【感想・ネタバレ】あなたという国―ニューヨーク・サン・ソウル―のレビュー

あらすじ

孤独の街(ニューヨーク)で、二人は出逢った。ミュージシャンとして成功を夢見る拓人と、脚本家となり夢の物語を紡ごうとするユナ。互いの心の隙間を埋め合った二人は、日本人と韓国人の障壁も乗り越え世界を共有していく。だが拓人の道が開けかけた時、運命の日が訪れた――9・11を体験した作家が描く、心がちぎれるほど切ないラブストーリー。

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Posted by ブクログ

 本書の帯びには「9.11の悲劇を体験した作家が混迷の世に問う長編」とありました。
 ニューヨークのマンハッタン周辺を舞台に,色々な国籍の若者たちが交流する中で,自分のアイデンティティーを確認しながら,迷いながら生きていく,命の交流が描かれています。
 自分の国と自分とは同じなのか…。あるときには,重荷に感じる国。でも,立ち位置として持っていたい国。タイトルにある「国」は,実際の国であり,心の中の国である。国は自分の一部であるけれども,じゃまな存在ともなる。
 英語教室の講師が,国をめぐって言い争う若者たちに言う。
「こういう晩に,人を区別するような話はやめてもらおうか。そういうものを,背負わなくていいときもあるだろう。すくなくとも今夜はそうだ」
「シンプルなことだよ。まずは自分の人生を豊かにしなさい。遠くの大義より,近くの人を大事にしてやることだ」
 竹島が,独島が,日本人が,アメリカ人が…と国を背負ってばかりいてはいけない。今,あなたの前にいる人間との出会いをどのように大事にしていくのかです。
 本書には,日本からバンドをしようと思ってニューヨークに来た青年・拓人が出てくる。彼のバンドの曲名に「アルマジロ」と「恋歌」というのがあるらしい。これって,そのまま,著者のドリアン助川が所属していた「叫ぶ詩人の会」の楽曲ではないか。わたしのCDラックには,その叫ぶ詩人の会のすべてのCDがある。 

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2022年01月19日

Posted by ブクログ

ドリアン助川さんの書くものって、いつも心に深く食い込んでくる。短いエッセイでも、人生相談の回答でも。映画にもなった「あん」の読後感など忘れがたい。これもまた、胸の奥に沈んでずっとそこに残るに違いない一冊。

音楽で生きようとニューヨークで苦闘する三十過ぎの拓人が主人公だ。語学学校で出会う若者たちや、バンドを組む仲間たちと、ぶつかったり心をふれあわせたりしながら、なんとか道を開いていこうとする姿が語られていく。みなそれぞれに、自覚しているか否かにかかわらず国や民族を背負っていて、その軋轢やそれを苦しみながら乗り越えようとする姿に胸が痛くなる。

これだけでも異国の地でもがく若者(三十過ぎてるけど。この点も切ない)を描いたものとして十分読ませる。コリアンのユナと近づいていくあたりなど、恋愛小説からはとんと遠ざかってるわたしだが、胸を締め付けられるようだった。

だがしかし、これだけではなかったのだ。読み出してすぐ、舞台が2001年年明けのニューヨークであることから、間違いなく同時多発テロがストーリーに関わってくるだろうとは思っていた。ツインタワーの姿も折に触れて出てくる。その予想通り最終章は9月11日の出来事である。それでも…、ここまでの展開になるとは思いもしなかった。

なにが起こるのかも衝撃だが、それ以上にその描き方に意表を突かれた。同時に、あのテロに対する自分の見方がいかに底の浅いものだったか、痛いほど感じずにはいられなかった。イスラムがどうとかアメリカがどうとか、そういうことは別次元で、あの時確かにたくさんの(本当に数限りない)世界が崩壊したのだ。その重みに、今さら打ちのめされる。

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2016年03月02日

Posted by ブクログ

読書記録62.
#あなたという国

ミュージシャンを志しN.Yに渡った主人公とそこで出会った韓国女性との日韓ロミオ&ジュリエットとの紹介文
ラブロマンス小説かと思いきや

語学学校で出会うアジア各国の生徒達とのギクシャクとした歴史観

彼女との関係、バンドの活動に光が見えた矢先に9月11日のあの日が

自分も含め自国について、歴史について思う事、それを言葉にする力を持たずに生きている日本人は多いと思う

意見を求められず、自発的に考えずにいたらそうなることも無理はないのかもしれない

だからこそ自ら知り、考え、発する言葉を準備する自分でありたい

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2024年08月27日

Posted by ブクログ

2016年刊。様々な国の生まれの人々がうねるように生きるニューヨークが舞台。日本との過去の戦争で傷付けあった各国の人との関係性。その生々しさに目眩がする。表現も生々しくも美しく、惹かれるものが有るのだが…。結局、どういう設定なんだろう? パラレルワールドに無自覚に悩まされている主人公? 「幻想的」と言えばそうかもだが、余りに激しく厳しい現実から平行世界にジャンプしちゃいました! 的な終わり方だ…。申し訳ないが、個人的には肩透かしを食らった気分。

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2023年11月20日

Posted by ブクログ

先日『あん』を読んで興味を持ったドリアン・助川さんの小説です。
ニューヨークを舞台に、ミュージシャンを目指す日本人男性・拓人と韓国人女性・ユナの恋を描いた作品です。
中盤までで印象に残るのは、ニューヨークの街の見事な描写です。そして人種のるつぼであるニューヨークで、人々の普段の姿のすぐ裏に潜む人種や歴史観に基づく偏見や憎悪です。助川さんの来歴を見ると「2000年3月から2002年9月までニューヨークに滞在。日米混成バンドAND SUN SUI CHIE(アンド・サン・スー・チー)を結成し、ライブハウスで歌う。」と書かれているので(時期は少しずれていますが)実体験を反映した物だと思います。私も海外の人との付き合いは有りましたが、その中ではあまり感じた事は無く、そんなにもあるのか?強いのか?という印象です。逆に言えば私がそこまで深く入り込めなかったという事なのでしょう。
そしてエンディング。9・11。
物語はどこか暴走し、拡散したような印象です。何かを伝えたかったのだというのは判るのですが、それが何なのか捕まえられないもどかしさが残りました。

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2018年10月03日

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