あらすじ
誰にも生まれてきた意味がある。 どら焼き店の軒先から始まる、限りなく優しい魂の物語 線路沿いから一本路地を抜けたところにある小さなどら焼き店。 千太郎が日がな一日鉄板に向かう店先に、バイトの求人をみてやってきたのは70歳を過ぎた手の不自由な女性・吉井徳江だった。 徳江のつくる「あん」の旨さに舌をまく千太郎は、彼女を雇い、店は繁盛しはじめるのだが……。 偏見のなかに人生を閉じ込められた徳江、生きる気力を失いかけていた千太郎、ふたりはそれぞれに新しい人生に向かって歩き始める――。 生命の不思議な美しさに息をのむラストシーン、いつまでも胸を去らない魂の物語。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
あんの作り方の奥深さを少しだけ知って感動した
またハンセン病について全く知らなかったので、この本を読んで知ることができてよかった
この本を読み終わってどら焼きを食べたくなった
Posted by ブクログ
人と人との繋がり、人の希望を繋ぐ、人が立ち上がるきっかけ、素晴らしく感動したぁ!
人の人生、人の想い、人生は思い通りにいかない、それでも前へ。この作品から今年が始まって良かった!
ドリアン助川さん、ありがとう!
Posted by ブクログ
読んでいて涙が止まらなかった。
和菓子屋に勤めてはいるが、いいかげんに生きていた主人公と美味しく『あん』を炊く謎のおばあさんの、柔らかいやりとり。
次第に明らかになるおばあさんのつらさ、悲しさと、物語のそのような柔らかい空気間があいまって読んでいて、涙が止まらなくなった。
大好きな本。
Posted by ブクログ
月並みな感想だけれど、ものすごく感動した。なんだか、周りの全ての人に優しくなれるような、壮絶な生き方をしてきた人の話。言葉が刺さる。ずしっと心に響いた。それでいて読んだ後は清々しい気分。良かったなぁ。
Posted by ブクログ
もっと若い頃に読んでいたら、主人公のどら焼き屋店長目線で読んでいたはず。
半世紀生きた今は、隔離施設で生き抜いてきたハンセン病元患者の徳江さん目線でもストーリーを追い、映画の撮影現場にいるような、どら焼き屋が隣家のような、深い味わいのある物語でした。
樹木希林さんの映画も観てみたい。
ブラウスのシーンでは目頭が熱くなりました。
桜のきれいな徳江さんの故郷も、まさかの近所。春になったら行ってみよう。「吉井徳江」として生きたひとりの少女のことを思って。
Posted by ブクログ
ハンセン病の老婆と務所帰りの男との物語。
刑期を終え出所した千太郎は、お世話になった先代のどら焼き屋「どら春」で働き、オーナーである先代の奥さんに借金を返す毎日。
とりたてて旨くもなく、まずくもない中国産のあんを使ったどら焼き屋から逃げ出したいと考えていた千太郎に、声をかけてきた老婆。
指が曲がり、体の不自由さを感じさせる老婆は吉井徳江と名乗り、どら春で働かせてほしいという。しかもあんを作って50年という。
アルバイトとして働くようになった徳江の作るあんは絶品で客足も伸びる。
しかし徳江がハンセン病患者の隔離施設だった天生園から来ていることが噂になり、客足が落ち、オーナーにも首を切るように言われる。
徳江の作り出すあんに希望を抱いていた千太郎は、店を持ち直そうと奮闘する。
生きる希望を強制的に剥奪された徳江と、犯罪に手を染めて社会不適合者になっていた千太郎との対比が、差別や人の生き方という視点で語られている。
生きる意味を見出してくれる作品。
Posted by ブクログ
病気で閉じ込められていた徳江さんと千太郎との不思議な出会い。
偏見の怖さにも悲しくなったが、生きるものだけでなく、周囲をとりまくものたちに耳を傾けて生きる素敵さがじんわり広がって、「誰にも生まれてきた意味がある」という言葉が、あったかく心にしみわたる感じが何とも素敵な本でした。
千太郎さん、どら焼き屋をまた始めてくれているといいなぁ・・・
ほんのり桜がかおる塩どら焼き、食べてみたい。
Posted by ブクログ
昔、子どもの頃教会学校のサマースクールでハンセン氏病の方たちが暮らす施設を訪問したことを思い出した。そこは、塵一つないくらい清潔で、修道院のような静けさと祈りの気配に満ちていた。かの人達の運命を考えれば、憤りや怒り倦怠の気配が漂っていてもおかしくないのに、そうではなかったことを覚えている。
この物語に登場する人達と、あの時の記憶が繋がり、過去の一地点のことではなく、今もなお続いている現実なのだと再認識した。
Posted by ブクログ
ここまで私の心に響き渡って、心揺さぶられた作品は久々。ストーリーも登場人物の設定もメッセージ性も、何から何まで素晴らしい。
前科のあるどら焼き屋の雇われ店長千太郎と、ハンセン病で50年以上もの間、社会から完全隔離されて生きてきた老女徳江の物語。
親兄弟からも見捨てられ、夢も希望も理不尽に奪われて、生きる気力さえ失い、神を恨むほどの不条理な人生をイヤでも歩まなければならなかった二人の生き様。
親子ほどの歳が離れた二人の出逢いが、お互いに生きてきた意味を成す。
「私たちはこの世を観るために、聞くために生まれてきた。この世はただそれだけを望んでいた。だとすれば、教師になれずとも、勤め人になれずとも、この世に生まれてきた意味はある。
でも世の中には、生まれてたった二年ぐらいでその生命を終えてしまう子供もいます。そうするとみんな哀しみのなかで、その子が生まれた意味はなんだったのだろうと考えます。今の私にはわかります。それはきっと、その子なりの感じ方で、空や風や言葉をとらえるためです。その子が感じた世界は、そこに生まれる。だから、その子にもちゃんと生まれてきた意味があったのです。
(中略)人生の大半を闘病に費やし、傍から見れば無念のうちに去らざるを得なかった命もまた、生まれてきた意味があったのです。その人生を通じて、空や風を感じたのですから」
私自身、人生に絶望して、生きている意味を見失っていた。親との関係もうまくいかず、子宝にも恵まれず、仕事も失い、病気を患って早10年が経ち、失われたものや時間だけが過ぎ去っていく中で、この本に出逢った。
誰かのためとか、社会の役に立てなくても、ただ、この時代を観て感じるだけのために、ただ生きている。その言葉は、とても優しくてただ温かかった。
一般的に生き物は、生殖能力を失うとそれ以降あまり長く生きられないと言われている。子孫繁栄のためにこの世の生命はあり続けるのだと。
でも、人間だけは、生殖能力を失っても何十年も生きながらえることができる。それはきっと、子孫繁栄以外にも、生きている意味があるからなのだと思う。それが、ただ、この時代を観て感じるだけでも、そのことに意味があるのだと。
徳江は最期まで、小豆の声や、木々の声、風の声、小鳥の声に耳を傾け続けた。
「聞こえると思って生きていれば、いつか聞こえるんじゃないかって。そうやって、詩人みたいになるしか、自分たちには生きていく方法がないじゃないかって。そう言ったの。現実だけ見ていると死にたくなる。囲いを超えるためには、囲いを超えた心で生きるしかないんだって」
そういう風にして生きている人を私は何人か知っている。そういう気持ちだったのかと身につまされる想いを感じた。
Posted by ブクログ
テレビで樹木希林さんが演じている映画をみて引き込まれた
「店長さん、あらゆるところに耳を澄ませていてください。普通の人には聞こえない言葉を聞いて、聞いて、聞いて、どら焼きを作ってください。それだけできっと、店長さんの未来も、どら春の未来も開けていくと思います」
いつの日か 店長がどこかで「塩漬け桜のどら焼き」を販売する時がきますように
Posted by ブクログ
前情報0で読み始め「あん」は餡子だったのね〜と軽く読み進めると、だんだんと胸が苦しくなってくる
『店長さん。あなたももちろん、生きる意味がある人です。
塀のなかで苦しんだ時期も、どら焼きとの出会いもみんな意味があったのだと思いますよ。
すべての機会を通じて、あなたはあなたらしい人生を送るはずです。そしてきっといつか、これが自分の人生だと言える日がくると思うのです。物書きにならずとも、どら焼き職人にならずとも、あなたはあなたらしく立ち上がる日がくると思うのです。』
そして苦しいだけじゃなく、「誰にでも生きる意味がある」とエールを受け取れる、
季節を感じる温かな風が吹く物語
ドリアン助川さん、菓子専門学校で学ばれたのですね
あんこが美味しそうな筈だぁ〜
千太郎が作った桜の塩気のどら焼き食べたい〜〜
私の好きなバターどら焼きも、成程塩気が美味しいんだな
そもそも焼きたてのどら焼き食べてみたい笑
これからどうなるか余韻を残す終わりが私には良かった
映画も観てみよう❣️
Posted by ブクログ
出だしからとても引き込まれる作品。
自分の人生に何の希望も持てない男。
後悔と諦めの中で日々をやり過ごす中、
現れたなぞの老女との出会いが
そっと男の世界に灯りを灯し始める。
映画化されているようで、
キャストを見たら、あー、なるほど!と思わせる配役だった。
男と老女の手紙のやり取りの場面に涙。
人生の先輩、和菓子作りの師匠、
そして時には母親のように。
あたたかな励ましが沁みた。
社会の中で役立つ人でありたい。
じゃあ役に立たない人は生きる意味はないのか。
生きていたらいけないのか?
この本の中で、老女はそんなテーマについても自分らしく語っている。
Posted by ブクログ
ウチの高校生が部活で朗読の課題になってると言っていたのがきっかけで読んでみた。
映画化されていたのでタイトルくらいは知っていた。なるほど、2時間くらいのドラマにするにはちょうど良さそう。
人生を諦めかけた男と人生のほとんどを理不尽に奪われた高齢の女性が出会い、心を通わせる物語。
ハンセン病については知っているつもりで知らなかったのかもしれない。こうやって物語を読み登場人物の一生に思いを馳せると、事の重大さに心が苦しくなった。
Posted by ブクログ
映画化もされており、作者の作品を初めて手にして読んだ。 どういう話か読んでみてわかった。 ハンセン病がリンクしていた話だとは思わなかったので、手にしてみないとわからない一冊。
Posted by ブクログ
前科者で先代に恩があるためだけにやっていたどら焼き屋さん「どら春」の店長さん。ある日、店の前に立ちこちら見つめている年配のおばあさんと出会う。体が少し不自由そうなその人は、その店で働かせてほしいと話す。断り切れず試しに働いてもらうことにするが、その人の作るあんに驚く。そのあんの作り方を教わりながら、その人・吉田さんの過去や思いに触れながら自分のこと・店のこと・これまでのこと・これからのこと等について少しづつ変えていこうとする店長さんの、吉田さんとのお話。
前から読みたいリストに登録していた本。あんこを通して再生していく話だと思って読んでたけど、思ってた話とは話の流れが違ってちょっと驚いた。吉田さんは元ハンセン病患者。隔離や差別、つらい過去の話は読んでて辛かった。人それぞれいろんなことがあって、それぞれつらさや悲惨さはもちろん違うけど、そんな中でも一生懸命もがいて生きていくんだなって思った。吉田さんの店長さんへの思い、どら春で働いていた時の思い、胸が詰まる。話は店長さんの完璧な再生まではなく、気持ち的なところでの立ち直り的な感じで終わるけど、吉田さんからの最期のさくら茶のヒントを得て、吉田さんから引き継いだ道具、ワカナちゃんの働き口のためにも店長さんの「どら春」のどら焼きができると思いたい。
Posted by ブクログ
天生園のモデルになった全生園の裏に住んでいます。1997年頃は、学校が終わると毎日友だちと全生園で遊んでいました。学校でもハンセン病についての学習があった地域でした。祖母の友だちにもトクさんや森山さんのような様相の方がいらっしゃいました。
私にとっては身近な題材です。それでも、罹患した方の視点から語られる場面は胸がギュッと苦しくなりました。いくら身近でも、決して慣れることはない苦しい過去がある病気だと改めて思いました。
ただ、苦しい過去がある病気が題材でも、この小説を通じてだと甘いあんも心に残るので、なんとか最後まで読み切ることができました。
「あん」という言葉が題名になったことに、店長さんとトクさんの絆を感じずにはいられないのです。
Posted by ブクログ
一気に読み終えた。成り行きで好きでもないどら焼きを焼く男と、無給同然で手伝いを申し出る老婆。どちらの人生も、自分の辿ってきた軌跡からは想像もできないし、ましてやその二人が交差することで生まれる物語なんて、どうやって産み出されたんだろう?
Posted by ブクログ
ほっこり系かと思いきや
なかなか深いお話でした
ハンセン病のことほとんど知りませんでした
想像できないくらいやるせなくて悲しい事があったんだと思います
どら焼きが食べたくなりました
Posted by ブクログ
ハンセン病という病気になった吉川。
病気に対する間違った認識はまだあるんだな。
生きることについても考えさせされた。
何かのことに熱中できるっていいことだな。
Posted by ブクログ
ずっと気になってた映画の原作。
今まであまりふれてこなかった、ハンセン病の小説。樹木さんはどう演じたんだろう。
ドリアン助川さんは、思春期の頃ラジオ聞いてたので、小説を書かれていることにびっくり。
季節の移り変わりに、桜の描写が描かれているので、想像しながら読むこともすごくきれい。
美味しい和菓子、どら焼、あんこが無性に食べたくなる!映像もぜひ見てみたい一冊でした。
Posted by ブクログ
小さな街のどら焼き屋、千太郎は毎日鉄板の前でどら焼きを焼いていた。
ある日、店先の求人を見た70代の手の不自由なお婆さんが、自分を雇って欲しいと言ってきた。
前科のある千太郎と元ハンセン病患者の吉井さんの交流。
ニュースで見た記憶は薄くはあるものの、ハンセン病に対する認識がなく、その偏見に苦しんだ人達のことを、今回改めて知ることが出来ました。
読んで良かった。
この先、千太郎がまたどら焼きをやき始めたらいいなと望みます。
桜の塩漬けとともに食べるどら焼き、美味しそう。
Posted by ブクログ
先日亡くなった樹木希林さんに敬意を表して読みました。
映画は見ていませんが、プロログの徳江さん(おばあさん)登場の場面は希林さんの演技を彷彿させました。なるほど映画の脚本のような書きぶりの小説でもありました。
どら焼きの中身、小豆の美味しい煮方指南などは微笑ましいが、すぐに徳江がハンセン氏病完治者とわかってくるのにしたがって、じっとりと空気が重くなってくる。
登場人物の3人が3人とも、それぞれ社会から疎外されている屈託を抱えている。それをことさら怒るんではなく、恨むのでもなく淡々としているように描写しているのが、かえって胸迫るのだろう。
そういうことはみんなあるよね、といいながらそれが「みんなの思い」にならないことがわかっているからである。
普通が平等にならない、しかし人間の存在はみんな同じではないとわかってみれば、生きにくさに向かっていく勇気が出るのだ。
Posted by ブクログ
う〜ん 言葉が、でない。
私たちはこの世を観るために、聞くために生まれてきた。この世に生まれてきた意味はある。
この本には心がなかなかついていけなかった。
いろいろな感情が交差した。
Posted by ブクログ
映画を見ていたので、内容は、知っていた。ただ、やはり、活字で伝えられる中の深い思い、苦しみ、悲しみそして、希望は、より心に響くと思う。桜シーズンに思い出す本になる。
Posted by ブクログ
甘い話かと思っていたらハンセン病がテーマだったのでびっくりした。
主人公の人物設定が曖昧で、しかもお約束の手紙オチ。
全体的に人物像がすべて曖昧でハンセン病にむりやり製あんを盛り込んだ感があった。
話そのものは悪くなく、一日で一気読み出来るほど退屈は無く、よって次点。