたかった。文が美しく、現実の生活に即していながらも、なかなか出会うことのない人の真心や優しさに触れさせてくれる本。移り変わる自然の風景と人生の時。
上質な上にわかりやすい文章なので、若い方にもたくさん読んでもらいたいです。
好きだったところ******
少し前に南の風が強く吹いたろう。あれが春の挨拶だ。透き通った刷毛を走らせて、自分の通り道を見せていく。131
今日も一人励ましたと、言った本人だけは思っている。相手の思いやりの方が上でうなずいてくれたかもしれないのに、いいことを言ったような気分で鼻の穴を膨らましている。
だが、一人ぼっちになると、他人を励ました分だけへこむようなところが継治さんにはあった。すべては虚勢なのだ。166
良い時も悪い時も、すべての景色を味わうのが人生なんだとお母さんは思うわ。235
時よ、いつ過ぎ去ったのだ。
輪郭のつかめないこの風景を、
今、愛せよというのか。
なにもかも、これが本当の姿だというのか。239