【感想・ネタバレ】あんのレビュー

あらすじ

誰にも生まれてきた意味がある。 どら焼き店の軒先から始まる、限りなく優しい魂の物語 線路沿いから一本路地を抜けたところにある小さなどら焼き店。 千太郎が日がな一日鉄板に向かう店先に、バイトの求人をみてやってきたのは70歳を過ぎた手の不自由な女性・吉井徳江だった。 徳江のつくる「あん」の旨さに舌をまく千太郎は、彼女を雇い、店は繁盛しはじめるのだが……。 偏見のなかに人生を閉じ込められた徳江、生きる気力を失いかけていた千太郎、ふたりはそれぞれに新しい人生に向かって歩き始める――。 生命の不思議な美しさに息をのむラストシーン、いつまでも胸を去らない魂の物語。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

あんの作り方の奥深さを少しだけ知って感動した
またハンセン病について全く知らなかったので、この本を読んで知ることができてよかった
この本を読み終わってどら焼きを食べたくなった

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2024年03月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ここまで私の心に響き渡って、心揺さぶられた作品は久々。ストーリーも登場人物の設定もメッセージ性も、何から何まで素晴らしい。

前科のあるどら焼き屋の雇われ店長千太郎と、ハンセン病で50年以上もの間、社会から完全隔離されて生きてきた老女徳江の物語。

親兄弟からも見捨てられ、夢も希望も理不尽に奪われて、生きる気力さえ失い、神を恨むほどの不条理な人生をイヤでも歩まなければならなかった二人の生き様。
親子ほどの歳が離れた二人の出逢いが、お互いに生きてきた意味を成す。

「私たちはこの世を観るために、聞くために生まれてきた。この世はただそれだけを望んでいた。だとすれば、教師になれずとも、勤め人になれずとも、この世に生まれてきた意味はある。
でも世の中には、生まれてたった二年ぐらいでその生命を終えてしまう子供もいます。そうするとみんな哀しみのなかで、その子が生まれた意味はなんだったのだろうと考えます。今の私にはわかります。それはきっと、その子なりの感じ方で、空や風や言葉をとらえるためです。その子が感じた世界は、そこに生まれる。だから、その子にもちゃんと生まれてきた意味があったのです。
(中略)人生の大半を闘病に費やし、傍から見れば無念のうちに去らざるを得なかった命もまた、生まれてきた意味があったのです。その人生を通じて、空や風を感じたのですから」

私自身、人生に絶望して、生きている意味を見失っていた。親との関係もうまくいかず、子宝にも恵まれず、仕事も失い、病気を患って早10年が経ち、失われたものや時間だけが過ぎ去っていく中で、この本に出逢った。

誰かのためとか、社会の役に立てなくても、ただ、この時代を観て感じるだけのために、ただ生きている。その言葉は、とても優しくてただ温かかった。

一般的に生き物は、生殖能力を失うとそれ以降あまり長く生きられないと言われている。子孫繁栄のためにこの世の生命はあり続けるのだと。
でも、人間だけは、生殖能力を失っても何十年も生きながらえることができる。それはきっと、子孫繁栄以外にも、生きている意味があるからなのだと思う。それが、ただ、この時代を観て感じるだけでも、そのことに意味があるのだと。

徳江は最期まで、小豆の声や、木々の声、風の声、小鳥の声に耳を傾け続けた。

「聞こえると思って生きていれば、いつか聞こえるんじゃないかって。そうやって、詩人みたいになるしか、自分たちには生きていく方法がないじゃないかって。そう言ったの。現実だけ見ていると死にたくなる。囲いを超えるためには、囲いを超えた心で生きるしかないんだって」

そういう風にして生きている人を私は何人か知っている。そういう気持ちだったのかと身につまされる想いを感じた。

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2024年11月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

前情報0で読み始め「あん」は餡子だったのね〜と軽く読み進めると、だんだんと胸が苦しくなってくる

『店長さん。あなたももちろん、生きる意味がある人です。
塀のなかで苦しんだ時期も、どら焼きとの出会いもみんな意味があったのだと思いますよ。
すべての機会を通じて、あなたはあなたらしい人生を送るはずです。そしてきっといつか、これが自分の人生だと言える日がくると思うのです。物書きにならずとも、どら焼き職人にならずとも、あなたはあなたらしく立ち上がる日がくると思うのです。』

そして苦しいだけじゃなく、「誰にでも生きる意味がある」とエールを受け取れる、
季節を感じる温かな風が吹く物語

ドリアン助川さん、菓子専門学校で学ばれたのですね
あんこが美味しそうな筈だぁ〜
千太郎が作った桜の塩気のどら焼き食べたい〜〜
私の好きなバターどら焼きも、成程塩気が美味しいんだな
そもそも焼きたてのどら焼き食べてみたい笑

これからどうなるか余韻を残す終わりが私には良かった
映画も観てみよう❣️

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2024年11月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

前科者で先代に恩があるためだけにやっていたどら焼き屋さん「どら春」の店長さん。ある日、店の前に立ちこちら見つめている年配のおばあさんと出会う。体が少し不自由そうなその人は、その店で働かせてほしいと話す。断り切れず試しに働いてもらうことにするが、その人の作るあんに驚く。そのあんの作り方を教わりながら、その人・吉田さんの過去や思いに触れながら自分のこと・店のこと・これまでのこと・これからのこと等について少しづつ変えていこうとする店長さんの、吉田さんとのお話。

 前から読みたいリストに登録していた本。あんこを通して再生していく話だと思って読んでたけど、思ってた話とは話の流れが違ってちょっと驚いた。吉田さんは元ハンセン病患者。隔離や差別、つらい過去の話は読んでて辛かった。人それぞれいろんなことがあって、それぞれつらさや悲惨さはもちろん違うけど、そんな中でも一生懸命もがいて生きていくんだなって思った。吉田さんの店長さんへの思い、どら春で働いていた時の思い、胸が詰まる。話は店長さんの完璧な再生まではなく、気持ち的なところでの立ち直り的な感じで終わるけど、吉田さんからの最期のさくら茶のヒントを得て、吉田さんから引き継いだ道具、ワカナちゃんの働き口のためにも店長さんの「どら春」のどら焼きができると思いたい。

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2024年01月22日

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