ドリアン助川のレビュー一覧
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もう「叫ぶ詩人の会」の歌を聞いて以来,ドリアンのファンになってしまったので,評価は付けられない(5以外にない(^^;;)。
さて本書について…
新宿に住む十数匹の野良猫を題材にして小説が書けることが面白い。主人公の山ちゃんという男性(ボク)。小さな焼き鳥屋の店員の夢ちゃんという女性。その焼き鳥屋に集まる常連は,なかなかクセのあるメンバーだ。
小説の常で,内容についてちょっとでも紹介すると,読むときのドキドキさがなくなる。だから,これ以上は書かない。
ただ,いろんな創作や文学や芸術は,一般大衆の大多数を相手にするのではなく,目の前にいる一人に向けて行うものではないか…という作者の訴えに -
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ハンセン病の老婆と務所帰りの男との物語。
刑期を終え出所した千太郎は、お世話になった先代のどら焼き屋「どら春」で働き、オーナーである先代の奥さんに借金を返す毎日。
とりたてて旨くもなく、まずくもない中国産のあんを使ったどら焼き屋から逃げ出したいと考えていた千太郎に、声をかけてきた老婆。
指が曲がり、体の不自由さを感じさせる老婆は吉井徳江と名乗り、どら春で働かせてほしいという。しかもあんを作って50年という。
アルバイトとして働くようになった徳江の作るあんは絶品で客足も伸びる。
しかし徳江がハンセン病患者の隔離施設だった天生園から来ていることが噂になり、客足が落ち、オーナーに -
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前に「あん」を読んですごく心地良い温かさを感じたから、同じ著者の小説をもうひとつ読んでみようと思って…
この小説も、じんわり涙が出てくるような温かさに包まれてた。
感動の押しつけはまったくないんだけど。ほんとに、じんわり、という感じ。
多摩川沿いで生活を営む人々の短編集。多少、連作めいた要素もあり。
野良猫に名前をつけて可愛がる農家の中年女性、古書店で働く恋する青年、川べりに棲むホームレスに絵を教えてもらった少年、閑古鳥が鳴く食堂の主人、妻をなくしたシングルファーザーetc
日々を送る人々の傍にはいつも川があって、そこには悲しみや辛さや笑顔がある。
ただ通りすがるだけの川、時に訪れて遊ぶ川、 -
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ネタバレここまで私の心に響き渡って、心揺さぶられた作品は久々。ストーリーも登場人物の設定もメッセージ性も、何から何まで素晴らしい。
前科のあるどら焼き屋の雇われ店長千太郎と、ハンセン病で50年以上もの間、社会から完全隔離されて生きてきた老女徳江の物語。
親兄弟からも見捨てられ、夢も希望も理不尽に奪われて、生きる気力さえ失い、神を恨むほどの不条理な人生をイヤでも歩まなければならなかった二人の生き様。
親子ほどの歳が離れた二人の出逢いが、お互いに生きてきた意味を成す。
「私たちはこの世を観るために、聞くために生まれてきた。この世はただそれだけを望んでいた。だとすれば、教師になれずとも、勤め人になれず -
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数年前に朝日新聞の人生相談の明川さんの回答を読んで面白いなー・・・
と思って、それ以来、そのコーナーを見逃さないようにしてたんだけど、
今回はその明川さんの本です。
家にも学校にも居場所を見つけられないトルリという少年と、
サジという名の洋菓子店を営んでいる職人の話。
トルリは幼い頃から、そのサジとは知り合いなんだけど、最近、サジの洋菓子店から
お菓子をちょくちょく万引きしてる。
サジは、ちょっと問題を起こして以来お店のお客さんが減り、
最近では傾きかけた洋菓子店で、それでもお菓子作りに励んでいる。
そんな中、ひょんなことから、二人は給水塔に登り降りれなくなってしまう。
大人の為の童 -
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ネタバレ前情報0で読み始め「あん」は餡子だったのね〜と軽く読み進めると、だんだんと胸が苦しくなってくる
『店長さん。あなたももちろん、生きる意味がある人です。
塀のなかで苦しんだ時期も、どら焼きとの出会いもみんな意味があったのだと思いますよ。
すべての機会を通じて、あなたはあなたらしい人生を送るはずです。そしてきっといつか、これが自分の人生だと言える日がくると思うのです。物書きにならずとも、どら焼き職人にならずとも、あなたはあなたらしく立ち上がる日がくると思うのです。』
そして苦しいだけじゃなく、「誰にでも生きる意味がある」とエールを受け取れる、
季節を感じる温かな風が吹く物語
ドリアン助川さん -
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出だしからとても引き込まれる作品。
自分の人生に何の希望も持てない男。
後悔と諦めの中で日々をやり過ごす中、
現れたなぞの老女との出会いが
そっと男の世界に灯りを灯し始める。
映画化されているようで、
キャストを見たら、あー、なるほど!と思わせる配役だった。
男と老女の手紙のやり取りの場面に涙。
人生の先輩、和菓子作りの師匠、
そして時には母親のように。
あたたかな励ましが沁みた。
社会の中で役立つ人でありたい。
じゃあ役に立たない人は生きる意味はないのか。
生きていたらいけないのか?
この本の中で、老女はそんなテーマについても自分らしく語っている。